真面目に心の内を考える回
告白と気持ちの爆発回
早く師匠を出したい
シズさんは私の頬にキスをして、寂しそうに笑うと振り返らずに去っていった。
寂しそうに笑う顔が頭から離れない、あんなにも凛としていた女性にそんな表情をさせているのかと思うと…私はなんて情けない。
渡された地図を見てみるとシズさんの国はここから少し距離があった、しかし私を追い掛けてかなりの距離を移動したのだろう、私の足取りを追う様にあちこちに印が付いていた。
こんなに私の事を求めてあんなにも真剣に愛してくれているのか、実を言うとシズさんには一目見た時からどこか惹かれていた、それは前世を思い出させる見た目と雰囲気、そして人に対して真摯であろうとする姿勢にも惹かれた。
つまるところ私もシズさんに惚れているのだ、しかしすぐには返事が出来ない理由が有った。
私には既にキノとティーが居る、二人に話してからじゃないと、何だか不誠実な気がするのだ。
私もカフェを後にするとホテルに向かい歩き出す、シズさんとの関係を説明する為に、これからの私達の関係を前に進める為に、シズさんの想いに流されたからじゃ無く、これは私が自分で決めた事だった。
シズさんの真剣な思いには、私も真剣な思いで答えたい、それが相手に対する礼儀だと思うから。
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「これを見て欲しい」
二人の前に腕輪の箱を出す、目の前のソファーにはキノとティーの二人が座っている、真面目な話があると二人に聞いてもらっていた。
「これは、宝箱…ですか?」
「たかそう」
「箱もそうだけど、中身が問題なんだ」
箱の蓋を開いてブレスレットを見せる、男女ペアになった特別なアクセサリーだ
「これは私が、シズさんから私への婚約の品として、贈られた物です」
キノとティーは黙っていて話を聞いている、怒っているのか、ただ黙っているだけなのかは、二人の真剣な表情からは読み取れない。
「私が悩んでいる事に、気が付いたシズさんに託され、返事と共に返す事になっている。今度は私がシズさんの国を訪れて、返事をしようと思う」
「それで、返事は何と返すつもりですか?」
「それは、二人が良ければ…」
「いえ僕達は関係無く、レオンさんの正直な気持ちを聞かせて下さい」
嘘や誤魔化しは許さないと、いつになく真剣な眼差しで見つめられている、ティーにいたっては怒りからか拳を握りしめ、俯き黙り込んでいた。
「私のシズさんへの気持ちは、正直に言うと好ましい、好きだ、と言うのが正直な所だ」
シズさんに対しては、一目で惹き付けられたのは確かだ、しかしそれは前世に対する懐かしさが感情の半分以上を占めていた、婚約を受けるに至り、確かに好きとは感じた。
少しの間のやり取りでも相手に対する真剣さや、思いやり国に対する責任感、そして私に対する好きと言う感情の強さを感じた。
シズさんの内面を感じて、私はより惹かれてそれは以前とは違い懐かしさでは無く、異性の一人の女性に感じる好意だった。
シズさんに対する私の気持ちは、好きなのは確かだ…たが愛してはいない。これは私がシズさんの事をまだ良く知らないせいだ、愛とは相手と互いに理解し合って産まれる物だと私は思う。
だから、シズさんに会いに行って、気持ちを…好きから愛に変わるかを確かめたいのだ。
「それは僕に対する気持ちよりも…ですか?」
「キノに対する気持ち…」
キノに対する私の気持ち?どうだろう、好きなのは間違いない、愛していると言う気持ちに近いが、まだ違和感がある、好きよりも強く愛よりは弱いそんな所だ。
「私はキノが好きです、愛していると言う感情に近い程の好意を、抱いています」
私の心の内を、感情をさらけ出す様に伝えるのは初めての事だった、でも今正直に話さないと正しく伝わらないと思ったのだ、照れて誤魔化している場合では無い。
「レオンさんが、そこまで僕の事を…?」
キノは唖然としている、私は指輪を渡したり、少ないかも知れないが好意を伝えて来たつもりだった、まさか伝わっていなかったのか?
「キノは私に、どう思われていると思っていたんだ?」
「僕はレオンさんが優しいから、仕方なく受け入れてくれているのかと。僕から押し掛けて、半ば無理やり旅に加わりました、だから正直迷惑だと思われていても仕方ないかと…思っていました。」
「そんな事思って無いよ」
「はい今分かりました、僕ばかりが好きで、愛しているんだと思い込んでいましたが、ちゃんと気持ちは届いていたんですね」
「私もキノが好きだよ、まだ愛しているとは言えないのが、情けなく申し訳ない」
「いえ、十分ですよ…僕の気持ちは無駄じゃ無かった、レオンさんに好かれていると分ければ十分です」
キノは幸せそうに笑いながら…泣いていた、これは悲しい訳では無いのだろう、嬉し泣きをしていた。
嗚咽が止まらずぐしゃぐしゃに泣きじゃくる、こんなキノは初めて見た、もしやずっと不安だったのだろうか?
「キノごめんね今迄はっきりしない、情けない男で本当にごめんね」
「いいえ、今が幸せだから良いんです。でもこれ以上泣き顔を晒すのは、流石に恥ずかしいので少し失礼しますね」
キノはそう言うとベッドルームに駆け込んで行った、本当は抱き締めて慰めたいが、一人になりたいのだろう、そっとしておく。
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ティーは俯いたままピクリとも動かない、これは怒っているのかも…取り敢えず話し合いからだ。
「ティーごめんね、怒っているよね」
「…」
ティーは視線も合わせず、無言のままだ。部屋に重い空気が漂っている、言葉を発してくれるのをじっと待つ。
ティーが顔を上げて立ち上がった、どうしたのだろうと思っていると、こちらにゆっくりと歩いてきた。
「あの、ティーどうし!」
いきなり腹を殴られた。
ティーは腹を狙ったのでは無く、そのまま腕を前に出し感情のままに殴ったのだろう、たまたま綺麗に鳩尾に入り大変苦しい。
「うえっ、ゲホッゲホッ」
苦しくて咳込む、とんでもなく痛い物凄い力だ。
咳が止まらず、えずいていると流石に心配したのか背中を撫でてくれる、優しい。
「だいじょうぶか?」
「ううぇっ、おえ」
返事をしたいが言葉が出ない、ティーは慌てて水を持って来てくれた、一口で飲みほす。
「ありがとう、助かったよ」
ふるふると頭を振って否定している
「わたしが、なぐったから」
「私が悪い事をしたからだよ、今回はティーは何も悪くない」
「でも…」
「ティーはキノみたいに、私に聞きたい事は無いのか?」
無理やり話を切り替える、今回の出来事の原因は全て私にある。
「わたしは…わたしもきもちを」
黙って続きを待つ
「レオンのきもちがしりたい、わたしのことはすき…?」
ティーに対する私の気持ちは、先ず最初は一人ぼっちの子供に対する保護者としての、守らなければいけないと言う気持ちだった。
それからティーの告白でやっと、好意に気が付いた。
真剣に言われ無いと気が付か無いとは鈍すぎる、この時からやっと、ティーを一人の女性として意識する様になった。
今の私の気持ちは、好きとは言い切れるだが、愛しているとは言えない、好き以上愛未満だ。
「勿論好きだ、最低な答えだが、キノと同じ位好きで、愛に近い程の好意を抱いているよ」
「キノとおなじくらい…」
「ごめんね最低な男で、はっきりと一人を選べなくて」
ティーは私の手を握り、目を見つめる
「ちがう、えらんでほしいんじゃない」
「違うのかい?一人を選ばなくて良いの?」
「そう、ただすきでいてほしい、あいしてほしいだけ」
「好きだけど、まだ愛していると言い切れなくて…」
またふるふると頭を振って否定する、今日のティーは何かを決意したようで、強い意思を感じる。
「まだ…でしょ?これからがある」
「これから?」
「そうこれから、あいにかえてみせる」
力強い言葉に驚く、そうだ気持ちは変わるのだった。
ただの守りたいと言う気持ちから、好意に変わった、それなら愛に変わる可能性も十分にある、今の時点で愛に気持ちが傾いている、それが証拠だろう。
「私も愛になると思うよ、でも、もう少しだけ時間が掛かるかも知れない」
「じかんならいくらでもある、ずっとまてる…それに」
ティーが私の膝に乗り、キスをして来た
「そんなに、じかんはかからせない」
「ティー…」
私がティーに惹かれるのは、この強い意思を感じる所なのだろう、決めたら最後まで押し通す、とても真っ直ぐな強い心を持っている。
「私はティーの、強い心が好きだよ」
「わたしは、あなたのすべてがすき」
二人で抱き締め合い、笑い合う。この幸せを感じる時が大好きだった、この時間は今はキノとティーにしか作れない、シズさんともこういう関係になれるのだろうか?
実は、最初からシズさんが気になっていた主人公
日本人風の見た目に惹かれた
誰に対しても、丁寧で真摯に対応する所に惚れた
のろけ回
シズさんへのキノとティーの回答は、長いので次回になりました
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