東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
サモナーさんのチート具合を欠片でも表現出来れば幸いです。
霊夢とレミリアが停止している横で、僕は咲夜と向き合っている。
停止しているのは二人だけなのか? と疑問に思い、周囲に意識を向けたところで気付く。
何も、何も聞えないのだ。
僕と咲夜の息遣いや衣擦れの音以外は、ストーブの音も、風のに揺れる木々の音も、鳥たちの泣き声も何一つ。
僕と咲夜が居るこの店の中だけぽっかりと穴が開いたかのように、世界から音と言う音が消滅していた。
「……まずは、そちらの事情から話してくれるかな? 僕には何故僕と君以外の全てが停止しているのかも、君が何故そんなにも僕を警戒しているのかも分からない。君から話してくれなければ、僕から話せるようなことは何も無いよ」
僕がそう言うと、咲夜は少し悩むような仕草をしたが、このまま見合っていても埒が明かないと思ったのか、事情を説明してくれた。
「……そうですね。先ずは、私の能力から説明しなければいけないのですけど―――」
そう言って咲夜は、自身の能力について話してくれた。
彼女の能力は『時間を操る程度の能力』と言う、一瞬聞き間違いか? と思いたくなるような、規格外の能力であった。
今現在、僕と咲夜以外の全てが停止しているのも、その能力で時間を停止させているからだそうだ。
「それはまた……とんでもない能力だね。人間でここまで強力な能力を持った者には、他に会ったことが無いよ」
「ええ、私も自分の能力に匹敵する様な能力を持った人間なんて……霊夢くらいしか心当たりが無いわね」
「ああ、確かに霊夢が居たね」
霊夢は何と言うかまぁ……色々と規格外過ぎる娘だからな。彼女に関しては考えるだけ無駄な様な気もする。
「ん? なら何で僕は動けるのだろうか?」
「それが分からないから私も警戒しているんです。停止した時間の中で動ける相手なんて、初めてだわ」
「ふむ……」
咲夜の能力は非常に強力だ、霊夢やレミリアも停止させられている以上そこに疑いは無い。
では何故そんな、神の力にも等しい強力な能力が僕には効かなかったのか。
……考えられる可能性は、いくつか存在するな。
「……確証は持てないが、咲夜の能力が僕に効かなかった理由に幾つか心当たりがあるんだが、聞いて行くかい?」
「ええ、是非」
事情を話したことで、幾分警戒心が薄れた様子の咲夜が、興味津々と言った様子で返して来た。
僕の心当たりについては、いくつか伏せておいた方が良いような内容も含まれている気がするが、ここで変に情報を出し渋って警戒されるよりは、素直に全部話してしまった方が良いだろう。
それに、僕の事情何てよくよく考えてみれば大したものでは無いのではないか?
前世の記憶や能力がどうのと言えば、人里には阿礼乙女と言う前例が居るし、ゲームの能力がどうのと言うのも、そもそも大半の妖怪が実体の無い畏れから能力を獲得した者が多いのだ。
僕が半妖である事も加味するに、架空の能力を実際に獲得するのは、この幻想郷では珍しい事とは言えないのではなかろうか?
ならば、特に言い渋る理由も無いな。スパッと明かしてしまおう。
結論が出ると、一気に心が晴れやかになるように感じられた。
うんうん、何か知らないが良い調子だ。これならきっと大丈夫だろう。
「心当たりの候補は三つある、一つ目は僕が『時空魔法』の使い手だからという事だ」
「時空魔法、ですか?」
小首を傾げる咲夜に僕の時空魔法についてを説明する。
これは前世から引き継いだ能力の一つで、僕はゲーム内に置いて時空魔法のスキルを取得していた。
この魔法は名前の通り、時間や空間に関する魔法を修得する為のスキルであり、このスキルを育てる事で他にも重力や星に関する魔法を修得することも出来た。
時間に関する魔法が使えたから、時間停止の影響を受けないのかもしれないというのが、一つ目の予想だった。
「はぁ、それなら確かに……けど、確かパチュリー様も時空に関する魔法は使えたはずですし、理由としては微妙な様な?」
「まぁ、あくまで候補の一つだし、この場で実証出来る物でも無いからね。次の説明に移っても良いかな?」
「ええ、どうぞ」
パチュリーと言うのは、レミリアや咲夜の住む館『紅魔館』内の図書館に住む魔法使い『パチュリー・ノーレッジ』の事だ。
咲夜によれば彼女も時空魔法を修得しているそうだが、あくまでこの世界の魔法である彼女の時空魔法と前世のゲーム内の魔法である僕の時空魔法はおそらく完全に別物であろう。
まぁ、そこら辺を説明し出すと話が長くなるから、聞かれない限り答えるつもりは無いが。
「次の候補だが、僕は正直これが本命だと思っている。二つ目は僕が持つ特性と言うか能力で、『全耐性』というものが時間停止の影響を防いだのではないかというものだ」
「全耐性、ですか。その能力は一体?」
「読んで字の如く、全てに対して耐性を持つ。という能力だよ」
全耐性は前世に置いて、十種類存在する耐性系スキルのレベルを最大まで上げた時に、『耐え忍びし者』という称号の獲得と共に取得可能となったスキルだ。
当時の僕は細かなスキルの性能検証などはしていなかった為、このスキルが時間停止に対しても耐性を持つという確証がある訳では無い。
しかし、ゲーム時代モンスターの中には各種魔法属性に対する耐性を持った者が存在しており、時空魔法もまた属性魔法の一つである。
つまり全耐性には、時空属性に対する耐性が含まれている可能性が高いのだ!
「僕が時空魔法を使える以上、全耐性には時空魔法や時空に関する能力に対する耐性が含まれている可能性が非常に高い。この全耐性こそが、時間停止の影響を受けなかった原因だと僕は考えているよ」
「それなら確かに、納得出来る理由ですわね」
咲夜も僕の説明に信憑性を感じてくれた様で、腑に落ちたと言った感じで頷いていた。
別に何か悪い事をした訳では無いが、身の潔白を証明出来たかの様で気分が良い。
疑問に対する取り合えずの回答が得られたところで、そろそろ咲夜に時間停止を解除して貰おう。
「咲夜、そろそろ時間停止を止めて貰えるかな? 疑問は取り敢えず解消出来た訳だし、霊夢とレミリアをいつまでもこのままにして置く訳にはいかないだろう?」
「ええ、それもですね。ただ今―――それにしても、全耐性ですか」
手に持った懐中時計を構えながら、咲夜は小さく呟く。
まぁ改めて考えれば、あらゆる耐性を持つこのスキルは、それだけで一つの能力として確立してしまうような凄まじい物だからな。
それがあくまで、僕の能力である『召喚術を操る程度の能力』に組み込まれた機能の一つでしか無いのだ。
我ながら、反則も良い所だ。
「とにかく、悪魔の居る神社とか噂されたらどうするのよ!」
「何もしないわよ。それに賽銭箱の中身は空だったわ」
「でも、神様の居ない神社よりも御利益がありそうですわ。ねぇ、お嬢様」
「神様不在って言うなー!」
時間が動き出すのと同時に、少女たちの喧騒が聞こえて来る。
時間停止前から続く二人の会話にしれっと混ざれるのは、咲夜が自身の能力に習熟しているからだろうか?
本人の性格故の気もするが。
「そうそう、咲夜。素敵なティーカップは見つかった?」
「ええ、見つかりましたとも。大変素晴らしい品ですわ」
おっと、そうだった。そう言えば商談の途中だったな。
しかし咲夜、その手のケースの中に入っているのは、素晴らしい品では無く素晴らしかった品の筈なのだが?
「お嬢様、これで見えますでしょうか?」
咲夜はケースの蓋を開け、レミリアに見える位置まで高さを下げた。
その砕けたカップで良いのか? 砕けた器に諸行無常の美を見出すのが西洋妖怪のトレンドなのか? それとも美しい品は無残なまでに壊れていてこそ芸術であるという、デスメタル的な美意識によるものなのか?
様々な疑問が浮かんだが、答えはレミリアの反応で決まるだろう。
そう思っていたのだが、粉々のカップを前にレミリアが見せたのは、疑問と困惑の表情と言う至極真っ当な物であった。
と言う訳で拡大解釈の内容は、『全耐性スキルの耐性に、時間停止耐性が含まれている』でした。
本文中にもある通り、時空属性に対する耐性と考えれば、それほど可笑しな話では無いと思っています。
それから、しれっと時間停止が効かなかった理由の三つの候補の内、三つ目だけ語っていませんが、そちらは次回話す予定です。