東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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お気に入り登録が三百件に到達しそう。い、一体何が起こっているんだ? (震え声)

それはそうと前篇です。


第十九話 「転生香霖とお正月(前篇)」

 大晦日の夜。僕と叢雲、そして煙晶竜は紫たちの住むマヨヒガの屋敷で過ごしていた。

 

 紫は毎年冬になると冬眠しているらしいのだが、今年は冬眠することなく起き続け、年が明けて新年の挨拶をしてから眠りにつくのだそうだ。

 その理由を本人は茶化すように、僕となるべく長く一緒に居たいからだ。と、言っていたが、それがお世辞でも何でもなく、本心からの言葉で言う事を、今までの付き合いから僕は察することが出来た。

 何ともこそばゆい気分だが、多少の誤魔化しはあれど本心を語ってくれた友人の希望を叶えることに否は無い。

 例年は、一人静かに年越しを過ごしてきた僕だが、今年は随分賑やかな年越しとなりそうだ。

 こう言うのも、悪くない。

 

 

 

「「『「「「明けまして、おめでとう(ございます)! 今年もよろしく(おねがいします)!」」』」」」

 

 六人分の声がハモる。幻想郷に、新たな年がやって来たのだ。

 年が明ける瞬間の確認は、マヨヒガの屋敷にあったテレビに映る、年末特番を見ながら行った。

 紫や藍、そして橙はテレビを見慣れているらしく、特に驚きも無く見ていたが、テレビを初めて見た叢雲と煙晶竜は驚き、興味深そうに画面を食い入るように見ていたのが笑いを誘った。

 年末特番を見ながら、六人で藍の作ってくれた年越しそばを食べたのだが、それがまた美味かった。

 特に出汁が良い。幻想郷では入手が困難な、鰹節や昆布などの海産物を使った出汁は、美味い以上に懐かしい気分を感じさせた。

 

「―――さて、それじゃあ名残惜しいけど、私はそろそろ眠るわ。おやすみなさい、霖之助さん」

「ああ、おやすみ紫。春になったらまた会おう」

「ええ、楽しみにしているわ」

 

 そんな短いやり取りの後に、紫は一人スキマを開いて姿を消した。

 残った者の内、藍は紫の代わりとして結界の調整など、様々な仕事があるため直ぐに部屋を後にし、叢雲と煙晶竜は博麗神社で行われる初詣を手伝いに向かった。なお、橙はまだ藍の仕事を手伝うのは難しい為、叢雲の手伝いとして神社へとついて行った。

 部屋に残ったのは、僕一人だ。

 

「さてと、僕も店に戻るとしようか。 ―――おや?」

 

 座っていた座布団から立ち上がろうとした瞬間、足元に開かれたスキマに座布団ごと落ちて、気付けばどこかの部屋へと移動していた。

 

「どうしたんだい、紫? さっきの今で」

「うふふ、ごめんなさい。眠る前にちょっと霖之助さんにお願いがあって……」

 

 座布団に座ったままの僕の直ぐ隣には布団が敷かれ、そこでは紫が横になっていた。

 これから眠る為いつも被っている帽子を付けておらず、パジャマに着替えている彼女の姿は、とても新鮮に感じられた。

 しかしお願いか。一体何だろうか?

 

「ふむ。どんなお願いなんだい? 僕に出来る事なら言ってごらん」

「……その、ね。眠るまでの間、手を握っていて欲しいのよ」

 

 そう言って少し恥ずかしそうに右手を伸ばしてくる紫の姿に、思わず少し笑ってしまった。

 馬鹿にした訳では無い。確かに子供みたいなお願いだとは思ったが、それ以上に頼られているという感じがして嬉しかったのだ。

 

「もう、酷いわ。こっちは勇気を出して言ったのに、笑うだなんて」

「ごめんごめん。悪気は無かったんだよ。ただ、君に頼られているなぁって思うと、何だか嬉しくてね」

 

 僕がそう言うと、少しだけむっとした顔になっていた紫は機嫌を直してくれた。

 伸ばされた紫の手をそっと握る。思っていた以上に小さく、そして華奢な腕だ。

 この手でずっと幻想郷を守って来たのだろう。博麗の巫女は代替わりするが、彼女は僕たちの住むこの土地を始まりからずっと、変わらず一人で守って来たのだ。

 藍を始め手助けをしてくれる者は居るが、主導しているのは常に彼女だったはずだ。

 そう考えると、僕はこの小さな手の主に、無性に感謝を捧げたくなった。

 

「……いつもありがとう、紫」

「急にどうしたの?」

「いや、何だかどうしても、君に感謝を伝えたくなってね」

「そう? でも、ありがとう。嬉しいわ。 ……私もいつも感謝してるし、頼りにしているわよ。霖之助さん」

「そうか。光栄だね」

 

 お互いに感謝し合い、僕たちは他愛も無い話をしながら時を過ごした。

 やがて紫が眠りにつき、僕は眠る紫の頭を一撫でしてから静かに立ち去った。

 

 おやすみ、紫。次は春に、桜でも見ながら話をしよう。

 

 

 

 香霖堂に戻り、少しだけ仮眠を取った僕は、用意していた食材をアイテムボックスから取り出して、料理を始めた。作っているのは、おせち料理だ。

 作っている量は、とにかく沢山。霊夢や魔理沙、叢雲と煙晶竜、橙の分に加え、レミリアたち紅魔館の住人たちも全員初詣に来ると聞いたので、彼女たちの分も含めて、かなり多めに作っている。

 中でも霊夢と煙晶竜はかなり食べるだろうし、僕だってそれなりに食べる方だ。藍に差し入れする分もあるし、余ったら初詣に来ている他の客にでも振る舞えば良いのだから、とにかくじゃんじゃん作って行こう。

 そう考えて作り続けていたのだが、

 

「ふむ。流石にこれは作り過ぎたなぁ……」

 

 出来た端からアイテムボックスに詰めていったため、どれくらい作ったのかを視覚で確認出来なかったと言うのもあるが、気付けば馬鹿みたいに料理を作り続けていた。

 確認して見ると、出来た料理の量はちょっとした貨物コンテナが満杯になるほどの量であった。

 というか、そもそもどうしてこんなに作れるほどの食材を僕は用意したのか。

 

「……まぁ、作ってしまった物はしょうがない。きっと何とかなるさ」

 

 最悪、食べ切らなくてもアイテムボックスにさえ入れておけば、痛むという事は無いのだ。余ったら、少しずつ消化して行けば良いさ。

 そう結論付けた僕は、支度を整えて博麗神社へと向かった。

 

 

 

 長い階段を登りきると、そこには普段は見られない、人々で溢れているという博麗神社の珍しい光景が広がっていた。

 境内には様々な出店が立ち並び、その中を霊夢が忙しくも楽しそうに動き回っている。

 博麗神社の数少ないかき入れ時だからだろう。こういう時の霊夢は、本当に生き生きとしている。

 その働きっぷりの一割でも、普段から発揮出来れば、神社ももっと繁盛すると思うんだけどなぁ。

 

 駆け回る霊夢を見ながらそう思っていると、僕の姿を見つけた霊夢が、やたら嬉しそうな顔で駆け寄って来た。

 

「あけましておめでとう、霖之助さん! 素敵なお賽銭箱を今年もよろしくね!」

「こら! 新年の挨拶ぐらいちゃんとしなさい」

「あ痛っ」

 

 新年のあいさつの定例文を、微妙に自分に都合が良い物に改造して言って来た霊夢の額を軽く小突く。

 まったく、こんな時ばかり調子が良い所が、神社に人が寄り付かない原因なのではなかろうか?

 ……いや、それも氷山の一角な気がするな。

 

「痛ったぁ……もう、新年から酷いじゃない!」

「酷いのは君の挨拶の方だ」

 

 涙目で額をさすり、文句を言って来る霊夢をバッサリ切り捨てる。

 もう少し真面目に出来ないのだろうか? ……無理そうだな。

 

「はぁ……それで霊夢、他の皆はもう集まっているのかい?」

 

 僕が聞くと、霊夢は額をさすっていた手を放し、そのまま親指を立てて、神社の方を指さした。

 

「ああ、魔理沙たちなら、もう神社の裏で飲み始めてるわよ。まったく……あいつら、私の分の料理とお酒を残してなかったらただじゃ置かないんだから」

 

 どうやら、先に飲み食いを始めている魔理沙たちが、霊夢が来る前に全て飲み尽くし、食いつくさないか心配なようである。

 逆の立場だったら、自分は構わず食いつくすのだろうに……。

 

「心配しなくても、僕も追加の料理や酒を持って来たから、君の分がなくなる事は無いよ」

「あら、そうなの? それにしては霖之助さん、手ぶらみたいだけど」

「魔法で仕舞ってあるだけだから、手ぶらでも問題無いよ。一段落したら、君も合流しなさい。君が居なくなる間の事は、叢雲にでも頼めば良いさ」

「判ったわ。それじゃあ後でね、霖之助さん」

 

 霊夢と別れ、僕は神社への裏手へと向かって歩き出した。

 途中で裏へ回る前に、お賽銭を入れて行ったが幾分少なかっただろうか?

 記憶を取り戻してからというもの、どうにもお賽銭の様な外の世界と共通のものを前にすると、双方を比べて基準が曖昧になる時がある。

 博麗神社の賽銭箱に入っていたお賽銭は、音からして外の世界の人気の無い神社と比べれば十分入っているように感じられる。

 しかし、博麗神社は幻想郷唯一の神社である事と、このお賽銭が霊夢の生活費になる事も考えると、些か心もとなく感じる量であった。

 

 僕からお年玉も渡すし十分か? いや、お賽銭は生活費に使うとして、お年玉の方は自由に使って貰いたい。やはりもう少し多めに入れておこう。

 

 思い直した僕は、人に見られない様にこっそりと手元にアイテムボックスから掌大の金塊を取り出し、それをシェイプチェンジで粘土ほどに柔らかくしてから千切って、いくつか賽銭箱に入れておいた。

 これなら当面の生活費として十分だろう。

 そう判断した僕は、今度こそ神社の裏手へと向かった。

 

 

 

 神社の裏手に出るとそこには沢山の敷物が敷かれ、見知った顔の者達が飲めや歌えの大騒ぎをしていた。

 新年から騒がしい連中だ。まぁ、騒がしくない時を探す方が困難な連中ではあるが。

 

「よぉ香霖! 遅かったな、もう始まってるぜ!」

 

 最初に僕の姿に気付いて声を掛けて来たのは魔理沙だった。既にそこそこ飲んでいるらしく、頬を赤らめてほろ酔い気分を楽しんでいるようだ。

 

「あけましておめでとう、魔理沙。新年なんだから、先ずは挨拶をしなさい」

「あけましておめでとう! 今年もよろしくなんだぜ!」

「ああ、よろしくね」

 

 新年の挨拶をしただけで、どうだとばかりに胸を張る魔理沙に苦笑しつつ、僕は他のメンバーへの挨拶回りに向かった。

 

「あけましておめでとう、レミリア、咲夜、美鈴。今年もどうぞご贔屓に。ね」

「あけましておめでとう、霖之助。ふふ、今年もよろしく頼むわよ。色々ね?」

「あけましておめでとうございます、店主さん。今年もお世話になりますわ」

「あけましておめでとうございます、霖之助さん。私はあまりお店の方には顔を出せないでしょうが、今年もよろしくお願いします」

 

 先ずは顔見知りである紅魔館の少女たちに挨拶をした。

 意味深な顔で笑うレミリアに、いつも通りの落ち着いた態度な咲夜、少し申し訳なさそうな美鈴。三者三様の挨拶が返って来る。

 彼女らは、日頃からお世話になる香霖堂のお得意様達だ。今年も良い取引を続けて行きたいものである。

 他にも挨拶する相手は残っているが、先に給仕をしている咲夜に持って来た料理と酒を渡しておこう。

 

(アポーツ!)

 

 アイテムボックスの中から、重箱に入ったおせちと酒類を呼び出した。とりあえず十人前ほど。

 信じられないような話だが、十人前出しても僕が朝作った量の一割にも満たない。正直あの時の僕は馬鹿だったと反省している。

 それはそうと、敷物の端に重箱と酒瓶を置く。十人前ともなると、流石に邪魔くさいからね。

 

「咲夜、酒と料理は足りているかい? 僕が持って来た分もあるから、足しにしてくれ」

「店主さんの料理ですか……勉強させていただきます」

 

 いや、教材にせずに楽しんで貰えたらそれで良いんだが……?

 まぁ僕の料理をそれだけ評価してくれているという事だから、嬉しくもあるのだが。

 とりあえず咲夜、重箱を職人の目で見つめるのは止めないか?

 

「……何、今の魔法。見た事の無い系統だわ……」

「あ……あなたは……」

 

 聞き覚えの無い声と、聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 一人は、以前から知っていたが今日初めて会う少女。もう一人は、以前にもあった事があるが今日初めてあった事になっている少女だった。

 

「―――君達と会うのは初めてだったね。初めまして、僕は森近霖之助。レミリアが利用している古道具屋『香霖堂』の店主だよ。あけましておめでとう、今年からよろしくね」

 

 僕が挨拶すると、二人も少しぎこちないながら挨拶を返してくれた。

 

「……初めまして、『パチュリー・ノーレッジ』よ。あけましておめでとう、古道具屋さん」

「えっと、初めまして! 『フランドール・スカーレット』です。あけましておめでとう……お兄さん?」

 

 動かない大図書館ことパチュリーと、レミリアの妹フランドール。以前から話してみたいと思っていた少女たちだ。

 特に、フランドールとはクリスマス以来、ようやく本来の姿で会いに行くという言葉を実現できた形だ。

 彼女たちともゆっくり話せると良いのだが……まぁ、それは今日じゃなくても構わない。

 折角の宴会なんだ。今日はただ飲んで騒いで、楽しめたら良いさ。




お判りいただけただろうか? (転生香霖の霊夢甘やかし問題)

そしてついに、ぱっちぇさんを登場させることが出来ました。
最近「東方CB」の方で、やたらぱっちぇさんを引いたので、早く出たいのかなぁって(内訳は、星五1枚 星四2枚)。

次回はぱっちぇさんを通して、周りから見た転生香霖作の特級危険物「魔改造ミニ八卦炉」の評価でも書けたらなぁ。と、考えています。
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