東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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駆け足気味だけど何とか後篇に纏められたぞ!

と言う訳で、今度こそ春雪異変終了です。


第二十五話 「転生香霖と冬の終わり(後篇)」

 叢雲と煙晶竜の元にクトゥグアを送り出してから少しして、再び念話の連絡が来た。今度は煙晶竜だけだったが。

 

『キースよ、すまんが直ぐにこちらに来てくれんか?』

『どうしました煙晶竜? 何かあったんですか?』

『いやな、もういい加減鬱陶しいし面倒臭くなっての? お前さんが来てあの魔樹を封殺してくれんか?』

『ええー』

 

 また何か状況の変化が起こったのかと思ったら、単に煙晶竜が面倒臭くなって、僕に丸投げして来ただけだった。

 店で待機云々の話は何処へ行ったのやら。

 

『正直気が進みませんねぇ。弾幕ごっこはあくまで女の子同士の戦いですから、男の僕が介入するのはちょっと』

『クトゥグアはともかく、儂は男のつもりじゃが?』

『叢雲の装備品枠なのでセーフです』

『全く汝は……屁理屈をこねおってからに』

 

 念話越しに煙晶竜の呆れた様子が伝わる。

 いや、面倒になって僕を呼び出そうとしている方に呆れられたくないんですが?

 

『まぁ判りましたよ。叢雲の影に跳べば良いですか?』

『いや、儂は今巫女の肩に居る。巫女の影へ跳んでくれ』

『霊夢のですね? 了解です』

 

(シャドウ・ゲート!)

 

 

 

 

 僕自身の影の中から、霊夢の影の中への移動が完了する。

 影の中から周囲の様子を見ると、やたら馬鹿でかい桜から大量の弾幕やレーザーが放たれ、それを魔理沙が精霊たちと協力して撃ち落としているようだった。

 少し離れた場所には叢雲と咲夜、それから見覚えの無い、二振りの刀を持ち緑の服を着た、白髪でおかっぱ頭の少女が、三人で何やら話していた。

 そして僕の直ぐ近くには、右肩に煙晶竜を乗せ、左肩の辺りにクトゥグアを浮かばせる霊夢が居た。

 どうやら三人で協力して術を組んでいるらしく、術式の構築自体は直ぐに終わるのだが、完成直前で必ず複数の方向からレーザーを撃たれて、阻止され続けているようだった。

 

 これが何度も続いているのなら、煙晶竜が面倒になったと言ったのも頷けるが、これ僕が必要になるほどの状況かなぁ?

 とりあえず影から出て、煙晶竜や霊夢から話を聞くとしよう。

 

「どうも、到着しましたよ」

「霖之助さん? ……どっから出て来てるの?」

「君の影の中からだよ。それより、どういう状況なんだい?」

『ようやく来たかキース! なら話は早い、あの木を少々大人しくさせてくれ。ちまちまと邪魔して来よって、何度丸ごと焼き払おうと思ったか判らんぞ!』

『同意。フラストレーションの増大を認識しています。我が主よ』

 

 三人の話によると、あの桜から放たれる弾幕には触れた者を即死させる効果があるそうだ。

 そのせいで、大した威力でも無いのに無視することが出来ず、結果ズルズルと状況が膠着してしまったそうだ。

 というか、クトゥグアからフラストレーションなんて言葉が飛び出したのがビックリだ。

 

「あ~、だろうね? ……霊夢。確認するけど、あの木って燃やしちゃ駄目な奴なのか?」

「う~ん、正直私も燃やした方が早いと思うけど……燃やしたらきっと碌な事にならないと思うわ。勘だけど」

「霊夢の勘なら間違いないさ。 ―――けど、僕が介入してしまっても良いのかい? 異変解決は君たちの役割だろうに……それに男の僕が弾幕ごっこに割り込むのもねぇ」

 

 僕がそう訊ねると、霊夢は少し考えてから胸を張ってこう答えた。

 

「霖之助さんの言いたい事も判るけど……今回は非常事態だし特例ってことにするわ。博麗の巫女である私の決定よ!」

「―――了解、なるべく木を傷つけないように何とかするよ。とりあえず、一旦全員に一か所に集まって貰いたいから、魔理沙や叢雲たちに声を掛けて来るよ」

「ええ、お願いね霖之助さん。 ……私も早く帰ってお茶が飲みたいし」

 

 君、異変の解決よりお茶の時間を重視しているんじゃないだろうね?

 

 三人に断りを入れてから、先ず一番近くに居る叢雲たちへと声を掛けに行った。

 魔理沙が殆どの弾幕を撃ち落としているから余裕があるのは判るけど、流石にここで話し込むのは気を抜き過ぎじゃないかな?

 まぁ実際、魔理沙の撃ち漏らしは殆ど無いから、僕自身も普通に歩いて叢雲たちに近づいている訳だが。

 時々飛んで来る程度の弾幕なら、防ぐまでも無く普通に避けられるしね。

 

 

 

「君達、非常事態だと聞いて来たけど、結構余裕そうだね?」

「だ、旦那様!? 何故こちらに」

 

 叢雲は、僕の登場に目を丸くして驚いている。

 まぁ、元々僕は待機という話しだったからね。当然の反応だろう。

 

「いや、煙晶竜に呼ばれてね。妨害が鬱陶しいから封殺してくれって」

「旦那様……という事は、あなたが叢雲さんの使い手なんですか?」

「うん?」

 

 横から僕に声を掛けて来たのは、刀を持つ白髪の少女だった。近くに来たから判るが、この娘の刀、少し欠けている。

 それと、この少女の近くには大きな幽霊がついており、その幽霊が弾幕を放って桜の木が放つ弾幕を撃ち落としていた。ビット兵器か何かかな?

 

「ああ、確かにそうだけど、君は……?」

「申し遅れました。ここ『白玉楼』の主人である『西行寺幽々子』に仕える半人半霊の剣士で、『魂魄妖夢』と申します」

 

 白髪の少女、妖夢は礼儀正しく挨拶をして来た。これだけ丁寧な挨拶をする娘は幻想郷では珍しいな。

 真面目そうな良い娘だ。

 

「ご丁寧にどうも。僕は『森近霖之助』、叢雲の使い手であり、幻想郷の古道具屋『香霖堂』の店主だよ」

「ちなみに私は、吸血鬼『レミリア・スカーレット』様の暮らす『紅魔館』のメイド長を務める『十六夜咲夜』と申します。お見知り置きを」

「あ、はい。霖之助さんに咲夜さんですね。よろしくお願いします!」

 

 僕の挨拶に便乗して、自分も自己紹介をしてくる咲夜。

 どうやらお互いの自己紹介もままならない状態で共闘していたらしい。非常事態だし仕方が無いか。

 

「よろしくね。さて、早速で悪いけど、みんなで霊夢の所に集まってくれるかな? 僕は魔理沙に声を掛けて来る」

「はい、それは構いませんが、どうして霊夢さんの元に?」

 

 叢雲が首を傾げて訊ねて来た。まぁ、そんなに難しい理由がある訳じゃ無いんだが。

 

「なに、みんなが集まった時点で僕があの桜を黙らせるから、みんなには封印を行う霊夢たちに邪魔が入らない様に守って欲しいだけだよ」

「黙らせるって……出来るって言うんですか? あの西行妖を相手に、そんな簡単に!?」

 

 妖夢が驚愕の表情で僕に聞き返す。

 出来るか出来ないかと聞かれたら、もちろん出来るとしか答えられないが……そんなに驚く事かな?

 今この場に居るメンバーでも十分出来る事だと思うけど。

 

「出来るよ。と言うか、そんなに驚かれるとこっちがビックリするよ。そんなに難しい事じゃないと思うんだけどなぁ?」

「難しい事じゃ無いって……そんなあっさりと」

「うーん、これについては理由に心当たりがあるから、とりあえず君達は霊夢の所に向かってくれるかな? どうせなら魔理沙や霊夢にも纏めて説明するから」

 

 妖夢にそう答えてから、僕は三人を霊夢の元に向かわせた。

 よし、次は魔理沙だな。

 

(フライ!)

(アクロバティック・フライト!)

(十二神将封印!)

(ミラーリング!)

 

 飛行呪文の詰め合わせを発動させて、上空から西行妖とやらの弾幕を撃ち落とし続ける魔理沙の元へと飛ぶ。

 近づくと、魔理沙より先に周囲の精霊たちが僕に気付いたので、軽く手を上げて挨拶した。

 

「おーい魔理沙、ちょっと降りて来てくれ」

「あ? なんだよ香霖、今忙し……って、香霖!? なんで香霖がここに居るんだ!? ってのわぁっ!?」

 

 魔理沙は僕の登場に随分と驚いたようだ。驚いた拍子に箒から落ちかけて、周囲の精霊たちに支えられていた。

 まぁ、さもありなん。僕が異変解決の現場に居るなんて、普段ならあり得ない事だからな。

 

「おっと、気を付けなよ魔理沙。飛んでいる時はきちんと注意しないと危ないよ?」

「驚かせた張本人に言われたくないんだぜ! てか香霖! お前叢雲から旦那様って呼ばれているのか!? 私は何も聞いてないんだぜ!?」

 

 あれ、魔理沙は叢雲が僕を旦那様と呼んでいるのを知らないんだったっけ?

 ……そう言えば、魔理沙や霊夢が居る時に叢雲から旦那様と呼ばれた時ってなかったか。

 香霖堂の営業時間中に暇つぶしに来る魔理沙と霊夢と、香霖堂の営業時間終了後に人里での布教を終えて帰って来る叢雲とじゃ、活動時間が被らないからなぁ。

 まぁ、そういう事もあるか。

 

「ああ、魔理沙は知らなかったのかい? そうだよ、叢雲は僕をそう呼んでいるんだ」

「そんなあっさりと……香霖は、叢雲にそう呼ばれるのを受け入れているのか? ……香霖は、香霖は叢雲とけ、結婚するつもり、なのか……?」

 

 魔理沙の言葉に嗚咽が混じる。魔理沙は涙が零れるのを堪えながら、僕にそう訊ねて来た。

 確かに旦那様と呼ばれていれば、そう思うのも当然の流れだが……まさか泣かれるとは思わなかったな。

 実家を飛び出した時も、強がって笑顔を見せていた娘が見せた涙は、思っていた以上に僕に衝撃を与えた。

 

「魔理沙……っ!?」

 

(ショート・ジャンプ!)

 

 攻撃の手を手を止めてしまった魔理沙に西行妖の放った弾幕の一つが迫り、僕は咄嗟に魔理沙の前へと転移して、迫った弾幕を素手で叩き落した。

 僕が防がなくても、周囲の精霊たちがどうにかしただろうが、考えるより先に体が動いてしまった。

 

「香霖!? 何やってんだよ! その弾幕に振れたら危ないって霊夢が言ってたんだぜ!? 大丈夫か!!」

 

 僕が弾幕を素手で弾いたのを見た魔理沙は、涙を引っ込めて僕の安否を確認して来た。

 そう言えば、この弾幕には即死効果があるんだったな。『全耐性』や『耐即死』のスキルが無かったらヤバかったかもしれない。

 

「大丈夫だよ、魔理沙。こういった瘴気や呪詛の類は僕には効かないからね」

「効かないからって素手で触る事は無いだろう!? 万が一が有ったらどうするんだ!!」

 

 魔理沙は僕の服を掴み、僕の胸元に顔を押し付けながらそう言って来た。

 ……服が湿っぽくなっている。泣き顔を見られない様にしているのだろう。

 

「……悪かったよ、心配かけて」

「……あんま無茶するなよ」

「うん、ごめん」

 

 顔を押し付けたままの魔理沙の背中をあやすように撫でる。

 桜からの弾幕は相変わらず飛んで来るが、精霊たちがきっちりと防いでくれているようだ。

 

「―――魔理沙、霊夢たちの所で少し待っていてくれるか? そうしたら、叢雲の事を説明するからさ」

「ぐすっ、いいけど……待っていてって、その間香霖は何をするんだよ」

「なに、ちょっとあの桜に身の程を叩きこんで来るだけだよ」

 

(ショート・ジャンプ!)

 

 魔理沙を抱えたまま、霊夢たちの元へと転移する。

 そのまま僕は、まだ涙をぬぐい切れていない魔理沙を霊夢に預けた。

 

「霖之助さん。それに魔理沙……って、何泣いてんのよあんた?」

「う、うるさい! ちょっと目にゴミが入っただけだぜ!」

「そうは見えないけど」

 

 強がる魔理沙と、首を傾げる霊夢に苦笑しつつ、僕は久しぶりに防衛戦用の呪文を発動した。

 

(((ルミリンナ!)))

(十二神将封印!)

(ミラーリング!)

 

 氷の城を生み出す呪文『ルミリンナ』により、一瞬にして氷で出来た臨時の防衛拠点が現れる。

 この中に居れば、弾幕もレーザーも防げるだろう。

 

「みんなこの中に入ってくれ。霊夢たちは中で封印の準備を」

「あら、霖之助さんってこんなことも出来たのね」

「……スゲェ、こんな魔法始めて見たぜ」

「パチュリー様でもこの規模の魔法を一瞬で出来るかどうか……流石店主さんですね」

「え!? あの、霖之助さんって剣士じゃ無かったんですか!?」

「妖夢さん。旦那様は比類なき剣士であり、大魔法使いでもあるんです」

『うむ、キースの作る城なら頑丈さは折り紙付きじゃ。中なら安全じゃろう』

『了解した、主よ。防衛拠点内にて術式構築を再開する』

 

 全員が中に入ったのを確認したところで、僕は改めて西行妖を見据えた。

 

 

 

 色々とあったが準備は整った、さっさと終わらせるとしよう。

 西行妖は、変わらずこちらに弾幕とレーザーを放って来ているが―――

 

「―――そんなものがどれほどの役に立つって言うんだ?」

 

(((フラッシュオーバー!)))

 

 視界内の広範囲を一瞬で焼き払う呪文『フラッシュオーバー』によってその全てが焼き払われる。

 攻撃範囲をミスって、西行妖の枝の一部も炭化していたが、些末な事だろう。

 

(ショート・ジャンプ!)

 

 短距離転移で、西行妖の幹に直接触れられるほど近付く。

 そのまま素手で触れて、接触型の呪文を発動させた。

 

(((((エナジードレイン!)))))

(ミラーリング!)

 

 触れた相手の魔力を奪い取る禁呪『エナジードレイン』によって、西行妖の持つ力を大きく削る。

 

(((((八部封印!)))))

(((((九曜封印!)))))

(十二神将封印!)

(ミラーリング!)

 

 更に相手の能力の全てを封じる『八部封印』と相手の行動そのものを封じる『九曜封印』を使った事で、西行妖は完全に沈黙した。

 後は霊夢たちが封印するだけだ。

 

「霊夢っ!!」

 

 西行妖の下から声を張り上げる。

 その声が聞こえたかは判らないが、西行妖が沈黙したこと自体は察知出来た様で、氷の城から霊夢の封印術が西行妖へ向けて飛んで来た。

 

「『霊符・夢想封印』!!」

 

 色とりどりの巨大な光弾が西行妖へと直撃し、西行妖の咲かせていた花が一瞬で散り散りに吹き飛んだ。

 煙晶竜たちによれば、あれこそが幻想郷から奪われた春その物であるそうだ。

 それが解放されたという事は、もう直ぐ幻想郷に春が訪れるという事だろう。

 

「ん?」

 

 頭上から気配を感じて上を向くと、水色の着物を纏った少女が空から降って来た。

 自由落下では無いゆっくりとした落下をして来た彼女を思わず受け止めると、彼女の体の冷たさに驚いた。

 この冷たさは生者のものではない。恐らくこの娘こそが、異変の首謀者であるという亡霊の姫君『西行寺幽々子』なのだろう。

 

「……ん、ここは……あら? 殿方に抱き抱えられるなんて初めてだわ。どちら様?」

「君、あれだけの事があったのに、開口一番で言うセリフがそれかね?」

 

 余りにもマイペース過ぎる発言に肩の力が抜ける。

 周囲を無自覚に振り回しそうなこの感じは、ある意味お姫様らしいのかもしれないが。

 正直、疲労感が半端ないな。

 

「幽々子様ぁ~!!」

「あら、妖夢」

 

 やはり、抱えている彼女の名は幽々子で合っているらしい。

 彼女の名を呼びながら駆け寄って来る妖夢と、後からついて来る霊夢や魔理沙たちの姿を見て、ようやく僕は異変に一区切りついたのだと実感した。

 

 空を見上げると、そこには花がなくなり、枯れ木の様になった西行妖の枝が見える。

 折角春が来るのだから、どうせなら妖怪では無い桜で花見がしたい。

 

 そうだ。帰ったら、みんなで花見をしながら盛大に飲もう。僕はそう心に決めた。




転生香霖「何だか良く判らないが、魔理沙を泣かせてしまった。辛い。 ―――だからお前は盛り上がりも見せ場も無く消えろ」

西行妖「理不尽過ぎる!!」



はい、と言う訳で決着です。とは言え、戦闘自体はあっさり終わりましたが。

転生香霖がやった手順は、「範囲攻撃で弾幕を無効化して、瞬間移動で近付いて、魔力を奪って弱らせて、封印術で何も出来なくさせた」ですが、この手順実は転生香霖が居なくてもその場にいたメンバーで出来ました。

大体魔理沙の魔改造ミニ八卦炉の機能を使うなり、それぞれの手順を分担するなりで解決可能だったので、転生香霖は現地に到着してからも自分が来る必要があったのか疑問の思っていました。

その場にいたメンバーがこれを出来なかったのは、弾幕ごっこに慣れ過ぎていたからですね。
回避不能の範囲攻撃をブッパするとかのアイデアが出て来なかったり、そのアイデアが出て来る者が攻撃に参加して無かったりのせいで苦戦していました。(主に煙晶竜とクトゥグア。煙晶竜の場合は妖夢戦で切り札を使ったばかりで範囲攻撃をする為の魔力が不足していた。クトゥグアの場合は範囲攻撃のコント―ロールが苦手で、西行妖を丸ごと焼き尽くしそうだから攻撃できなかった)

次回は魔理沙たちへの事情説明と異変解決後恒例の宴会です。
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