ヤンデレキノ達との旅   作:黒猫黒

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違う世界線のキノ

主人公 ファルシュ ファル君

一話で纏まらなかったので、前後編の二話構成になります。


パラレル キノと英雄だった彼の二人旅
ただ一人の為に 前


「やっと邪魔者達は皆消えました。

これで貴方と一緒になれますね。やっとです…長い間待たせてしまって、本当にごめんなさい」

 

周りの人間皆を撃ち殺した彼女と、俺以外誰一人生きている者はいなくなった。

彼女は心底嬉しそうに笑い、血塗れのままこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「さぁ…本当に二人きりですよ」

 

目の前にしゃがんだ彼女は俺にそう告げた。

 

「き…きみはいったい、誰なんだ」

 

恐怖でぶるぶると震える体で後ずさりながら、なんとかその一言を絞り出した。

突然現れた彼女が近所の人達を皆殺しにして、親しそうに話し掛けてくるが、俺は彼女なんて知らないし見た事も無い。

 

「いやだなぁ僕ですよ、貴方の恋人のキノです」

 

「俺に恋人なんて…」

 

「僕が貴方の恋人ですよ」

 

血にまみれた手を頬に当てられた事で恐怖が頂点に達し、俺はそこで気を失った。

最後に見たのは狂ったように笑いながら、俺を抱き締める殺人鬼の姿だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「公然の秘密?」

 

「そうです彼以外は、国中の皆が知っています」

 

入国の際に説明を受けたが、その中で一番大切な事だと前置きがあった。

今から話す事を良く理解して、国の中では決して口にしてはいけないらしい。

 

「この国では、ある病が蔓延しています。

国民にのみ感染し、毎年多数の死者を出す大変な病です。

医者達が死に物狂いで研究を重ねた結果、彼の血が病に有効であると偶然、発見されました」

 

確かに今説明をしている兵士達は、皆顔色が悪く頻繁に咳をしている。

 

「それから彼には、我々の薬として生きて貰っています。

国民には彼の血が必要ですので、死なない程度に血を貰っているんですよ」

 

「その人は大丈夫なんですか?」

 

大勢の国民の為にたった一人で血を提供するなんて、どう考えても血が足りない。

健康でいられる訳が無い、下手をすると死んでしまうんじゃないか。

 

「彼は慢性的な重度の貧血を患っていますが、血液の病気と言う事にして、検査と偽りこっそりと血を抜いています。

国民の中には過激派が居て、乱暴にも彼を施設で管理して血を培養しようと、提案する者達も増えています」

 

「私達穏健派は、そんな酷い事を許しません。

彼には病院に入院して貰って、医者の指示に従い限界まで血を採る提案を進めています」

 

エルメスが小さな声で「それって、どっちも一緒じゃないの?」と呟いている、完全に同意だ。

その人の意思は一切考慮されていない、皆薬としてしかその人を見ていない。

 

「今は彼の血を薄めて配布していますが、全然足りないのが現状です。

過激派か穏健派どちらかの案が通る日も近い、我々は健康になりたいだけなのですよ」

 

「そうですね」

 

口先だけの同意をして、その人の居場所を訪ねる。

少しだけその人に興味を抱いたから。

 

「その人に会うことは、できますか?」

 

「彼は国の最重要人物です、旅人に面会の許可は降りません。

彼に会えるのは、良き隣人として振る舞っている研究者達だけです」

 

会う人間まで制限されているのか、厳重な管理がされている様だ。

 

「ですが、モニターで見学する事は許されています。

彼はこの国の英雄ですからね、見学されますか?」

 

「お願いします」

 

やっぱりこの国は、その人を同じ人間とは思っていないようだ。

薬に英雄、誰かその人を心配する人は居るのだろうか?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「こちらが観察室になります」

 

「ありがとうございます」

 

案内の女性にお礼を言うと、女性は一礼して去って行った、受け付けに戻ったのかな。

 

「キノ、この部屋凄いね」

 

「そうだね、壁一面監視モニターだね」

 

壁のモニターの下にはプレートが付いており、英雄ファルシュの生活、と書かれている。

監視モニターには肌の青白い痩せた男性が映っていた、この映像は彼の家の中での普段の生活の様子が見られる様になっているみたい。

 

「ファルシュって人は、何も知らないんだよね?」

 

「そうだね、皆で秘密にしてるから」

 

男性はふらふらと覚束ない足取りで、ゆっくりと部屋の中を歩いている。

キッチンから水を運び、椅子に座って飲むだけの行動も酷く辛そうだ。

 

「彼死にそうだね、あんなにふらふらしてる」

 

確かに今にも死にそうに見える。

病を患っているらしい国民達よりも、よっぽど重度の病人の様に見える。

 

「誰も彼の心配はしないのかな?」

 

「うん、きっと誰一人してないだろうね」

 

彼の青白い顔をじっと見ていると、何かを思い出しそうになる、一体なんだろう?

 

「どうしたのキノ?」

 

「彼を見てると、何かを思い出しそうなんだ」

 

「キノは彼を知ってるの?」

 

遠い昔の僕がまだキノでは無かった頃、僕がまだ×××××だった頃の事を思い出す。

 

「彼を…知っている?血で人を救う、血で治す…

ファルシュ…?…ファル?」

 

モニターの中の顔を良く見る。

色素の薄そうなブラウンの髪の毛、優しいグリーンの瞳、優しそうな垂れ目の彼は…

 

「ファル!」

 

思わずモニターに向かって叫ぶ、なんで彼がここに居るんだ、なんでこんな目にあって…

彼は幸せになっている筈、優しそうな両親と旅をしていたじゃないか!

 

「ファル?知り合いなの?」

 

「僕の大切な人だよ、ファルは僕の恋人なんだ」

 

「え?どう言う事か、教えてくれると嬉しいんだけど」

 

エルメスに説明をする

 

随分昔の話だ。僕がまだ×××××だった頃に、ファルは僕の住んでいた国に旅をして来た

 

その頃の僕はまだ小さく体が弱くて、よく病気になっていたんだけど、その時は病気が悪化して死にかけていたんだ

 

幼い僕には病気を乗り切るだけの体力は無くて、皆僕が死ぬと思って諦めてた、皆静かに最後の時を待ってたんだ。

 

僕は死にたく無くて泣いて叫んでも、皆が諦めた表情で僕を見てた、それがとても怖くて余計に泣いていた、そんな時にファルが両親と来てくれて薬をくれたんだ。

 

どんな病でもすぐに治る秘薬だって言ってた、真っ赤な水薬で鉄臭かったけど、全部飲みきる頃にはすっかり元気になっていた。

 

皆喜んでファルの両親に感謝していた、ファルは僕の側に来て良かったねって笑ってくれて、やっと僕は助かったんだって気が付いたよ。

 

その時に僕の手を握ってくれたファルの腕に、包帯が巻かれていて血が滲んでいるのをよく覚えている。

 

皆は薬の入手方法を聞いていたけど、旅の人から買って最後の一つだって言われて諦めていた。

 

それからファルが国に滞在してる間は、ずっと一緒に居て遊んでくれたんだ。

僕よりも少し歳上のファルは優しくて、他の人には内緒だって秘密も教えてくれた。

ファルの血は何でも治せるって、怪我でも病気でも何でも治せるらしい。

 

始めは自分の国で皆を少しずつ治していたんだけど、そのうち他の国からも大勢の人が押し寄せた。

皆がファルの血を奪いあって、殺されそうになったから逃げる為に旅をしているって。

 

あの時僕の命を救った薬は、ファルの血だってその時に気付いた。

見ず知らずの僕を救う為に、自分の腕を切ったらしい。

 

それからはもっと仲良くなって、いつの間にか好きになってたんだ。

 

だから別れの時は泣いて泣いて、凄く困らせて…

あんまりにも僕が泣くから最後に約束してくれたんだ、もしも再会出来たら何でも一つお願いを叶えてくれるって。

 

僕はファルにお願いした、再会出来たら恋人にしてって。

ファルは驚いていたけど、優しく笑って約束してくれた、いつか大きくなったらまた会おうねって。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「彼がそのファルだよ」

 

「へぇー、そんな偶然もあるんだね」

 

「偶然なんかじゃ無いよ、きっとこれは運命だ」

 

僕達が再会するのは運命で決まっていたんだ、絶対そうだ。

 

「ふーんそれでどうするの?ファルさんはこの国に必要らしいけど」

 

「そんな事知らないよ、僕はファルを連れて行くだけ。

だって恋人同士は、ずっと一緒にいるんだよ」

 

「そう頑張ってねキノ」

 

「うん、必ず連れて来るよ」

 

僕は必ずファルを連れて行く、僕の恋人が酷い目にあっているんだ助けないと、昔はファルが僕を救ってくれた、だから今度は僕がファルを救う番だ。

 

それからはとにかく情報を集めた、ファルについて、この国について、それから…病についても。




殺人キノ
男前のヒロイン
一人を救う為に大勢を殺す、状況によっては悪い事とは限らない…かも?

ファルシュ、意味は偽り
エリクサー系主人公
重度の貧血
国からの扱いが酷く、現在は年齢よりも老けて見える
その為家に引きこもりがちの生活、色が白い
このままでは家畜の様な未来か、実験動物の様な未来しかない、どっちもBADEND

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