東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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東方剛欲異聞……幻想郷産の石油とはたまげたなぁ。

これには燃料問題に悩む霖之助もニッコリ。


第十五話 「転生香霖と半竜のお仕事」

 人里での白銀竜のお披露目からしばらく経つが、今では定期的に白銀竜の姿で人里に顔を出すのが恒例となっている。

 ボロを出さない様、話し方に注意しなければならないのは面倒だが、白銀竜の登場により竜信仰の人気は更に爆発している。

 能力を完全開放する為にも、この流れを断ち切らずに続けて行きたい。

 

「では旦那様、本日もよろしくお願いしますね」

『ああ、任せてくれ』

 

 白銀竜のに変身し、頭の上に叢雲とその肩に乗る煙晶竜を乗せて空へ飛び立つ。

 別々に登場するより、竜に乗って現れた方が印象深いという紫の意見を参考にして、僕が人里に姿を現す日はこうして二人を乗せて飛んでいるのだ。

 

「風が気持ち良いですね、旦那様」

『そうだね。竜の姿で空を飛ぶのは、魔法で空を飛ぶのとは違った爽快感があるよ』

『それこそが我ら竜の心じゃよ。儂も早く肉体を取り戻して、キースと共に空を飛びたいものだ』

 

 竜の姿で飛んで行けば、人里には直ぐに着くのだが、時間に余裕もあるしこうして他愛のない話をする時間も好ましいので、僕は気持ちゆっくりと空を飛ぶ。あまり強く羽ばたくと、巻き起こった風で周囲が酷いことになると言うのもあるのだが。

 

「旦那様と煙晶竜様は前世で出会い、それからずっと共に居るのですよね? どのように出会ったのですか?」

 

 叢雲がそんな事を訊ねて来る。煙晶竜との出会いかぁ、今思うと恐ろしく偶然が重なって巻き起こった出会いだったな。

 人里に着くまで時間は無いが、軽く触り程度なら話せるだろう。

 

『煙晶竜とどんなふうに出会ったのか、か……あれは本当に偶々でしたよね?』

『うむ。あの時キースが来てくれなければ、随分と酷いことになっていただろうな。おそらく、儂の手で我が眷属たちに甚大な被害を出すことになっていただろう』

 

 煙晶竜との出会いは、ゲーム内で未到達エリアを更新していた時に起こった物だ。

 当時ゲーム内では戦争イベントが起こっており、僕たちプレイヤーは『魔神』と言う存在とその配下たちと敵対していた。

 僕が未到達エリアのエリアポータルである『岩雲城』に辿り着いた時、その地下では魔神たちの首魁である老人姿の魔神が儀式を行っていた。

 その儀式の内容こそが、当時すでに滅んでいたドラゴンの最初の王である煙晶竜の霊体を捕らえ、それを従属させて自分たちの戦力とすると言う物であった。

 儀式の途中でその場を見つけた僕は、その儀式を妨害する為に襲撃を掛け、最終的に煙晶竜の霊を救い出すことが出来たのだ。

 

『懐かしいのう。当時からキースは異端な戦い方をする召喚術師でな? 魔法で巨大な悪鬼の姿に変身し、縛霊身となっていた儂を素手で打ち倒して束縛を外してくれたのだ』

『打ち倒して、って別に倒しては居なかったでしょう? それに半ば操られた状態の体を煙晶竜が押し留めていましたから、それほど大変でも無かったですよ』

 

 あの時勝てたのは中途半端な状態の縛霊身だったからだ。煙晶竜の強さは良く知っている、もし全開状態で襲い掛かられていたら? 僕は間違いなく死に戻っていただろう。

 だが、叢雲が気になるのは別の部分であるようだった。

 

「素手、ですか……武器はお使いにならなかったのですか?」

『一応鉄球を投げつけたり、魔法で飛ばして砲撃したりもしてたけど、基本的には素手での格闘戦だね。変身した状態でも使える武器が無かったし』

「そうですか。その場にわたくしが居れば、旦那様の剣として共に戦うことが出来ましたのに……」

 

 どこか悔しそうに、叢雲はそう口にしていた。

 こうして共に生活していると忘れそうになるが、彼女の正体は神器である剣、ようは武器である。

 そして僕は日の本最強の神剣を自負する彼女に選ばれた使い手であった。が、僕は未だに彼女を武器として満足に振るう機会を得られていない。

 この幻想郷で、彼女を振るうに足る敵と戦える機会など早々ありはしないのだ。それが申し訳なくもある。

 

『……すまないね、叢雲。君を振るうに足る敵や戦場を用意できれば良いのだが、そのレベルの敵と戦うと幻想郷への二次被害が酷い事になってしまうからね。召魔の森の復活まで、待たせてしまう事になりそうだ』

「存じています。けど、やっぱり思ってしまうのです。旦那様と共に戦いたい、剣としての本懐を果たしたい。と」

 

 共に戦いたい、その気持ちは痛いほど良く判る。

 かつての様に際限なく戦いに飢えている訳では無い。けど、かつての様にみんなで一心不乱に戦いたいとも強く思っている。

 僕が居て、召喚モンスターたちが居て、煙晶竜を始めとしたドラゴン達が居て、対する敵は薄氷の向こうに死が存在しているような強敵だらけ。

 そんな極上の戦場で、叢雲を手に戦うことが出来たらどれほど喜ばしい事だろうか。想像するだけで、まるで夢でも見ているような気分になる。

 

 だが、この想像は決して夢では終わらない。

 竜信仰を広めて僕が召魔の森を取り戻せば、それらは実現可能なものとなるのだ。

 

『叢雲、僕も君と同じ気持ちだよ。君を手に、共に戦いたい』

「旦那様……」

『その為にも、今は共に竜信仰を広めて行こう。召魔の森ならば、それは叶う。全力を出しても壊れない戦場、死力を尽くしてなお敗北を予感させる強敵。そんな連中がいくらでも居るのが、僕の召魔の森だ』

「それは……何とも楽しそうな場所ですね」

『ああ、そうだ。最高に楽しい、僕の自慢の城だよ。だから叢雲、一緒に取り戻そう。全力で暴れられる、極上の戦場を。それまで待っていてくれ』

「はい……いつまでもお待ちしています。旦那様!」

 

 叢雲は涙交じりの声で、力強く返事をした。

 だが同時に、叢雲が笑顔を浮かべている事を僕は感じていた。

 

 

 

 夜、人里での活動を終えた僕は一人、以前レミリアとした約束を果たす為に紅魔館を訪れていた。

 

「あ、いらっしゃいませ、霖之助さん。お待ちしていましたよ」

「やぁ美鈴、約束通り来たよ。通っても大丈夫かな?」

「はい。お嬢様も首を長くしてお待ちですので、どうぞ中へ」

 

 挨拶を交わしている相手は、紅魔館の門番をしている赤髪の少女『紅美鈴』だ。

 彼女には数日前に、約束を果たす為に今日訪れる事を記したレミリアへの手紙を渡すと共に、今日訊ねることを伝えてあった。事前連絡をきちんとしていた為、実にスムーズに話が進む。

 美鈴は門を開けると、そのまま僕を中へと案内してくれた。

 

「君、門を離れても良いのかい?」

「アハハ、実は私も竜の姿を見て見たくてですね。今夜は霖之助さんが来た後、非番にして貰ったんですよ」

「そうかい。みんな竜がよっぽど好きなんだね」

 

 気持ちは判る。ドラゴンと言うのは、存在そのものがロマンの塊なのだ。僕も最初のドラゴン配下である『アイソトープ』を召喚した時は、自分でも苦笑するくらい興奮していた物だ。

 そのせいで危うくアイソトープを失いかけた事もあったが、今となっては良い思い出である。教訓と言う意味でね。

 

 美鈴に案内されて着いたのは、紅魔館の南側にある広い庭だった。僕の変身した姿である白銀竜の大きさでも十分に収まるだけのスペースがある。

 その庭の館に近い場所にテーブルと椅子が用意され、そこではレミリアと咲夜が僕の到着を待っていた。

 

「ようやく来たわね。遅いわよ、霖之助」

「お待ちしていました、店主さん。今日はお嬢様の我儘を叶えるためにご足労いただき、ありがとうございます」

「ちょっと咲夜! 我儘とは何よ、我儘とは! 言い方ってものがあるでしょ」

「はぁ。他に言い方がありますか?」

「いや、無いけど……」

 

 相も変わらず、仲の良さげな主従である。

 咲夜の態度は、主人に対する従者の態度として如何なものかと首を傾げたくなる部分もあったが、裏を返せば信頼関係が無ければ出来ない様な気安い態度とも言える。

 レミリアと咲夜の関係は、僕にとっては好ましく思える物だった。見ていて微笑ましいからね。

 

「待たせたねレミリア、約束通り竜の姿を見せに来たよ。それと咲夜、僕が僕の意思でレミリアと約束したんだ。約束を果たすのは当然だよ」

「左様ですか」

 

 レミリアの傍に控えていた咲夜は、レミリアの対面の席へと僕を案内してくれた。

 案内された席に座ると、咲夜は時を止めてお茶やお菓子をテーブルに並べだした。へぇ、魔理沙から咲夜が用意するお茶やお菓子は気付いたらいつの間にか用意されていると言っていたが、実際にはこんな風に用意しているのか。

 時間が止まっている事を除けば、やっている事は普通にお茶とお菓子を用意しているだけだった。

 

「あら? ……そう言えば、店主さんには時間停止が効かないんでしたね」

「忘れてたのかい? 君の能力を考えれば、結構大事な事だと思うけど」

「店主さんと敵対する事はまず無いから、気にしなくて良いと言われたのですっかり忘れていました。しばらくお店に行く用事もなかったですし」

「言われた。って、誰に言われたんだい?」

「お嬢様ですわ」

 

 レミリアがそんな事を言っていたのか。

 彼女の能力は確か、『運命を操る程度の能力』。詳細は不明だが、その大層な名前に恥じないだけの、力に対する自身や周囲の信頼があるのだろう。

 でなければ、咲夜が自身の能力の天敵の様な僕の持つ特性を忘れる筈が無い。 ……と思う。

 でもどうだろう、素で忘れていた可能性も十分ある気がして来た。この娘はこの娘で少しずれていると言うか、マイペースな所があるようだからなぁ。

 

「そうか。まぁ、僕もうちの店の貴重なお得意様を敵に回すなんてことするつもりはないからね」

「つまり、忘れていたとしても問題無いという事です」

 

 何故か胸を張ってそう結論付けた咲夜は、そのままお茶の支度を再開した。

 慣れた手つきは流石本職と言うべきものであり、料理や菓子を作るのが専門で配膳にはあまり気を配らない僕には到底真似出来るような物では無かった。

 別にそれが悔しいと言う訳では無いが、流れるような手際を見ていると、僕ももうちょっと食卓を美しく見せる努力をするべきなのでは? という気分になった。

 

 

 

「さ、お茶も飲んで一息付けたし、いい加減見せて貰うわよ!」

 

 咲夜が用意してくれたお茶を、レミリアは気持ち急いで飲み干しそう言って来た。

 余程楽しみだったのだろう。余裕のある態度を崩さない様にしてはいるが、待ちきれないとばかりにソワソワしていた。

 

「判った判った。そう慌てなくても、直ぐに見せるよ」

 

 身を乗り出して来そうな勢いのレミリアを押しとどめ、白銀竜の姿になるために庭の中心へと向かう。

 十分に距離を取ったのを確認してから、僕は最近かなりこなれて来た竜への変身を行った。

 

『ふむ。翼の数だとか、額の目だとか、一般的なドラゴンの姿からは結構かけ離れているとは思うんだが……お気に召したかな?』

「わぁ……!」

 

 どうやら、聞くまでも無かったようだ。

 レミリアは竜となった僕の姿を、キラキラした目で一心不乱に見つめている。頬を紅潮させ、瞳に憧れを浮かべて見つめて来る姿は、見た目相応の少女にしか見えなかった。

 

「すごい……すごいすごいすごい! 見て見て咲夜! ドラゴンよ! 本物のドラゴン!!」

「ええ、ドラゴンですね。お嬢様」

 

 会話の内容だけなら、興奮するレミリアの言葉を咲夜が聞き流しているように聞こえるが、実際には咲夜も僕の姿に視線が釘付けで、若干心ここに在らずと言った様子だった。

 ちなみに、白銀竜の姿を見るのが初めての美鈴は、少々マヌケな顔でぽかんと口を開けていた。

 

『そこまで手放しに喜ばれると、流石に少々気恥ずかしいね。 ……レミリア、折角だから僕に乗って空を飛んでみるかい? ドラゴンに乗る機会なんて中々無いだろうし』

「! いいの!?」

『もちろんだとも。それくらいはサービスするさ』

 

 実際に買い物に来るのは咲夜一人の事が多いが、そもそも咲夜はレミリアのお使いで香霖堂に買い物に来ている。

 ならば、レミリアは列記とした僕の大切なお得意様だ。このくらいのサービスはやってしかるべきである。

 

 僕が乗り易いように、首を伸ばしてレミリアの前で伏せると、レミリアは少々優雅さに欠ける元気一杯の大ジャンプで僕の頭上へと収まった。

 

『乗ったね? それではしばしの間、遊覧飛行をお楽しみください。お嬢様』

「ええ、お願いするわ。咲夜! 美鈴! ちょっと行って来るわね!」

「お嬢様お一人でですか? 私も同行いたしますわ」

「あ、私も!」

「駄目よ! 一番乗りは私なんだから!」

 

 いや、別に誰かを乗せるのは初めてじゃ無いし、何なら一番最初に僕に乗って空を飛んだのは紫なんだが……。

 まぁ、その事実を僕の頭上で自慢げにしているレミリアに伝える必要は無いだろう。

 言わぬが花という事は、往々にしてあるものだ。

 

『まぁ、今夜は丸々付き合うつもりだから、二人の番も回って来るよ。順番が来たら存分に楽しんだら良いさ』

「そう言う事よ。それじゃあ霖之助、お願いね」

『お任せあれ』

 

 日頃の特訓により、余り風を巻き起こさずに僕は空へと浮かび上がる。

 十分地上に居る咲夜や美鈴から距離を取ったところで、大きく羽ばたいて一気に上空へと飛び上がった。

 今夜はあいにくの曇り空だったが、雲を突き抜けてしまえば関係無い。僕とレミリアは雲海を見下ろしながら、月明かりに照らされていた。

 

「羽ばたき一つで随分高くまで飛び上がれるのね。すごいわ」

『君、さっきからすごいしか口にしてないよ?』

「しょうがないじゃない。だってすごいんだもの!」

 

 語彙力が無くなっている事を指摘したが、レミリアはまるで気にしていないようだった。

 

「……ありがとう、霖之助。私、また夢が一つ叶ったわ」

『ドラゴンに乗るのが夢だったのかい?』

「ううん、素敵な出会いに巡り会う事。素敵な縁を結ぶことが、よ。運命と言い換えても良いけどね」

 

 運命、か。

 他ならぬ彼女が口にする運命と言う言葉は、他の誰が言う物よりも重い意味を持つのだろう。

 彼女は宝でも紹介するように語ってくれた。

 

「幻想郷に来て良かったわ。あの日、霊夢と魔理沙が現れた時から、紅魔館の止まっていた時間が動きだしたように感じたわ。運命が動き出したとも言えるわね」

『紅霧異変、か。君達にとってあの夜がターニングポイントだったように、僕に取ってもあの日は新たな始まりとなったんだよ』

「あら、そうなの?」

『ああ。と言っても、異変とは完全に無関係で偶々タイミングが重なっただけだったんだけどね』

 

 紅い霧が幻想郷を覆ったあの夜、前世の記憶と能力を取り戻したあの日こそが、僕と言う存在の新たな始まりだった。

 あの日から今までにかけて、本当に予想外の事ばかりが起きて、騒がしい毎日が続いている。

 かつては想像もしなかった事だ。今こうしてドラゴンの姿となって、吸血鬼のお嬢様を乗せて飛んでいる事もね。

 

「その話、聞きたいわね。聞かせて貰っても良いかしら?」

『ああ、良いよ。元々、この前みんなが僕の店に集まった時に話そうと思っていた物だからね。みんな早々に酔い潰れてしまったから、機会を逃していたんだけど』

「あれは……あのお酒が悪いのよ。美味しかったけど」

『まぁ、そもそも用意した僕が飲み過ぎると直ぐに酔い潰れる事を忘れていたのが原因なんだけどね。 ……さて、どこから話そうか。実は僕には、前世の記憶と言う奴があってね―――』

 

 

 

 どこまでも広がる白い雲の海と、夜空に輝く月と星。その狭間では吸血鬼の少女を頭に乗せたドラゴンが飛んでいる。

 まるでお伽噺の様な景色の中、昔語りをする僕の声と、それに相槌を打つ彼女の声だけが響いていた。




転生香霖「一緒に最高の戦場を取り戻す為に頑張ろう!」

巫女叢雲「はい、旦那様!」


こいつら男女がどうの以前に血の気が多過ぎである。

そして転生香霖とレミリアですが、ここに来て転生香霖は霊夢や魔理沙を差し置いてレミリアに前世云々の情報を明かすという行動に出ました。(これは修羅場フラグ)

レミリアを乗せて転生香霖が雲海の上を飛んでいるシーンは、アラ〇ンとジャ〇ミンが魔法の絨毯で飛んでいる所を思い出しながら書いてました。
あんなロマンチックなシーンを文章で表現出来る文章力が欲しい物です。
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