東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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めっちゃ長くなった。けど何とか後篇に収めたぞ!


第十八話 「転生香霖とクリスマス(後篇)」

 ブラックレインディアの引くソリに乗って紅魔館を目指して飛んでいるが……正直もうかなり疲れて来た。

 もういいんじゃないかなぁ、正体を隠す努力とかしなくても。

 

 霊夢に見つかり、何とかサンタのフリで乗り切った訳だが、なんだかどっと疲れてしまった。

 そもそも二人に正体を隠してプレゼントを届けたのは、事前に僕が霊夢と魔理沙に、君達の所にサンタは来ないと言ってしまった手前、顔を合わせ辛かったと言うのが原因だ。

 レミリアと咲夜にはそんなこと言っていないし、もう普通に会いに行ってお得意様へのサプライズプレゼントという事で渡してしまっても良いんでは無いだろうか?

 少なくともブラックサンタが出現したのなら、普通のサンタが出現する条件も整っているだろう。

 来年以降は本物に任せて、僕はさっさと今日配る分のプレゼントを渡して来てしまおう。

 

「そうだ、それが良い。そうしよう」

 

 そう考えると、一気に心が軽くなって来た。

 マヨヒガで皆を待たせている訳だし、さっさと終わらせてしまおう。

 

 

 

 なんて、そんな都合の良い事を考えていた時期が僕にもあったよ。

 現実は非情だ。そうそう思い通りに入ってくれない。

 

「む、こんな夜分に何者ですか! ここを紅魔館と知っての……え、え? ええ!? も、もしかしてサンタクロース? 本物のサンタさんですか!?」

 

 紅魔館の正門前でソリを着陸させ、こんな真夜中でも門番をしている美鈴を労いつつ、挨拶しようとした途端にこの反応だ。

 ここで僕はようやく自分の失敗に気付いた。僕は未だにメタモルフォーゼによって老人の姿となっており、この状態では僕が森近霖之助であるなんて、事情を把握しているか心でも読めない限り判りっこないという事に。

 

 ま、不味い。やってしまった。美鈴は完全に僕がサンタクロースであると信じている。

 今からメタモルフォーゼを解除して、実は僕だった何て言えない状態だ。

 それに……。

 

「わぁ~……!」

 

 そんな幼気な少女の様なキラキラした瞳で僕を見ないでくれ! 物凄く居た堪れないんだ!!

 ど、どうするべきだ? ブラックサンタが現れた以上、本物のサンタクロースが幻想郷に現れるのも時間の問題。

 そうなれば、僕が偽物だって言う事は直ぐ知られるし、結局は彼女の顔を曇らせてしまう事になるだろう。霊夢? あっちは知らん! 口に菓子でも突っ込んどけば機嫌を直すさ。

 そもそも霊夢も魔理沙も、子供の夢がどうのって柄じゃ無いだろう。サンタの話も中途半端にしか知らなかったわけだし。

 

 問題は美鈴の方だ。今ここで正直に正体を明かしておいた方が、一番傷が少なく済むが……。

 

「あ、あの! 紅魔館に御用ですか、サンタさん! 私、サンタさんに会うのは初めてで、えっと、えぇっと……!」

 

 興奮して上手く言葉が出てこない美鈴がしどろもどろになっている。

 目の前のこの少女の夢を壊すような真似、僕には出来ない。

 なら―――

 

「ほっほっほ! まぁまぁ、落ち着きなさいお嬢さん。メリークリスマス! プレゼントを持って来たよ」

 

 このまま誤魔化し通すしかない!

 僕は精一杯サンタクロースらしい口調を意識しながら、美鈴へ朗らかに笑いかけた。

 

「わ、私にですか!? 本当に!! あ、で、でも……私がプレゼントを貰っても良いんですか? 私は妖怪なんですよ……?」

「なに、儂がこの幻想郷でプレゼントを配るのは今日が初めてじゃからの。初回サービスと言う奴じゃよ」

 

 不安そうな顔をする美鈴に笑ってそう返す。

 ああ、やってやるよ! このままサンタを演じきって、皆を笑顔にして見せるさ!!

 

 若干可笑しなテンションになっている自覚はあるが、構わず僕は袋からプレゼントを取り出して美鈴に手渡した。

 

「わぁ……! あ、ありがとうございます! 一生大事にします!!」

「ほっほっほ。喜んで貰えて何よりじゃ」

 

 勢いが大事、勢いが大事。

 このまま流れに乗って行くんだ。

 

「……それでお嬢さん。この館に住む他のお嬢さんたちにもプレゼントを持って来たんじゃが、良ければ配るのを手伝ってくれんかな?」

「え、はい! それはもちろん構いませんが……良いんですか? サンタさんならこっそりプレゼントを置いて行くものじゃ……」

「なに、サンタとしてプレゼントを置きに来たのだとは言え、見ず知らずの者が館に侵入したなど門番であるお嬢さんの立つ瀬がないじゃろ? 普段はこんな事をしないんじゃが、今回は特別じゃよ」

「わ、私に気を使ってくれて……! ありがとうございます! そう言う事なら、是非ともお手伝いさせていただきます! ……あ、でも、私がここを離れる訳には……」

「ほっほっほ。なに、少しの間ならこ奴らにも門番の真似事は出来るじゃろう。それに、この後向かわねばならない場所もあるからの。それほど時間は掛けないつもりじゃよ」

 

 そう言って僕は、乗って来たブラックレインディアたちに目を向けた。

 余りレベルの高いモンスターでは無いが、雑多な妖怪程度なら十分轢き潰すことは出来るだろう。

 

「それなら……判りました。この紅美鈴、全力でサンタさんのお手伝いをさせて頂きます!」

「ほっほっほ。頼もしいのう」

 

 何かもう心が痛くて仕方が無いが、やる気満々の美鈴に案内して貰って、レミリアと咲夜の部屋にプレゼントを届けて回った。

 

「どうしてお嬢様と咲夜さんだけなんですか?」

「ほっほっほ。今回は特別と言ったじゃろ? あのお嬢さんたちが儂の事を話してくれたから、幻想郷に来ることが出来たんじゃよ。つまり、今回のプレゼントはクリスマスプレゼントと言うよりも、儂個人からのお礼という意味合いが強いんじゃ。お嬢さんに渡した分は、こうして案内して貰っているお礼じゃよ」

 

 まぁ、案内して貰えずとも渡していたがの。

 そう伝えると、美鈴は得心が行ったという顔をして、なるほど。と、返して来た。

 我ながら、次々嘘が出て来て申し訳なさ過ぎる。 

 というか、レミリアは吸血鬼なのに夜に眠るんだな。意外だった。

 

 あどけない表情で眠り、枕元には大きな靴下を飾っていたレミリアの事を思い出しながら、プレゼントも配り終えたしもう帰ろう。と、考えていると、廊下の向こうから足音がした。

 はて、こんな時間に誰だろう? 動かない大図書館だろうか? それともその使い魔であるという小悪魔? 足音からして紅魔館で雇っているという妖精メイドやゴブリンたちでは無いと思うが?

 疑問に思っている間にも、足音の主はどんどん近づいて来る。

 やがて姿を現したのは、僕の予想のどれとも違う人物だった。

 

「あれ、美鈴だ。それに……そのお爺さん、誰?」

 

 現れたのは、レミリアと似たデザインの帽子を被り、紅い衣装に身を包んだ、金髪の小さな女の子だった。

 とても可愛らしい少女ではあったが、何より特徴的なのが背中から生える一対の翼だ。

 枯れ木の枝に七色の宝石の様な物が連なってぶら下がっているように見える。この特徴的な翼の持ち主を、僕は霊夢や魔理沙から聞いて知っていた。

 

「い、妹様!?」

 

 妹様。そう呼ばれた彼女の名は『フランドール・スカーレット』。この紅魔館の主であるレミリアの妹であったはずだ。

 非常に危険性の高い能力の持ち主で、長い間館の地下に閉じこもっていたとも、幽閉されていたとも聞いていたが、実際の所どうなのかは詳しくは知らない。

 ただ、紅霧異変の少し後から、閉じ籠っていた地下室を出て館内を出歩くようになったとは魔理沙から聞いている。こうして出会うのもそうおかしなことでは無い。

 なので僕としては、見つかってしまったこと自体は驚きはあれど、まぁ仕方ないと半ば諦めの気持ちになっていた。

 しかし、僕を案内してくれていた美鈴の様子は、どうも見ず知らずの存在である僕が見つかって不味い。というだけのものでは無いように見えた。

 

「……ねぇ美鈴、誰なの? そのお爺さん。お客様? それとも美鈴のお友達?」

「あ、いえ、この人はその……」

 

 フランドールの質問に美鈴は言い淀み、僕へと視線を向けて来る。

 言って良いのかどうか判らなかったのだろう。というか、割と分かり易い恰好をしているのだが、彼女はサンタクロースを知らないのだろうか?

 

 何て事を考えていると、フランドールからどんどん不穏な気配が漂って来る。

 いや、不穏ではあるのだが……なんだ? 妙に覚えがあると言うか、自然と笑顔になる様な心地良さがあるぞ?

 これは一体……。

 

「……ふーん、答えないって事はお客でも友達でも無いんだ? なら、私が玩具にしても良いよね」

「な!? 待って下さい、妹様!!」

 

 美鈴の言葉を無視して、フランドールは子供が新しい玩具を前にした様な、無邪気な笑顔を浮かべて僕を見る。

 ああ、判ったぞ。この当たり前すぎてつい存在を思い出せなくなるような、内に秘めた熱量が暴れ出す間際のこの感覚……紛れも無く、狂気だ。

 フランドールは僕と同じく、心に狂気を持っているタイプの少女であった。

 道理で心地良く感じるはずだ。実家の様な安心感を感じるレベルである。

 

 僕はフランドールに対し、親近感さえ感じ始めていたが、フランドールは子供が蟻を踏み潰すような無邪気さで、僕に向けて右手の平を突き出して来た。

 その瞬間、僕は久方ぶりに明確な死の気配を感じた。余りにも懐かしい感覚に、思わず笑い声が漏れそうになる。

 ククッ、確か彼女の能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』だったか。そりゃあそんな能力を向けられれば、死の気配の一つも感じるだろう。最高だ!

 

 だが、感じている死の気配だけは最高だったが、あいにく彼女は僕の敵では無いし、そもそも戦ってもあまり面白そうな相手だとは思えない。

 いや、それ以前に今の僕はサンタクロースだ。子供相手に戦う事を考えてどうする。

 取り合えず、彼女を止めよう。話はそれからだ。

 

(((((八部封印!)))))

(十二神将封印!)

(ミラーリング!)

 

「キュッとして―――あれ?」

「こらこらお嬢さん。あまり物騒な事をするもんじゃ無いよ?」

 

 フランドールは前に出した右手で何かを握り潰すような動作をしたが、どうやら不発に終わった様で首を傾げていた。

 僕が無詠唱で発動した、相手の全能力を封印する『八部封印』と相手に掛けた呪文の効果を解除し辛くし、効果時間の延長する『十二神将封印』、組み合わせた呪文の効果を強化する『ミラーリング』のコンボにより、彼女の能力を封印する事に成功したようだ。

 フランドールは驚きの表情で自分の掌を見つめながら、握ったり開いたりして呆然としている。

 

「……『目』が、見えない? 感じられもしない。どうして……?」

「ほっほっほ。それはお嬢さんの能力を少しの間封印させて貰ったからじゃよ」

 

 フランドールの能力は、『目』と彼女が呼んでいる何かしらを握り潰す事で発動するらしい。

 彼女だけが認識している『目』は、凡そ全ての物体に宿っている様で、彼女はそれを自由に手元に呼び寄せる事も可能であり、恐らく視界の全てが能力の射程範囲となっているのだろう。

 しかし、僕が能力を封印したため、『目』を認識すること自体が出来なくなっているようだった。

 

「封印? 霊夢の術みたいなもの? こんなことも出来るんだ……」

「ほっほっほ。なぁに、儂の封印術は特別なものじゃからの」

 

 フランドールは、自分の能力が使えなくなっている事に驚きはすれど、危機感は持っていないようだった。

 彼女は五百年生きているレミリアと、数年ほどしか年が違わないと聞いたが、どうにも精神がまるで成熟していないように見える。これなら彼女の外見と同年代の人間の子供の方が、よほどしっかりとした危機管理能力を持っているだろう。

 まぁ、その辺りは部外者である僕が関与する事では無い。今は何とかこの状況を切り抜けて、一刻も早くマヨヒガに帰還しなければ。

 

「封印術? サンタさんが……? まさか妹様の能力を封印してしまうだなんて……」

 

 隣で美鈴が、今のやり取りを聞いて驚愕の表情でこちらを見ている。

 放っておくと面倒だ。何とか誤魔化そう。

 

「ほっほっほ。伊達に世界中を飛び回っては居ないからのう。方々を回る内に、便利そうな術を学んでおいただけじゃよ」

 

 この国の言葉で言えば、亀の甲より年の劫と言う奴じゃ。そう伝えると、美鈴は「なるほど、流石はサンタさんです」と、納得していた。

 僕が言うのもなんだが、ちょっとチョロ過ぎるのではないだろうか?

 

「……貴方、サンタって言うの?」

「うむ。サンタクロースと呼ばれている、ただの爺さんじゃよ。この館には、プレゼントを届けに来たんじゃ」

「プレゼントを? どうして?」

「お嬢さんは儂の事を知らないようじゃが、儂と言う存在は中々に有名でな? 十二月二十五日の真夜中に、一年間良い子にしていた子供の元にプレゼントを配る。と、そう伝えられているのじゃよ。サンタクロースはそう言う存在である、と言う訳じゃ」

 

 サンタクロースの説明には少々不適切だが、妖怪に例えれば理解し易いだろう。

 吸血鬼は人の血を吸う。そう伝えられ、実際にそう言う存在であるというだけだ。

 

「そうなんだ。けど、この館に一年間良い子にしていた子供なんて居たかしら?」

「いやな、今回はサンタクロースの役目では無く、儂個人のお礼の為にこの館に住むレミリアと咲夜にプレゼントを配りに来たんじゃよ。あのお嬢さんたちが儂の事を噂してくれたおかげで、儂もこの幻想郷に姿を現すことが出来る様になったからのう」

 

 美鈴にしたものと同じ説明をフランドールに聞かせる。

 実際、レミリアと咲夜が霊夢と魔理沙にサンタの話をしたから、僕がこんな事をする羽目になったのだ。この部分だけは嘘では無い。

 

「ふーん、そうなんだ。 ……なら、私の分のプレゼントは無いんだね」

「妹様、それは……」

 

 残念そうに表情を曇らせるフランドールを前に、美鈴は掛ける言葉を無くしていた。自分はプレゼントを貰っている為、声を掛ける資格が無いと思ったのだろう。

 何とも言えない雰囲気が、場を満たしていた。

 

 ふむ、出来ればさっさと帰りたいところだが、この状況を見過ごすのはサンタクロースの行動では無いな。サンタとして振舞うと決めた以上、何とかしたい。

 だが、既に持っていたプレゼントは配り終えてしまった。そもそも僕が配ったプレゼントは、全て紫が用意してくれたものだ。その中に、想定外の相手であるフランドールの分は無い。

 

 万事休すか? ……いや、まだ方法はある。

 無ければ作れば良いのだ。僕にはそれを実行するだけの力がある。

 

「ふむ。お嬢さん、少し待っておれ」

「「?」」

 

 首を傾げるフランドールと美鈴を前に、僕はアポーツを使ってアイテムボックスの中からルビーとエメラルドを手元に呼び出した。

 

(シェイプチェンジ!)

(テレキネシス!)

 

 更に物体を柔らかくする呪文『シェイプチェンジ』と念動力の呪文『テレキネシス』を使って、ルビーとエメラルドを液体の様に柔らかくしてから、念動力で形を整えていく。

 その様子を、フランドールと美鈴はキラキラとした目で見つめていた。

 

「―――うむ、完成じゃ。即席で申し訳ないが、お嬢さんにはこれをプレゼントしよう」

「わぁ……!」

 

 僕が作ったのは、花の部分がルビー、葉と茎の部分がエメラルドで出来た一輪の薔薇だった。

 それを受け取ったフランドールは、頬を紅潮させ、目を輝かせて喜んでいた。

 

「すごい! すごいすごい! こんなに素敵なプレゼントを貰ったの、初めて!!」

「ほっほっほ。喜んで貰えて何よりじゃ」

「うん! ありがとう、サンタのお爺さん!」

 

 ふぅ。何とかなって良かった。

 隣で美鈴もフランドールの様子を見て胸を撫で下ろしているし、この辺で退散させて貰おう。

 

「さて、では儂はもう行くよ。美鈴、案内して貰って助かったよ。ありがとう」

「いえいえそんな。 ……私こそ、ありがとうございました。こんなに喜んでいる妹様の姿を見るのは初めての事です」

 

 そう言って美鈴は、喜びはしゃいでいるフランドールを愛おし気に見つめていた。

 館の住人たちとフランドールはあまり仲が良くないと聞いていたが、どうやら美鈴にとっては大切な存在であるようだ。

 

「えぇー! お爺さん、もう行ってしまうの?」

「うむ。申し訳ないが、儂はこの後も向かうべき場所が有るからの」

 

 僕が居なくなると聞いて、寂し気な様子のフランドールに、屈んで目線を合わせながら、頭を撫でつつ言い聞かせる。

 

「儂が来るのを待っている子たちが居るのじゃよ。サンタとして、行かねばならぬ」

「そんな……」

 

 それ以上、フランドールは何も言わなかった。無邪気ではあるが、賢い子だ。これ以上引き留めるのは、僕の迷惑になると判っているのだろう。

 僕は最後に彼女の頭を一撫でしてから、今度こそ館の出口へと歩み出そうとした。

 

「待って! ……お爺さん、最後にちょっとだけお耳を貸してくれる?」

「うん? なんじゃね」

 

 呼び止められてしまった。どうやら内緒話があるようだ。なんだろう?

 美鈴は気を利かせてこちらに背を向けて、両手で耳を塞いでいる。

 最後にと言っている以上、フランドールも長く引き留めるつもりは無いだろうと判断して、僕はしゃがんでフランドールへ耳を貸した。

 フランドールは自分の両手で僕の耳を包むようにして、小さな声で僕に言って来た。

 

「お爺さん。ううん、お兄さん。どうしてお爺さんのフリなんてしているの?」

 

 ……驚いた。まさか僕の変身が見破られていたとは。一体どうやって?

 

「うむ。 ……どうして判ったのか聞いても良いかな?」

「今は見えないけど、能力を封印されるまでは見えてたんだよ? お爺さんの姿の下に隠された、お兄さんの姿が」

 

 フランドールは、得意気にそう言って来た。

 やれやれ、どうやら彼女の瞳には、『目』以外にも色々な物が見えているようだ。

 

「ふぅむ、参ったの。出来れば内緒にしておいて欲しいんじゃが」

「どうして?」

「儂が本物のサンタでは無かったとバレてしまうと、残念がる子が居るからじゃよ」

 

 そう言って、僕は美鈴へと視線を向ける。

 その視線を辿って、フランドールは僕の言わんとする事を理解したようだった。

 

「そっか。 ……じゃあ、黙っている代わりに、お願いを聞いて欲しいんだ」

「どんなじゃな?」

「また、会いに来て欲しいの」

 

 フランドールは、僕の目を真っ直ぐ見つめながらそう言って来た。

 

「ふむ、承知した。また後日、今度は本来の姿でお嬢さんに会いに来るとしよう」

「本当!? あ、でも……お姉さまにはなんて言ったら……」

「なぁに、それなら心配いらんよ」

 

 そう言って僕は、アポーツを使ってアイテムボックスからオリハルコンを呼び出し、そのまま先ほどと同じようにシェイプチェンジとテレキネシスで加工していく。

 出来上がったのは、オリハルコンの元来の色である黄金色に光る、僕のドラゴンの姿。白銀竜の像だった。

 

「レミリアにはこう言えば良いよ。本物のドラゴンを見てみたい。とな」

 

 僕の言葉に驚いているフランドールにドラゴンの像を手渡し、今度こそ立ち上がって別れを告げた。

 

「ではお嬢さん、これにて失礼するよ。また会える日を楽しみにしておるぞ」

 

 そう言うと、フランドールは嬉しそうに笑顔で返してくれた。

 

「うん! 私も楽しみにしてる! またね!」

 

 彼女の笑顔は、プレゼントした宝石の薔薇よりも、オリハルコンの像よりも、綺麗な物であるように僕には感じられた。

 

 

 

 ブラックレインディアの引くソリに乗って紅魔館を離れ、適当な森の中に着陸してからブラックレインディアたちを帰還させる。

 そのままマヨヒガへとテレポートし、今度こそ忘れずにメタモルフォーゼを解除してから、僕はマヨヒガの屋敷の中へと入った。

 

「―――お帰りなさい。お疲れ様でした、霖之助さん」

 

 出迎えてくれたのは、紫だった。

 柔らかく微笑む彼女の顔を見ると、ようやく終わったのだと実感出来て、どっと疲れが押し寄せて来た。

 

「ただいま、紫。本当に疲れたよ、まったく」

「うふふ。波乱万丈だったみたいだものね? 今夜は沢山愚痴りたいでしょうし、酒の肴に聞かせて下さいな?」

 

 楽し気な紫に案内されて、皆の待つ宴会部屋へと通された。

 宴会部屋には藍や橙、叢雲や煙晶竜の他に、僕が取っ捕まえたブラックサンタまでいて驚いたが、紫の説明によればどうやらそう悪い奴じゃないそうだ。

 魔理沙の家に来ていたのは、魔理沙を攫う為では無く、石ころと石炭をプレゼントする為だった?

 ……石炭なら寧ろ僕が欲しいな。いくらか販売して貰えないだろうか?

 

 そんなやり取りもしながら、僕は幻想郷で初めて過ごすクリスマスパーティーを楽しんだ。

 ブラックサンタの彼だが、交渉の結果クリスマス以外でも石炭を卸す為に、定期的に幻想郷に来てくれる事となった。

 クリスマスにサンタをやらされたと思ったら、新たな商品の仕入れ先を手に入れるとは……世の中、本当に何が起こるのか判らない物である。

 

 僕は購入した石炭を眺めながら、来年こそは平穏なクリスマスを過ごそうと決意していた。

 

 

 

 ―――そして後日、霊夢と会った時の事だが。

 

「あ、霖之助さん。プレゼント、ありがとね。来年も期待してるわよ。幻想郷のサンタさん?」

「……え? 何でバレたんだい?」

「目を見れば、霖之助さんが化けている事くらい判るわよ。魔理沙でも判るんじゃないかしら?」

 

 あれだけ誤魔化す努力をしていた僕の行動は一体……次からはサングラスでも掛けるべきだろうか?




という訳で、転生香霖のクリスマス、終了です。
今回のクリスマスイベントは、ぶっちゃけフランと転生香霖を絡ませるきっかけ作りの為に描いたのですが、ここまでボリュームが膨れ上がるとは正直思ってませんでした。

次回以降は、新年イベントを挟んでからようやく妖々夢に入れそうです。
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