人魚姫は英雄の夢を見るか?   作:一星

75 / 152
Abend①

 

 時は流れ、夏休み、林間合宿当日。

 事前に指定されていた集合場所には一年ヒーロー科が一同に介していた。

 

「え?A組補習いるの?つまり赤点取った人がいるってこと!?

 ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なはずなのにぃ!?あれれれれえ!?」

「……君ってほんとうに息をするように煽るね」

「ごめんな」

 

 本日もB組の姉御は絶好調に口の回る物間の首筋に手刀を入れ、すまなさそうに伸びた彼を回収していった。

 

「物間、怖っ」

「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくね、A組」

「ん」

 

 とはいえA組を敵視?しているのは物間ぐらいのもので、B組女子の反応は概ね好意的だ。たまにイツカやイバラ(体育祭まで塩崎さんと呼んでいたのだが仲が深まって名前呼びになった)に会いに行った際に、他のB組女子とも話す事が多いので、私は結構交流がある方だろう。

 アメリカとのハーフであるポニーと英語で喋って周囲を置いてけぼりにしたり(雄英に通っているだけあって皆英語のリスニングはかなりのレベルなのだが、だからといって教科書通りの固い英語しか馴染みのない彼らにネイティブのスピードとラフな文法は中々ハードルが高い)と時間を潰し、バスと先生が到着したところで、飯田くんの仕切りで賑やかなA組はバスに乗り込んだ。

 

「一時間後に一回停まる、その後はしばらく……」

 

 何事か最前列の席にいた相澤先生が言い掛けていたが、朝早くの集合でも元気なA組の喧騒に紛れて聞こえなかった。かろうじて一時間後に一旦車を停めることだけは唇の動きを読んで読み取れたが……大事な連絡事項なら個性と威圧使ってでも静かにさせそうな相澤先生が止めなかったのが、ちょっと怖い。

 そんな懸念をよそに、補助席に座っている私の右隣に座っていたお茶子が残念そうにため息をついた。

 

「そっかぁ、ブルーくん、アメリカに帰ってもうたんやね」

「わたしも会ってみたかったわ、千晶ちゃんのアメリカのお友達」

「あっちの生活もあるからね。また機会があったら紹介するよ」

「楽しみにしているわね」

 

 もっと話してみたかったと至極残念そうなお茶子と梅雨ちゃんには悪いが、次が来ないことを全力で祈りたい。正直生きた心地がしなかったのだ。こっちに来て一番神経をすり減らす時間だったと言っても過言ではなかった邂逅を、私はぼんやりと思い出すのだった。

 

 

 

 襲来は突然だった。

 7月、期末試験も終わり、前期日程もあと数えるほどになった頃。イズクたちと下校しようと校門をくぐった私を待ち構えていたのは、此処に居てはならない人物だった。

 

『ブルーくんは何処から来たん?アメリカ?』

『うん、NYからだよ。チアキが日本に行ってから後ちょっとで一年近く経つし、僕もこっちに用事があったから会えるかと思って』

 

 ブルーと名乗った、金髪碧眼に丸い眼鏡を掛けた彼はいかにも人畜無害そうで、久々の友人との再会に胸おどらせる、大人しそうな好青年にしか見えない。イズクやお茶子と何気ない会話を交わし合うその横顔を、微かな苛立ちに似た思いが腹の底で渦巻くのをひた隠しにするように、私は笑顔の仮面をかぶったまま、裏社会に生きたものとしての冷ややかな思考で観察していた。

 

 

 人畜無害とは笑止千万。目の前の青年の本質は、私の世界に君臨する、人類の領域を遥かに超えたとりわけ厄介な魔人たち「13王」のひとり。

 絶望と未練を冠する人界の観察者(ウォッチマン)。肉の器は無く、個としての名前を持たない、世を徘徊する悪魔。

 かつてHLに二度目の大崩落を望んだ者。人間に絶望と破滅を唆す存在でありながら、閉塞した法則に縛られ続ける世界のありさまに絶望し、大崩落という弩級の天変地異、壊れゆく光景に魅了されたもの。

 

 

 その名を絶望王。

 移り変わりゆく時代の中で、かつてフォーレン、ブルーなどの多くの通り名で呼ばれたものである。

 

 

 

 焦燥感が嘔気のように繰り返し迫り上がってくる。喉元が詰まるようなその感覚をこらえながら、私は何気なさを装って言葉を投げかけた。表情、声のトーン、仕草、そのどれもを普段どおりに演じながら。

 

『ブルー、ホテルはどこを押さえてるの』

『ん?ああ、駅前にあるホテルだよ。君が何処にいるかは詳しく知らなかったからね』

 

 なるほど、体育祭で私の活躍を見て駆けつけた、という設定らしい。どこからどこまでこちらの行動を観察していたのか。何にせよ、悪趣味なことだと思うが。

 なんとしてでも絶望王(理不尽)から友人たちを引き剥がしたい私は、微笑みを口の端にのせた。

 

『ならホテルまで送るよ、向こうのことで聞きたいこともあるし』

『ありがとう、チアキ。助かるよ』

『む、それならば僕たちは駅で別れるとしよう。アメリカでの星合くんの様子も気になるが、積もる話もあるだろうしな』

『そうだね』

 

 私の心情を知ってか知らずか、飯田くんが気を利かせてくれた。このままついてこられたらどうしようかと思ったが、杞憂に終わって内心ほっとする。

 そのまま他愛ない話をして、駅前にたどり着く。改札へ向かう4人に手を振って、ブルーと共に歩き出す。鋭い視線が突き刺さったような気がしたが、振り返った背後には、雑踏の中背を向けた友人たちしか見えなかった。

 

 

 駅前の雑踏からぐんぐん離れていく。ホテルなど、彼の演技に合わせてそれらしく取り繕ったただの口実だ。人間に憑依する青白い炎が本体?というか本質の彼が、人間らしく宿を取る必要などないし、そもそも休息が必要な存在なのかすら怪しい。

 あてどもなく、ただ歩みに任せて歩きつづける私たちは、さながら亡霊の葬列だ。

 

「はは、――はぁ。あいっかわらず演技が上手いなぁ、お前は」

「その台詞、そっくりそのままお返しするよ、絶望王」

 

 穏やかな見た目にはそぐわない高笑いを上げてから、かしゃりと軽い音を立てて丸眼鏡が外された。すれ違う人々が高笑いを上げた彼を怪訝そうに目で追うが、それも数秒のことで、すぐに周囲の目は向かなくなった。目元を隠すような動作で乱れた前髪を掻き上げる仕草はどこか粗雑さを感じさせる。白い額を露わにして、好青年はあくどい笑みを浮かべるシニカルな青年にとって変わった。

 

「名演技だったろ?」

「寒気がするほどには」

「酷い言われようだな」

「――何でその姿なのかとか、色々聞きたいことはあるけど」

 

 色気すら伴う伏せられたルビー色の目玉が、意味ありげにこちらに流される。

 呼吸を飲み込むように言葉を切って、無意識に握りしめていた拳を解きながら、私は言葉のナイフを突きつけた。

 

「貴方、()()此処にいるの」

 

 一瞬、私たちの間に空白が落ちた。

 

「そうきたか。意外だな、『どうやって』此処に来たのかって真っ先に訊くと思ってたぜ」

「それも大変興味深いけど。……貴方なら私が一人の時に接触することだって容易いでしょう。どうしてあの子達の前に姿を現したのか、そっちのほうが私には重大だわ」

 

 本体が霊体や概念に近い彼にとって、肉の器さえ脱ぎ捨ててしまえば、あるいはその肉体がこちらでも同じスペックを有しているのなら、物理的な障壁は何の意味も持たない。それこそ私が一人になったタイミング、家にいるときだって接触を図れたはずなのだ。

 それをしなかったということは、彼にとって「私の周囲に異世界人(クリスティアナ)だと知らない誰かがいる」ことが重要だった、ということだ。向こうの世界で絶望王が暗躍するために憑依した少年、ブラック……本名ウィリアム・マクベスの姿を使って友人のふりをしてまで、知り合うことが目的だったのなら当然警戒もする。

 

 なにしろ、今その肉体を構成している宿主の身体は、HLのど真ん中に空いた異界と繋がる穴「永遠の(うろ)」が広がらないよう、術士たちが張った結界を維持する役目に若くして抜擢されるだけでなく、本気を出せばHLのビル群を地面からねじり切って、まとめて浮かせてパズルのように組み替えることも出来るほどのすさまじい才能を秘めたPSI能力者(サイキッカー)だ。

 

 裏を取ったことはないが、絶望王がもう一度大崩落を起こして世界崩壊を狙って活動していた時期を考えると、内側から破裂したような原因不明の破裂死体が路地でゴロゴロ発見されたのも絶望王の所業だと睨んでいる(ただ悲しいかなHLではよくある話と言えなくもないので、外なら連日話題になりそうなこの事件もデイリーニュースでちょっと取り沙汰されたレベルでしかなかった)。

 そして極めつけに、通常なら魔法陣やら詠唱やら何かと細かな準備が必要なテレポートを、何の準備も前動作もなく出来るほどの才能を秘める器でもある。

 強力な肉体の能力に、13王としての固有の権能である物質や魂などの霊体物質を消し炭にする青い炎。それに加えて魔術への理解も深い彼なら、街一つ、都市の一つ消し飛ばすことだって簡単にやってのけるだろう。

 頻繁に世界転覆レベルの人災を起こすフェムトで隠れがちだが、偏執王アリギュラも過敏王ゼオドラも絶望王も、その気になってさえしまえば人類の何割か、あるいは人類居住可能地域を半分近く減らすことなど造作もない。一度起こってしまえば人類ごときが止めるなど不可能で、今そんな災害が起きていないのは、ひとえに彼らがそれをつまらないからと行動に移していないだけに過ぎない。

 

 その彼らがこちらの世界の人間に興味を持って接触してきたなど、私にとってはタチの悪い悪夢にしか思えない。日常に非日常の風穴を空けられて、私のせいで13王という脅威に目をつけられ、彼らが害される未来など、想像もしたくなかった。

 さらにいえば、チアキというこちらの世界でもらった名前、体育祭に参加していたことを言動にほのめかして登場したことを考えれば、絶望王、もしくは私をこちらの世界に飛ばした元凶(フェムト)含む13王の数人はこっちに来てからの私の行動を観察していたと推測できる。その上で今の今まで救済措置どころか接触すらしてこなかったことを考えるだけで頭が痛い。私を回収する気が毛頭ないのだと、わかってしまうから。

 そんな私の言葉を何を考えているかわからない、興味が薄そうな顔で飄々と聞いていた絶望王が、ゆったりとその顔に笑みを広げた。

 

「へぇ。随分大事にしてんだな、あのお友達を」

 

 絶望王の口調はからかいや揶揄を含んだものではなかったけれど、確認するようなその言葉尻に目を細めて睨みつけた。鋭さを帯びた視線をちらりと横目で見返した絶望王は怖い怖いと肩をすくめる。演技がかった仕草だったが、目を開いた彼は、存外しずかな瞳をしていた。遠くを見つめるような眼差しで、平らな湖面のような赤が細められる。

 

「心配しなくても、お前の大事なお友達に手を出すつもりはねえよ。お前が随分人間らしいんで、興味深くてつい出てきちまったってだけだ」

 

 意外な絶望王の発言に、思わず毒気を抜かれてポーカーフェイスが崩れるのがわかった。

 

「……そんな、ことのために?」

「そんなことのためだけにだよ。今も昔も、おまえは興味深い俺の観察対象だ、兄弟」

 

 ピュイ、と絶望王が口笛を吹き鳴らす。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生涯最後の作曲オペラ、『魔笛』の序曲だ。

 お得意の口笛の合間に、楽しそうで何よりだと、友人のような戯言を口にするのだから、私は何と言っていいか分からずに唇を音もなく震わせた後、そっと閉口した。曲がった口元を見て、カラカラと絶望王は笑う。

 

「ま、死ぬようなヘマするなよ?そんなことになれば、アリギュラがガチギレしてあっちかこっちの世界が軽く一回滅ぶぜ。アタシのお人形を壊したな、って」

「そんなことないと言いたいけど、否定出来ないところに頭痛がする」

 

 あの自分の彼氏(超凶悪殺人犯)を生きたまま叩き潰して血液に錬成して、街角で見つけた超絶好みのイケメンを攫い、そっくりそのまま血液入れ替えて性格も見た目も理想の彼氏に改造()しちゃうようなサイコな乙女に何故か気に入られ、オフの日にはお茶に引きずられる私は、多少なりアリギュラの偏執を受けている自覚があるだけに頭を抱えたのだった。

 

 

 

 結局何のために来たのか分からないまま、13王共通のきまぐれさを発揮して、じゃあな、と次があるような気楽な口ぶりで、絶望王は雑踏の中に紛れて消えていった。本当に向こうの世界に帰ったのかは知らないが、あれ以降接触がないので放っておいている。何しろ死からかなり遠い存在だ、心配するだけ無駄である。

 やれやれとため息を吐いて顔を上げると、斜め前に座っていた轟がちらりとこちらを振り返っていた。ぱちりと目が合い、どうしたのかと首をかしげれば、少し考えるように視線を明後日に飛ばした後、ちょいちょいと顔を寄せるよう手招きされた。素直に従って少し身を乗り出した私に、轟がこそりと耳打ちしてくる。

 

「あのブルーってやつ、実はそんな仲良くねえんだろ」

「!」

「俺の見間違いかもしんねえけど、あいつが来た時、すげえピリピリしてるような感じがした」

 

 よく見ていることで、と思わず感嘆しそうになった。いや、むしろ轟に演技を見破られるほどわかりやすくなってしまった表情筋の緩みを嘆くべきなのか。誤魔化すようにへらっと笑う私に、無理はすんなよと呟いて前を向いた轟の精神的成長っぷりが眩しかった。

 だが、轟が前を向いたタイミングで、私はそっと笑みを消した。

 

 ―――仲良くない、ねえ。

 

 そうであれば、どんなに良かっただろうか。

 

 

 

 

 

「休憩だ~」

「つかなにココ、パーキングじゃなくね?」

「ねえあれ、B組は?」

 

 私の憂鬱は、賑やかなA組によってあっという間に吹き飛ばされていた。

 梅雨ちゃんの中学の時の修学旅行の思い出にほっこりしたのもつかの間、轟の隣に座っていた青山くんが手鏡で自分を見すぎて気分が悪くなり、それを発端に始まったA組全員でのぐだぐだなしりとり。青山くんが気を紛らわせるようにとイズクのオールマイトオタクが垣間見える細かすぎるクイズ、峰田が官能小説を下世話にも話し始めたかと思いきや、実はちょっと感動する話だったという意外なオチからの、梅雨ちゃんのほのぼのかとおもいきやホラーな話だったりと、バスが発車してから賑やかに過ごすこと一時間。相澤先生の宣言通り、バスが停まった。相澤先生の全員降りろ、という言葉に従ってぞろぞろと降りるA組の面々は、降りた先が休憩所でもなんでもない、山々を一望できるような道路脇に作られた、ただの駐車場であることに首を傾げた。

 

「何の目的もなく、では意味が薄いからな」

 

 意味深にポツリと呟いた相澤先生に嫌な予感をうっすら感じていたその時、

 

「よ――う、イレイザー!」

「ご無沙汰してます」

 

 私たち以外に現れた人影がずいぶんフランクに相澤先生に声をかけ、先生もまたぺこりと頭を下げた。

 

「煌めく(まなこ)でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!』

 

 現れたのは、中々奇抜で過激なコスチュームに身を包んだ女性ヒーロー二人だった。

 一人はスカイブルー、一人は真紅のベースカラーのコスチューム。チアリーダーのようなノースリーブのトップスにへそ出しルック、ふわりと空気をはらむ短いパニエスカート。手は本来のサイズより二回りは大きいきぐるみのようなキャットハンドに尻尾と耳のようなヘッドセット。

 猫をモチーフにしたらしいコスチュームを着た女性ヒーローのテンションと対照的な、嫌々連れてこられたような顔の不機嫌そうな少年がそばで「なにやってんだこいつら」みたいな目で二人を見ているのがなんともいえないシュールさだった。ついでに生徒側の温度差も。

 

「今回お世話になるプロヒーロー、『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

「連名事務所を構える4名一チームのヒーロー集団!ワイプシ!山岳救助などを得意とするベテランチームだよ!キャリアは今年でもう12年にもな……」

「心は18!!!」

 

 バッチリ決めポーズをキメたにも関わらずさらっと紹介され、本来なら喝采を浴びる場面だろうに、ヒーローオタク節全開で熱く解説してくれるイズクに呆気にとられたりまた始まった、と生暖かい目を向けていてノーリアクションなA組一同に決めポーズがぐらついていた二人。だが青い方のプッシーキャッツが猫もかくやのスピードでイズクに接近、猫パンチを顔面にやさしめに見舞って大体の年齢がばれそうな情報を遮った。

 

「ここら一帯は私らの私有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

「遠っ!!!!」

 

 思わず叫んでしまうのもむべなるかな。

 崖上から眼下の森を一望できる場所から見ても、赤い方の女性が指さした山は相当距離があるのがよくわかった。いやむしろ、鬱蒼と茂る木々のせいで地上がどんな状態かは判然としない。実際にここから直線距離で向かったとしても数時間は下らないだろう。このままバスで崖沿いに向かうとすれば、その倍以上の時間を迂回に費やすだろうことも。

 

 だから、A組の面々もようやく不穏な展開を肌で感じとった。

 この何もない場所に、非合理的なことが嫌いな相澤先生が「何の目的もなく」降りろと言うわけがないのを、私たちはこれまでの無茶振りでよくよく知っているからだ。

 

「え……?じゃあなんでこんな半端なところに」

「いやいや……」

「バス……戻ろうか?な?早く……」

 

 だが、それに気づくのが致命的に遅すぎた。

 

「今は午前9時30分……早ければぁ……12時前後ってとこかしらん」

「ダメだ……おい……」

「戻ろう!」

「バスに戻れ!早く!」

 

 パニックムービーで逃げ惑う人々のように、焦燥に満ちた表情でバスに駆け寄った――つまり、プッシーキャッツたちから背を向けたクラスメイトたちは気付かなかった。

 

「12時半までにたどり着けなかったキティはお昼抜きね」

 

 なにかの予備動作のように、青いコスチュームのプッシーキャッツが身をかがめ、その両手を地面に押し付けた途端、まるで生き物のように平らな地面が隆起したのも。

 

「わるいね、諸君」

 

 さっきからこちらへと向かっているような、妙な地響き音も。

 

「合宿はもう、始まってる」

 

 瞬間、抗いようのない規模の土砂流が、A組21人を強制的に崖下に押し流した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。