生きたい私は貴女を呼ぶ   作:アステカのキャスター

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久しぶりに待っていた人ありがとうございます。
次の更新は感想次第ですかね。では行こう。


貴女は誰?

 前回を振り返ろう。

 

 カナが呼び出したかったサーヴァントは日本の中でも数人しかいない程の剣の実力者だ。

 

 日本史上最強の剣豪として名高い、江戸時代初期の剣術家。

 武蔵が創始したとされる流派“二天一流”を身につけ、大刀と小刀を用いる“二刀流”の達人。

 

 新免武蔵守藤原玄信──俗に多くの物語でこう呼ばれる。

 

 

 宮本武蔵──と

 

 

「ってわあああああああ!? 落ちてるうううううううう!?」

「なんか想像してたのと違うっ!?」

 

 

 空中で令呪の転移をしたせいでお互いに空中から地上までスカイダイビング真っしぐらだと言うのに随分と余裕のある2人。

 

 いや魔力切れに近い私にとっては余裕は無いが……

 

 

「貴女が多分私のサーヴァントだよね! 着地任せられる!?」

「ええっ、人を抱えてこの高さの着地を任せるなんてサーヴァントでもない限り……あっ、私今サーヴァントだった!」

「大丈夫なのこの英霊!?」

 

 

 あっ、これ結構残念なタイプの英霊だと直感的に理解する。と言うか理解してしまった。地面まであと数百メートル、いくら重力調整や軽量化の魔術をかけていてもこのスピードで落ちれば挽肉確定だ。

 

 

「まっかせてマスター!!」

「お願い!」

 

 

 地面にめり込むかと思ったが、私を抱えながら華麗な着地が出来たようだ。

 

 

「じ、地面だ。生きてるって素晴らしい……!」

「うわっ、あんな高かったのね」

 

 地面に足が着くと感動を覚える。

 よくあの高さから生きてるよね私。と言うか今言う事では無いが私のサーヴァントは刀こそ優れているが、女じゃないですか? 

 

 宮本武蔵って女の子だったの? 

 

 

「……とりあえず、私を抱えて東に向かって」

「東?」

「ここじゃまだ領域内(テリトリー)の可能性もあるし、何よりやるべき事があるから……自己紹介はその後でするから」

「わかった。じゃあ行きますか!」

 

 

 私はサーヴァントにお姫様抱っこされ、東のルーマニアに向かった。

 

 ってちょっと待て

 

「いや待って、別にお姫様抱っこじゃなくても良くない!?」

「うーん。却下!」

「何故!?」

 

 

 恥ずかしいので流石に抗議するも却下された。

 宮本武蔵は一目見て「アリ! ストライク!」と心の中で叫んでいた。まあカナの外見は肌は白く銀髪、整った顔立ちはご令嬢か王姫を連想出来るほど、魔眼のオンオフを入れない限りは紅い瞳をしている。『亜空の魔眼』の時は紫色に変色するらしい。

 

 まあまだ小柄な12歳、性格も悪くないので宮本武蔵にはストライクゾーンだった。

 

 

「幸先不安だなぁ……」

「不吉な事言わない!」

 

 

 主に貴女のせいですハイ。

 

 

 ────────────────────

 

 

「まさか地上まで逃げられるとは仕方ない。使い魔を──」

「いいえ、放っておいて構わないですよ。アサシン」

「何だと?」

 

 

 アサシンの後ろから声をかける正教者、シロウ・コトミネが水晶越しでの2人を見る。

 

「バーサーカーについては扱いが難しい事を配慮していましたし、マスターと共に逃げてもこちらの戦力には劣ります。精々黒のサーヴァントを潰す為に動いてもらいましょう」

「だが、奴等が黒の陣営に寝返った時は」

「その時はその時ですが、問題はありません」

 

 

 バーサーカーについては()()()()()()()()()()()()()()()のだから。バーサーカーは狂化のランクによって意思疎通が取れない。バーサーカーとして現界した宮本武蔵は狂化Cで戦いになるとマスターの指示や細やかな作戦が取れないのだ。

 

 故にシロウ・コトミネはバーサーカーを計画から除外し、使う時は城に攻め込む単純な作業を考えていた。

 

 

「宮本武蔵……確かに強力な存在ではありますが、この場所に押し留めていても使い所が難しいので、先程来たセイバーのマスターと同じ役割をしてもらいましょう」

 

 

 既にシナリオは決まっている。

 ならばバーサーカーは戦力潰しに丁度いいのだ。シロウ・コトミネは赤い外装をはためかせながら、他のサーヴァントの指示の為に姿を消した。

 

 

 ────────────────────

 

 

「どうにか、撒けた筈…………」

 

 

 あの浮遊する城から逃れたのは僥倖だろう。ライネスに後でお礼の品を用意する事は決定したとして、泣け無しの魔力でアサシンの感知に結界を張って居場所を隠す。幸い、霊脈に近い場所だったのは奇跡だろう。

 

 

「さて……バーサーカー。貴女の事を聞く前に教えて。私が居なかった場所では一体どうなっていたの?」

「うーん。サーヴァントのマスター全てがアサシンのマスターに任せてるから指示に従って欲しいって言ってたわね」

「つまり、サーヴァントはマスターが監禁されている事を知らない訳だね……」

 

 

 ため息つきながら携帯を取り出す。

 

「先生……」

 

 ロード・エルメロイII世に電話をかける。

 こういうところ、自分が現代魔術科に所属していて良かったと思う。

 きっと他の教師だったら電話なんて持っていないから、魔術師のプライドが邪魔して頼れる人が居なかったのだろう。

 

『貴様……いきなり休学届けを叩きつけておいて何の用だ』

 

 いきなりの休学に対しての怒りもある。

 にもかかわらず電話をかけて来たことに対しての困惑もある。

 ただ同時に、生徒が無事であることに対しての安堵も見られるのだから、彼はいい先生だ。

 どんな生徒であっても、悪態をついたとしても、基本的には見捨てない善人だ。カナは苦笑混じりに返答する。

 

「ライネスから聞いていませんでしたか?」

『聞いたさ。それでも休学届けを勝手に出して勝手に行けば怒りも湧く。それで、何のようだ?』

「赤の陣営に参加する全員の名簿を送ってくれませんか? 多分ですけど時計塔に送られてますよね?」

『何故だ? 君は赤の陣営に居るのだろう。大して意味などないだろう』

「赤の陣営から逃げたからですよ。私はライネスの贈り物のおかげでなんとか脱出しましたが、私を除いた他の4人は操られて監禁されてます」

『何だと……?!』

 

 

 流石にその想定はしていなかったのだろう。

 しかし、サーヴァントが召喚された以上どうにもならない。下手に魔術師を派遣した所で返り討ちに遭うだけだ。

 

 だが、カナは一つ思い浮かんでいた。アサシンのマスターが言峰神父で他の4人と自分を合わせて6人、あと1人にいない。つまり、まだ神父に操られる前か、危険を察して単独行動しているマスターがいる筈だ。その人と行動できれば生き残れる僅かな勝算が立つ。

 

 

『……赤の陣営には獅子劫界離、フリーランスの死霊魔術師が参加している筈だ』

「獅子刧さんが? ……確かあの人はあの場に居なかったから、多分当たりでしょう。その人を探して行動します」

『よろしい。彼には此方から連絡しておこう。ところで君が召喚したサーヴァントは何のクラスだ?』

「バーサーカーで真名は宮本武蔵です」

『何!? ならば問題ないと思うが、私から出来る事はそれが精一杯だ。死ぬなよレディ』

「分かってますよ。先生」

 

 

 電話を切り、獅子刧さんの連絡が来るまで待機するのが決まった。とりあえずは野宿する事になるが、固有結界の荊を地面に突き刺して霊脈から魔力を供給出来るから明日になれば完全回復しているだろう。

 

 

「さて、バーサーカー。一応確認だけど、貴女は宮本武蔵で間違いないんだよね?」

 

「うんうん。新免武蔵守藤原玄信────人呼んで宮本武蔵。間違いないわ」

 

「逸話なら宮本武蔵は男な筈なんだけど……」

 

「あっ、それマスターちゃんにも言われた。あっ、貴女とは違うマスターにね。私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()として召喚されたの」

 

「並行世界……第二魔法の応用なら召喚には有り得るかもしれないけど、どうして並行世界から?」

 

「うーん、確かダヴィンチちゃんが推測してたけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()らしくてさ。まあよくわかんないけどマスターは分かる?」

 

「嘘……でしょ?」

 

 

 それは並行世界のもう一つの可能性。

 例えるならアーサー王物語で登場するアーサー王が女として存在する事は特殊な例とは言え存在する。何故なら()()()()()()辿()()()()()()()()。アーサー王が男でも女でも歴史さえ狂わなければ問題ないが、歴史から外れ修正力によって世界ごと修正される現象。それが「剪定事象」だ。

 

 何かしらの巨大な事件などを契機に、全く別の歴史を歩んだ世界は世界に切り離され消去される。

 

 数多くの並行世界がある中で、次々と増えていく並行世界全てを存在させるエネルギーは何処にも存在しない。地球レベルの文明では、それが100年を超えると太陽系は破裂してしまうとされている。

 

 そこで同世界観では100年単位で一度編纂し、「少なくともあと100年は続けられる」と判断した善い流れの世界だけを選び「編纂事象」として存続させ、悪い流れの世界を「剪定事象」として未来を閉ざし切り捨てるシステムがこの世界の抑止力に関わる事なのだ。

 

 カナの家系の『亜空の魔眼』もそれに繋がっているとされるから知っているが、それを知るのは根源接続者や、抑止力そのものだろう。

 

 だが、この宮本武蔵についてはそれとは全く異なる存在。物語の結末に反して世界の抑止による修正力によって世界ごと消え去った存在が、消滅される世界から弾き出された架空の存在。

 

 

「別世界の……宮本武蔵」

 

 

 歴史に正しく記載されなかった架空の英霊は恐らく、この世界の宮本武蔵と同等、それ以上の力を宿しているかもしれない。そう考えてるうちに疲労で腰が抜けかけ、倒れそうになる所をバーサーカーが支える

 

 

「私はカナ。カナ・フローゼ、貴女のマスターです」

「うん。可愛いしアリ!」

「抱きつくのは後にしなさい!」

 

 

 バーサーカーの要素は『美人に抱きつきたい』事一点に関して話を聞かないかな? と下らない事を考えているが、どうにも動けない事に気付いた。魔眼の影響と魔力消費、アサシンの戦闘による緊張感がまだ引き摺られている。今にも意識が飛びそうだが、力を振り絞ってバーサーカーに告げる。

 

 

「バーサーカー、私の願いはただ一つ。

 ────生きて、生き抜く為に力を貸してほしい」

 

 

 これはエゴだ。自分が生き残りたいが為に彼女を利用する最低な行為かも知れない。サーヴァントとマスターなら当然かも知れないが、カナは違う。人道的で、まだ12歳の子供なのだ。

 

 それでも、戦わなくてはいけない。

 

 コレは聖杯戦争なのだから。

 

 

「任せなさい! この宮本武蔵が貴女の力となり剣となる事を誓うわ!」

 

 

 だが、そんな事情を真正面から受け止めるような返事が返ってきた。

 ならもう何も心配要らない。この戦い、絶対に生き残ると心に誓った。

 

 

「そう……よかっ……た……」

 

「あっ、マスター!」

 

 

 その言葉に安堵しながらも、カナは疲労で意識を手放していた。

 

 




『……ステータスが公開されました』


クラス:バーサーカー
マスター:カナ・フローゼ
レア度 : ☆5
真名:新免武蔵守藤原玄信(宮本武蔵)
性別:女
身長:167cm / 体重:56kg
属性:混沌・善


[ステータス]
筋力:A
耐久:B
敏捷:A
魔力:E
幸運:A
宝具:B

[クラススキル]

狂化(EX) バーサーカーとして現界した宮本武蔵は文字通り命のやりとりの最中ではシビアな考え方をしている。それ故に狂っているとも言える為、規格外とされている。戦闘時にそれが表に出る。
対魔力(C) セイバークラスならAだがバーサーカークラスの為、ランクが落ちている。
騎乗(D) 巌流島にて小舟に乗った逸話から再現された騎乗スキル、ただし乗りこなせるのは頑張っても車程度まで。
神性(D) 宝具の力の先にある対因果宝具。仁王倶利伽羅の力を持つ武蔵に仏としての強さが神性化した為、スキルに反映された。
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