東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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やはり中篇になってしまったか……。
後篇で終われるかなぁ?


第三十九話 「転生香霖と着ぐるみパジャマ(中篇)」

 アリス、そしてフランと言う心強い助っ人を加え、僕は改めて着ぐるみパジャマ製作に乗り出した。

 とは言え、先ずは試作して見ない事には始まらない。

 とりあえず、アリスやフランの意見を聞いて、いくつか試作してみようか?

 

「アリス、フラン。手始めにいくつか試作してみようと思うけど、希望の動物は居るかい?」

「あ、それなら私、ゾウさんのが良い!」

「そうね……なら私は鳥のをお願いするわ」

「象に取りだね、了解。 ……けどフラン、何で象なんだい?」

「だってゾウさんの鼻って長いでしょ? 鞭みたいに振り回せそうだから!」

 

 振り回してどうすると言うのだろうか?

 疑問には思ったが、フランが楽しそうに笑っているし、まぁ聞かないでおこう。

 一応釘は刺しておくが。

 

「そうかい。けど、やる時は周りにぶつけないように注意するんだよ? それと、やり過ぎて首を痛めない様にも注意だ」

「大丈夫! お姉さまに向けてしか使わないから!」

「レミリアが一体何をしたって言うんだ……」

 

 何故かは知らないが、レミリアがピンポイントで狙われていた。

 おかしいな、レミリアとフランはそれほど仲は悪くなかったと思うのだが。

 

「お姉さまったら酷いのよ? この前咲夜が牧場の山羊たちのミルクから作ってくれたプリンを、一人でみんな食べちゃったの! 絶対に仕返ししてやるんだから!」

「なるほど、食べ物の恨みか」

 

 兄弟姉妹あるあるだなぁ。

 こういった程度の低い身内同士での諍いは、人間でも吸血鬼でも大して変わらないらしい。

 

 しかしプリンか。アマルテイアのミルクを使ったという事はミルクプリンだったのだろうが、プリンと言ったら大事なのは卵だ。

 レミリアの牧場も安定して来たようだし、アマルテイアに続いてグリンカムビの飼育もしてみないか、今度相談してみるか。

 

「そう言う事なら、今日はこの後おやつの時間にプリンを出そうじゃないか。二人共食べて行くだろう?」

「霖之助の作ったプリン!? 絶対たべりゅっ!! っ……!!」

「ちょっと、大丈夫?」

「らいひょふ……」 

 

 あちゃぁ。

 元気良く返事をしたフランだったが、勢い余って舌を噛んでしまったようだ。アリスが心配して声を掛けている。

 吸血鬼の回復力なら直ぐに治るだろうが、回復呪文を使っておくとしよう。

 

(ダークヒール!)

 

「フラン、回復魔法を掛けたけど大丈夫かい?」

「あ、痛くなくなった」

「それは良かった」

 

 接触型の回復呪文であるダークヒールだが、フランが相変わらず僕の膝の上に座ったままなのでそのまま使うことが出来た。

 ……というか、二人はいつまで僕の膝の上を占拠するつもりなのだろうか? どいてくれないと試作に入れないんだが。

 

「……二人共、試作をする為に工房に移るから下りてくれないか」

「うん、ヤダ!」

「即答かよ」

「えと……私ももうちょっとこのままが良いかなって……」

「アリス、君もか」

 

 やれやれ、こういった我儘は霊夢や魔理沙でお腹一杯なんだけどな。

 ……しょうがない。

 

「よっと」

「わっ」

「きゃっ」

 

 アリスとフランの腰に手を回して抱きしめ、そのまま立ち上がる。このまま工房に向かってしまおう。

 

「強引で悪いけど、このまま工房に向かうよ。文句があるなら自分で歩いてくれ」

「霖之助は力持ちね! ちょっと楽しいかも」

「だ、大丈夫! ……強引なのもちょっと悪くないかも」

 

 どうあっても自主的に離れないのか、君達は。

 心の中で溜息を付きながら、僕は二人を抱えて香霖堂地下にある工房へと向かった。

 店番は、クトゥグアとハスターに任せよう。

 

「……そう言えば、霖之助さんは試作で作りたい動物は居ないの?」

「ネコはもう作ったんだよね? 次は何を作るの?」

「そうだなぁ……」

 

 正直、二人が希望した象と鳥も含めて、またバースト着ぐるみパジャマみたいな事が起きそうで怖いのだが、そんな事は考え出したらきりがない。

 あまり悲観せずに考えよう。

 

「……うん。失敗に終わったけど、猫のパジャマはもう作ったから、今度は犬かな?」

 

 何となく、妖夢に似合う気がする。霊夢と魔理沙は猫かな? 咲夜は……どっちも似合う気がするな。

 

「えぇーつまんない。もっと面白い動物にしないの?」

「試作なんだから普通ので十分よ、フラン。種類なんて、これから増やして行けば良いんだから」

「そっかぁ。それもそうだね! じゃあ私、ゾウさんの次はクマさんが良い!」

「ふふふ、そうね。じゃあ私は兎にでもしようかしら?」

 

 仲良いなぁ、二人共。

 あまり接点は無かったはずだが、ここに来て急激に仲良くなっている気がする。

 まぁアリスにしろフランにしろ、交友関係が広がるのは良い事だろう。出来れば親交を深めるのは、僕の膝の上以外にして欲しいが。

 

 そんな事を考えながら、僕は工房へと向かった。

 

 

 

「………」

「………」

「………」

『………』

『………』

 

 工房内に沈黙が満ちる。

 来た当初は、物珍し気にアリスが工房内を見回したり、色々見て回りたくなったフランが工房内のあちこちを見学したりなど賑やかだったのだが、今では見る影もない。

 事態が事態だけに、後から呼び寄せる事となったクトゥグアとハスターも気まずげに沈黙している。

 

 その原因は僕たちの目の前にある、今しがた僕が完成させたばかりの三着の着ぐるみパジャマだ。

 

 

 一つ目はフランが希望した象のパジャマ。

 象と言うか像だ。布や糸で作ったというのに、まるで石で出来た彫像のように、どっしりと鎮座している。

 使うまでも無く大体の事情は分かったが、一応僕の元々の能力である『道具の名前と用途が判る程度の能力』を使って判明した名前は『チャウグナー・フォーン着ぐるみパジャマ』、用途は『邪神チャウグナー・フォーンの依代』。殺すか。

 

 

 二つ目はアリスが希望した鳥のパジャマ。

 フードの部分に大きな一つ目のデザインがあり、足を通す部分が分かれておらず筒状となっている。

 名前は『グロス=ゴルカ着ぐるみパジャマ』、用途は『邪神グロス=ゴルカの依代』。殺そう。

 

 

 三つ目はアリスとフランに聞かれて僕が答えた犬のパジャマ。

 何かもうパジャマじゃない。全体的に刺々しいというか、柔らかい部分が一切ない。なんと言うかこう、直截的な敵意や殺意を形にしたらこういう感じになるんじゃないか? と言う外見だった。

 名前は『ミゼーア着ぐるみパジャマ』、用途は『邪神ミゼーアの依代』。中々尖ったデザインで嫌いでは無い、だが殺す。

 

 

 もはや説明不要だが、またしても邪神たちの介入があったようだ。

 

「クク、クハハハハ」

『あ、あの、マスター? 大丈夫?』

『憤怒。バーストのみならず、他の者達も主の邪魔をするとは! ……我が主?』

「―――僕が前世で神殺しの称号を得た時、殺した神の数は丁度四体だったんだ……」

「り、霖之助さん? いきなり何の話?」

「霖之助、大丈……あ、これ駄目だ。一番テンションが上がっている時の私より目がヤバイ」

「―――今回の標的の邪神共も丁度四体。今生で再び神殺しを成し遂げるのも一興か……」

 

 これほど腹が立ったのは本当に久しぶりだ。

 具体的には、斧足と呼ばれていた頃に萃香や勇儀たちに、運良く手に入れ後で大事に飲もうと取っておいた龍泉酒(龍が作り出した、酒の湧く泉の酒)を、僕が留守にしている間に飲み干された時以来だ。

 あの時の恨み、まだ忘れて無いからな、あの鬼ども……!

 

 ……まぁ、古馴染みの鬼たちへの酒の恨みの話は今は良い。全然良くないが。

 

 問題なのは邪神共だ。

 このまま邪魔され続けたんじゃあ、いつまで経ってもみんなにプレゼントする着ぐるみパジャマを完成させることが出来ない。

 いつもなら夢の中で邪神と戦っている所だが、僕の堪忍袋の緒は既に引き千切れている。

 

 ……丁度依代もある訳だし、こうなったら僕の能力で召喚して、無理矢理現世に引き摺り出してやるか。

 

「……となると結界の準備が必要だな。良い機会だから、叢雲と一緒にやるか。二人揃っての初陣が邪神殺しなら、叢雲も喜んでくr『マスター、マスター』―――うん、何だ?」

 

 今後の予定を立てて居ると、ハスターが申し訳なさそうに近付いて来た。

 同時に、クトゥグアが四着の邪神着ぐるみパジャマを触手で吊るしながら近づいて来る。

 

『申し訳ありません、我が主。この者達から、我が主に直接申し開きをしたいとの連絡がありました』

「……ほぅ?」

 

 申し開き、なるほど申し開きと来たか。

 都合四度も僕のパジャマ製作を邪魔しておいて、今更謝ると? ほぅほぅ。

 

「……良いだろう、辞世の句を聞かせて貰おうじゃないか」

「こんなに殺意全開の霖之助さんなんて、初めて見たわ」

「前々から思ってたけど、霖之助って実は私より危ない人よね?」

 

 僕の言動にアリスは目を丸くして驚き、フランはしたり顔でそう呟いていた。

 危ない人だって? 僕は普通だよ。普通にやられたらやり返すを徹底しているだけさ。

 

「このパジャマたちを依代に、僕の能力を使えば良いかな?」

『はい、それで問題無いかと』

『ボクらの場合は、依代無しで直接召喚されているけど、それは夢の中で会って縁を結んだからだもんねぇ。アイツらはマスターと面識無いけど、依代を起点に召喚すれば大丈夫ですよぉ』

「なら、早速やろうか。一応言っておくけど、少しでも妙なマネをすれば、その瞬間マイクロ・ブラックホールで消し飛ばすからね?」

『構いません、奴らの自業自得ですから』

『ボクも別に構わないかな? アイツらとは別に仲が良い訳じゃないですし』

 

 同じ神話体系の邪神である、クトゥグアとハスターが気にしないと言うなら問題無いな。

 僕はクトゥグアが広げるパジャマに向けて魔力を送り、クトゥグアやハスターを召喚した時の要領で能力を行使した。

 

「―――サモン」

 

 唱えるのと同時に、四つのパジャマが光を放ちながらその形を変えて行く。

 

 猫の着ぐるみパジャマは、古代エジプトの貴人を思わせる、露出の多い装身具を身に纏った、猫の耳と尻尾を持つ少女に。

 象の着ぐるみパジャマは、デフォルメされた象のぬいぐるみ……と言うか、頭は象だが体は人型の為、インド神話のガネーシャっぽいな。ガネーシャっぽい像に。

 鳥の着ぐるみパジャマは、一つ目と一本足で、ハスターと同じくらいの大きさの黒い鳥に。

 犬の着ぐるみパジャマは、ジグザグとした堅そうな毛並みの狼に。

 

 順に『バースト』、『チャウグナー・フォーン』、『グロス=ゴルカ』、『ミゼーア』。

 四体の邪神が僕の目の前に降臨した。

 

 さて、こうして目の前にして感じる力の圧を見るに、この中ではミゼーアが最も力を持っているようだな。正直、クトゥグアやハスターよりもずっと強い思う。

 これは僥倖だ。クトゥグアやハスターも強かったが、更なる強敵が目の前に現れてくれるとは。

 思わず頬がつり上がり、僕の中の獣が唸り声を上げ始めたように感じるが、焦ってはいけない。

 先ずはこいつらの申し開きとやらを聞かなければ。

 

 そう思い、笑ってしまわない様に気を引き締めて四体の邪神たちに目を向けると、四体は揃って一斉にその場に伏せて謝罪して来た。

 

「『『『申し訳ありませんでしたーーーっ!!!』』』」

「!?」

 

 開口一番、土下座である。これには流石に驚いた。

 

 どんな言い訳をするのか、それとも神らしく不遜な態度で通すのかと予想していたが、迷い無く即座に全力で謝罪するとは予想外である。(グロス=ゴルカとミアーゼは体型的に土下座が出来ない為、工房の床に伏せただけだが)

 驚いて黙っていると、四体はそれぞれ謝罪の言葉を口にした。

 

「本当にごめんなさいです! 猫のパジャマを作っていたから、少しでも手伝いになればと思ってやっただけで、依代になる何て思ってなかったんです!」

『我々も同様である! 所縁のある動物の着ぐるみを作っていたから、出来栄えに貢献出来ればと思っただけで、依代を作らせようなどとは思っていなかったのである!』

 

 バーストはウルウルと涙目で悪気は無かったと言い、チャウグナー・フォーンは手や鼻を動かして無実を主張する。

 バーストは見た目が橙と同じか少し上程度の少女である為、涙目で謝られると僕の方が虐めているような気分になる。

 チャウグナー・フォーンの場合はあたふたと手足を動かす動作と見た目が相まって、憎めないコミカルさを感じさせた。

 

『クトゥグアやハスターの様に現世に召喚して貰えればとは思ってたけど、そのきっかけとしてパジャマ作りに貢献して、印象を良く出来ればと思っていただけなのよ! 信じて!』

『―――理由はどうあれ、やってしまった事は事実。良い訳のしようも無い。私は大人しく、あなたの下す沙汰を受け入れます』

 

 グロス=ゴルカは、高い声で姦しく自分が何を思って行動したのかを説明する。

 下心はあったようだが、別に僕を邪魔したかった訳では無いし、正直に話したことは評価しよう。

 そしてミゼーアだが、僕の沙汰を受け入れると言った後、目を閉じてそれ以上は何も言わなかった。

 まるで切腹を受け入れた武士の様な潔さだ。

 

 はて、弱ったな。

 話の通じない相手なら拳で語り合うだけだったが、誤魔化す事無く真っ直ぐに謝罪してくる相手となると、こちらも暴力に訴えるようなことはしたくない。

 非常に残念だが、もっとも戦ってみたかったミゼーアが既に、罰せられる覚悟を決めてしまっているようだ。

 

 ……まぁ、アリスやフランの居る前で暴れ回ったり、大人気無い態度を取るわけにも行かないし、先ずは落ち着いて話を聞くか。




ちなみに邪神四体のそれぞれの分類は、

『バースト』(旧神)
『チャウグナー・フォーン』(グレート・オールド・ワン)
『グロス=ゴルカ』(グレート・オールド・ワン)
『ミゼーア』(一応外なる神扱い)

です。



Q、一応外なる神扱いって何だよ。ミゼーア何て聞いた事ねぇぞ!?

A、ざっくり言うと、アザトースの次にヤバいヨグ=ソトースと同格の邪神。
  ヨグ=ソトースの支配する『曲がった時空』と対を為す『尖った時空』において、ヨグ=ソトースのポジションに居るのがミゼーア。
  所属する時空の発生起源が違う為、正確には外なる神でも邪神でも無いが、その力の強大さから外なる神として扱われている。
  何気に、作者の一番好きなクトゥルフ系邪神である。

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