東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
そしてある意味タイトル詐欺、今回は現場の叢雲視点です。
人里へ届けた支援物資を配り、人々からの相談を受けた帰り、煙晶竜様と共に空を飛んでいると、箒に乗った魔理沙さんに出会いました。
「お、叢雲に煙晶竜じゃないか」
「こんにちは、魔理沙さん」
『うむ、この寒空の下でも元気そうじゃな、小さき魔女よ』
「小さいは余計だぜ? それに、どう見ても叢雲の方に乗ってる煙晶竜の方が小さいじゃないか」
『ハハハ、違いない』
小さいは余計、と言いつつも魔理沙さんはあまり気にしていないようです。
煙晶竜様と魔理沙さんは相性がよろしい様で、いつだってこうして楽しそうにお話しています。
魔理沙さんは霊夢さん同様、妖怪退治や異変解決を行う人間の魔法使いです。
旦那様とは幼い頃からの付き合いであるそうで、旦那様の事を信頼している事も、旦那様から大切に思われているのも見ていて伝わってきます。
そしてわたくしにとっては、魔理沙さんは生涯の大恩人と呼べるでしょう。魔理沙さんのおかげで、わたくしは旦那様と出会うことが出来たのですから。
この御恩は決して忘れません。
『しかし魔理沙よ、随分と機嫌が良さそうじゃな。何か良い事でもあったのか?』
「おお、そうなんだよ! 終わらない冬の原因の手掛かりをようやく掴んでな。今から元凶の所へ向かうとこだぜ」
「遂にですか、それは良かった」
わたくしと煙晶竜様が、毎日旦那様の用意してくれた支援物資を届けてはいますが、それにしたっていつまでも続くものではありません。
人里では体調不良を訴える者も増えてきていますし、直ぐにでも異変解決に向けて動くべきでしょう。
「魔理沙さん、わたくしたちもご一緒させて下さい」
「ん? 叢雲たちもか?」
「はい、人里に物資を届けてはいますが、最近は体調を崩す方も増えてきましたから、異変解決は早いに越したことは無いでしょう。煙晶竜様、勝手に決めてしまいましたが宜しかったですか?」
『うむ、汝の思う通りにすると良い。儂も助力は惜しまんよ』
「ありがとうございます」
わたくしと煙晶竜様がそう話していると、魔理沙さんが感心した様な顔でわたくしを見ていました。
「そうか。そう言えば叢雲たちはそんな事もしてたな。霊夢なんかよりずっと立派な巫女様だぜ」
よし、そういう事なら案内は私に任せな! そう言って魔理沙さんは案内を買って出てくれました。
魔理沙さんの後を追って、空を上へ上へとどんどん登って行きます。
飛んでいる途中、魔理沙さんから聞かされた話によると、この先に幻想郷から『春』を奪って回った者が居るそうです。
高度を上げていくほどに、上空から感じるこの世ならざる気配、あの世の気配が強くなっています。
この先には、現世と冥界を隔てる結界があったはず。という事は、この異変の黒幕は冥界に居るという事でしょうか?
一気にきな臭くなって来たように感じます。
桜の花びらが混じる雲を突き抜けると、そこには現世と冥界を隔てている堅く閉ざされた門と、見知った二人の少女たちの姿がありました。
「おー、霊夢。それに咲夜も、来てたのか?」
「魔理沙……それに叢雲と煙晶竜じゃない。あんたたちも来たのね」
『うむ、久方ぶりじゃの。小さき巫女よ』
「こんにちは。霊夢さん、咲夜さん。霊夢さんはともかく、咲夜さんは何故ここに?」
「お嬢様からの命令です。いい加減飽きたから、冬を終わらせて来いって」
「なるほど」
一人は、紅白の巫女装束に身を包んだ博麗霊夢さん。
霊夢さんは異変の最中であるからか、普段と雰囲気が少し違う様です。普段よりもずっと、容赦が無いように感じられます。
そしてもう一人は、青いメイド服を身に纏う十六夜咲夜さん。
話を聞くに、咲夜さんは相変わらず、主であるレミリアさんに振り回されているみたいです。
けど、咲夜さんがレミリアさんを突飛な行動で困惑させている事も良くあるようですし、ある意味似た者主従なのでしょうか?
霊夢さんはこの幻想郷を守る博麗神社の巫女で、魔理沙さんと同じく異変解決のスペシャリストです。
その身に持つ才能は、神話時代に見た最上位の神々と比べてもひけを取らない物です。まぁ、私にとっての一番はもちろん旦那様なのですが。
咲夜さんは旦那様のお店である香霖堂のお得意様であり、同じくお得意様であるレミリアさんという吸血鬼のお嬢様に仕えるメイドさんでもあります。
そしてこの咲夜さんもまた、霊夢さんに負けず劣らずの才覚の持ち主です。人の身でありながら、時間を操る能力を持つなど他に聞いた事がありません。
どうやらお二人も、異変解決の為にこの場に集まったようです。
ならば、ここは全員で協力して異変解決の為に尽力しましょう!
わたくしはそう考えていたのですが、この場に集まった方々はどうやら気が短い様で、ろくに話し合いもせずに先に進んでしまいました。
「とりあえず、この先に異変の元凶が居るって事で良いんだよな?」
「多分ね、勘だけど」
「この辺りの空だけ桜の花びらが待っているし、妙に温かい。私も間違いないと思うわ」
「なら、先手必勝だぜ! 『恋符・マスタースパーク』!!」
「「「きゃぁぁあああーーーっ!!!???」」」
魔理沙さんが突如放った魔力砲撃、マスタースパークにより、結界に固く閉ざされていたはずの門は、易々と粉砕されてしまいました。
流石は旦那様が自重無しに作り上げた道具、最強の神剣であるわたくしをして、些か嫉妬の念を抱かせるほどの素晴らしい火力です。
見た限り、あれでも大分威力を加減して放っていたようですが、全力で放てばどれほどの破壊を巻き起こすのでしょうか。同じ武器として、少し気になります。
それはそうと、三人分ほどの少女の悲鳴が聞こえたような気がしましたが、気のせいでしょうか?
「皆さん、先ほど三人分の悲鳴が聞こえた気がしたのですが?」
「気のせいじゃないかしら? 私には何も聞えなかったわ」(霊夢)
「悪いな。マスパを撃った直後だったから、しばらく耳が聞こえて無かったんだ。何か聞えたのか?」(魔理沙)
「さぁ? 私には何とも。けど、こんな所に私たち以外に人がいるとは思えないし、気にする事はないんじゃないかしら?」(咲夜)
『ふむ、何かいたような気配はあるが、まぁ死んではおらんようだし大丈夫じゃろう』(煙晶竜)
どうやら、声が聞こえたのはわたくしだけのようです。
ですが、皆さん気にしていないようですし、今は人々の為にも異変解決が最優先事項です。
煙晶竜様も大丈夫と言っていますし、気にせず先に進みましょう!
破壊された門を超えた先には、長い長い石の階段が続いていました。
ここは既に冥界、熱を持たない死後の世界だというのに、進むごとにどんどん暖かくなり、宙に舞う桜の花びらの量も増えて行きます。
そうしてしばらく進むと、わたくしたちの行く手を阻むように、一人の少女が姿を現しました。
「―――みんなが騒がしいと思ったら、生きた人間だったのね」
現れたのは、二本の刀を携えた白髪の少女でした。その立ち振る舞いから、剣士であることが伺えます。
……それはそうと、わたくしと煙晶竜様は人間ではありません。
これでもわたくしは女神ですし、煙晶竜様は立派なドラゴンです! ……体は旦那様の作った像ですけど。
「あんな乱暴に結界をぶち破って何がやって来たのかと思ったら、まさか生きた人間だったとは……」
「あんたも人間に見えるけど?」
「半分だけね、もう半分は幽霊よ。半人半霊って言うの」
「で、その半人半霊が何の用だ? 私たちはこの先に用があるんだが」
「無粋な侵入者の排除よ。もう少しで、『西行妖』の花が満開になる……排除ついでに、あなたたちの持つなけなしの春を、根こそぎ貰って行くわ!」
「そう、なら敵って事で良いのね」
刀を構える少女に対し、霊夢さんはお祓い棒と札を、魔理沙さんは杖とミニ八卦炉を、咲夜さんは両手にナイフを構えて応戦の姿勢を見せる。
しかし、今まさにぶつかり合おうとする四人の間に、わたくしと煙晶竜様が割り込んだ。
「―――この場はわたくしたちが引き受けます。みなさんは先へ進んで下さい」
「それは助かるけど、良いの?」
「はい、今回が異変初参加であるわたくしと違い、みなさんは異変解決のエキスパートですから、黒幕の相手はみなさんにお願いします」
「叢雲……判ったぜ。直ぐに終わらせて戻って来るから、それまで持ち堪えろよ!」
『なに、心配するな魔理沙よ。叢雲には儂もついておるのじゃ、そうそう負けたりはせん』
「私はどちらかと言うと異変を解決した側では無く、起こした側なのですが……ともかく、ここはお任せしますわ」
「ええ、お任せください。皆さんも気を付けて」
霊夢さんたち三人がその場から飛び去り、後に残ったのはわたくしと煙晶竜様、そして半人半霊だという少女だけだった。
「……自分を犠牲に仲間を先に進ませたようだけど、ハッキリ言っておくわ。彼女たちは死ぬ。危険なのは、この場に残ったあなたより、先に進んだ彼女たちよ」
「犠牲になったつもりも、彼女たちを心配する必要もありませんわ。彼女たちは勝ちますし、わたくしもあなたに勝って、彼女たちに直ぐにでも合流します」
「世迷いごとを……我が名は『魂魄妖夢』! 西行寺家の庭師兼剣術指南役! 妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなど、あんまりない!」
威勢良く吠える少女、妖夢さんに対抗し、こちらも旦那様から頂いたオリハルコン合金製の鉄扇『オリハルコンファン』を懐から取り出して構えます。
「名乗られたからにはこちらも応えましょう。我が名は都牟刈叢雲。竜信仰の巫女にして旦那様の剣。我が身に勝る武器など無し、身の程を刻みなさい!」
『では儂も名乗るかの。我が名は煙晶竜。ま、気楽に行こうじゃないか小さき者よ』
お互いに名乗り上げ、私たちの弾幕ごっこが始まった。
「み、みょん……」
「ふぅ、手強かったですね……って、どうしました。妖夢さん?」
『ふむ、何やら様子がおかしいのう』
わたくしと妖夢さんの弾幕ごっこですが、何とか勝利を収めることが出来ました。
元々霊夢さんたちも含めたわたくしたち全員を相手取るつもりであったようですが、それが実行可能であると判断するのも頷ける強敵でした。
勝ちはしましたが、わたくし自身、煙晶竜様のサポートが無ければ危なかっただろうと思う場面は多々ありました。
女神としての性能や煙晶竜様のサポートでゴリ押ししましたが、これから先も異変解決に参加する事を考えると、このままで居る訳には行きません。帰ったら更に鍛錬を積まないと。
……それにしても、妖夢さんは先程から蹲ってどうされたのでしょうか? どこか打ちどころが悪かったとか?
「ど、どうしよう……欠けちゃった、楼観剣が欠けちゃったよぅ……」
妖夢さんは泣いていました。どうやら打ちどころが悪かったのは、妖夢さん自身ではなく持っていた刀の方だったようです。
そう言えば、勝負がつく直前に、妖夢さんが振るってきた刀を手刀で防いだことがありましたね。
わたくしこと『草薙の剣』、というか『天叢雲剣』には一つの逸話があります。
須佐之男が八岐大蛇の尾を斬ろうとした時、振るった剣が何かに弾かれ刃が欠けてしまい、その中から見つかったのがわたくしであるという逸話です。
この時須佐之男が使っていた剣は『天羽々斬』と言い、これまた強力な神剣の一つであったのですが、それと打ち合ったわたくしは、一方的に相手に刃を欠けさせました。
この逸話からも分かる通り、わたくしには武器破壊の能力があり、その力は人型である今の状態でも発揮出来ます。
つまり妖夢さんは、わたくしの手刀と打ち合った結果、大事な刀が欠けてしまってショックを受けているようです。
「うぅ、どうしよう。大事な楼観剣を欠けさせたなんて、『幽々子』様に怒られる……」
戦場で武器が破損するなど当たり前の話では?
そう言いたくなったがぐっと堪えた。破損させた張本人であるわたくしが言ってもただの煽りにしかなりません。
それに、使い手に大事にされていると考えれば、剣として悪い気はしません。
……そうですね、ここは大切に使われている楼観剣に免じて、手を差し伸べましょうか。
「―――妖夢さん、そんなに落ち込まないで下さい。その剣を修復する方法なら、心当たりがあります」
「え? 本当ですか!?」
ガバリと顔を上げた妖夢さんが、食い気味にそう訊ねて来た。
急に話し方が敬語に変わりましたが、恐らくこちらの方が素なのでしょう。
真面目で礼儀正しく、それ故に時に頑固で融通が利かない。妖夢さんはそのような方なのだと、わたくしは感じていました。
「ええ、本当です。こういった物品の修復は、旦那様の得意分野―――」
『気を付けよ! 来るぞっ!』
煙晶竜様の鬼気迫る声が響き、私たちの元へと無数の弾幕が降り注ぎます。
それらは煙晶竜様の放った光線によって一掃されましたが、弾幕は次々と私たちの元へ、いえ、周囲一帯へと降り注いでいます。
弾幕の放たれた方向を見ると、そこにはもはや満開に近いほど花を咲かせた大きな桜の木、『西行妖』の姿がありました。
あの桜には元々不吉な物を感じていましたが、今は明確に脅威を感じます。
この悍ましい気配は、死の穢れ? こんな物が込められた弾幕を浴びれば、わたくしや煙晶竜様はともかく、人間である霊夢さんたちにはひとたまりもありません。
早く救援に向かわなくちゃ!
「……どうやら、緊急事態のようですね。妖夢さん、動けるなら一緒に行きましょう」
「え、でも……」
「この状況で一人残る何て、命がいくつあっても足りませんよ? それに、この様子では霊夢さんたちどころか、あなたの主も危機的状況にある可能性が高いでしょう」
「そんな……幽々子様!」
「今は一時休戦としましょう。先ずはお互いに大切な人たちを助けてから、決着をつけるのはそれからでも遅くありません」
「……判りました。一緒に行きます!」
『話が付いたのなら急ぐぞ! 不穏な気配がどんどん膨れ上がっている。このままでは碌なことにならんだろう!』
煙晶竜に急かされ、わたくしと妖夢さんは協力して降り注ぐ死の穢れの乗った弾幕を打ち払いながら先に進みました。
霊夢さん、魔理沙さん、咲夜さん。どうか無事で居て下さい。
『叢雲の自機性能』
叢雲自身が放つ弾幕に加え、霊夢の陰陽玉の様なポジションで煙晶竜が弾幕やレーザーを放つ。また、転生香霖の作成したオリハルコン合金製の鉄扇『オリハルコンフィン』には、ゲーム時代の武器アイテム『俱利伽羅剣』が組み込まれており、相手を追尾する炎で出来た龍(ドラゴンでは無く東洋の龍)を放つことが出来る。
ボムとして使用するスペルカードは『竜符・ドラゴニックオーバーロード』。
煙晶竜が体として使っている彫像に転生香霖が組み込んだ『メタモルフォーゼの札』の効果が起動し、一時的に煙晶竜がゲーム時代の『転生煙晶竜』の姿を取り戻して攻撃する。(名前の元ネタはヴァンガード)
戦闘シーンは長くなり過ぎるので省きました。真面目に弾幕ごっこのシーンを描写しようとすると、それだけで丸々一話か二話使いそうですしね。