隣の席
学園と言えば青春?
窓から差し込む暖かな日差しと柔らかな風に眠気を誘われる午前最後の授業中
視線を感じた気がしてふと隣の席を見ると、クラスメートの木乃さんとバッチリと目が合った。
「…あっ」
「…え?」
僕の口から驚きの声が漏れでると同時に、木乃さんの口からも声が漏れていた
…勝手に気まずくなった僕は目を反らし黒板に視線を戻す、チラリと横目で木乃さんを見るといまだに僕を見ていた。
何か用事があるのかと考えていると授業の終了を告げるチャイムが鳴った、もうお昼かと考えている内に木乃さんの事は頭から消えてしまっていた。
「う~ん」
思い切り腕を上に伸ばす、授業で凝り固まった体からバキバキと音が鳴る。
今日は天気が良いので裏庭の隅でお弁当を食べよう、屋上の方が気持ち良さそうだが彼処は人が多い。
僕はゆっくりしたいので裏庭の方が好きだ、早速移動しよう昼休みは長い様で短い、ご飯の食いっぱぐれは嫌だ。
急ぎ足で教室を後にする、その背中を木乃さんが見詰めている事には気が付かないままで…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
裏庭の大きな木の側のベンチに座る、此処は何時ものお気に入りの場所
此処は日当たりも良く、木が強い風を防いでそよ風だけを届けてくれる、座って居るだけで落ち着く。
早速食べようと、膝に乗せたお弁当の包みをほどくと
「あれ?」
おかしいなお箸が無い、朝確かにお弁当と一緒に包んだ筈。
どうしようかな食べない訳には行かないし、今から学食に箸を貰いに行っても食べる時間が無くなる
いっその事もう手で食べてしまうか…?
自分の右手を見て迷っていると声を掛けられた。
「あの~?」
「え?木乃さん?」
後ろから声を掛けたのは木乃さんだった、木乃さんは後ろ手に何かを持っていたのかこちらに差し出してきた
「これ、忘れてないかな?」
これ、と木乃さんが差し出したのは僕の箸入れだ
今まさに探していた物を渡されて驚きだった。
「あっ僕のお箸!ありがとう困ってたんだ」
「ふふっどういたしまして」
返事をしながら木乃さんはベンチに腰掛けた
僕のすぐ隣肩がくっつきそうな距離に座る、近くないかな?
「ここ気持ち良いね、私も一緒に食べて良い?」
「是非どうぞ。それにしてもお箸は何処にあったの?朝お弁当と一緒に包んだのは覚えてるんだけど…」
「机の上に有ったよ包みから落ちたのかも」
「あ~…」
それしか考えられないお弁当を取り出した後にお弁当を机に一旦置いたんだった…何てドジなんだ、木乃さんが持ってきてくれて助かった。
あまり話した事の無い僕の為にわざわざ届けてくれるなんてとても良い人だ。
木乃さんはベンチに紙袋を置き中からパンを取り出し、膝の上に乗せ勢い良く手を合わせた。
「いただきます!」
「いただきます」
木乃さんに続いて僕も食べ始める、ご機嫌な木乃さんは僕に話し掛けて来た。
「ねえねえ!何時もお昼は教室に居ないけど、毎回此処に居るの?」
「うん、此処がお気に入りなんだ」
「そうなんだ!明日からは私も一緒に食べても良い?私も此処が気に入っちゃった」
「勿論」
「やった!」
ニコニコ嬉しそうにしている木乃さんに疑問を感じた、僕達こんなに仲良ったっけ?
今まではそんなに話した事も無い筈…?
考え込んでいると手元に視線を感じた
「どうしたの?」
「卵焼き綺麗だね…美味しそう」
丁度お箸に摘ままれていた卵焼きを見る、今日の卵焼きは焦げ目も無く綺麗な艶が出ていた。我ながら良くできている。
木乃さんは涎を垂らさんばかりに凝視していた
「褒めてくれてありがとう。
木乃さんにも分けたいんだけど、この摘まんでいるのが最後の一つなんだ」
「お願い、私のパンと卵焼き交換してくれない?」
「え?交換じゃなく良いよ。
そうじゃなくて、僕のお箸に摘ままれて嫌じゃないの?」
「何が嫌なの?私は嫌じゃ無いよ」
「じゃあ…どうぞ」
「あ~ん」
お箸を渡そうとすると木乃さんは卵焼きをそのまま食べ始めてしまった
「美味しい!」
瞳がキラッと輝いた木乃さんは美味い美味いとはしゃいでいる、喜んで貰えて嬉しいが距離が近い。
少なくとも只のクラスメートの距離では無いだろう。
木乃さんは良く見なくても可愛いし、そんな娘に近付かれてドキドキしない訳が無い。
「美味いよ!ねえ私に毎日作ってくれない?」
「え?」
「お返しに毎日私のパン食べてよ!」
「お返しは良いけど…そんなに気に入ってくれたのなら毎日どうぞ。元々毎日入ってる物だったし。」
「本当に!ありがとう!」
僕の両手を握りしめ、キラキラと木漏れ日で輝いている木乃さんに鼓動が早くなった気がした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼と話をしながら教室まで帰って来た、すぐ隣の席なので授業開始ギリギリまで話をして居られた。
授業が始まるとエルメスが小さな声で話しかけてくる
「ふぅ、今日は大収穫だったね」
「ついにやったわ、毎日話す口実が出来たわ」
隣の席を見ながらストラップのエルメスと小声で話す
顔からニヤケが取れず、さっきから頬杖をついている振りで隠している。
見ているだけだった横顔も今日は目があった
お箸を届けたら喜んでくれた
一緒にお昼を食べた
これからは毎日一緒にお昼を食べる
調子に乗って手を握ってしまった
それに卵焼きを食べさせて貰った、彼が作った物を彼の手から食べさせてもらえるなんて…幸せ過ぎる
なんて大収穫なのかしら、放課後は一緒に帰る約束を取り付けよう
「木乃は彼が好きなんだよね?」
「勿論」
「…即答なんだね、これからどうするの?何か目標はあるのかな?」
「そうね先ずは恋人ね、次に結婚よ」
言いながら自分の言葉に照れてしまう
チラリと彼を見ると真面目にノートを書いていた、真剣な横顔も素敵だけどこちらを見て欲しいと授業中にも関わらずそう思って居ると彼がこちらに振り向いた。
「…あ」
彼は少し驚いた後、先生に見えない様に小さく手を振ってくれた
急いで手を振り返すと彼はクスリと笑って又ノートを書き始めた。
その反応は格好良すぎないかな?少し鼻血が出そうだよ
午前中とは違う反応、私に笑顔を向けて手を振ってくれる。
親しみの感じられる対応に、彼との関係が良い方向に進んだ事を実感する。
勇気を出して良かった
いきなり話し掛けて嫌がられないか、何て話し掛けようか、そもそも私の事が嫌いなんじゃないか、そんな事ばかりを悶々と考える日々はもうおしまいだ。
今日からは毎日話せる、彼も私に好意的に話してくれたこれは恋人になる日も近いかも?
「ふふふふふ…」
「木乃幸せそうだね」
「幸せだもん」
取り敢えず放課後までは日課の彼を見つめる事にしよう
幸せな時間は過ぎるのが早いと言うが、本当にあっという間に放課後になってしまった。
授業中もどんな時も主人公を凝視する木乃
気付かない主人公
切欠作り
木乃は主人公とすれ違い様にお箸をスッたとか、スッてないとか
プロポーズ?
毎日卵焼きを作って下さい
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