男のシズさんと、女の主人公が出会った話
若干壊れているシズさん
女性を主人公にするとなんだか気恥ずかしい
主人公の名前はユキちゃんです
森の奥で シズ
「大丈夫ですか?寒くは無いですか?」
「ありがとう、大丈夫寒くない」
「そうですか?何だか震えている様に見えますよ?
ほら私が暖めてあげますから、こちらに来て下さい」
「気のせいだから、近付かないで」
「近くに行かないと、暖められませんよ?はい捕まえました、暖かいでしょう?」
「ひっ」
男の腕に抱き締められ、頭に頬擦りされた。
私は自然と喉から悲鳴が出た、この男には話が通じない、何時もの事だが恐怖すら覚える。
初めは普通の好青年の様に見えた、一体何時からこんな風になったんだっけ?
ちらりとシズさんの顔を見ると、幸せそうに笑っているどうして私にこんなに好意を寄せてくれるのか、不思議でならない。
****************
目が覚めたら森のど真ん中に居た、理由は分かっている、転生をしたんだ。
説明通りちゃんと異世界?に来たのかは分からないが、事故で死んだ筈の体にはどこも怪我が無い。
「ここは何処かな?」
辺りを見ても何も分からない、進むべき方向すらも分からない、途方に暮れるが何時までも此処に居ても仕方ない、取り敢えず歩き出そう。
鞄を拾い上げ、背負って歩きだす。
そうして私は遭難し、森の中を延々とさ迷い続けた。
私が森を歩いて一週間は経ったかな、他の人には出会わないし、木や植物以外は何も無い。
ピカピカだった新しい体は怪我をして、足も捻って多分捻挫をしている。
鞄に入っていた食料はとっくに底を尽き、たまに森の果実を見つけては必死に食べて生きてきた。
でもそれももう終わる、体力の限界を感じる。
体が動かない諦めたくは無いが、どうする事も出来ない意識も朦朧としてきた死にたく無いな…
「君!生きているのか!」
誰かの声と、体を抱え上げられた浮遊感に意識が戻る。
必死に呼び掛ける声に、目を開ける。
「助けて…」
なんとか最後の体力を振り絞り、それだけを話す。
ちゃんと聞こえただろうか?助けて貰えるのかな。
「俺が助ける!だから頑張って!」
「…ありがとう」
それだけを伝えると、助かる安心感に涙が出てくる、再び意識が闇に沈む。
*****************
「シズさま!あそこに誰かが倒れています!」
リクの声にバギーのスピードを緩める
「何処に居る?」
「右側の木の根元です」
リクの言う方向を見ると確かに誰かが倒れている、だが旅人を狙った賊の囮かもしれない、慎重に確認しないと。
「リク辺りには、他の人間の臭いはするか?」
クンクンと鼻を鳴らしたリクは、居ないと首を振った。
私も気配を伺うが本当に一人の様だ、それならば助けなければ。
「リク行ってくるよ」
「私は荷物の番をしています」
「頼んだよ」
リクにバギーを任せて急いで駆け付ける、様子を見るとあちこちに怪我をしている様だった。
抱え上げて声をかける。
「君!生きているのか!」
その声に反応して、彼女はゆっくりと瞼を開いた。
「助けて…」
掠れた声でそれだけ言うと、体から力が抜けていく、これは本当に不味いかもしれない。
「俺が助ける!だから頑張って!」
少しでも意識をもたせ様と必死に声をかける、その声に反応して彼女の口が開いた。
「…ありがとう」
そう言って完全に意識を失ったのか、何の反応もしなくなる。
閉じられた彼女の瞳からは涙が流れ、不謹慎にも美しいと思ってしまった。
急いでバギーに戻るとリクに退いて貰い、座席に乗せる。
「シズさまどうしますか?」
「すぐにテントを張って彼女の治療をしよう、急がないともう意識が無いんだ!」
「分かりました、この先に水の音がします。そこに行きましょう」
「分かった」
急いでバギーに乗り込み、リクの案内に従い水場に移動する。
リクは座席の足元から、心配そうに彼女を見つめている。ペロペロと彼女の手を舐め、指先の怪我から出た血を取ってやっていた。
森の側に急いでテントを張った。彼女をゆっくりと寝かせる。
様子を見ると足の怪我が酷い、痛めた足で無理に歩いていたのだろう、捻挫した足首がどす黒く腫れ上がっていた。
額に手を当てると、とても熱い熱も出ている様だ。
リクが情けない声で鳴いている、急いで治療しないといけない。
川から汲んできた水で、タオルを濡らし額に乗せる。
リクは焚き火の為に枝を集めると森に走って行った、いつもよりやる気を出している。
意識が無いので薬は飲み込めないだろう。
口移しで水を飲ませるが、意識の無い彼女はなかなか飲み込んでくれない、指で口を開き舌を使って流し込む。
少しずつ水と薬を飲ませた。
治療のために怪我を確認する、体のあちこちに擦り傷や切り傷がある、水で綺麗に拭いた後薬を塗り込む。
最後は足首の怪我だがここが一番酷い、紫に腫れ所々どす黒くなっている。
触れると熱を持っていた、薬を塗り包帯を巻く。
一通りの処置を終えてやっと一息つく、何とか彼女を助けたい、元気になってくれると良いが…
頭を撫でると寝顔が安らいだ、こんな森の奥で一人きり、一体何があったんだ。
****************
夜になると彼女はうなされる
初めは女性と言う事で気を使って私はバギーで寝ようとした、けれどテントから泣き声が聞こえて慌てて見に行った。
彼女は涙を流し、何かを呟いていた。
側に寄って耳を近付けた
「まだ死にたく無い…痛い…ごめんなさい」
苦しそうに泣いている、驚いて抱き起こすと
「寒い…もう…いや…一人にしないで」
体がぶるぶると震えている、抱き締める力を強め背中を擦る。
彼女の小さな手が私の服を掴む、弱々しい力で必死にしがみついてくる。
何に怯えているかは分からないが、酷く震えて氷の様に冷たい。
此処には私しか居ない、見つけたのも助けたのも私だ、何とかしたい。
「大丈夫です私が此処にいます、一人じゃありません」
震えが治まってきた
「貴女は私が助けます、だから死にません」
「…ほんと」
ほんの僅かに目が開き、私を見つめる
「本当です、ほら暖かいでしょう?」
「…ん…ひとりはもういや」
「ずっと一緒にいます、一人にはしません」
「あり…がとう」
彼女はまた意識を失ったのか瞼を閉じて、くたっと体の力が抜けていく。
それでも私を離すまいと手の力は緩めない。
彼女を抱き締め一緒に寝転ぶ、あやす様に頭を撫でると涙が流れる。
腕の中から彼女の鼓動が伝わる、必死に私を求める彼女に胸に愛しさが広がる。
感じた事が無い程の強烈な感情、愛情だけじゃない…誰にも渡したく無い、私が彼女を守る。
私は彼女を一人にしないと約束した、これからはずっと一緒だ。
…彼女が離れたがってもずっとずっと一緒に居る、彼女は私を選んでくれた、それならば永遠に離れない…離さない。
二人でずっと生きていく。
****************
足の痛みで目が覚めた
「うぅ…痛い」
私は助かったのかな?
良く覚えて無いけれど、最後に誰かが助けてくれた気がする。
「意識が戻ったんですね!」
急に男の人の顔が現れた。私は寝かされていて、男の人が私の顔を覗き込んでいる。
「大丈夫ですか?今起こしますから、少し待ってください」
抱えていた荷物を脇に置き、痛む足に響かない様に、優しく抱き起こしてくれた。
「助けてくれて、ありがとうごさいます」
「良いんですよ」
にこりと笑ってそう言ってくれた、良い人に助けられたみたいだ。
「喉は乾いてませんか?水を持ってきたんです」
「ありがとうごさいます」
男の人のは私の右側に座っている、水を受け取ろうとすると、片腕で抱き締められた。
なんだろうと思っていると、男の人は自分で水を飲んでしまった。
唖然としていると、そのまま口移しされる。
「もう少しのみますか?」
「なんで…?」
知らない男の人は不思議そうにしているが、私の方が訳が分からない。
「何で、口移しで飲ませるの…?」
「まだ動けないでしょう?」
「手は動かせますよ」
「駄目です。それで怪我が悪化したら、どうするんですか」
男の人に怒られる、これは私が悪いのか?
「私が全てやりますから、任せて下さい」
優しく笑う男の人に恐怖を感じる、私は助かっていないのかも知れない。
「自己紹介がまだでした、私はシズと言います」
「ユキです」
「ユキ、これからよろしくお願いします」
「お願いします」
これから?何だろう怪我が治るまでかな?
少し変わってるけど良い人…なのかな、助けてくれたし
暫くお世話になるんだし、何か役に立ちたい。
その為にも早く動ける様にならないと。
死んだ事が無意識でトラウマになっている主人公
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