東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
外来韋編の香霖堂は、霊夢と魔理沙に加えて菫子が良く出て来ますね。
……この作品で深秘録に辿り着くのっていつだ? (白目)
(レビテーション!)
とりあえず、ドラゴンの姿のまま進むと、敷いてある敷物を踏み潰してしまうので、魔法で浮遊しながら幽々子たちの元に近づいた。
途中倒れている者達の上を通過しているのだが、全然反応されないな。逆に心配になって来たぐらいだ。
幽々子に近づくと、真っ先に反応を示したのはゴールドシープの日輪だった。
ドラゴンが近づいて来たからなのか、それとも近づいて来る者の正体が僕だと判ったからなのかは知らないが、ようやくまともな反応が帰って来た気分だ。
僕と眼が合った日輪は、小刻みに震え出し「メェェ~……」と、情けない声を上げていた。
「ん? どうしたの日輪……って、うひゃぁああ!?」
日輪の反応に気付いて、こちらへ振り返った妖夢がようやく僕の姿に反応してくれた。
驚いて腰を抜かした妖夢は、その拍子に手に持っていた幽々子の食べ終わった皿を宙にぶちまけていたが、それらは僕に同行しているクトゥグアの伸ばした触手にキャッチされていた。
「どうしたの妖夢、そんなに大きな声を出して?」
「ゆ、ゆゆ、幽々子様!? り、竜が、でっかくて白い竜が!?」
「でっかくて白い竜?」
食べていた料理から視線を外し、幽々子がこちらに視線を向ける。
ようやく幽々子にも気付いて貰えた。君達、いくらなんでも料理に集中し過ぎでは?
「翼を持つ四足歩行の竜……ドラゴンと言う奴かしら? 初めまして……?」
『初めましてでは無いよ、幽々子。僕だよ』
「あら、その声もしかして、霖之助さん?」
「ええぇーーーーー!?」
ドラゴンの正体が僕だと気付き、妖夢は盛大に驚いていたが、幽々子はあまり驚いていない様子だった。
紫から事前に聞いていたんだろうか? いや、幽々子なら前情報無しでもこんな反応な気がする。
『こんばんは。幽々子、妖夢。また随分と食べているね』
「こんばんは。霖之助さん。ええ、美味しくいただいているわぁ」
「こんばんはです。霖之助さん……え? ていうか本当に霖之助さんなんですか!?」
『そうだよ、ほら』
二人の反応は見れたので、僕はドラゴンから人の姿に戻って見せた。
「本当だった……霖之助さんって竜だったんですね」
「正確には半人半竜だね。妖夢が半分幽霊なら、僕は半分ドラゴンなんだよ」
「はぁ、そうだったんですね……私と同じ半人」
自分と同じ、そう言って妖夢は少し嬉しそうにしていた。
半妖の類は昔から少なかったかね。人間からも妖怪からも半端者として迫害される事が多かったし。
僕も幻想郷に移住する前は各地を転々としていたし、一つの所に長く留まれたことなんて無かったからなぁ。
まぁ、あの頃は僕の性格にも問題があったと、今では反省しているけどね。
人妖を問わず、半妖を理由にごちゃごちゃ言って来た連中の腕を、片っ端から圧し折って回ったのは流石に今では反省―――
「そうだ妖夢、幽々子の給仕はしばらくクトゥグアに変わって貰うから、君は少し休むと良い」
「え? でも……良いんですか?」
「構わないさ。それと幽々子、僕が持って来た料理があるんだけど、食べるかい?」
「ええ、もちろんよ!」
食い気味に答えて来た幽々子に苦笑しつつ、紫の言っていたようにおせちの重箱を取り出してクトゥグアに渡す。
とりあえず四十人前くらい渡しておけばしばらく持つかな? いや、既に食べられた後の皿の数を見るに、これでもまだまだ足りないのか?
僕について来たクトゥグアは、幽々子の肩の辺りまで移動すると、触手を伸ばして重箱を受け取り、そのまま給仕を始めた。
『主の命により、貴殿への給仕を開始する』
「ふふ、よろしくね。クトゥグアさん。あら、中身はおせちなのね。季節外れだけど、美味しそう」
「正月に作り過ぎてしまったものでね。保管方法が特殊だから作りたてのままだよ。今日の為に作って来た料理もあるけど、そっちは他の参加者たちにも十分に行き渡ってからだ。量だけは沢山あるから、好きなだけ食べて行ってくれ」
「好きなだけ食べて良いの? 嬉しいわぁ」
「あの、霖之助さん。大丈夫ですか? その……幽々子様はかなりの健啖家でいらっしゃるんですが」
「少なくとも、おせちだけでも今空になっている皿の量の十倍以上はあるから、気にしなくていいよ」
「じゅ!? 十倍以上、ですか?」
「ああ、十倍以上なんだ」
ほんと、何でこんなに作っちゃったのかな? うっかりし過ぎだよ、ほんと。
改めて作った量を確認して、後悔が押し寄せて来た。
だが、そんな事は関係無しに、幽々子は楽し気におせちを食べ始めた。
「いっただっきまーす!」
ひょいぱくひょいぱくひょいぱくひょいぱくひょいぱくひょぱひょぱひょぱひょぱひょぱ―――
「うーん、美味しいわぁ」
「えぇー」
僕も自分は結構健啖家な方だと思っていたが、彼女を前にすると自信が揺らぐ。
なんだこれ? 食べる姿から優雅さは決して失われていないというのに、驚くほどのスピードでおせちが食い尽くされて行く。
彼女の胃袋はブラックホールか何かなのか? いや、亡霊だからそもそも肉体的な胃袋が無いのか? まさか、食べた傍から直接エネルギーに変換を!?
「……これはすごいな。クトゥグア、直接コンテナを出しておくよ」
『了解』
アイテムボックス内から、おせちの詰まった貨物コンテナサイズの木造コンテナを取り出し、レビテーションで浮かせる。
流石にこれを食い尽くすまではしばらく時間が掛かると思うが、今の内に速く料理を配っておいた方が良いだろう。
「妖夢、僕は宴会の参加者たちに料理を配って来るよ」
「あ、それなら私も手伝います」
「いや、さっき言った通り、妖夢は休んでいてくれて良いよ。それより、出来ればあの連中を引っ張り出しておいてくれないか?」
そう言って僕が指さしたのは、現在進行形で日輪の羊毛に埋もれている霊夢たちだった。
それを見た妖夢は、顔を引きつらせていた。
「あ、あの人たちをですか?」
「なに、無理にとは言わないさ。僕が来たことと、料理を配っている事を伝えてくれればそれで良いよ。それでも出て来なければ、料理は不要と判断するだけさ」
それだけ伝えてから、僕は料理を配りに行った。
さて、これで素直に出て来てくれれば良いが……まぁ、出てこなかった時はその時だ。
「こんばんは、霖之助」
「こんばんは、フラン。最初に来たのは君だったか」
料理を配っている途中、最初に僕の元を訪れたのはレミリアの妹のフランだった。
正月に改めて会って以来、彼女とはちょくちょく紅魔館で開かれるお茶会に誘われる仲だ。
そうしてしょっちゅう会っている内に、自然と僕の呼び方が名前呼びとなっていた。
彼女は少し、僕の配下である『ヘザー』と似ている所がある。フランとヘザーを引き合わせたらどうなるだろうか? きっと仲良くなれると思う。
それはそうと、他の者達はどうしたのかと思って日輪の方を見ると、抜け出そうと藻掻くが直ぐに脱力してしまうか、そもそも微動だにしていないかの二通りで、しばらく来る様子は無かった。
「君以外は……しばらく帰って来なさそうだね?」
「もう、みんなだらしないんだから。お姉さまなんて、普段は吸血鬼の誇りがどうのって言ってる癖に……」
「ま、それだけ魅力的な毛並みだって事だろう。気持ちは判るよ、あの毛並みは魔性だ」
「確かにそうだけど……」
だらしないと言いつつ、フラン自身ゴールドシープの毛並みを実際に味わっている為、レミリアたちの行動を否定しきれないのだろう。
まぁ、自力で脱出して来たフランの方がよほどしっかりしているとも思うが。
「あら、妹様。私は既に脱出していますよ?」
「あ、咲夜。抜け出せたんだ」
「ええ、つい先ほど。それとこんばんは、店主さん。料理の配膳でしたら、お手伝いしますわ」
「こんばんは、咲夜。助かるけど良いのかい?」
「ええ、この程度はメイドの職務の内です」
凛とした佇まいで咲夜はそう返す。
先程まで頭から日輪の毛並みに埋もれていたとは思えないほど、完全で瀟洒な姿だ。
だが、フランは何か言いたい事があるのか、不満げな顔で咲夜を見ていた。
「もう、咲夜。いつまで霖之助を『店主さん』なんて他人行儀な呼び方で呼ぶつもり? 付き合いなら私より長いんだから、咲夜も名前で呼ぶべきじゃない?」
「え? ですが……」
フランの言葉を受け、咲夜は困った様子で僕を見て来る。
僕としては、名前で呼ばれる事の方が多いし、好きに呼んでくれれば良いとしか言い様が無いのだが。
「咲夜の好きに呼んでくれれば良いさ。店主と言う呼ばれ方が嫌いな訳じゃないし、名前で呼んで貰えるなら、それはそれで嬉しいからね」
「はい……では、霖之助さんと、お呼びしても?」
「もちろん」
少し恥ずかしいのか、咲夜は薄く頬を染めながら僕の名前を呼んで来た。
霊夢や魔理沙と比べて大人びているが、こうしていると年相応の少女らしい可愛らしさを感じる。
その様子に満足したのか、フランはうんうんと頷いていた。
「さて、それじゃあ手伝いを頼むよ咲夜。もっとも、もう大半配り終えているから直ぐに終わるだろうけどね」
「はい、お任せください」
「霖之助! 私も手伝って良い?」
「フランもかい? じゃあお願いするよ」
新たにお手伝い二名を加えて、僕は料理の配膳を再開した。
メイドとして普段から慣れている咲夜に比べ、料理の配膳を行うのが人生初めての経験だというフランの働きはぎこちない物だったが、おっかなびっくりでも頑張るフランの姿を、咲夜と共に見守りながら回るのはなかなか楽しい経験だった。
手伝ってくれた二人には、後でデザートでもサービスしよう。そう僕は心に決めた。
料理を配り終えた僕たちは、幽々子の居る敷物から少し離れた場所で料理を食べている妖夢の元に合流した。
「やぁ妖夢、料理は口に合ったかな?」
「あ、おかえりなさい霖之助さん。はい、とっても美味しいです!」
「そうか、それは良かった」
手元に料理と酒を呼び出しながら、僕は妖夢の座る敷物に腰を下ろした。
続いて咲夜とフランも同じ敷物に座る。
「あ、咲夜。それから、フランドールだっけ?」
「フランで良いよ、妖夢」
「ようやく抜けられたみたいね、妖夢。あなたのご主人様、健啖にもほどがあるんじゃないかしら?」
「あはは……」
咲夜からの指摘に、妖夢は力無く笑う。
幽々子が普段からあれだけ食べているのか、それとも今日が宴会だから羽目を外しているのかは知らないが、これだけ食べる相手に普段から仕えているとなると、色々大変だろう。
「そ、そう言えば霖之助さん! ご相談したい事があるんですけど」
「うん? なんだい?」
露骨に話を変えて来た妖夢だが、まぁ敢えて指摘はしない。
時には不都合な現実から目を逸らす事も大切なのだ。問題自体は解決しないが、精神衛生上は必要だ。
「実は、この剣の事なんですが……」
そう言って妖夢は、背負っていた二本の刀の内、長刀の方を鞘ごと僕に差し出して来た。
「ふむ、拝見しても?」
「ええ、お願いします」
妖夢の許可を得て、受け取った刀をゆっくり抜く。
鞘から現れたのは、一目で名刀の類だと判る素晴らしい刀だったが、刀身の一か所が欠けていた。
「これは……」
「先日叢雲さんの手刀と打ち合った時に欠けてしまいまして。どうしたものかと困っていたところ、叢雲さんから霖之助さんなら修復出来ると伺いました」
「なるほどね」
叢雲と打ち合ったと言うのなら納得だ。
彼女は誇張無しで、日本神話最強の神剣だ。名刀も鈍も神剣も関係無しに、彼女と打ち合えば一方的に刃が欠けてしまう事だろう。
……しかし、刀の修復か。ふむ……。
「相談と言うのは、この刀の修復の依頼か……良いよ、請け負おう」
「え、そんなにあっさり……良いんですか?」
「ああ、もちろん。叢雲が欠けさせた物だし、彼女の担い手として、僕が責任を持って修復しよう」
「本当ですか!? 良かったぁ……」
「ただし、」
「へ?」
安心している所で悪いが、話はまだ終わっていない。
まぁ、ここからは完全に趣味になるし、妖夢に断られればそれまでなのだが。
「ただし、一つ相談なんだが。この刀、僕に打ち直させてくれないか?」
「打ち直し、ですか?」
「ああ、より強力な物となる事は約束するよ」
刀と言えば、僕に取って最も馴染み深い武器と言える。
前世の素材や、最近生産出来るようになったオリハルコン合金を使って、僕が今作れる最高の刀を作ってみたいという気持ちは、前々からあったのだ。
ただ、刀なんて打った日には叢雲が絶対に嫉妬するから、今まで製作に踏み切れなかったのだ。
だが、今回合法的に僕が刀を製作出来る機会がやって来た。折角なら、物にしたい所である。
「より強力に、ですか。具体的にはどれほどの物になるでしょうか?」
「それはやってみなければ判らない。が、僕自身のアイテム作成の腕は中々の物だと自負しているよ。君が知ってそうな所だと、魔理沙のミニ八卦炉や叢雲の鉄扇は僕の作品だ」
「あれって霖之助さんが作ったんですか!?」
大きく口を開けて、妖夢は派手に驚いた。
ふむ、この驚きは良い意味で受け取って良いもの、だよな? あんなすごい物を作ったのか!? みたいな。
「楼観剣もあんな風に……ぜひお願いします!」
「うむ、任せたまえ」
正式に妖夢から依頼を受け、彼女の愛刀である『楼観剣』を受け取った。
仕事の話も終わったし、後は普通に宴会を楽しむだけだなと思ったら、今度は咲夜から相談があった。
「霖之助さん。実はその、私も霖之助さんに装備の製作依頼をしたいのですけど」
「咲夜、君もかい?」
咲夜の話によれば、今回の異変の際自分の力不足を感じ、その不足を補う為にの方法をパチュリーに相談したところ、以前僕が渡した素材を使ってアイテム作成を行うという話になったのだが、その際僕の力も借りたいとの事だった。
「霖之助さんに以前いただいた素材ですが、パチュリー様もまだまだ利用法の確立に難航していまして、素材の利用方法を知っている霖之助さんの知恵をお借りしたいそうです」
そう言う事か。確かに、あの素材の特性を一番知っているのは僕だし、利用方法のテンプレを知っているのも僕だ。
未知の素材を一から研究するより、その素材をある程度理解していて、利用法も知っている僕の協力があった方が何倍も速いだろう。
「判った。その依頼も受けよう。ただし、料金は当然しっかり貰うよ? 妖夢の場合は僕の趣味と言う面が強いから、そんなに高い料金設定にするつもりは無いけど」
「ええ、当然ですね」
「あ、安くなるんですね。良かったぁ」
「もー、三人とも! いつまで仕事の話をしているつもり? 折角の宴会なんだから楽しまないと!」
僕たちの話が一段落したところで、フランがそう言いながら僕たちに酒の入った杯を差し出して来た。
確かにフランの言う通りだ。折角の宴会を楽しまないなんて損と言うものだ。
僕と妖夢、咲夜は顔を見合わせると、少しだけ苦笑してから手にした杯を持ち上げた。
その様子で、何をするのか察したフランもまた、ニコニコしながら自分の杯を掲げた。
「「「「乾杯!」」」」
軽くぶつけ合った杯から飛び散った酒の雫が、月明かりを受けてキラキラと輝いた。
なお、この後妖夢から預かった楼観剣の代わりに、僕の『神鋼鳥の刀』を貸し出したのだが、その時近くを通りかかった叢雲が、物凄い目で神鋼鳥の刀を見ていたのが軽くホラーだった。
フラン「お肉美味しい~!」
咲夜「海鮮美味しいですね」
妖夢「このお酒、美味しいです!」
転生香霖「君らの分? 無いよ。君らは羊毛に包まれていれば満足だろう?」(ムシャムシャ)
霊魔レ美パ「えぇ~、そんなー」(うるうる)
転生香霖「はぁ、しょうがないなぁ……今回だけだよ」
霊魔レ美パ「わぁい!」
結局あげる転生香霖であった。
こうやって無自覚に餌付けして行くんやなって。