東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
ははぁ~ん、さては萃夢想到達まで結構かかるな?
異変解決から数日後、改めて博麗神社で宴会が開かれる事となった。
参加するのは、霊夢や魔理沙は当然として、紅魔館の面々や今回の異変の原因だった幽々子と妖夢、それに僕と叢雲、煙晶竜とクトゥグアも竜信仰勢力として招かれていた。
どうやら今回の宴会は、各勢力同士での顔合わせの意味合いも持つらしいが、そんな事よりも重要な事がある。
今回の宴会を取り仕切っているのは、長い冬眠からようやく目覚めた紫なのだ!
その話を聞いて、僕は直ぐにでも会いに行きたくなったが、手ぶらで行く訳にもいかないし、準備で忙しいであろう時に行くのも気が引けたためぐっと堪えた。
まぁ、一番の理由は、僕らを宴会に招待する旨を伝えに来た藍から、「宴会当日まで大人しく待っていてね」という紫からの伝言を伝えられたからなのだが。
ともかく、久しぶりに紫に会えるとあって、僕は全力で宴会に向かう準備をした。
宴会までの少ない時間の中で、『金耀猪の肉』の元である『グリンブルスティ』、『銀耀猪の肉』の元の『ヒルディスヴィーニ』、『金冠鶏の肉』と『金冠鶏の卵』を落とす『グリンカムビ』、『蜃帝蛤』『蜃帝牡蠣』『蜃帝鮑』を落とす『元始蜃帝』、『死神海老の爪』を落とす『デスオマール』、『魔鉱ウニ』を落とす『魔針海栗』、『巨渡蟹の卵』を落とす『ジャイアントガザミ』。等々、思いつく限りの食料アイテムを落とすモンスターたちを徹底的に狩り、食材を集めては調理し続け、『八塩折之酒』、『スラー酒』、『ソーマ酒』、『スットゥングの蜜酒』などの酒類も大量に用意した。
正直ホストを差し置いてやり過ぎたと思うが、まぁテンションが上がってしまったのだからしょうがない。
アイテムボックスに入れておけば腐らないのだから、宴会の際に必要な分だけ取り出して、残りは後々消化して行けば良いだろう。
ちなみに、同じような感じで作ったおせちが、まだまだ大量に残っているが、そちらは気にしない事とする。
後で絶対食べるから、残さないし無駄にもしないから!
そんな感じで少々失敗しつつも、僕は宴会当日を迎えた。
宴会の開始は日が暮れてからなので、それまでに準備を済ませてから会場の博麗神社に向かう。
とは言っても、必要な物は既にアイテムボックス内に準備済みだったので、軽く身嗜みを整えたり、叢雲の準備が整うのを待つくらいしか無かったのだが。
「叢雲、準備は出来たかい?」
「はい、ばっちりです」
「煙晶竜とクトゥグアは?」
『儂は問題無いよ。態々準備するものも無いしの』
『同じく』
「では、出発しましょうか」
確認を終えると、僕は白銀竜の姿となり、叢雲たちを乗せて飛び立った。
白銀竜の姿で向かうのは、一種のデモンストレーションだ。幽々子と妖夢は僕のドラゴンとしての姿を見たことが無いから、少し驚かしてやろう程度の考えだが。
僕のドラゴンとしての姿は名前の通り全身白銀色の為、夜には非常に目立つ。
だが、叢雲から聞いた話によると、夜に空を飛ぶ僕の姿は人里では吉兆とされているらしい。
なんでも、白い光が一直線に横切る姿が流れ星を彷彿とさせ、その正体を白銀竜(信仰対象)であると叢雲が人里で説明した結果、流れ星に願い事をすると叶うという話しと混じって、『夜に空を飛ぶ白銀竜の姿を目にすると幸福が訪れる』という話しが広まってしまったそうだ。
『別に僕には、見た人を幸福にする能力何て無いんだけどねぇ』
「まぁ、こういったものはゲン担ぎみたいなものですから。あまり気にしなくてもよろしいのではないでしょうか?」
『うむ、汝が無理に何かしなくても良かろう。信じたい者には信じさせておけば良いのじゃ』
『煙晶竜に同意します。信仰されているからと言って、全ての祈りや願いを聞き届ける必要はありません。祀られるに値する者であると示し続ければ良いのです』
『そう言うものか……』
信仰の対象になると言うのは、前世も含めて初めての経験だ。
まだまだ不慣れで、どう行動するべきか悩むことは多いが、幸いアドバイザーが周りに居てくれるため何とかなっている。
長年祀られ、信仰されていた叢雲は言わずもがな。煙晶竜もゲーム時代も含めて人々から信仰されるドラゴンであったし、クトゥグアもまた邪神とは言え立派な神だ。
信仰対象としての先輩が周りに居てくれると言うのは、非常に心強い。
『……やれやれ、まだまだ学ばなくちゃならない事ばかりだな。叢雲、煙晶竜、クトゥグア、これからもよろしく頼みますよ』
「ええ、お任せください。旦那様」
『うむ、任せておくが良い。友よ』
『お任せ下さい、我が主』
みんなの頼もしさを噛み締めながら、僕は博麗神社を目指した。
しばらくして神社に到着した僕は、神社の上空を滞空していた。
今はこの図体だから、下りられる場所が無いかを探していたのだ。
叢雲たちは、既に僕から降りて宴会に参加していた。僕も早く合流したいところだが。
「霖之助様、こちらです! こちらに着陸用のスペースを確保してあります!」
『ありがとう、今行くよ』
声を掛けられ、僕は宴会会場から少し離れた所にある空きスペースへと降り立った。
僕が着陸する為に紫が用意してくれたスペースらしく、スペース内に誰かが入り込まない様に藍と橙が見張っていてくれた。
『こんばんわ。藍、橙』
「こんばんわ、霖之助様。今夜はようこそおいで下さいました」
「こんばんわです。霖之助しゃま!」
以前は僕の事を『森近様』と呼んでいた藍だが、今では下の名前で『霖之助様』と呼んでくれている。
紫が冬眠している冬の間に、差し入れなどを繰り返している内にそう呼んでくれるようになったのだ。
『今日は招いてくれてありがとう。これはお土産だよ。こっちが藍の分で、こっちが橙の分だ』
「ありがとうございます。これは……霖之助様の作った油揚げですね!」
「わぁい! お魚、お魚~!」
アイテムボックスから予め用意していたお土産を呼び出し、藍と橙、それぞれに渡す。
藍には手作りの油揚げを、橙には海魔の島産の魚の一夜干しを渡した。
二人共尻尾を大きく振って喜んでいる。その姿は、ゲーム時代の配下達の姿を思い起こさせた。
―――ああそうか。この姿が見たかったから、僕は毎度彼女たちに好物の食べ物を渡していたのか。
特に藍は狐である為、配下の『ナインテイル』や『命婦』の事を思い出す。
お調子者で問題児だったあいつらも、会えないと思うと寂しい物だ。
『……藍、紫は会場の方かな? このまま向かっても大丈夫かい?』
「はい、大丈夫です。 ですが……その、紫様は今大変お疲れですので、霖之助様に労って頂ければ、と」
『大変お疲れって……何があったんだい?』
「行けば判ります」
それ以上、藍は何も言わず、僕を会場へと促した。
冬眠から目覚めて早々に霊夢たちと弾幕ごっこを行ったとは聞いたが、その時の疲れが残っているのだろうか?
僕は首を傾げつつ、ドラゴンの姿のままのそのそと会場へ向かった。
『し、死屍累々、だと……?』
驚愕の余り声が震えるのを自覚した。
宴会場には数多くの敷物が敷かれ、春の遅れを取り戻すかのように桜が咲き乱れている。
招かれている者は多く、見知っている者も初見の者も、数多くの者が参加していた。
が、そこには宴会らしい和気藹々とした雰囲気は微塵も無かった。
参加者の多くは、まるで屍の様に敷物の上に横たわり、辛うじて意識を保っている者も疲労感に満ちている。
先に会場入りしていた叢雲たちは、倒れている者達の介抱をしているようだ。
会場の各所には、洗い立ての様な綺麗な食器が積み上げられ、そしてその中心には唯一元気いっぱいの様子で食事を続ける者が居た。
傍らには次々と料理の乗った皿を運び、順次空になった食器を片付けている妖夢。
敷物の上には、『日輪』と名付けられたゴールドシープが伏せ、その上では日輪の主人となった幽々子が、次々と妖夢の運んで来た料理を平らげていた。
不思議な事に、幽々子の食べた終えた料理の皿には、食べかすも一つもついていない。不自然に綺麗な食器が積み上げられていたのはこれが原因か。
余りにも混沌とした光景に呆然としていると、僕に近づき声を掛けて来る者が居た。
「―――ようやく来てくれたわね。お久しぶりね、霖之助さん」
声を掛けて来たのは、今にも倒れそうなくらい疲労感を感じさせる紫だった。
『久しぶりだね、紫。大丈夫かい? と言うか、何なんだこの状況は……』
「色々あったのよ。色々とね……」
紫の説明によると、事の発端は日輪を連れて幽々子と妖夢が宴会に現れた事だったようだ。
それまでは、皆が皆ようやく訪れた春を祝い、紫が用意した酒や料理を楽しんでいたそうなのだが、幽々子たち、と言うかゴールドシープである日輪が登場してから流れが変わった。
宴会に参加した者の一人が日輪の毛並みに興味を持ち、触ってみたいと言ったのだそうだ。
それを幽々子が快諾し、実際に触った者がその毛並みの気持ち良さを騒ぎ立てた事で、自分も自分もと、次々に希望者が増えて行った。
ゴールドシープは通常の羊よりもずっと大きいが、流石に一度に全員が触れるような大きさでは無い。
当然、触れる者は早い者勝ちとなったが、その順番を決めるために参加者全員で弾幕ごっこを行う事となった。
結果、敗れた者達が周囲の敷物に力無く横たわり、勝利した者達は日輪の毛皮に上半身から突っ込んで動かなくなったそうだ。
よく見ると、霊夢や魔理沙を始めとする、見知った少女たちの下半身が日輪の毛皮から生えていた。
ちなみに、紫が用意した料理の大半は、参加者たちが弾幕ごっこを繰り広げている間に幽々子の胃袋の中に消え、現在進行形で食い尽くされている最中だそうだ。
ドラゴンの姿で驚かせようと思っていた二人の内、幽々子は食べるのに夢中で、妖夢は死んだ表情で給仕を続けていて気付いていない。
「霖之助さん……悪気が無かったのは判るけど、なんてものを幽々子にあげたのよ」
『正直すまなかった。まさかこんな事になるとは』
「霊夢たちは人をダメにする毛皮に飲み込まれて帰って来ないし、用意した料理も八割方幽々子に食べられちゃうし……もう滅茶苦茶よ」
『すまない……けどそれ、半分は幽々子が原因だよね?』
とは言いつつも、僕はアイテムボックスから用意して来た酒や料理を取り出して見せた。
作り過ぎた料理も、偶には役に立つものだ。
『ほら、とりあえず料理が足りないなら、僕が持って来た分があるからこれを使うと良い』
「あら、こんなに沢山……ありがとう、助かるわ。 ……けど、あなたまた張り切って後先考えずに作り過ぎたわね?」
『何故その事を……』
「藍から聞いたのよ。あなたがおせちを作り過ぎて一時期配って回っていたって」
そう言えば、冬の間にその事を藍に話していたっけ。そりゃバレるわな。
「おせちの方もまだまだ残っているんでしょ? そっちは幽々子にあげれば良いわ」
『良いのかい? 春の宴会でおせちって』
「構わないわよ。時季外れはともかく、霖之助さんの料理なら文句なんて出ないから」
言い切る紫は、僕の料理の腕を随分と信用してくれているようだ。
今晩の宴会の料理も、張り切って作った甲斐があった。紫には是非とも料理の味を楽しんで貰いたい。
特にゲーム時代の食材を使ったものは、回復効果を持つものも多い為、疲れている今の紫にはぴったりだろう。
『そう言って貰えると、作った甲斐があったというものだよ。紫の手伝いには叢雲を同行させよう。僕は幽々子の所におせちを届けて……幽々子の給仕はクトゥグアに交代させて、妖夢を休ませようかな?』
「……そう言えば、霖之助さんの所にまたとんでもないのが増えたそうね? クトゥグアって言えば、クトゥルフ神話の邪神じゃない。あの邪神たちは実体を持てるほどの力は無かったはずだけど……」
『紫が冬眠した後直ぐに夢の中で戦ってね? 殴り倒したら僕の配下になりたいって言うから、僕の能力で召喚して色々手伝わせているんだよ』
「コズミックホラーの神格を殴り倒したの? あなた……」
頭が痛いと言わんばかりに額に手を添える紫。
実は地味にゲーム時代のスクショ機能や動画撮影機能も能力に組み込まれている為、その時の様子を動画で見せることも出来るのだが、後で見せた方が良いかな?
『クトゥグアとの戦闘なら動画に残っているが、後で見るかい?』
「……いいえ。正気度が削られそうだから、遠慮しておくわ。他の人にも軽はずみに見せちゃ駄目よ?」
『了解』
紫からの忠告を承知し、僕は会場内で倒れている者達の世話をしていた叢雲たちを呼び寄せて、紫を手伝うように頼んだ。
さて、僕の方はクトゥグアと一緒に幽々子たちの元へ向かわなきゃな。
……そう言えば、紫たちはともかくとして、宴会に参加している者達の誰一人としてドラゴンである僕の姿に驚かないのは何故だろうか?
まさか気付かれてないとか? ……この姿、結構目立つと思うんだけどなぁ。
ゆかりん「冬眠から目が覚めたと思ったら、巫女たちに襲撃されて宴会やることになるわ、千年来の親友がやらかしているわ、やらかすだろうなぁと思っていた道具屋さんが案の定やらかしているわ……もう、なにこれ?」
転生香霖「ごめんて」
ゆかりん復活!
けど、目覚めた直後に色々あったり色々知らされたりで、気分はバッドモーニングですw
とりあえずゆかりんは、ゆゆ様の相手を転生香霖に任せて、自分は転生香霖が作って来た料理をやけ食いする事にしましたw