「僕の体も少しはマシになったかな」
ついこの前まで青白くひょろひょろだった腕も、今では少し細いまでに回復し、身体中の注射痕も消えていた。
後は貧血を治せばキノさんがモトラドを買ってくれるらしい。
「そうですね、もう少し筋肉を付けて僕を抱き抱えられるまでになれば合格ですね」
「うん、頑張るよ」
ファルが全く無い力こぶを腕で作りながら、二人で笑い合う。
実際にファルがキノを抱き抱えられるのは、体が治っても当分先の事である。
二人でエルメスに股がりながら次の国を目指す、キノが運転しファルが後ろに乗る。
そうして旅を続けているがモトラドに二人乗りでの旅は正直辛い所がある、次の国で少しゆっくりしようと思う。
「お二人さん、次の国が見えて来たよ」
「本当だ、城壁が見えて来た」
「あの国はどんな国なの?」
「さぁ、行ってみれば分かるよ」
「そうだね、それが旅の楽しみでもある」
暫くガタガタと揺れる道を走ると城門が見えて来る、門の前には二人の男性が立っていた。
「止まってください」
門の前の男性が大声で叫ぶ、それに合わせてエルメスのスピードを緩めてやがて止まる。
「こんにちは旅人さんですか?我が国には観光で?」
男性がキノに訪ねる、もう一人の男性はファルと荷物を怪しむ様に見ている。
「こんにちは、僕達は観光目的で三日間の滞在を希望します」
「どうもね」
「こんにちは」
「それでは入国審査に移ります、こちらへどうぞ」
城門脇の小さな小屋へ誘導される、審査は直ぐに終わるそうで、ファルとエルメスは小屋の端で待っていた。
「ファル体調はどう?立っているのが辛いなら、僕に座って居ても良いよ」
「ありがとうエルメス、まだ体調は大丈夫そうだよ」
「辛いなら直ぐに言ってよ?倒れちゃ大変だ」
「そうするよ」
一人と一台は仲良く会話をしていたが、それをキノがチラチラ見つつヤキモチを焼いていた。
入国審査はスムーズに終わり三日間の滞在を許された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
キノは舗装された道を、エルメスに乗ったファルと進む
国の中はどこも平和で喧嘩一つ無い。
「キノ、先ずは何処に向かうの?」
「先ずは宿だね、何をするにも先ずは宿を見付けないと」
「宿を選ぶ基準は何か有るの?」
「とりあえず安い事とご飯が美味しいことだね」
「後は僕が一緒の部屋に泊まれる事だよ」
「場所は入国審査官の人にお勧めを聞いたから、そこへ行こうと思うよ」
ふむふむとファルは頷きながら、国の様子を眺めていた
そうして目につくのは、キラキラと輝く石達で露店で安くで売られていた。
「キノ、この国は宝石の取り引きのが盛んなのかな?」
「そんな話は聞いたことが無いけれど…」
キノもキョロキョロと辺りを見回すと、直ぐに露店が目についた。
「本当だね、凄く沢山の店が並んでいるみたいだ。
宿で荷物を置いたら、ゆっくり見に行こうか」
「本当に!ありがとうキノ」
「どういたしまして、僕も見たかったからお礼は必要ないよ」
「キノとファル、あそこが例の宿じゃないかな?」
エルメスの言葉に二人が顔を上げると、先ず初めに美しいステンドグラスが目にはいった。
何色ものガラスが使われていて、とても見事な物だった。
「これは…とても見事だ」
「本当に綺麗だ、こんな所が安い宿なの?」
「とても安い宿には見えないね、後で高額を請求されても払えないよ?」
「だよね、でも取り敢えず入ってみようか」
エルメスからファルが降り、キノと二人で宿へと入っていく。
宿の中に入ると外からは想像できない程のきらびやかな、装飾にまみれていた。
「た、高そうだよキノ」
「こ、こんな所に泊まれるだけの手持ちは無いよ」
「取り敢えずカウンターに行こうよ二人とも」
「そうだね、分かったよ」
二人と一台は恐る恐るカウンターに向かうと、呼び鈴を鳴らす。
するとカウンターの奥から受付がやって来た。
「いらっしゃいませ、おや旅人さんですね」
「はいそうです、三日間の滞在を予定しているんですが、入国審査官にここが良いと進められまして」
「それは光栄です」
「それで宿代は幾らなの?凄く高そうに見えるんだけど」
「そんな事有りませんよお客様、当店は大変リーズナブルなお値段で商売しておりますよ」
「こんなに豪華なのに、ですか?」
キノがぐるっとロビーを見回しながら質問する
「豪華?これがこの国の一般的な装飾ですよ?」
「そうですか、それではこのモトラドも一緒に泊まれる部屋でお願いします」
「ありがとうございます、お部屋にご案内いたします」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「キノとっても良い部屋だよ」
部屋は何処もかしこもキラキラで、調度品に至ってはとても高そうに見えた。
ファルは部屋を見回しながらキノに話しかける
「そうだねとても安い部屋には見えない」
「モトラドを置くスペースも広いしね」
キノが荷物を片付けている間窓から、国を眺める
国はあちこちの露店で宝石を売っているのか、国全体がキラキラして見えた。
「ファルそろそろ買い物に行くよ?」
「分かった、今いくよキノ」
「いってらっしゃいキノ、ファル」
「「いってきます」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「これは…!」
「すごい数の宝石だね」
「それに凄く安い」
キノとファルが二人で露店に食いついていると、店主に話しかけられる。
「おや旅人さんかい?ここの石は全てこの国で採れた物なんだお土産に一つどうだい?」
「こんなに沢山採れるのですか?」
「ああ、この国では子供の小遣い稼ぎにもなっていてな、あまり価値は無いけれど綺麗だからお土産に丁度良い、子供達が川原で色石を沢山集めて私達が買い取るんだ」
「色石ですか?」
「そうだよ、余り高くないから皆ステンドグラスや調度品の装飾に使うんだ」
「そ、そうですか」
キノにこっそりとファルが話しかける
「キノこの色石ってもしかして、宝石なんじゃないの?」
「そうみたいだね、この国の人は宝石って知らないんじゃないかな」
「じゃ、じゃああのステンドグラスは…」
「全て宝石で出来ている事になるね」
「ひぇー」
「ファルこれはチャンスだよ、ここで大量に仕入れて次の国で売れば大儲けできる」
「!キノは賢いですね」
「えへへ、そうですか?」
ファルは露店に並ぶ宝石を眺める、その横でキノは高く売れそうな宝石を見定めている。
その時ファルのズボンを誰かが引っ張った。
「ん?」
「お兄さんこれを買ってくれますか?旅のお土産にお願いします」
ズボンを引っ張った少女を見ると、かご一杯に宝石を加工したアクセサリーが入っていた。
「えーと、それじゃあ」
かごの中を見ると、一つだけ光の加減で色を変える石が有る事に気が付く
「これを貰おうかな」
「ありがとうお兄さん!その石はこの国でも滅多に見付からない珍しい石なんだよ!」
それでも子供のおこずかい程度で買えた、少し多く渡すと女の子は喜んで帰って行った。
「ファル買い物が終わりましたよ、それであの女の子とは一体何の話をしていたんですか?」
気が付くとキノは能面のような表情をしていた。
「キノ怒っているの?」
「いいえ、ただの質問ですよ」
「これを買っていたんだ」
「これは…とても良い物を買いましたね、なかなか見付からない物ですよ」
「このネックレスをキノにと思って」
「え、良いんですか?売れば結構なお金になりますよ」
「キノに貰って欲しいんだ」
首にかけてあげると、キノは照れなからお礼を言った
「あ…ありがとうございます」
「喜んでもらえたならよかったよ、でキノの方はどうだったの?良い物は見つかった?」
「はい!沢山売ると宝石の価値が下がりますからね、少しだけ、けれど良い物を仕入れましたよ」
「そっかなら良かった」
「これでファルのモトラドを買うには十分な利益が出ますよ、美味しいご飯も食べ放題です」
そう言うキノの顔は、眩しい程の笑顔で溢れていた
モトラド購入資金調達回
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