東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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台風が来てても止まらねぇからよ!

と言うか、危ないからって仕事が休みになった。


第十三話 「転生香霖と白銀竜」

 ドラゴンの姿になれるようになってから数日、この姿でも問題無く動けるようになった僕は、現在人里でのお披露目に向けて立ち回りの練習を行っていた。のだが、

 

「霖之助さん、もっと背筋を伸ばして顎を引いた方が見栄えが良いですわ。それと、視線は常に近くを見ていてもどこか遠くを見つめているような、超然とした雰囲気を出した方が断然素敵よ」

『……何で君が指導に回っているんだい?』

 

 ドラゴンの姿の僕にあれこれ注文を付けて来るのは紫だった。最初は煙晶竜と叢雲からアドバイスを貰っていたのだが、途中から呼んでも居ないのに参戦して来て、妙なこだわりを見せて僕の振る舞いにああじゃないこうじゃないとダメ出し話して来たのだ。

 

「だって、ドラゴンの姿の霖之助さんってとっても格好良いのよ? それなのに霖之助さんの立ち振る舞いで格好良さを台無しにするわけにはいかないでしょう?」

『ドラゴンの姿が格好良い、か……男の子みたいな感性だ』

「……洋の東西に関わらず、竜は力ある存在の象徴です。それに憧れを持つのに、人妖の差も男女の差も関係ありませんわ」

『拗ねるなよ。悪かった、ちょっと無神経な言葉だった』

 

 僕が男の子みたいと言うと、紫はつーんとそっぽを向いてしまった。

 怒らせてしまったようだ。男の子みたい、はちょっとデリカシーが足りないセリフだったな。

 

「紫様。こちらから押しかけているのに、あまり森近様にご迷惑を掛けてはいけませんよ? 申し訳ありません森近様、無理矢理押し掛けた上に注文ばかりで」

『構わないよ。実際問題、第三者の目からアドバイスを貰えるのはありがたいからね。それに、今のは僕の言葉にデリカシーが欠けていたのが原因だから、謝らなければならないのは僕の方だよ』

 

 紫の隣から僕に謝って来たのは、九つの狐の尻尾を持つ女性。紫の式である『八雲藍』であった。

 前々から紫の話で彼女の人となりは何となく知っていたが、今日初めて実際に顔を合わせた彼女の印象は……主を良くサポートしてくれる、優秀な従者の鏡と言った所だった。

 狐と言うと、僕は前世の配下であった『白狐』の『ナインテイル』と、『妖狐』の『命婦』を思い出すのだが、いたずらっ子の問題児たちであったあいつらに比べると、雲泥の差と言うレベルで藍の方がしっかりしていそうだった。まぁあいつらも頼りにならなかったと言う訳では無いが、ちゃっかりしてた印象の方が強いからなぁ。

 

 それともう一人、藍の式であるという二股の尻尾を持つ化け猫の『橙』も来ていたが、そちらはこっちの話に加わらず、叢雲が面倒を見ているようだった。

 

『ともあれ、人里でお披露目をするあと数日だ。紫、僕は当日どう動けばいいかもう一度確認させてくれないか?』

「……そうね。当日の演出は私たちも手伝うから、貴方は普通に人里に降り立って、予め用意しておいたセリフを二、三言ってから戻れば良いわ。あんまり長居しても、ボロが出そうなだけだし」

「当日は私も紫様と共に全力でサポートさせていただきますので、お任せください!」

『ああ、よろしく頼むよ』

 

 紫の機嫌はまだ直っていない様だが、必要な会話ならしてくれるようだ。後でご機嫌取りとお礼の為に何かお菓子でも用意しよう。折角だから奮発して、『黄金の林檎』を使ったアップルパイでも焼こうか?

 それにしても、藍は初対面だというのに異様に僕に好意的と言うか、丁寧に接して来る。

 はて、何故だろうか? そう疑問に思っていると、紫が答えを教えてくれた。

 

「前に霖之助さんが藍や橙の分も含めたお土産を持たせてくれたでしょう? あの時お土産に入ってた油揚げを食べてから、藍ったらすっかり霖之助さんの料理のファンになっちゃったのよね~」

「ゆ、紫様っ!」

 

 何と、原因は僕の料理であったようだ。

 しかし食べ物が原因か、ますますナインテイルと命婦を思い出す。あいつら食いしん坊というか、食い意地が張ってたからなぁ。特にナインテイル。

 

『おや、そうなのかい? なら今日のお昼は腕によりをかけて作るから、是非食べて行ってくれ』

「よ、宜しいのですか?」

『もちろんだとも。自分の作った料理を美味しく食べて貰えるのは嬉しいからね。僕の料理のファンだというなら、これ位のサービスはするよ』

「あ、ありがとうございます!」

 

 よほど嬉しかったのか、大きな声で感謝の言葉を告げた藍は、ぱぁっと顔を輝かせ、盛大に九本の尻尾を揺らしていた。

 配下の召喚モンスターたちもそうだったが、彼女もまた尻尾に感情が現れる様である。

 

「なによ、藍だけ特別扱い? 霖之助さんはこういう娘が好みなのかしら?」

『いい加減機嫌を直してくれよ。言っただろう? 僕は自分の料理を美味しく食べて貰うのが好きなだけさ。それに、藍は確かに魅力的な女の子だが、紫だって僕にとってはとても魅力的な女の子だよ』

「そ、そう……」

 

 なら良いわ。とだけ言って、紫はそっぽを向くを通り越して、完全に僕から背を向けてしまった。

 余計に怒らせてしまったのだろうか? 言葉の選択を間違ったのかもしれない。

 

「紫様は、もう怒っていらっしゃいませんよ。ただ、面と向かって魅力的と言われるのが久し振りで照れているだけです」

『……思ったんだが、君達って能力を使って僕の思考を読んでいるのかい?』

「能力何て使っていません。単に森近様が読み易いだけですよ?」

 

 前世でも似たようなことを言われた気がするな。僕ってそんなに考えが読み易いのかなぁ。

 

 

 

 そんなこんなで時は経ち、気付けばお披露目の当日となっていた。

 

 

 

「おーい霊夢。お前も『竜見物』に来たのか?」

「あら魔理沙……竜見物って、何?」

 

 知り合いに催し物があると聞いて人里に来ていたが、荷袋を片手に持つ霊夢に遭遇した。

 てっきり霊夢もその催し物を見に来たのかと思ったが、反応を見るにどうやら違うらしい。

 

「なんだ、知らないのか? 叢雲の奴が言ってたんだよ。今日は人里の連中が前々から見たいって言ってた生きている本物の竜が見られるって」

「また竜信仰の連中か……」

 

 霊夢が忌々し気にそう呟く。

 竜信仰の連中とは、最近人里で絶大な人気を誇る、新興宗教の布教をしている頭に角を持つ人外の巫女『都牟刈叢雲』と、叢雲が連れている竜の像『煙晶竜』の二人組の事だ。

 竜信仰が現れるまで、幻想郷には宗教者と呼べる存在が博麗神社の霊夢しかいなかった為、今まで独り占めにしていた客を持って行かれたと霊夢は嘆いていた。が、

 

「おいおい、別にあいつらは博麗神社に迷惑を掛けたりした訳じゃないだろう?」

「迷惑かけられてるわよ! あいつらが出てきたせいで、うちの参拝客がめっきり減ったんだから!」

「いや、博麗神社に参拝客なんて元から殆ど居なかっただろ?」

「うっさいわね! その殆どが更に減ったのよ!」

 

 竜信仰が人々に持て囃されている一方、博麗神社は昔から人気が無い。

 そもそも立地的に、幻想郷の外れにある博麗神社は、普通の人間からすれば移動するのにも一苦労で、祭りの時でも無ければ態々行こうとする者が皆無なのだ。

 それでも頻繁にやって来る者が私も含め皆無と言う訳では無いのだが、

 

「元から博麗神社は、人間より妖怪の参拝客の方が多い妖怪神社じゃ無いか。幾ら目立っているからって、竜信仰に八つ当たりするのは良くないぜ」

「判っているわよ。後、妖怪共はお賽銭を入れて行かないから参拝客とは認めないわ」

「そんなこと言ったら、博麗神社の参拝客が本当に居なくなっちまうぜ。あの神社にお賽銭を入れて行くような奇特な奴、香霖くらいじゃないか」

「霖之助さんは良いのよ、霖之助さんは」

 

 博麗神社にお賽銭を入れて行く者と言うと、真っ先に思い浮かぶのが香霖の姿だった。

 あいつは良く霊夢の元に差し入れとして食料を届けに行き、その度に必ず神社にお参りしてお賽銭も入れて行くのだ。まったく、律儀な奴だぜ。

 

「そう言えば、香霖が毎回神社に入れるお賽銭をどうやって確保しているんだろうな? あの繁盛していない香霖堂にそんな金があるようには見えないし、謎だぜ」

「金払いの良い常連さんが居るそうよ? お賽銭に使っているお金の出どころは殆どその人の払ったお金だそうだから、「君も彼女に感謝しておきなさい」ってこの間言われたわ」

「彼女って言う事は女か。常連って言う割にはそれらしい奴に会った記憶が無いが……もしかして咲夜の奴か?」

「咲夜ではないらしいわね。私や魔理沙の知る相手ではあるそうだけど」

「うーん、判らん」

 

 香霖も香霖で謎が多い奴だ。

 繁盛していない割に生活に困っているようには見えないし、最近は何処から手に入れて来たのか、肉だの卵だのの食べ物を惜しげもなく私や霊夢におすそ分けして来る。助かっているが。

 それに前々から霊夢とは違う意味でマイペースな奴だったが、レミリアの起こした紅霧異変の後くらいから更に大らかになったと言うか、泰然自若となったと言うか……いや、正直ちょっと大雑把になったな、うん。

 

「まぁ、そのおかげで結構得してるんだがな……」

「急に何言ってるのよ魔理沙」

「何でも無いんだぜ」

 

 首を振って霊夢に返す。そんなやり取りをしていると、にわかに人里の広場が騒がしくなる。

 どうやら、叢雲が言っていた竜を連れて来るって言う時間になったみたいだな。

 

「お、始まるみたいだな。とにかく行こうぜ霊夢。生きた竜を見れるなんてレアだぜ」

「はぁ、まぁそうね。見るだけ見てくわ」

 

 霊夢と共に人里の広場、竜信仰の黄金像が置かれている場所に大勢の人間が円となって集まっていた。

 円の中心のぽっかりと空いたスペースには、緑銀の髪に白い角を生やす人外の巫女、叢雲とその肩に乗る竜の像、煙晶竜の姿が見えた。

 それと、集まっているのは人間だけかと思ったが、よくよく見ると妖怪の姿もちらほら見かける。丁度近くに知り合いがいたので声を掛けた。

 

「よう、レミリアに咲夜。お前らも竜見物に来たのか?」

「あら、魔理沙に霊夢じゃない。ええそうよ、折角本物のドラゴンが見られるって言うのよ? 見逃す手は無いわ!」

「私はお嬢様の付き添いで来ただけですけどね。まぁでも、人並みに楽しみではあるわ」

 

 私が声を掛けたのは吸血鬼のレミリアと、そのメイドの咲夜だった。

 見た感じ、二人共竜を見るのが楽しみで仕方が無いらしい。レミリアは目に見えて興奮しているし、咲夜もクールぶってはいるが、どこかソワソワしながら叢雲の方へと視線を向けていた。

 

「なんだ、随分嬉しそうだなレミリア。そんなに竜が好きなのか?」

「当ったり前よ! 吸血鬼の代名詞であるドラキュラは竜の子って意味なのよ? ドラゴンが嫌いな吸血鬼なんて居ないわよ!」

 

 そのままレミリアが、興奮のままドラキュラと竜に関する長ったらしい話を開始しようとしたが、すんでのところで、広場の真ん中にいる叢雲からもうすぐ竜が到着する。という声が聞こえて来た事で中断となった。た、助かったぜ。

 叢雲は竜が降り立つ場所を確保する為に見物客たちを移動させると、十分にスペースを確保できたと判断したところで竜見物の開始を宣言した。

 

「皆々様、本日はお集まりいただきありがとうございます。この度は多くの希望の声を受け、この人里に生きた竜をお招きさせていただく事が叶いました。どうか実際に見て、肌で感じて、竜と言う存在が如何様な存在であるのかを知っていただければ幸いです。 ―――それでは『白銀竜』様、お願いします!」

『―――承知した』

 

 叢雲が空へ向けて呼びかけると、上空から重く圧し掛かる様な低い声が響いて来た。

 

「……すげぇ」

 

 私は、何とかそんな言葉を絞り出すことが出来たが、レミリアも咲夜も、あの霊夢でさえも言葉を失って空から降りて来たその存在の異様に圧倒されていた。

 

 白銀竜、そう叢雲は呼んでいたか。名前の通り磨き上げられたかのような白銀の鱗で覆われた巨大な体が空に浮かんでいる。

 長く伸びた尻尾は途中で二股に分かれ、その背中からはレミリアのものに似た細身の長い翼が六枚も大きく広がっていた。

 頭部からは、大きく太い二本の角が前方へと曲がって伸びていて、鼻面には小さめの角が縦に三つほど並んでいる。

 額には虹色に輝く第三の瞳が存在して、満月の様な黄金の瞳が静かに広場に集まった見物客たちを見渡して―――っ!?

 

「な、なぁ霊夢。あの竜って、もしかして?」

「……ええ、多分霖之助さんね」

「「えぇっ!?」」

 

 霊夢の言葉にレミリアと咲夜が驚きの声を上げる。けど、私と霊夢は確信していた。あの竜が香霖であると。

 あの竜が周囲の見物客たちを見渡した時、一瞬だけこちらへと視線を向けて来た。その時見た竜の目が、私や霊夢を見る時の香霖の目と、全く同じだったのだ。

 間違いない、あれは香霖だ。

 

「後で霖之助さんから、きちんと話を聞き出さなきゃね」

「ああ、そうだな」

 

 私と霊夢が確認し合っていると、初めて竜を見た衝撃が収まって来たのらしく、見物客からの割れんばかりの歓声が聞こえて来た。

 香霖、何でそんな姿になっているんだよ。絶対理由を聞き出してやるからな。




白銀竜、一体何之助なんだ? (霊夢と魔理沙には速攻でバレた)

話したからでも無く、そう思うだけの証拠があったからでも無く、目と目が合って確信を得たって良いですよね。絆を感じて。

次回。霊夢と魔理沙、ついでにレミリアと咲夜に転生香霖の事情を話します。

あぁ~、そろそろ『春雪異変』に入りたいんじゃ~。転生香霖は直接異変に関わりはしませんけど。(間接的に関わらないとは言っていない)
原作『妖々夢』との大きな違いは、自機組に叢雲&煙晶竜が混じっている事と、魔理沙が超強化されている事ですかねぇ。

霊夢と咲夜はどうしたかって? いやぁ~、あの二人は魔理沙のミニ八卦炉みたいな魔改造しやすい強化アイテムが無いからなぁ~。
今の時点では、霊夢を強化するアイテムを紫と転生香霖で共同開発したり、咲夜を強化するアイテムをパチュリーと共同開発する。みたいな話を作るのもありかなってくらいです。
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