一年越しの更新となりますが、今年もよろしくお願いいたします。
miscalculate①
「バクゴーどったのあれ、またケンカ?」
「女子は見てねえのか、轟見てみ」
「ひょー! イケメン台無し! どうしたのさ!」
「仮免講習がスパルタだったみてえだよ」
「体育会系だねぇ――!」
「コッソコソうるっせえんだよ!!」
「授業が始まるぞ! 麗日くんと梅雨ちゃんくんがまだ来てないが!?」
「公欠ですわ委員長」
「
週明け、インターンに行っている子の空席が目立ったり、顔や身体のあちこちに生傷を作った二人がいたりとささやかな変化はあれど、にぎやかな朝の教室の雰囲気にほっとする。鞄から机に教科書を移動させていると、後ろのイズクの机を囲んでいた峰田とミナの会話が自然と耳に入った。
「なァ緑谷、インターンどうだった!? ドスケベエロコス女ヒーローがいたかどうか……」
「んあうん」
「どんくらい行くのー? 私も入れてー!」
「んあうん」
イズクにしては心ここに在らずな返事だな? と疑問に思って振り返る前に、トントンと横から伸びてきた指が私の机を叩いた。つられて視線を向けると、隣の席の瀬呂くんが興味津々ですという顔でこちらを見ていた。
「星合も土日にインターン行ったんだろ? どうだった?」
「忙しかったよ。とにかく目まぐるしく動くから、色々と勉強になったよ」
「へー! 流石はナンバーワンヒーローの事務所だな」
「俺より一歩先の話をするんじゃねえ……!」
「お前ら席につけ、ホームルーム始めるぞ」
手で耳を塞いで唸る爆豪に食って掛かられる前に、時間通りやってきた相澤先生の登場で自然と雑談が打ち切られる。相澤先生の伝達事項を告げる声を聞きつつも、思考はゆっくりと昨日の夜へと巻き戻っていった。
「エンデヴァー、ワックスの個性が発動しなくなったというのは……」
「ああ。今精密検査を受けているが、まだ個性は使えんらしい」
雨の中の謎の銃撃戦の後、一足先にバーニンと事務所に戻って報告書を仕上げていた私は、ワックスの受診に念のため付き添っていたキドウさんからもたらされたメッセージにぎょっとした。
渋い顔で事務所に戻ってきたエンデヴァーに、すぐにバーニンと共に駆け寄ったぐらいには一大事だった。
これが
だが、ワックスの異変の原因は個性ではなく
となると、あのヴィランたちは「個性に依らない方法で、他人の個性を発動させない方法を手に入れていた」ということになる。しかも一発きりの切り札ではなく、複数人が装備出来る程度には量産化されている。それがこの個性社会において、ヒーローにとってどれだけ脅威で、少しずつ活気づいているヴィランにとって魅力的か。
社会不安が渦巻く今の状況で、治安をより悪化させかねない爆弾だ。下手をすれば、パワーバランスをひっくり返されてしまいかねない。敵連合の連中に嗅ぎつけられる前に、生産元を突き止めて潰さなければ。
「ワックスの精密検査の結果と、未使用の弾丸の鑑定待ちの状況だが……あれほど厄介なモノを作り出す連中の尻尾を掴めたのは大きい。この個性社会であんなものがヴィラン共にばら撒かれたら、目も当てられん。だが……今回捕まえた連中は小物も小物。自力であんな弾丸を作れる設備や金、人員を揃えられるとは思えん。裏で糸を引いている連中が必ず居るはずだが……今日の捕り物で怖じ気づいて身を潜める可能性もある。現時点から街のパトロールを強化し、特別チームを編成して調査に当たるぞ」
「了解です」
「はい」
――ともあれ、情報が揃わねば動く事も出来ん。検査と鑑定の結果が分かり次第、次回のインターン予定も追って伝える。
そう言われ、昨日の夜遅くに寮へ戻ってきたのだが、朝になってもまだ連絡は来ていなかった。
鑑定に時間が掛かっているのか、ワックスの状態が思わしくないのか……どちらにしても、学生の身の上である私に出来ることなど限られている。情報が出揃えば、こちらにも情報共有はしてくれるだろう。警察に私の分析能力について共有するぐらいだ、その点においては私の能力を買ってくれているのだろうし。
一応治安を揺るがしかねない案件なので、敵連合とは関連こそ無いものの、塚内さん経由で公安にも報告を上げてはおいた。エンデヴァーからもじきに報告はされるだろうが……報告の遅れによる手遅れが一番怖い。現在の社会構造を壊しかねない、
とりあえずは今できることを――インターンで肝心な時に参加できないなんて事がないように、学業をしっかりこなそうと並列でつらつらと流していた思考を打ち切り、相澤先生の説明に耳を傾けた。