師匠とのタイムスリップ中の旅も、今度書きます
題名は無貌であってます
意味は後程
彼の寝顔を(勝手に)見るのが最早日課になっている
今日もまた彼の寝室に忍び込む
ベッドには彼がすやすやと気持ち良さそうに眠っていた
しかしよく見ると彼の影が動いている
一瞬の出来事だった、彼は黒い靄の様で不定形の触手に掴まれると、黒い渦の中に引き摺り込まれあっという間に見えなくなった。
まるで最初から誰も居なかった様に、影も形も存在の一欠片さえ残ってはいなかった。
気が狂いそうで、吐き気がする
「彼を上手く、元の時代に帰せた様ですね」
後ろの影からいきなり現れた気配に振り向く
影の中に何か蠢いて見えた気がした
「おや、何故貴女は悲しんでいらっしゃるのでしょうか?楽しめたでしょう?」
浅黒い肌の男は、心底不思議そうにしている
この男は一体何を知っていると言うのだろうか。
私と彼の事を何も知らない筈の、赤の他人に、正直に理由を話すとでも?
「愛する者と離れて、平気な人はいません」
心では話さないと思っていても、まるで操られた様に口が勝手に喋り出す
話を聞いた男はにこにこと、愉しそうな悪巧みをする様な顔をしている
「それは困りましたね…彼は私の子と繋がる者、その婚約者を悲しませたとなると大変です」
少しも困っていない、愉快そうに笑いながら話を続けている
この男は奇妙すぎる、出来れば関わり合いになりたくないが…
「貴女は、彼を諦めるつもりは無いんですよね?」
「あたりまえです」
答えは決まっている、例え世界の何処に居ようと、必ず探し出して見せる
「時代が違っても?」
「何をおかしな事を」
「彼が消えた瞬間を見たでしょう?あれが人間に出来るとでも?」
「あれ…」
黒く蠢く触手を思い出して、嘔吐する
目の前が歪み座り込む
「ああ、人間には刺激が強すぎましたか。
先に答えを教えると、彼は未来に産まれます、今はまだ存在していませんから探しても無駄です。
私が少々手を加えて貴女と彼が出会った、出会う筈の無い二人だったんです。
彼との再会を望むのなら、長き時を待たなければいけません、その覚悟はありますか?」
「あるに決まってます、どれだけ長くても待てます」
例え理解が出来なくても、レオンの手掛かりはこの男だけだ、それなら…
男が色々と話していたが、最後の問いには即答できる
私の答えに男は満足そうに笑う
「気持ちは受け取りました、しかし気持ちだけではどうにもならない。
彼を待つ体は衰え朽ちていく、例え再会しても直ぐに別れが訪れます」
「それは…」
男の言う事が本当ならレオンは未来に産まれる。
探し当てて再会した所で、どれ位彼と共に生きられるだろう。
私が死んだ後で他の女と結婚するのか?
私を忘れて他の女と幸せに生きるのかそれは悲しく、とても耐えられない一体どうすれば…
「そんな貴方に、取引を提案します」
「取引?」
真っ暗な思考に、一筋の光が差す
「貴方に若さと少しの寿命を、彼と共に生きられる程度の命を与えます」
この男が人間で無い事は、レオンを消した事で分かっている、しかし人間の寿命を伸ばすなんて出来るのか?
「そんな都合の良い事が可能なのですか?」
「ええ勿論」
本当に与えられるのなら願ってもない事だ、しかし何事も対価は必要だ
「若さと寿命を望みますが、対価は何ですか私に払える物でしょうか?」
「人間は望むばかりかと思っていましたが、対価とは話が早い、利口な人間は長生きしますよ。
そして貴女に望む対価は、欲望です」
「欲望とは…具体的に」
「お金宝石財宝、人の欲望が詰まっていそうな物なら何でも良いのです。
貴女にデメリットが無いなんて、これは破格の条件ですよ。」
それはそうだろう探せば手に入る物と、探しても、お金をいくら積んでも手に入らない物を交換なんて、自分に何か利益がなければ取引しない筈。
その何かを教えてはくれないだろうが、私にデメリットが無ければ良い事にする。
「価値の有る物では無く、人々の欲する物という事ですね」
「ええ、支払いは私が望んだ時に少しずつ、彼らには長く楽しませてもらうつもりですから」
彼らとは一体?疑問に思うもこの男の機嫌を損ねて取引を無くされて困るのはこちらだ、何も聞くまい。
「彼は、今から数十年後にこの世界に産まれ落ちます」
「それは、その時は教えて頂けますか?」
「彼を探しに行ける様になれば教えます、貴女とはこれから数十年の付き合いになりますから」
「ありがとうございます」
男にお礼を言って頭を上げると、部屋には私1人だった。
ふぅっと息を吐く、これからはよりいっそうお宝を集めなくては
あの浅黒い肌の男が次に何時来るかは分からない、満足して貰える様に欲望をなるべく多く集めよう
数十年待てば彼に会える、そう思うと頑張れる
「待っていなさい」
ペンダントを握りしめ呟いた
ベッドには彼の温もりはもう残っていなかった
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「師匠~レオンさんに逃げられてから働きっぱなしですよ~、少しはゆっくり休みましょうよ」
軽い男は運転中にも関わらず、助手席の女性に殴りつけられている
「逃げられていません」
「でも夜の間に消えるなんて、まさに夜逃げ…」
男の頭にカチャリとパースエイダーが当てられる
「その話題は出すなと、言いましたよね?」
「ごめんなさい!もう二度と言いません!」
腰にパースエイダーを戻したのを見て息を吐く
本当にレオンさんが居なくなってからの師匠は、少し可笑しい。
先ずは、集めるお宝の種類が増えた。
今まで通り価値のあるお宝や儲かる宝石に加えて価値の無い人気のあるだけの物も集めている。
次に、何やら怪しい男と取引をしている様だった。
お宝を渡しているのを見かけた事がある、変なのは男が何処の街でも関係なく現れる事だ。
こちらは車で移動しているが男はふらっと現れて消える様に居なくなる、不思議な男だった。
最後に、師匠が老けない、いやおよそ二十代頃まで若返り老化が止まったのである。
俺が歳を取っても師匠は若く美しいままだった、それとなく尋ねても答えてくれない、旅をしているので俺以外に気にする者はいなかった。
師匠はレオンさんが居なくなってもペンダントを大切に、肌身離さずに首にかけている、他人にも俺にも決して触れさせる事は無い。
その宝物を、1人になると寂しそうにペンダントを眺めているのも知っていた。
レオンさんも師匠を嫌ってはいなかった様だし、二人だけの事情があるのかも知れない。
大人の男女の事を口を出すのは野暮だろうが、師匠が可哀想で見てられない、レオンさん早く帰って来てくれないだろうか。
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目が覚めると、見覚えのある昔野宿をした場所だった
私の体の左右にはキノとティーが居た、戻って来たのか?
それともあれは長い夢だったのだろうか?
その時首にあるネックレスに気がついた
指で持ち上げる、これは師匠から貰った婚約ネックレスだ、やっぱり夢では無かったのか。
「それ、何処かで見た様な?」
キノが起きていたのか話かけて来た、久しぶりに感じるがキノには昨日の夜からすぐだ
「おはようございます、キノ」
「おはようございます、レオンさん」
このやり取りも久しぶりだ
それよりもこのネックレスを見た事がある?
「何処で見たか思い出せるかい?」
「うーん、昔何処で…少し貸して貰えますか?」
ネックレスを渡そうとして、手が止まる
キノでさえも触れて欲しくない、師匠の知らない所で知らない人に触らせるのは悪い気がする。
「ごめんねキノ、これは大事な物で私以外に触れて欲しくないんだ」
師匠に許可を貰ってからでないと、怒られそうだ
キノの目が細くなる
「ふーん、そんなに大切なんですね
…あっ思い出しましたよ!師匠です!」
ドキッとする、師匠とは私の師匠と同一人物では無いだろうが…
「師匠も、ネックレスを誰にも触れさせませんでした。
それと全く同じ物で、世界に2つしか無いって言ってました」
…まさか本当に同じ師匠なのだろうか?
「それでですね…なんで師匠と同じ物を、世界に2つしか無い物をレオンさんが持っているんですか?」
キノの目がとても怖い、腕枕から目をじっと見てくる
本当の事を言う訳にもいかない
「これは私も、自分の師匠から貰ったんだよ」
私は嘘は言っていない
それで納得してくれたのか
「えっそうだったんですか、なら似たようなデザインだったんですね、疑ってすみません」
キノを騙して申し訳ない、心が痛む
話を逸らそう
「そろそろ起きて、ご飯の準備にしようか」
途端にキノの目がキラキラしだす、可愛いい
「今日は僕が朝ごはんを作りましょうか!」
それは不味い、いや味も不味いがそうでは無く、キノには作らせられない
「私が作りたいから、キノはティーを起こしてくれるかな?」
「そうですか?ならそうしますが…」
納得いかなそうな顔をしながらキノはティーを起こしている
私は難を逃れたが、キノを納得させる料理を作らなければいけない、朝から難題だな。
師匠の寿命は主人公が死ぬまで
主人公と共に老けて行く
同年代に見える
取引用の宝を集めている
以下ネタばれ
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ティーは、オールド・ワンの養い子
無貌な神、ニャルラトホテプと人間の子供
人間の女性に生ませたが、母親は子供を船に捨てて逃げた、その時の子がティー
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