なかなか踏み出せずにいた……
「……どうしましょう」
一航戦であり、航空母艦である加賀は執務室で少し悩んでいた。
なぜなら殆どの雑用を終えてしまったからである。
(提督が帰ってくるのはまだ先……できることはもうありませんね……)
加賀は秘書艦としてはとても優秀であり、テキパキと仕事を行う。
それゆえに加減がわからず、結果大いに時間を残すことがある。
「………」
執務室は加賀がこまめに整頓や掃除をしていることも有り、とくに散らかっておらず、これ以上の手は必要ない。
(提督はここで待ってる必要はないって言うけれど……)
「……待ちますか」
そう言った加賀は湯呑にお茶を挿れた後、ソファに座って執務室にあった本を読み始めた。
ここ最近は読書の秋ということか、加賀も本を読む機会が多いようだ。
「………」
――――――――
「ふぅ……」
本を読んで時間をなんとか潰した加賀であるが、それも流石に限界であるようで、本を読むのを止め、窓の外へ目を向ける。
時刻は5時頃を回ったようで、すでに夕日がキラキラと輝いている。
「……まだかしら、提督……」
遅くなるとは聞いたが、やはり少し寂しく感じる。
こんなことはよくあることなのだが、加賀はそう思っていた。
「…………」
――――――――
「………はっ」
加賀が気がつくと、外はもう夜の時間帯だった。
どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。
「やってしまいました………あれ?」
ふと見ると彼女には毛布がかかっていた。
そしてその時、執務室のドアが開かれる。
「あ、起きたのか加賀」
「……提督……」
提督と呼ばれた男は20代のいわゆる好青年な人である。
個性らしい個性はあまりないが人当たりもよく、艦娘達にもよく慕われている。
「すまない、遅くなってしまった……上司の小言が多くてな……」
「……提督の仕事が遅いことなんていつものことですし、気にしてませんよ」
「……もしかして怒っているか?」
「怒ってません、別に……」
言葉こそそう言っているが、声は少し怒っているように感じられた。
やはり寂しかったらしい。
(やっぱり怒ってるな……こういう時は……)
「そうだ、アイス買ってきたが食うか?」
「アイスでご機嫌取りということですか?」
「やっぱり要らないか」
「いえ、要りますが」
(……わかりやすい)
提督はドライアイスで冷やして持って帰ってきたバニラ味のカップアイスを加賀にあげて
そして提督自身は腕を少し伸ばした後、執務室の机に座り、書類を書き始めた。
「提督、手伝いなら……」
「いや、良い。加賀さんはアイス食べてゆっくりしててくれ……すぐ終わることだし」
「そうですか……」
そして加賀はカップアイスをの蓋を開けてスプーンを手に取り、ぱくっと食べ始める。
(……冷たくて……おいしい……)
表情をあまり出さない加賀ではあるが、甘いものを食べる時は無意識に笑顔の表情を出すようで――
(……機嫌が直って何よりだ)
そして提督はその様子を気づかれないようにチラチラと見ることがここ最近の楽しみになっているそうな。
「……ふっ」
ちなみにこの二人はまだケッコンカッコカリしてません。
それはまたおいおい……です。