対轟くん戦で今まで以上に無茶を繰り返した結果、星合さんに粉砕された欠片を取り除いてもらって、リカバリーガールの治癒を掛けてもらってなお歪んだ右手。星合さんだけでなくリカバリーガールにも「今後もうこういった怪我は治癒しない、こんな破滅的な方法じゃなくて、この子のやれる別の方法を模索しなさい」と忠告されてしまった。
そんな二人の、僕の事を真剣に案じる言葉に自分の不甲斐なさを感じた。
治癒後で怪我と引き換えに体力を奪われ、フラフラとした足取りながらも出張所を後にした僕の脳裏には、ここに来てはじめて、「ワン・フォー・オールを継ぐべき人間は他にもいるんじゃ?」という問いが浮かんでいた。
いや、本当は今まで考えるのが怖くて、そんな恐ろしい思い付きに気付かないよう、無意識に心の声にセーブを掛けていたのかもしれない。心操くん、麗日さん、轟くん、星合さん。優秀な個性を持ち、譲れない強い信念を持つ人達。彼らの信念に触れて、オールマイトの意志を受け継ぐべきは“無個性”だった僕じゃなく、もっと優秀な、周りに心配を掛けることのない人が後継者になるべきだったんじゃないか。そう考え始めれば、あっという間に自信が萎んでいくような気がした
そんな誘惑のような、泥濘とした不安を恐る恐る口にした僕に、オールマイトは「私も“無個性”だったんだぜ」という衝撃的なカミングアウトと、「君に
改めて認めてくれたことに泣きたいような、期待に応えられなかった悔しさに改めて胸が軋むような心持ちで、残りの体育祭も見届けて来いと観客席へ送り出された僕は、通路を出てすぐ、ステージを見下ろせる手すりに見覚えのある後ろ姿が佇んでいるのを見て、驚きの声を上げた。
「星合さん」
治療してくれた後、飯田くんとの試合の為に出張所を足早に去っていった、星合さんがそこに居た。
「……ああ、イズク。治療は……終わったみたいだね」
くるりと振り返った星合さんの、透明な紅い眼差しに思わず身が竦む。何もかもを見通すような透明さと、内心を何一つ窺わせないような泥のような濁りが共存する、
治療してくれてありがとう、と一歩踏み出しながら改めて言えば、大したことじゃないとばかりに星合さんはこちらを見ないまま、黙って首を横に振った。
『カァウゥンタァ~~~!!』
「(よろけもしねえ、さすがに固ぇだけじゃねえな)」
「効かねーっての爆発さん太郎があ!!!」
「今、下で爆豪と切島くんが戦ってる」
「あ、ホントだ……ってことは飯田くん対星合さん、塩崎さん対常闇くんはもう終わっちゃったのか……」
先程の出張所でのやりとりから、なんとなく気まずいというか、距離を掴みきれなくて、いつもより少しだけ間を開けて星合さんの隣に立つ。そうして、何気なく視線を移したスクリーンに表示されたトーナメント表を見て、意外に試合が進んでいることを知った。飯田くんVS星合さんの俊足対決は星合さんが、塩崎さんVS常闇くんの対戦は常闇くんが勝ち上がっていた。
見たかった、と肩を落とす僕の視線の先では、”硬化”で固めた拳でかっちゃんの顔を容赦なく殴りつける切島くんと、間合いを詰められたタイミングで切島くんの脇下にカウンターの爆破をぶつけるかっちゃんが容赦なくぶつかり合っていた。
『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!』
「早よ倒れろ!!」
オラァ、と素早く繰り出される切島くんの拳を流石の反射神経で避けていくかっちゃんを眺めながら、僕はおずおずと「飯田くんにどうやって勝ったの?」と話を振る。友達だからといって、二人とも手加減なんて考えもしないだろう。そう思って話題を選んだ僕をちらりと見た星合さんは、少し沈黙した後、手すりに上体を凭せ掛けながら口を開いた。
「レシプロバーストで接近して、蹴られた瞬間にエンジンの
「なるほど」
すぐに会話が途切れ、沈黙が横たわる。うう、気まずい。謝った方がいいのかな、心配かけてごめんねって言うべきだろうか、とぐるぐる考え込む僕を、星合さんが静かな表情で見下ろしていることに気付かなかった。しまいにはうんうん唸り始めた僕を見かねた星合さんが、静かに口火を切った。
「ありがとう」
ぽつりと落とされたその一言は穏やかに澄み切っていて、わあわあと騒がしい周囲の歓声に紛れて聞き落としそうなくらいに、小さかった。反射的にえっ?と問い返してしまった僕は、まじまじと星合さんの横顔を凝視した。
すっきりと高い鼻筋と顎のシャープさは、日本人が持ちえない身体的特徴だ。日本語が上手すぎてたまに忘れそうになるけれど、彫の深いラテン系の顔立ちは日本人の子どもっぽさなど微塵もなくて、外国のひとなんだよなあと改めて思う。白人の透き通るような肌も相まって、彫刻のような、手を伸ばすのが憚られそうな綺麗さがある。
「あれ以上氷を使い続けていたら、轟は重度の凍傷を免れなかった。……いや。それだけじゃない。
――轟を
穏やかで、それでいて隠し切れない後悔と苦悩が底にゆらめく声だった。はっと胸を打つような、切なげな声。けれど星合さんはひどく穏やかな表情でステージを見下ろしていて、その表情だけを見ていたら、きっと星合さんが抱えている大切なものをとりこぼしてしまいそうに思えるほど、表情と声がもたらす情報がバラバラで困惑する。
「さっきは、少しキツイことを言ったけど……本当は、すごくイズクに感謝してる。私には、きっと轟は救えなかったから」
「……どうして?」
自然とくちびるから零れ落ちた疑問は、素直な響きを伴って空気を震わせる。僕と星合さんが立つ場所だけが静けさに包まれているかのように、歓声が遠く聞こえた。
星合さんはゆるやかに喉を押さえながら、こちらを向いて小さくくちびるを吊り上げた。
「轟とは中学の、たった四ヵ月だけだけど……それでも、それなりに仲良い自信があったし、家族の事については触れられたくなさそうだから、あえて藪はつつかなかった。誰だって、知られたくないことのひとつやふたつはある。家族の事を知らなくたって、友達でいられると思ったから。
でも、轟の傍に居ればいるほど、轟の歪んだ執念が、いつか轟を滅ぼしそうで見ていられなかった。……だから、せめて自分の危うさだけでも気付いてほしかった。
でも、と星合さんは息苦しそうに喉を押さえる。その仕草は、USJで彼女が昏倒する前、酸素を求めるみたいに喉を掻き毟る指先と重なって見えた。掠れた声は静かなのに、まるで悲鳴のようにも聞こえた。
「……最初の戦闘訓練、初めて核心に踏み込んだ瞬間。私を見る轟の目が、目に見えて冷え切ってくのが分かった」
僕がかっちゃんの爆破を正面から受けて、リカバリーガールの所へ運ばれた最初の戦闘訓練の授業で、星合さんが障子くんと轟くんの二人を相手に勝ったことは、飯田くんや麗日さんから聞いていた。最初、踏み込んだ星合さんの足を凍らせた轟くんだったが、余裕を崩さなかった星合さんが密かに罠を張り巡らせて大逆転、轟くんを捕縛し、なおかつハリボテも無傷という、二対一を感じさせない圧倒的な完封試合だったらしい。
星合さんの発言からみるに、そこで轟くんの核心……エンデヴァーを恨む気持ちと仕返ししてやりたい気持ちから、炎を封印していることに関して言及したのだろう。
「その時、言いたかったことも何もかも吹っ飛んだ。策は全部完成してて、戦いの方面での頭は回ってたけど、きっと戦闘中じゃなかったら、あんなに冷静でいられなかった……」
こわかったんだ。ささやくような声が、空気に溶けていく。
「轟の中で、私の存在が友達で無くなるのが、無関心以下の存在に成り下がるのが耐えられなかった。だって轟は、私にとって初めて、本当に気を許して付き合える友達だったから」
轟の抱えているしがらみを解くには、それを失うことを覚悟してでも、轟に徹底的に嫌われることも予想してでも挑まなければ無理だと分かった瞬間、私には無理だと思った。それが出来ないと、思い知ったから。
喘ぐように、髪の間から見えるくちびるが
誰だって、嫌われるのは怖い。それが大切な友達なら尚更だし、まして初めての友達なら、その特別さは比較できないだろう。僕にとって、初めて対等に、素の僕を認めてくれた同年代の友達が星合さんであるように、星合さんにとっての轟くんが、そうなのだ。
事情を少し聞いただけの僕でさえ、轟くんの在り方は悲しすぎて、オールマイトの期待を裏切ることになってでも手を伸ばしたいと思ってしまった。たとえそれがお節介で、僕のエゴでしかないと分かっていても。
目の前に立って相対しているのに、
それを、友達甲斐が無いなんて、どうして責められるだろう。
「……私は、これ以上、信じられると思った友達を失いたくなかった」
手すりに置いた両手に額を擦り付けるみたいに上半身を折った星合さんの表情は、長い髪に隠されて見えなかったけれど、今にも泣きだしそうな、悲痛な声に言葉を失った。
星合さんと僕の出会いは、雄英高校に入学する前まで遡る。オールマイトが考案した「目指せ合格アメリカンドリームプラン」で苦しい特訓を続ける僕に、星合さんが差し入れを持ってきてくれたのが出会いだ。そこからゆるやかに交流は続いて、雄英に合格が決まった時は、スカウト枠として一足先に合格していた星合さんも凄く喜んでくれた。同じクラスだったら良いねと話す僕らを、オールマイトはいつだって微笑ましそうな表情で見守っていた。
入学初日、麗日さんとクラスの入り口で話していた時に、少し息を切らしてクラスの扉を開けた星合さんにすぐ反応できなかったのは、僕が雄英に入学できたきっかけと言っても良い麗日さんだけじゃなくて、友達の星合さんも同じクラスだと知って、舞い上がりすぎて頭がオーバーヒートしていたせいだっていうのは、恥ずかしいから僕だけの秘密だ。
僕とオールマイトの、世間に対して秘密にしている“個性”の秘密や、師弟関係を知っている数少ない人。けれど僕は、星合さんがどんな人生を送ってきたのか、どうしてオールマイトが保護者をしているのか。……その理由を何度も疑問に思いながら、けれどなんとなく聞けないままでいる。聞いてみたいと思う気持ちと、踏み込んでもゆるされるのか戸惑うばっかりで、一度だってその事に触れられないままだ。
轟くんの壮絶な人生を聞いても、驚くことも、悲しむことも表情に出さないまま、淡々と事実を受け入れた星合さんの表情は、どこかうつろだった。ここじゃない、どこか遠くを見ているような、空っぽの表情。それを見た時、ぞっと総毛立つような寒気を覚えた。あんなに何もないひとの表情を、僕は見たことが無かったから。
「これ以上」と言うのだから、僕と出会うその前に、「友達」を失ったことがあるのだろうか。
それはどんなにつらくて、くるしかっただろう。僕は、その痛みをまだ知らないけれど……想像するだけで、星合さんの肩にそれが圧し掛かっていると思うと、胸の奥が苦しくなる。“ひとりぼっち”のさみしさは、周りと違うつらさは、よく分かるから。
轟くんを、もう一度の「初めて」の友達と思えるには、……心の傷から立ち直るには、どれほど時間が掛かっただろう。もしかしたら、心の底ではまだ、癒えていないのかもしれない。見えない傷は、とても分かりにくいから。
ああ。
……ああ、だからあんなに。
――どうか忘れないで。今の破滅的なやり方じゃ、一番のヒーローには為れても最高のヒーローには為れない。どれだけ英雄的な行為をしようと、君が傷つくたびに、それを見て心配して、悲しんで……不幸に思う人が必ずいることを、忘れては駄目だよ。心配してくれる家族が居るのなら、なおさら。痛みや傷を負うことに、どうか慣れないで……それに慣れてしまったら、
包帯でぐるぐる巻きに固定されて、三角巾で吊るされている右手に視線を落とす。
懇願するみたいに、
神さまに祈るみたいに。
ぼろぼろの僕の右手をやさしく両手で握って、僕へと言葉を重ねた星合さんの表情を思い出す。
だからあんなに、自分が怪我をして、自分の事のように痛そうに、つらそうに笑って。
それでもなお、君は僕の将来を心配してくれたんだろうか。
いつか、昔に喪った、僕に似ているという友達のような目に、僕が遭わないようにと。
「……それに、家族の問題を、家族の温かさを知らない人間が言ったって、……虚しいだけ」
星合さんのやさしさは、きっとその身の内に抱えている重たいものの裏返しだ。
……いつか。
僕も、大切な友達の星合さんが抱えている重たいものを、共に背負って、そばに居るよと慈しんで、支えてあげられるだろうか。
……ううん。
「だろうか」じゃない。「いつか」でもない。
なるんだ、絶対に。
オールマイトみたいな、笑って期待に応えられる、最高のヒーローに。
そして、誰も悲しませないヒーローに、なりたいと思うから。
「……僕が、轟くんを救けられたかどうかは、分からないけど……でも、轟くんにとって、星合さんは大事なひとだよ」
ずっと黙っていた僕の言葉に、手すりにつっぷつしていた星合さんの頭がもそり、と動く。熱気をはらんだ風にさらさらと流れていく黒い髪を眺めながら、言葉を重ねた。
慰めなんかじゃない。気休めでもない。
だって、表情の変化の少ない轟くんが唯一、感情を大きく揺らして、表情を変えるのが星合さんにまつわることなんだから。
たとえば、個性把握テストでやり方の分からない種目について尋ねられて、すこしだけ嬉しそうにほころんだ口元とか。
たとえば、USJ事件で瀕死の重傷を負って苦しむ星合さんの隣に跪いて、大丈夫かと声を掛けた時の必死な表情とか。
たとえば、気を失った星合さんを抱き留めた後、セメントス先生に声を掛けられるまで動けないままで居た時の茫然とした、絶望したような表情とか。
たとえば、当たり前のようにクラスまで迎えに来た心操くんの後を追ってクラスを出て行った星合さんの背中を、どこか不安そうに、拗ねたみたいな表情で見送る眼差しとか。
復讐とか、執念とかそういったものを抜きにした素の感情全部、轟くんが心を許してなかったら、絶対にあんなにやわらかい表情で見たりしない。自分の壮絶な生い立ちを話してもなお、否定も慰めも掛けずにありのままを受け止めた星合さんに、どこかホッとした表情をしていた轟くんの表情を見れば、轟くんがどれだけ星合さんを大切に想っているか、傍から見たら一目瞭然だ。それが、どういった類の感情なのかは、僕には判別がつかないけれど。
「……星合さんが本当は心配してること、きっと轟くんにも届いてる」
今は少し頑なでも、きっと想いは届くから。
そんな思いを込めて口にした言葉に、顔を上げた星合さんは、くしゃりと表情を歪めて笑った。
「イズクには敵わないな……」
手すりに頬杖をついて、目を細めた星合さんは階下を見下ろしながら、前にさ、と呟いた。
「USJ事件で入院したことあったでしょう?……その時に、轟のお母さんと偶然会ったんだよね」
「えっ!!???」
話題を変えるついでにさらりと爆弾を落とした星合さんに、僕は大きく目を見開いた。轟くんのお母さんが入院していたことも初耳だったけれど、まさか星合さんと轟くんのお母さんに接点があったなんて、驚かずにはいられなかったのだ。
幸い僕の大声はひときわ大きく上がった歓声のお陰で目立ちはしなかったけれど、チラチラと近くの観客席から何事かと視線を向けられて身を縮こめた。しぃ、と窘めるように「静かにね」とサインを送ってきた星合さんに頷くと、彼女は僕が落ち着いてきたタイミングを計って続きを話してくれた。
「偶然中庭でコケそうになってるのを助けてね……最初はお互いのこと何も知らずに話して、打ち解けたんだけど……これまた偶然で同じ病棟で、その人を病室まで送り届けた後、ナースさんに話を聞いて、ようやくその人の苗字が『轟』だって知ったんだよね……いやぁ世間って狭い」
「す……すごい偶然だね……?」
「本当にね……でも、話が聞けて良かった。
轟のお母さん、言ってたよ。もし会える時が来たら、生まれてきてくれてありがとうって、伝えたいって」
「!!……そっか。そのこと、轟くんには……?」
「いや。……体育祭前の轟に言っても、きっと良いようには届かないと思って言ってない。……というより、他人の私が言うのも野暮だろうと思って、言うつもりもあんまりないんだ。……きっと、面と向かってお母さんに言ってもらった方が、轟も嬉しいだろうから」
遠い場所を見るような目で、穏やかな表情で薄く笑った星合さんに、僕は何も言えず押し黙る。掛ける言葉が見つからなかったというよりは、今は、声を掛けない方が正解じゃないかな、と思ったからだ。
……まだ試合を控えていて、しかも次の相手は轟くんで。少しでも集中したいはずなのに、それでも星合さんが僕に大切なことを教えてくれたのは、きっと保健室でオールマイトに吐露した、僕の後悔を汲み取ってくれたからだろうと思う。
星合さんがこうして心の中を少しだけでも打ち明けてくれたことで、オールマイトの期待には応えられなかったけど、僕のお節介で少しでも誰かの心を軽くすることができたのなら、あのお節介にも意味があったのかな、と思えたから。
不器用な星合さんの優しさが、ちゃんと轟くんに届いてくれたらいいと、僕には祈ることしか出来ないけれど。……そう遠くない日に届きそうな、そんな気がしている。
ふうっ、と深い溜息のような深呼吸で肩の力を抜いた星合さんは、どこかすっきりとした表情で閉ざしていた蘇芳の瞳をひらいた。真っ直ぐな眼差しは、午後ずっと彼女が纏っていた、どこか心在らずで、見ている人間の心をざわざわとさせるような奇妙な静けさは無く、僕のよく知る星合さんに戻っていた。
「……うん」
ひとつ頷いた星合さんは、ぎゅっと胸の前に出した左手を確かめるように握りしめて、小さく笑った。
「ここまで来たら、勝たないとね。……ミナや飯田くん、それにイズクの分まで。シンとも、勝って優勝するって、約束しちゃったし」
どこか面映ゆそうな笑みに、僕も頷いた。
「……それに、ちょっと一発殴るなり蹴るなりしないと、どうにも収まりそうにないからさ」
「あ、あはは……」
にっこり、と綺麗すぎる笑みで拳を掲げてみせる星合さんの、春風のような雰囲気を纏いながらもどこか剣呑な空気が漂うという、矛盾してるからこそうすら寒くも感じる宣言に、僕は乾いた笑いを浮かべた。
そんな風に少し気がほぐれたところで、プレゼント・マイクの『ああー!!!!』という落胆とも驚嘆ともつかない叫びがスタジアム中にこだまして、僕らはハッとステージに視線を戻した。
そこでは、爆撃の痛みに初めて呻く、切島くんの姿があった。
「って……」
『効いた!!?』
「てめぇ、全身ガチガチに気張り
「その状態で速攻仕掛けてちゃ、いずれどっか
BoooM、とひときわ大きな爆煙で切島くんの視界を塞いだところで、更に畳みかけるように爆撃のラッシュが切島くんを襲う。最後に一撃、「死ねぇ!!」といつもの罵詈雑言と一緒に、ひときわ大きな爆撃がダメ押しとばかりに切島くんの身体をブッ飛ばした。黒く煤けた切島くんが、爆撃の煙の間から垣間見えた。
「まァ、俺と持久戦やらねえってのもわかるけどな」
『爆豪エゲツない絨毯爆撃で三回戦進出!これでベスト4が出揃った!!!!』
「……ん、行ってくるよ」
「あ、うん!頑張って!!」
黒髪を靡かせた星合さんが振り向きざま、晴れやかに浮かべた笑顔が、とても印象的だった。