三人乗りまでは行けるかな?バイク部分に一人、サイドカー部分に二人で行けるかな?
気になる
「私のトライクに、レジーが乗るの?」
「ええサイドカー部分に、運転は任せます」
「レジーの車は?どうしたの大切にしてたでしょ?」
「暫く前に廃車になりました、あれも長く走ってくれたものです」
「そう…残念だね」
「まったくです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある空き家の一室
部屋にはチリッとした殺気が充満している、こちらから奇襲した筈が相手が思いの外強い、ティーの援護が有っても辛い。
正確なパースエイダーの攻撃に加えて、気配を読み素早い動きで先回りされる、手を出せない。
悔しい事に相手の姿をまだ一度も捉える事が出来ていない、敵は一人でこちらは二人なのに押されている
このままではジリジリと消耗して負けてしまう、思いきってこちらから仕掛けるしかない、ティーに合図をして手榴弾を投げて貰う。
その隙に相手の背後に移動して仕留める。
今だっ!と飛び出した所で相手も此方に銃口を向けていた、完全に読まれていたのか…
手榴弾の煙が薄れて相手の顔が見えた。
「え?」
「は?」
目の前に立っていたのは、何年も前に別れた時と全く変わらない師匠だった。
「師匠ですよね?」
「キノ…ですか?」
二人は互いに武器を下ろし唖然としている
「しりあいか?」
壁の裏から顔を覗かせたティーに説明をする
「こちらは僕の師匠です」
「は?」
全員反応が同じだった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「師匠の婚約者が、レオンさんだって言うんですね」
「ええそうです」
皆武器をしまい話し合いを始めた
師匠を信用していないからと、ティーは扉の外に居る
「今は何処に居ますか?」
「隣の部屋に居ますよ」
立ち上がってドアに近づくと、後ろからカチャリと音がしてパースエイダーを頭に突き付けられている。
「何の真似ですか?」
「まだ話し合いは終わっていませんよ、席に戻りなさい」
「…分かりました」
渋々従い、椅子に座り直す
「彼は私と結婚しました」
師匠が左手を机の上に乗せる
薬指には指輪を着けているが、それがどうした
「レオンさんが、自分で渡した証拠でもあるんですか?」
「いいえ有りません」
「…なら、そんなの信じません」
「貴女が信じなくても事実は変わりません、私はレオンと結婚しました」
ふっと笑う師匠に殺意が沸く、レオンさんをいきなり拐っておいて結婚なんて。
「レオンはこれからは私と、二人で旅をするそうです」
「…レオンさんが、そう言ったんですか?」
「私が提案して、レオンが快諾してくれましたよ」
「そんな筈ありません!僕達とずっと一緒だって約束してくれました!」
レオンさんが僕達を捨てるなんてあり得ない、約束はちゃんと守る人だ、僕ともティーとも約束したのに
「僕を捨てる筈ありません!」
「キノ現実を認めなさい、レオンが選んだんです」
「そこまで自信があるのなら、レオンさんに確認しても構いませんね」
「…良いでしょう、付いてきなさい」
「ティー!レオンさんに会いに行きますよ!」
扉の向こうに居るティーに呼び掛ける、レオンさんの名前が聞こえた途端こちらに走ってきた。
「ん」
「行きましょう」
やっとレオンさんに会える、数日の事なのにとても寂しく感じる早く会いたい。
・・・・・・・・・・・・・・
「レオン…さん?」
「レオン」
部屋に入って目に入ったのは、レオンさんと師匠が、愛し合う恋人の様に抱き締めあっている光景だった。
「おや私の愛しいレジーのお客様かい?初めまして私はレオンと言います。本名は長いので、是非レオンと読んでくださいね。」
「な…何をいってるんです」
「何か可笑しな事を言いましたか?」
「師匠!これはどういう事ですか!」
そんな、まさかレオンさんが僕とティーの事を知らないなんて忘れるなんてあり得ない、どういう事だ師匠が何かしたに違いない。
「見ているそのままですよ、レオンは貴女の事を知らなくて、私だけを愛している。それが現実ですよ」
「いいえ、僕達とレオンさんの間には強い絆があります。
レオンさんは、すぐに誰かを愛するのは難しいと言っていました、そんなレオンさんが急に師匠を愛してるなんて可笑しいです。一体何をしたんですか!」
「貴女達は愛せなくても、私はすぐに愛せたそれだけの違いですよ。」
「そんな筈…」
「無いと言い切れますか?」
「それは…」
嘘であって欲しいでも…もしも本当だったら?僕達は選ばれなくて師匠だけが選ばれて愛された。
レオンさんと話したい、確認しなければ
「レオンさんと話します」
「好きにしなさい、私はここに座って居ます」
師匠は椅子に座ると腕を組んで目を閉じた、話を聞くつもりだろう。
ティーはさっきからレオンさんの周りを、訝しげに睨んでいる何だろう?
レオンさんに近づき、椅子に座る
「レオンさん、お話をしても良いですか?」
「話は良いですが、君は?」
名前を訪ねられた事に心が深く傷付いた、あんなに親しかったのに、好きだと言ってくれたのに…?
可笑しい、初め部屋に入った時にレオンさんはレジー、師匠のお客様ですかと言った。
今も僕に名前を訪ねた、これはあまりにも可笑しい。
愛してる、いない以前に覚えていない?たった数日で忘れてしまうなんてあり得るのだろうか?
「僕はキノと言います、覚えていませんか?」
「前に会った事ありましたか?すみません」
「いえ」
ここまで忘れているのは不自然だ、レオンさんに何か変わった所は…
体を隅々まで見る、変わった所は…?指輪が違う!
僕達が渡した物じゃなく、師匠とお揃いの指輪だ。
違う所はここだけ、師匠はレオンさんに危害は加えない筈、頭の病気や怪我じゃなければ、これが原因か?
「レオンさん、前の指輪はどうしましたか?」
「前の指輪?何の事ですか?」
「今着けている指輪の前に、他の指輪を着けていましたよね?」
「そんな訳ありませんよ、レジーとの結婚が初めての結婚ですから」
「…そうですか」
いけない…怒りが爆発しそうだ、レオンさんの大切な指輪を奪ったのは…師匠だ。レオンさんが知らないのなら師匠しかいない。
「…師匠、向こうの部屋で話しましょう」
「いいでしょう」
隣の部屋に二人で移動した、師匠が椅子に座る
「指輪を返して」
「…これの事ですか?」
師匠がヒラヒラと片手で何かを振っている、それはレオンさんに送った大切な指輪。
「それを…そんな風に扱うな!」
ああもうだめだ、怒りが抑えられない
パースエイダーを取り出して師匠に向け、安全装置を外す
「…返せ」
「怒りで会話も出来ませんか」
やれやれと、あくまで冷静に話す師匠にぶちギレた。
「返せ!」
引き金を引く直前に師匠はしゃがみ、弾は避けられた
師匠はそのままバックステップで距離を取る
「本気の様ですね…」
「かえせ!」
ダッシュで距離を詰め蹴りを叩き込む、師匠は腕でガードする。硬い!何か服の下に仕込んでいる
それならばと師匠の頭にハイキックを狙うも、足を受け止められ両手で投げ飛ばされた
起き上がろうとするも背中に乗られ、両腕を掴まれている
やはり強い
「ぐっ!指輪を返せ!」
「分かりましたよ、はいどうぞ」
師匠は僕の手に指輪を乗せ、背中から退いた
「どういう事ですか」
「私は返さないとは言っていません。これですかと聞いたら、貴方が突然襲いかかってきたんですよ」
「ぐっ」
それはそうだが大切な指輪を雑に扱われたんだ、師匠も悪い
「そうですね、私も少しやり過ぎました。大人気なかったですね。」
…先に謝られては責められない、ずるい
「彼の記憶を戻しに行きますよ」
「僕…謝りませんよ」
「今回は私が悪いですから、良いですよ」
師匠の大人な対応に負けた気がする、やっぱりずるい
前を進む師匠に続いてレオンさんの居る部屋に戻る。
部屋に戻るとティーは椅子に座り、変わらずにレオンさん周りを、いや影を睨み付けている、僕が見ても何も無いけど…何だろう?
そして師匠はどうやって、レオンさんの記憶を戻すのだろう?
師匠は初めから記憶を戻そうと決めていた、訳の分からない力に頼らず、自力で惚れた相手を惚れさせる
それが師匠
だが、自分を溺愛して普段よりも甘やかしてくれるレオンを少し楽しみたかった、悪ふざけが過ぎた師匠。
次の投稿
-
番外編
-
女主人公
-
パラレル
-
本編