東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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『純情アルメリア』のPV、だと!?

(作者視聴中)

良い……(尊死)

こんなの妖夢ルートのエンディング書きたくなるじゃないですか。
最高かよ!!


第三十六話 「転生香霖と虚実の像」

 その日も僕は霊夢、魔理沙、妖夢、咲夜の四人に稽古をつけていた。

 つけていた。と言っても、丁度終わったところなのだが。四人とも、精魂尽き果てた様子で地面に転がっている。

 

「よし、今日の稽古はこれで終了だ。四人とも、休んだらミルクで喉を潤して行くと良い」

「「「「はーぃ……」」」」

 

 四人から返事が返って来たが、疲労困憊の為まるでゾンビの呻き声の様だった。

 まぁ体力を使い切ると言うのは、それだけ稽古としての内容が充実していた証とも言えるのだが……ふむ。

 

「そろそろ中弛みの時期だよねぇ……」

 

 何事も、モチベーションを維持して続けると言うのは難しい物だ。

 特に武の稽古と言うものは、明確な終わりや目標が無いので猶更だ。どこまで鍛えれば良いと言うものでは無く、どこまでも鍛え続けるものだからね。

 より楽な動きをしようと工夫すること自体は、武道にとって大事な事だが、より楽をしようと言う精神はその限りではない。

 そう言った飽きの感情を抱かずに、真摯に武を続けられる精神を養う事もまた修行の一環とも言えるが、年若い少女たちにそれを求めるのは酷であろう。

 そもそも僕は、彼女たちを弟子として育てたいのではなく、彼女たちがより良い未来を掴むための手段の一つとして、戦い方を教えているにすぎないからね。

 

 となると、何か彼女たちの気分転換になるものが必要だな。

 気分転換には、彼女たちが喜ぶ物か、彼女たちが楽しめる物が良いだろう。

 パッと思いつくのは食事関連だが、これは既に今更感があるというか、そもそも稽古を始めたきっかけも豊穣の乳で食べ物関連だったわけだし、別の物が良いだろう。この後四人の体力が回復したら、新作のケーキを振る舞う予定なのは変わらないが。

 

 では女の子らしく服や装飾品をプレゼントすると言うのはどうだろうか?

 これは良いアイデアだと思うが、用意するのに時間が掛かり過ぎる。

 こちらは保留だな。後でアリスに相談するか、紫に外の世界で流行の服やアクセサリーのサンプルを頼もうか。

 

 ふーむ、色々アイデアは出そうと思えば出せるが、今必要なのは直ぐに用意出来て彼女たちを喜ばせるか楽しませることが出来るものだ。

 だが、直ぐに用意出来る物となると、僕に用意出来る物なんて、アイテムボックス内に保管してあるものか、能力で召喚出来る存在か、僕の魔法や技術で即席で作れる物くらいだ。

 この中で彼女たちが喜んでくれる物となると、ゴールドシープを始めとしたモフモフモンスターを呼び出して毛並みを堪能して貰うくらいか?

 けど、現在は六月の中頃、熱いし湿度も高く、毛並みをモフるには向いていない時期だ。

 氷属性を操る『ポーラーウルフ』や『ホワイトファング』なら行けるか? いや、ちょっと待て。

 なにもモフモフにこだわる必要は無いだろう。選択肢を狭めてはいけない。

 

 純粋に、彼女たちが嬉しがる物や楽しめる物を考えよう。いや、彼女たちと言う表現も選択肢を狭めているのかもしれない。

 彼女たちに限らず、一般的な範疇で人々が楽しめる様な物……そうだ、あれがあった。

 一歩間違えれば悪用も可能な物だが、彼女たちなら使い方を間違える事も無いだろう。

 

 僕がそう結論付けて視線を上げると、体力がある程度回復したらしい四人が、豊穣の乳の入ったガラス瓶を片手にホッと一息ついていた。

 丁度全員起き上がっているし、彼女たちにコレを渡してみるか。

 

「四人とも一息付けたみたいだね。そこで一つ提案があるんだが良いかな?」

「て、提案って何だよ香霖。まさか、一息ついたから稽古再開なんて言わねーよな?」

 

 僕が声を掛けると、魔理沙がそう聞き返して来た。

 手が震えているのは、キンキンに冷やしたガラス瓶が冷たいからかな?

 

「違うよ。さっき言ったろ、今日の稽古は終了だって」

「そ、そうか。なら良かった」

 

 あからさまにホッとした様子を見せる魔理沙。

 いや、口には出していないが、魔理沙以外の三人も同様に安堵の様子を見せていた。

 そんなに稽古の内容厳しいかな? 今は体力と体幹を養うために、体力の限界まで全身を運動させているだけだから、本格的に難易度が上がって来るのはこれからなんだけどなぁ。

 

「それで、提案って言うのは何なの霖之助さん?」

「ああ、提案って言うのはね。気分転換にこれで少し遊んでみないか? って話だよ」

 

 小首を傾げて訊ねて来た霊夢に、手元に紙束を呼び出しながらそう返す。

 呼び出した紙束の正体は、僕が『錬金術』スキルの技能である『呪符生成』で作成した呪符である。

 

「? なにそれ、お札?」

「似たようなものだけど、正確には呪符だね。これは僕が作成したもので、この呪符には僕が使うとある魔法の効果が封じ込められている。この魔法を使って気晴らしに遊ばないか? という提案だよ」

「魔法? どんな魔法が封じられているんですか?」

「『メタモルフォーゼ』という変身魔法だよ。遊ぶのにはもってこいだろ?」

 

 そう、僕が取り出した呪符は、ゲーム時代には作成出来なかった呪符『メタモルフォーゼの札』だった。

 この呪符に封じられている禁呪の呪文『メタモルフォーゼ』は、元々接触した対象に一定時間変身し、その能力すら完全に模倣すると言うものであったが、転生して能力として組み込まれたこの呪文は自由度が増しており、接触せずとも一度見た事がある物、会った事のある者に変身する事が可能で、見たことが無いものでもイメージさえはっきりしていれば変身可能となっていた。

 また、単純に効果も強力になっており、ゲーム時代よりもずっと長い時間効果が続いたり、効果を制限(見た目だけ模倣し、能力までは模倣しないなど)する事によって効果時間を延長するなどのカスタマイズも可能である。

 霊夢たちの気分転換にと取り出したこの札は、能力までは模倣しない、見た目だけの変身を行うための呪符だ。

 機能を制限した分、悪用される心配が少ないので、玩具にするには丁度良いだろう。

 

「へぇー、こんな紙切れがねぇ」

「変身魔法! なんだか面白そうだぜ!」

「変身……ちょっと興味あります」

「姿を変える魔法は非常に高度で扱い辛い魔法だとパチュリー様から聞きましたが、霖之助さんは紙一枚にその効果を付与出来てしまうんですね」

 

 全員中々良い食いつきのようだ。

 先程までの疲労困憊の様子はどこへやら、今は興味津々と言った顔で僕が手にした呪符の束を見ている。

 これなら丁度良い気分転換となるだろう。

 

「実際に使ってみるよ? まず手に持って変身したいものの姿を思い浮かべる。上手くイメージ出来ないなら、変身したい対象に直接手を触れれば確実に成功するよ。それが出来たら呪符に意識を集中させて、口に出すか心の中でメタモルフォーゼと唱える。もしくは呪符を破り捨てれば効果が発揮されるよ」

 

 そう説明しながら、僕は四人の目の前で手にした呪符の一枚を破り捨てた。

 変身する対象は……とりあえず紫で良いか。全員が知っている相手の方が分かり易いし。

 

 破り捨てられた呪符が塵となって消え、僕の視界が全体的に下がる。

 僕の方が紫より身長が低いのだから当たり前の事だが、体格は良いとして外見はちゃんと出来ているかな? 鏡が無いから確認出来ないが。

 

「とまあこんな具合だね……って、どうしたんだい?」

 

 自分の口から高い女の声が出てちょっと吃驚する。声も紫の物になっているはずだが、聞き慣れている者と少し違って聞こえるな。

 まぁ録音した自分の声を聞くと自分の声では無いように感じるって言うし、他者の発した声と、自分の肉体で発した声では聞こえ方が違うという事だろう。 

 

 そう一人で結論付けていると、霊夢たちがやたら険しいというか、鋭い視線で僕の事を見て来た。

 何故だろうか? ……ああ、男の僕が女の子に変身したのが不味かったかな?

 そう考えたのだが、代表して聞いて来た霊夢によると、どうも違う様だった。

 

「霖之助さん、よね? それって、誰の姿? 見覚えが無いんだけど」

「誰って、紫の姿になっていないかい? 紫をイメージして変身したはずなんだが」

 

 僕がそう返すと、一転して四人は困惑した様子を見せて来た。

 

「紫の? いいえ、そうは見えないのだけれど……」

「言われて見れば確かに、紫を幼くした感じの姿に見えなくも無いけど」

「紫様は幽々子様と同い年か少し上位に見えますから、大分幼いですよね?」

「そうですね。霖之助さんの姿は、霊夢や魔理沙と同い年か、少し下くらいに見えます」

 

 うんん? 何かおかしいぞ。

 四人の話を総括すると、自分たちの知っている紫よりもずっと幼い姿になっているらしいが、そもそも紫の姿は咲夜の言う通り、霊夢や魔理沙と同い年か少し幼いぐらいの少女じゃあないか。

 妖夢の言った、幽々子と同い年か少し上の見た目では断じて無い。

 これはいったいどういう事なんだ?

 

「……誰か、この呪符を使って自分の知る紫の姿に変身して見てくれないか? どうも僕の知っている紫の姿と、君達の知る紫の姿に齟齬があるようだ」

「それなら私がやるわ。 ……この中なら、私が一番紫の事を見慣れているだろうし」

 

 僕が提案すると、そう言って少し顔を顰めながら呪符を受け取ったのは霊夢だった。

 どうも霊夢は、紫の事を苦手に思っている様なんだよな。同時に信頼しても居るようだが。

 紫の思わせぶりな煙に巻くような態度が原因なんだろうが、二人共僕に取っては大切な友人であるのだし、もう少し仲良く出来ればと思わなくもない。

 この辺り、時間が解決してくれれば良いのだが、いざとなれば僕が間を取り持つべきか。

 

 霊夢は目を閉じ少し集中してから、僕を真似て呪符を破り捨てる。

 すると、霊夢の姿が変わり、僕の見た事のない少女の姿へと変化した。

 

「……これでちゃんと変身出来ているかしら。どう、魔理沙?」

「ああ、キチンと紫の姿に変身で来てるぜ。なぁ、妖夢、咲夜」

「う、うん。そっくり、と言うか瓜二つ?」

「見た感じは完全に同一人物ね。中身が霊夢だから雰囲気は違うけれど」

「そう、霖之助さんはどう?」

「……驚いたな。僕が知る紫の姿とは全く別物だ」

 

 正確には、僕の知る紫が成長したらこうなるのであろうと思える姿だった。

 年の頃は、妖夢の言う通り幽々子と同年代か少し上に見える。少女としての可憐さよりも、大人の女性としての魅力が強く感じられる姿だった。

 

 これが、霊夢たち四人が認識している紫の姿だというのか。

 だが、僕の認識している紫の姿とは全く違う。何故こんな事が起きているのだろう?

 

「ふむ……これはもしや、紫の妖怪としての特性なのか?」

「特性……ってどういうことなの?」

「そのままの意味だよ。僕と君たちが見ている紫の姿がかけ離れているのは、紫の妖怪としての性質がそうさせているんじゃないかと言う考察さ」

 

 本人に確認した訳では無いからまだ仮説の段階だが、境界を操るなんてトンデモ能力を持つ紫なら、十分あり得ると僕は考えている。

 僕はあくまでこの場で簡単に立てた仮説であると念を押した上で、四人に説明した。

 

「同じ物でも、見る者によって違って見えると言うのは良くある話だ。錯覚や主観の問題だけでなく、単に男女の差であっても、女性の目の方が色をより鮮やかに感じるというしね」

「霖之助さんが男だから、女の私たちとは見え方が違ったって事?」

「紫の場合はそれだけに留まらないだろう。なにせ『境界を操る程度の能力』なんてものを持って居るんだ。さっき上げた錯覚や主観、男女差なんかも含めた全ての要素が関わって来る。複雑すぎて事情を詳しく解明しようなんて気が起こらないほどだよ」

 

 思うに、八雲紫と言う妖怪は、目に見える以上に曖昧で混沌とした特性を持っているのだろう。

 その特性が発露した結果の一つが、今回判明した僕と霊夢たちで姿の見え方が違うという現象なのだ。

 

 境界を操るスキマ妖怪。まるで奈落や深淵の如き計り知れない存在だ。

 だが、だからこそ妖怪らしいとも言える。元より妖怪とは本来人知の及ばない不可思議な存在だ。そういう意味では、彼女は誰よりも妖怪らしい妖怪である。

 案外、彼女が強大な力を持つのはこの特性によるものなのかもしれないな。

 

「まぁあくまで仮説であり、仮定の域を出ない推測だよ。本当の所を知っているのは紫だけだろうけど、本人が教えてくれるとは思えないしね」

「うん? なんで香霖は紫が教えてくれないと思うんだ?」

「紫自身の弱体化につながるかもだからだよ。妖怪にとって、曖昧なものは曖昧なままの方が良いのさ」

 

 幽霊の正体見たり枯れ尾花。では無いが、曖昧で良く判らない幻想が、整然として良く判る現実に塗り潰されたことで妖怪は力を失った。

 なら、曖昧であることそのものを力とする紫にとって、自分の持つ曖昧さをはっきりさせられるなど、弱体化以外の何者でも無いだろう。

 

 僕が知る姿と霊夢たちが知る姿、どちらが本当の紫の姿なのか? それともまた別の姿があるのか?

 興味はあるが、それを知ることが紫の害となるかもしれない以上、知りたいとは思わなかった。

 

「……この話は、かなりデリケートな問題かもしれないし、ここまでにしよう。それより、呪符を皆に配るから、実際に使って見ると良い。持って帰っても良いけど、悪用はしないでくれよ?」

 

 

 

 話題を切り替えるように、僕はそう言いながら呪符を四人に配り、その日は皆で様々なものに変身して遊び、いくらかの呪符を持って四人は帰って行った。

 遊んでいる内に、自然と紫の姿の違いについては忘れて行ったようだが、肝心の僕自身が、霊夢の変身した紫の姿の事を忘れられないでいた。

 

「やれやれ……正直、かなり好みの外見だったな」

 

 次に会う時、ちょっと顔を合わせ辛いなぁ。

 

 前世も含めてもういい年だろうに、僕は大人な紫の姿を思い浮かべながら、そんな事を考えていた。




今明かされる衝撃の真実!
転生香霖の見ているゆかりんの姿は香霖堂バージョンだった!!

ゆかりんが境界(曖昧さ)を司る妖怪だから、霊夢たちと霖之助では見え方が違っているから、東方香霖堂の挿絵のゆかりんが幼い少女として描かれている説好き。
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