人の記憶は案外信用ならない
実は皆大切な事を忘れているのかも…
「見つけましたよ」
懐かしい声が聞こえた気がした
・・・・・・・・・・・・・・・・・
顔を撫でられる感触がくすぐったい、もう朝なのかな?目を開くと辺りは薄暗く、部屋の隅の照明が僅かに灯っているだけだった。
頭がぼんやりとする…自分が何時眠ったのか、ここは何処なのかも思い出せない。
最後に記憶にあるのは確か…一人で買い物に出掛けた?
そうだ確か夜に買い物に出掛けたんだ。
昼に買い出しに行ったが、宿に帰って荷物を確認していた時、買い忘れに気が付いた。
一人で宿を出た後で近道をしようと路地を歩いていて…
路地の闇がとても深くて、誰も居ない事を不気味に感じたから、急いで抜けようと思って…?
そこからの記憶が無い、電源を落とした様にぷっつりと途切れている。
思い出そうと必死になっていると、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
「目が覚めましたか?」
ぼんやりとして良く見えないが、この声には聞き覚えがある気がする、昔何処かで?
私の様子に気が付いたのか、心配そうに近づいて来た。
「大丈夫ですか?意識は、はっきりとしていますか?」
「頭が…ぼんやりします…」
「他には目眩や吐き気、その他症状は?」
「大丈夫…です」
ほっと息を吐いたその人は、私のおでこに手を置いて撫で始めた。
この距離なら顔が良く見える、彼女は…
「レジー…?」
驚きの表情で手の止まった彼女は、やっぱりレジーだ。
「レジーでしょ?」
「覚えていましたか」
「久しぶりだね」
「本当に、何十年待った事か。この再会をどれ程夢見たと思いますか?」
ぐっと顔を近付けて話すレジーの瞳には涙が浮かんでいる。
長い間私の事を想い続けて、ずっと待っていてくれた。
レジーの首には婚約のネックレスが見える、勿論私の物と同じ世界にたった2つの宝物。
「レジーは昔と、全然変わって無いね」
「貴方を待っている間にお婆さんになるのは、ごめんでしたから。それに貴方も、妻は若い方が良いでしょう?」
「レジーは綺麗だから、お婆さんでもきっと綺麗なままだよ」
「…貴方、口が上手くなりましたか?」
頬をぎゅっとつねられる、レジーの耳が赤いのをみるに、怒っているのではなく照れているだけみたいだ。
私とレジーの間には長い年月のずれがある。
私が一年も経っていなくても、レジーは何十年も待っていたみたいだ。
一体どうして年を取っていないのかは疑問だが、レジーはレジーで変わっていない、それならば問題は無い。
「私は見つけましたよ。
貴方を、どれだけ昔の記憶が薄れようと、貴方だけは忘れません。
例え自分の記憶を無くしても、他の全てを失っても貴方だけを、レオンだけを求め続けて見つけ出すと、自分に誓いましたから」
私を探し続けるのは大変だったみたいだ、人の記憶は薄れて消えてしまう物。
どれだけ忘れたく無いと思っていても、脳が勝手に消して行く、そんな中で私を見つけ出したレジーは、どれ程の苦労をしたのだろう。
「私は一人でずっとずっと…貴方だけを」
「ごめんね、お待たせレジー」
「本当に遅いです…」
胸にしがみついて泣くレジーは昔よりも小さく見える、私からも抱き締め返し満足するまで待つ。
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「泣いてスッキリしました」
「相変わらず、切り替えの早い」
泣き止むとけろっとして、何時ものレジーに戻った。
変わっていないのはこんな所もか、今も私の前以外では泣けないのだろうか?
スッと離れたレジーは、鞄の中から何かを取り出しすと私に見える様に近付ける。
「私の勝ちです、素晴らしい品を手に入れました」
それは綺麗な指輪だった、一粒のダイヤモンドが埋め込まれた、見事な細工の結婚指輪。
勝負は結局レジーが勝った、私が居ない間にも時間は進むのだから。
「気に入る物が無かったので、職人に作らせました。
ほら、この宝石はネックレスの物となるべく似た物を、世界中探したんですよ?」
「素敵な指輪だね」
「私が何年もかけて、デザインを考えました。
…時間は沢山ありましたから」
指輪を見つめる瞳には、濃い悲しみが滲んでいる。
「レオンには私と結婚して貰いますが、ひとまずは指輪をどうぞ」
「今で良いの?」
「今すぐが良いです、もう充分以上に待ちました。
これからの貴方との時間を、1秒も無駄にしたくありません。」
「そうだね、待たせ過ぎたからね」
「特別に私が指輪を着けてあげます、貴方の妻ですからね」
左手を差し出し、薬指に嵌めて貰う。
まるで初めから指輪を着けていた様に、しっくりと馴染む。
どうしてか、前にも他の指輪を着けていた気がするがあまり良く分からない、深く思い出せない。
思い出せないと言う事は違うのだろう、今度は私がレジーに指輪を着ける番だ。
「ありがとう、私の愛しい人
今度は私の番ですね、お手をどうぞレジー」
レジーの細い薬指に嵌める。
「とっても似合ってる、綺麗だよ」
「ありがとうごさいます。
これで貴方は私の夫です、もう逃がしませんから」
「愛するレジーから、逃げるつもりなんて無いよ」
何を心配しているのかな?たった一人の最愛の人から逃げるだなんて、頼まれたってしないのに。
「…そうだと良いのですか」
レジーが何かを呟くが小さくて良く聞こえない。
聞こうかと思ったが、レジーから話始めた。
「これからは私と旅をして貰います、二人だけで」
「何を言っているの?」
「二人だけの生活を始めます、他の人はいりません良いですね?」
「レジーは可笑しな事を言いますね。
私はレジー以外と旅や、生活なんてした事は無いんですよ?
…ああっ!もしかして、お弟子さんの事ですか?」
「貴方記憶が…いえ、分からないなら良いんです」
「本当に可笑しなレジーですね」
私が笑うとレジーも一緒に笑う、これから二人の幸せな生活が始まるんだ楽しみだ。
「貴方は、まだ少しぼんやりしている様ですね。
明日に備えて今日は早く寝なさい、分かりましたね」
「レジーは、一緒に寝ないの?」
「私は少し、用事を済ませてから寝ます
おやすみなさいレオン、良い夢を。」
「おやすみレジー」
おでこにキスをして、レジーは扉から出て行く。
早く用事を終わらせて戻って来ると良いな…私はもう寝よう。
その時ふと隣のスペースが気になった、なんだか物足りなくて寂しい気がする。
何時も一人で寝ていた筈だけど…?胸の中に違和感の様な気持ちの悪いもやが広がる、思い出そうとするともやが邪魔して分からなくなる。
一体何が?
しばらく悩んでいると、何を悩んでいたのか忘れてしまった、忘れる位だから大した事では無い筈。
隣が寂しいから早くレジーが来てくれないかな、そのまま私は睡魔に負けて眠りについた。
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「久しぶりの彼はどうでしたか?」
「…再会は嬉しいです」
「おや?何か言いたそうですね」
「彼に何をしたんですか、明らかに様子がおかしいです」
「ちょっとしたサービスですよ。少し記憶をいじって、一時的に二人の事を忘れて貰いました」
「記憶は戻るのですか」
「そうですね…貴方が彼から盗んだ指輪を返したら、戻る様にしておきます」
「これですか?」
ポケットから、水色の宝石のついた指輪を取り出した。
彼が私以外の誰かとの指輪をつけるなんて、我慢が出来なくて眠っている彼から抜き取り、私が預かっている。
「それです、貴方の良いタイミングで返して下さい。
ですが、一生返さないと言う手もありますね。」
「…」
「存分に悩んで下さい、それが私達を楽しませてくれるのですから」
そう言った男は、闇に紛れて消えた。
彼の記憶が私の手の中にある。
記憶の無い彼は、私だけを愛して求めてくれる
記憶の戻った彼はきっと、私だけの彼では無くなってしまう。
…それならば、一生記憶を返さない方が…。でもそれは本当の彼と言えるのだろうか?
記憶の無い彼を騙す様に独占した所で、本当の意味で彼を手に入れたと言えるのか?
私は…どうしたいのだろう?
答えが出ないまま夜は更けて行く
師匠の名前はレジーで行きます
原作でそれっぽい描写があったので
指輪にはダイヤモンド
主人公の様子が?
キノとティーの記憶を消される
物事を深く考えられない
思考がながされる
レジーだけを愛する
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