人魚姫は英雄の夢を見るか?   作:一星

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白鳥の湖/再演

 

「あぁ、これだからお前を観るのは飽きないんだ」

 

 ガラスに虹を透かしこんだような美しい星色の瞳を眺め、恍惚とも陶然ともとれる、とろけた表情で絶望王はうっそりと微笑んだ。赤い(まなこ)がぞっとするほど艶やかに濡れた色を灯して光る。

 成熟しきっていない青年期の、アンバランスな魅力のある肉体に到底収まりきらない老獪な悪魔(なかみ)は、これだから目が離せないと、永劫に等しい生涯の、ほんの一瞬にも満たない命の彩りを愛でる。

 

 俺の()()。現実に打ちのめされて、あらゆる全てに絶望しながら、何年経っても癒えない傷を抱いたまま、それでも前進し続ける女。闇の中でも光を失わない人間。

 それがどれほど希少なことか。

 

「今も──()も、お前は俺を愉しませてくれる」

 

 さながら何が出るかわからないびっくり箱。致命的なまでに狂ってゆがんでいるのに、正しく見えてしまう者。過ちも醜さも、傷も、痛みも、一人で背負うには重すぎる十字架を背負って、あの人の子は今も、これからもそうやって重圧の中で生きていくのだろう。

 正しさと歪み、光と闇、清廉と混沌、相反する矛盾を抱えてなお、まともに見えてしまう奇妙な人の子。だれもあれを狂っていると気付けない、あまりに静かすぎる思考の怪物。

 

「観てるか悪友、人間てのはこれだから愚かしくて救えなくて、どうしようもなく面白くて愛おしいんだよなぁ」

 

 俺とおまえが不完全なこの生き物を観察し続けるのは、きっとそれ以上の理由を持たないのだろう。そう、絶望王は悪友と呼ぶものに心中で語りかけた。

 目元を手で覆い、誰一人手の届かないはるか上空で、高らかに哄笑する。幕引きが近いことを肌で感じとりながら、絶望王は顛末を見逃すまいと、再びその真っ赤な眼球で地上を見下ろした。

 

 

 

 **

 

 

「──ああ。揃いも揃って、なんて煩わしい」

 

 ぞっとするほど低いつぶやきが、口元と首元しかもはや残っていないAFOのガスマスクから漏れる。同時に炸裂した巨大な衝撃波はAFOへの攻撃と撹乱を続けていたエンデヴァーやエッジショットを吹き飛ばし、爆心地から離れたオールマイトや千晶でさえ顔を庇わなければならなかった。

 

 

「精神の話はよして、現実の話をしよう」

 

 

「筋骨発条(バネ)化」「瞬発力」×4 「膂力増強」×3 「増殖」「肥大化」「(びょう)」「エアウォーク」「槍骨(そうこつ)」。

 個性が幾重にも重ねられ、かき混ぜられ、地獄から生者を引きずり込まんとする幽鬼の手のような、膨れ上がった腕を携えて、酷薄にAFOは嗤った。衝撃波では体力を削るだけで決定力を欠く。なら、今ある最高の掛け合わせで殴り、オールマイトを確実に殺すと宣言した。

 

 

「そしてクリスティアナ。君も、ここで殺しておこう。残念でならないよ……弔にとって君は、もはやただの害悪でしかない」

 

 

 ゴミを捨てるような気楽さで、AFOは少女を明確に敵とみなし、尖兵を差し向けた。

 

 差し向けられた膨張していない反対の指先が黒化し、千晶の周囲にあの空間にタールを好き勝手ぶちまけたような”転送”が展開された。その闇の中から奇妙に膨れ上がった脳無が這いずり出してくる。いいや、それは脳無にしてはあまりにお粗末な成りをしていた。

 

 ぐずぐずに溶けた肉がなんとか人の形に寄り集まって固まった、個でありながら群体のような、醜悪な異形。その皮膚には素材に使われたものたちの名残があえて残されたように中途半端に目、指らしきなにかが無数にぼこぼこと突き出すように生え、失敗した福笑いのようにバランスなど全く無視してその巨体を斜めに横切る大きな口の中には、びっしりと生え揃った牙。

 もはやヒトの原型を留めていない巨人のような姿の怪物。その醜悪な姿は、心の弱いものはひと目見ただけで気が()れそうなほどの、身が恐怖で竦んでも可笑しくないほどに、おぞましい。

 

 

 今まで見た脳無のどれよりも無数に、何人もの人間を費やして作られたとわかる凶悪な見た目の異形を見て、オールマイトが、エンデヴァーが、エッジショットが、グラントリノが、少女の名前を叫んで駆け寄ろうとする。

 しかしそうはさせまいと、AFOは異形の腕を振りかぶり、オールマイトと激突する。衝撃波で二人の近くにいた3人のヒーローたちも吹き飛ばされないようにするので精一杯で、這いずるような動きで千晶に近づく異形を止めることもできない。おぞましい口腔からだらだらと滴る涎が、異形が何を考えているかなど、言われずとも察してしまうからこそ、駆けつけたくても駆けつけられない現状があまりに歯がゆい。

 

 

 

 だから──誰も、その怪物と対面した少女の顔を見損ねた。

 誰もが──その顔が恐怖に引きつったものと信じて疑わなかった。

 彼女が、化物と相対しても対して表情を変えずにいるなど、想像の埒外だったのだ。

 

 

 

 蠢いていた無数の四肢がしなる。それまでの緩慢さが嘘のように、弾丸じみた速度でスタートダッシュを切った肉塊が、外観から想像できる速さよりも疾く千晶へと迫ると、飛びかかるように目の前の新鮮な肉に手を伸ばした。

 それに応じ、千晶もまた動き出す。その健脚で落下地点から飛び退ると、異形がその足に備えた無数の関節を駆使して、人間では不可能な奇怪な動きで、減速もせず追撃してくるのをひらりひらりと躱していく。獲物を逃した怪物が、苛立ち混じりにおぞましい咆哮を轟かせて猛追する。

 ただ圧倒的な速さで置き去りにするのではなく、焦らすように、距離が詰まらないからと別の人間を襲おうだなんて思わせないように、飽きさせないように、緩急をつけては幾何学的に折れ曲がりながら荒野を疾駆する。その姿は、夜闇を引き裂く雷光。両者が走り去った後、尾を引くように生じた爆風で巻き上げられた砂埃と、砂塵に紛れて垣間見える残像を目で追うのがやっとなほどに、疾い。

 

 

「脳無を作る段階で出来た、命令どおりに動けない失敗作だが……外見をスマートにしなかった分、個性はよりぐちゃぐちゃに混ざりあって強くなっている。あの夜、君が他の生徒を守るために負けた脳無より強いよ、それは」

「おのれ、どけ!!」

「イヤだよ。邪魔はさせない。君が慈しんできた養い子、生徒が哀れに引き裂かれるのをここで指をくわえて眺めると良い」

 

 

「はは、埒が明かないな」

 

 

 シナトベと鍛え抜いた足を駆使して異形と怒涛の追いかけっこを続けていた千晶が、亜音速で飛来する肉弾をかまいたちで切り裂き、手にした槍で撃ち落としながら、切羽詰まった状況もものともせずに笑う。お返しと牽制にと氷の槍を連発するが、深々と突き刺さって貫通してもなお絶命しないしぶとさ、生命の成れの果ての醜悪さに吐き気を通り越して呆れ返っていた。

 

 というか、あれは貫通しているのではなく、最初の着弾の衝撃を感知した瞬間、その後ろの肉が貫かれないよう避けたのだと察した。なるほど、あの歪な肉体もゲル的な物理無効の特性があるのかと感心すら覚える。分離と結合が自在なのか、槍が着弾した部分から氷結の手を伸ばしても、全体を凍らせるに至っていない。……見た目に反してなかなか賢い。

 事実、こちらのフェイントや行動を学習して時々先手を打つように行動してくるあたり、失敗作でもAFOが千晶を殺すために差し向けるには十二分すぎるスペックなのだろう。

 

 

 だが、それでも千晶の脅威にはなりえない。物理攻撃無効化で氷結が効きにくいとはいえ、倒すのは容易い。意図的に体育祭で出さなかった風や電気、そしてまだ人前で見せたことのない水と氷の致死系技など、AFOが知りえない奥の手はまだまだある。手段さえ問わなければ、あの程度の怪物は技一つでどうにでも料理できる。

 だが一応あの失敗作の脳無も、犯罪者やチンピラをこね回して作られた改造人間。後で難癖をつけられないようにするためにも、殺すのはご法度。なれば、と千晶は走るスピードを徐々に落としていく。

 

 

「氷は効かないよ。凍らされたらその部分を削ぎ落として増殖・再生するようになっている。おまけに氷結の効きにくい特別製だ。さぁ、君にその脳無が倒せるかな?」

 

 

 AFOの嘲笑を聞いて、千晶は誰にも聴こえないほど小さく、ぽつりとつぶやいた。

 

 

 

「なんだ、その程度なのか」

 

 明らかな落胆を、言葉に乗せて。

 

 

 

 明らかに詰まっていく千晶と化物の彼我の距離に、長時間の高速移動についに疲れたかと、AFOが歓喜を、オールマイトや民衆が絶望に顔を染めていく。48時間もの間、霧の魔都で食事すら抜いて戦闘を続行できるほどのタフネスがある彼女にとって、退行によって大幅に身体能力を減退させられても、15分にも満たない短い時間で体力の限界に至るわけもないのだが、それを知るものは彼女以外にいない。

 ついに追いつめられたように足が止まっていく少女に、肉塊は歓喜の金切り声を上げる。

 

「星合さん!」

「星合‼」

 

 街頭モニターに映る同級生のピンチに、緑谷や切島が顔を青ざめさせ、爆豪ですら冷や汗を垂らす。スマホで中継を見ていた八百万が悲鳴さえ引っ込んだ震える喉で息を呑んで、横でそれを覗き込んでいた轟が切羽詰った声を上げた。

 少女の背中ばかりを映すヘリが、オールマイトとAFOの拮抗で空高く渦巻く気流を避けんと大きく旋回する。ヘリに乗っていたカメラマンが、この後に待つ少女の哀れな末路を想像して、せめてその四肢を無残に引き裂かれる姿を映すまいと、カメラと己の目を背けようとした、瞬間。

 

 

「──哀れな者たちよ、安心するがいい」

 

 

 凛と透る声が、空気を確かに震わせた。気付いた時には無造作に閃いた白い手から、薄い大ぶりのナイフが放たれており、空気を引き裂いて飛んだそれは肉塊の脳天に鋭く突き刺さる。極薄にして鋭利な切っ先が深々と刺さったにも関わらず、悲鳴一つ上げず、むしろ肉塊を蠢かせて取り込もうとする姿には生理的な嫌悪しか催さない。

 そんな正気から遠く離れた化物を、振り返って迎え撃つ千晶の体は震えていなかった。その顔に、諦めと絶望もない。むしろ、不敵な微笑みをたたえ、瞳孔の開いた蘇芳が静かに、されど獣のようにぎらりぎらりと燃え立っている。凄絶かつ堂々たる姿は、離れた所でもみ合っているオールマイトにも似た、圧倒的な存在感と安心感……ヒーロー性を感じさせるものだった。

 

 

 それを見て、誰もが悟る。

 疲労で足が止まったのではない。無駄に体力を消費するばかりだと厭って、逃げるのをやめただけだと。

 確かな勝算をもって──この少女は、真っ向からあの怪物を撃滅せんとしているのだ、と。

 

 

「お前たちにこの先はない。ゆるりと、眠りにつくといい」

 

 

 

 横になって休めと、休息を促す母親のような穏やかさに反し、断言する澄んだ声は冷徹に死刑宣告を下す。静かな声だったが、不思議と朗々と響いたそれは、モニター越しに応援し続ける民衆にも届いた。

 AFOがまず異常に気づく。センサーで周囲を把握する彼が無視できないほど、千晶を中心に刺すような冷気が吹き荒れ、周囲の地面や空気の水分を枯らしていく。

 ……いいや、枯らしているのではない。予め彼女が密かに仕込んでいた(ぶき)を分散させていたものを攻撃のために寄せ集めているに過ぎない。先程の追いかけっこで仕込んだのだろう。荒れ地全体から彼女の足元へと木が根を地中に張り巡らせるように細く広がっている、赤く発光する線が物語っている。その寄せ集めた水はどうなると思えば、いつしか、彼女の周囲に局地的な冬が下りている。

 

 地上には霜が下り、銀にきらめく細かな氷の粒が、上昇気流に乗って、少女の黒髪を揺らし、巻き上げ、夜闇に浮かび上がるように光を乱反射させる。空気の温度は急冷され、青白い雷光が唸るように駆け抜け、長いまつげの先が砂糖菓子のように氷の粒でコーティングされていく。

 

 戦場であることを忘れそうなほど幻想的な光景の中、唇から白い呼気をたなびかせて、氷の女王の如く君臨する少女は厳かに幕切れを告げた。

 

 

「たとえどれほどヒトの道を外れた醜悪な化物だとしても。生きて動いているのなら──停めてみせよう」

 

 

 牙狩りの若手でも指折りの精鋭に数えられ、若くしてエスメラルダの秘奥に到達せしめた鬼才が編み上げた、新たな奥義のカタチ。

 千年の牙狩りの歴史が積み上げてきた終極の秘技に、彼女にしか出来ない水晶宮式血濤道の技術と、ラインヘルツの時間停止が加わる。

 

 

 肉塊は何人もの腕が寄り合わさってできた太い指先で、少女の頭蓋を羽虫のごとくつまみ潰そうと緩慢に手を伸ばす。

 ──だがそれは、あまりに遅い。

 

 

 

 ぱきりと乾いた音とともに、伸ばされた指先が真っ青に凍りつく。

 無機質な表情とともに発せられた声とともに、静かにヒールが踏み鳴らされる。

 

 

 ──エスメラルダ式血凍道、(つい)の舞 

 

 

 かすかな声も紛れそうな戦場にあって、その声は不思議とよく通った。

 その声に応じるように、地面から生えた氷の十字架が肉塊を下から貫く。全てはすり抜けられず、少なくないダメージを負う異形はされど、肉塊を蠢かせて磔を逃れようとして──硬直した。ナイフによって異形の全身に這い回った血液が発動する。動画の早回し再生のように、異形の膨れ上がった四肢が白い霜にあっという間に覆われる。

 身を捩るたびに全身の細胞が無数の針を通されたような激痛が怪物を襲い、身じろぎのたびにぎしぎしと軋んだ音を奏でた。

 苦しげな絶叫が大きく開かれた口腔からほとばしるが、それすらも長くは続かなかった。

 氷の十字架から青い氷が溢れ──固体なのだから溢れようもないのだが、そういう風にしか人々には見えなかった──凍りついてなお抵抗する異形を押し込めるように声すら呑み込むと、細長い立方体に圧縮していく。

 

 

 ワン・フォー・オールが何人もの人間が、AFOという巨悪を滅ぼすために次代に託してきた希望なら。

 この技は、千年の永きに渡り、牙狩りが仲間の屍山血河の上に築き、紡ぎ、砥いできた、反撃の絶技──

 

 

絶対零度の棺(エータラルデルセロアブソルート)

 

 

 万象一切、厳冬に(とざ)す。

 荒野にそびえ立ったそれは、青く透明な氷で出来た、棺桶だった。

 

 

 

 

 

「……残念、わたしを殺したいなら、不死者でも持ってこないと」

 

 風に紛れるような小さな呟きひとつ。軽口を叩く気力すらなく、酷く身体がだるい。

 ふうう、と一仕事終えてため息を吐く薄い唇から、白く凍りついた息がたなびいていく。かすかな色気をはらんで虚空に投げかけられた鮮紅色は、先程までの獣めいた眼光どころか、生気すら失って虚ろだった。

 

 無理を押し過ぎたと、内心で舌打つ。むしろ蹂躙されたぼろぼろの肉体であれほど動けただけで驚愕ものだ──もっとも、牙狩りとしてはよくあるシチュエーションではあったが。絶体絶命のピンチなど、何度くぐり抜けてきただろうか。これよりももっとギリギリの死線を掻い潜ったことなど、数えるのも馬鹿らしいほどに。

 

 普通の脳無でも、USJ事件や合宿での戦闘で実感したとおり、全身の細胞を冷凍する絶対零度の小針(アグハデルセロアブソルート)ですら完全な足止めは無理だった。

 まして、あんなキメラの脳無を完全に無力化するには手段は選んでいられなかった。肉体の損傷と残りの血液量を考え、ギリギリ死なない程度にできる、確実に無力化する最善策。覚悟の上とはいえ、エスメラルダの奥義に、圧縮し閉じ込めた棺の内部時間を停止させる「段階」をプラスしたことによって跳ね上がる難易度と消費血液は、尋常ではない代償として千晶の身体を苛む。カタチこそなんとか保っているが、欠損を補う血の義足はもはや空洞で、身体をなんとか支えるので精一杯だ。走ろうとした瞬間に、足はひしゃげ、その場に崩れ落ちるだろう。

 

「(オールマイト)」

 

 脳無が倒されたことに気づき、こちらを自らの手で仕留めようとするAFOを必死に押し止める恩人を、速度が低下していくのが分かる思考回路でぼうやりと思い浮かべる。気を張っていなければ、気を失いそうだ。足手まといにならないよう逃げなければと思うが、もう身体も思考も限界をとうに超え、動かすことすら困難だ。戦いの余波で起きた衝撃波を、躱すことも出来ないほどに。

 あまりの風圧にこらえきれず吹っ飛んだ千晶の身体を、突如伸びてきた木の腕が絡め取り、地上へと引き戻した。

 

「大丈夫か!?」

「シンリン、カムイ……」

 

 過酷な幼少期を過ごした身として、同じような経歴の少女を助けんと飛び出した新進気鋭の若手ヒーローは、瓦礫を弾きながら少女を抱えたまま爆発から逃れ、瓦礫の山に着地した。

 

「オールマイトが心配だろうが、ここは危険すぎる。君はよく頑張った、避難しよう」

「は、い。……その前に」

 

 シンリンカムイの言葉に素直に頷きながら、背後を振り返る。千晶は、爆風でその中が見えないこと、そして上空のヘリが大きく気流を乱されて報道どころでないことを確認し、最後の気力を振り絞った。

 

 ──954血弾格闘術(Blood Bullet Arts)

 

 遥か彼方に離れてなお、その灼眼ははっきりと暴風の中の敵を捉えた。銃のような形にした指先が巨悪を狙う。拳銃の狙いを両手で定めるような体勢を取った彼女は、かすれた声で、けれどはっきりと言葉を紡いでいく。

 本来ならば血を込めた弾丸を敵に埋め込み、発生させた電気で攻撃する流派。だが、エスメラルダ式血凍道という技術を修めている彼女にかかれば、弾丸を埋め込まずともすでに対象に打ち込んだ血液が媒介を果たす。

 そして、千晶はとっくのとうにAFOに血液を忍ばせていた。接触は何度もあった。洗脳のために頭に触れるほど近くに居たのなら、絶対零度の小針(アグハデルセロアブソルート)を仕込むことなど容易い。そのかすかな痛みに気づけても回避は不可能、初見殺しの奇襲性こそ、エスメラルダ式血凍道の最も恐ろしい所である。

 巨悪の暴虐に一矢報いるため、恩人を救けるため。電撃の術式が千晶の体内の血液とAFOの体内に侵食した血液を呼応させる。

 

UNITED STATES OF(ユナイテッドステイツオブ)──SMASSSH(スマッシュ)!!!!!!

 

 

 果たして。

 オールマイトの最後の、渾身の一撃の寸前。

 AFOは全身を這い回る電撃で麻痺させられ、オールマイト渾身の一撃を防御することもできず地面に倒れ伏した。

 

 

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