東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
バビロニアキャンペーンで交換した星四鯖が、ピックアップ対象になっていたから、フラグ立ってんなぁとは思っていたんだ。
……金回転からの、アシュヴァッターマン(二枚目)。
いや良いけど、宝具二なら良いけど。
……正直、これなら持ってなかったバサランテ交換しとけばよかったなぁって気持ちが無くも無いです、はい。
妹紅の家の入り口から少し離れた所で、彼女の着替えが終わるのを待つ。
最初は入り口の隣の壁に背中を預けようとしたのだが、背中を付けた瞬間「ミシリッ」と嫌な音がしたから離れたのだ。本当に崩れないんだろうな? 物凄く不安だ。
「―――り、霖之助。着替え終わったぞ?」
再びガタガタと不穏な音をさせながら扉が開かれ、中から着ぐるみパジャマに着替えた妹紅が出て来る。
「ど、どうだ? 似合うか」
少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら手を広げて見せてくる妹紅に対し、僕は妹紅が着替えている間にかけ直した眼鏡を指で押し上げてから、ばっちりだと頷いた。
「ああ、似合っている。予想通り……いや、予想以上に可愛いよ。妹紅」
「なっ!? ……霖之助、そのセリフこの服を作ってやった全員に言ってるのか?」
「まぁ言ってるね。当然だろう? 一人一人の事を考えて、それぞれが可愛くなるように作っているんだから。それとも僕が、わざわざ似合わない服を作って渡すなんて真似をすると思ったのかい?」
「いや、思わないけど。私が言いたいのは誰彼構わず可愛いと言っているのかって事で……」
「適当に可愛いとお世辞を言っているとでも? 可愛いから可愛いと言って何が悪いんだ? 妹紅は可愛いんだから素直に受け止めろ」
「そ、そんな真剣な顔で言わなくて良いから……!」
似合わない物を着せてお世辞で可愛いと言っていると思われるなんて真っ平ごめんだ。
その思いを込めて、妹紅の目を真っ直ぐ見つめながら言ったのだが、妹紅は顔を真っ赤にして両手……というか、ペンギン着ぐるみパジャマの手袋になっている袖で顔を隠してしまった。
うん、仕草としても可愛いし、僕のデザインはばっちりだな。また少し、僕の腕が上がったぞ。
「とりあえず、最後に細かな調整をするから、その場から動かないでくれよ?」
「……うん」
妹紅は顔を抑えたまま答えた。
本当は、手を放してくれていた方がやり易いんだが……まぁこのままでも出来ない事は無いし構わないか。
じっとして動かなくなってしまった妹紅の傍で屈みながら、修正すべきところを探し出しては直してを繰り返した。
「へ、変な所を触るなよ?」
「修正箇所によっては触ってしまうかもしれないが、その時は修正が終わってからぶん殴ってくれ。とりあえず手元が狂うから、修正が終わるまで動くなよ?」
「駄目だこいつ、物作りに関して本気過ぎる……」
本気にならなきゃ良いものなんて作れないさ。
微に入り細に入り、妥協無く作り上げてこそ、職人の腕も上がるってものだ。
そうしてしばらくして調整も終わり、妹紅用のペンギン着ぐるみパジャマは僕自身がバッチリと胸を張れる仕上がりとなった。
「―――よし、終わったよ」
「ああ、みたいだな。 ……そう言えば、私のは少し工夫したとか言ってたが、どんな工夫をしたんだ?」
調整した着ぐるみパジャマの着心地を確かめながら、妹紅は訊ねて来た。
そう言えば、詳しい仕様は話してなかったな。
「そう言えば、説明がまだだったね。そのパジャマは妹紅用に耐火性能を最大まで引き上げてあるから、火にくべようが、溶岩に突っ込もうが焦げ目一つ付かない様になっているよ。燃やそうと思ったら太陽炉に放り込むか、地獄の炎に突っ込むかくらいしかないね。それでも燃やし尽くすのに何百年かかるかは判らないけど」
「……は?」
「それと、妹紅は炎の術をよく使うから、炎を強化する効果も持たせてあるよ。強化倍率が結構高いから、気を付けて使ってくれ。今までの感覚でマッチ程度の火を出そうとしたら、そのまま家を燃やし尽くすかもしれないからね」
「ちょっ!」
「それから、今まで説明したのが炎関連ばかりだから意外かもしれないが、ペンギンがモデルだから水に関する効果もあるよ。具体的には、これを着ていると泳ぎが上手くなる上水中でも呼吸が出来る様になる。後、寒さにもかなり強い」
「待て待て待て!」
「大体はこんな感じかな。後、基本性能として魔力攻撃に対する耐性と自動修復効果も乗っているから、いつまでも使い続ける事が出来るよ」
「霖之助!」
「? 何だい? 大声なんて出して」
僕がペンギン着ぐるみパジャマの性能について説明していると、妹紅は大声を出して僕の話を遮って来た。
視線を向けると、妹紅は腕を組みながら呆れた顔で僕を見ていた。うん、全体的にもこもことしたペンギン着ぐるみパジャマを着ているから、腕を組んだ姿がやっぱり可愛い。
季節的には暑そうだが、僕の作った着ぐるみパジャマは全て、夏は涼しく冬は暖かくなる様に作ってある、善環境対応型だ。服に快適さを求めるのは基本中の基本である。
しかし、ふむ……もこもこもこたん。何故かこんなフレーズが頭に浮かんだ。
「あのなぁ、霖之助。幾らなんでもタダでくれる物に手間かけ過ぎじゃないか?」
「? 個人にプレゼントするものだからこそ、全力で作ったんじゃないか。何かおかしいかい?」
「理屈はおかしくないけど、性能がおかしいんだよなぁ……」
病気にならず、怪我も直ぐ治るというのに、妹紅は頭が痛いと言わんばかりに右手で額を抑えていた。
そんなにおかしいか? 妹紅にプレゼントするに当たって、必要になりそうな効果とついでに付けられそうな効果を一通りバランス良くつけただけなんだが。
「……まぁ、いいや。とにかく、ありがとうな霖之助。大切に使わせて貰うよ」
「多少乱暴に扱っても構わないよ。頑丈さも自信を持ってお勧め出来るからね」
「そうかい」
そう言ってお互いに笑い合う。
これで友人たちには一通り着ぐるみパジャマを配り終えたな。
達成感と共に竹林の隙間から見える空を見上げていると、近くの茂みからガサゴソと音が聞こえて来た。
「 ーぃ…」
「うん?」
「おーい!」
「おや、この声は……」
聞き覚えのある声がしたかと思うと、茂みをかき分けて見覚えのあるウサ耳の生えた頭が飛び出して来た。
見覚えのあるウサ耳の持ち主は、そのまま僕に飛び付いて来たので、思わずキャッチする。
「おっと」
「やっほー! 久しぶりだね、霖之助」
「誰かと思ったら『てゐ』じゃないか。久しぶりだね」
僕に飛び付いて来たウサ耳を持つ少女、彼女の名前は『因幡てゐ』。この迷いの竹林に棲む妖怪兎たちのリーダーであり、この迷いの竹林の持ち主でもあるという結構な妖怪だ。見た目からはそんな感じはしないが。
「あんたがこの辺まで来るなんて珍しいじゃないか、てゐ。今日はどうしたんだ?」
「ありゃ妹紅……って、どうしたのその格好?」
「ああ、これか? 霖之助がくれたんだよ」
「僕が作った、着ぐるみパジャマと言うものだ。可愛いだろう?」
「確かに可愛いけど……妹紅はそれ着てるとこを見られて平気なの?」
「あ、馬鹿。そんな事霖之助の前で言ったら……!」
「―――聞き捨てならないな、てゐ。僕の作った服が人前で見せられない様な物だって言うのかい?」
「ひぇっ!?」
てゐの今の発言は、流石に看過出来ないな。
この一部の隙も無い完璧なデザインに、何の不満があるというのかね?
言ってみるが良い! 同意出来るものなら、今すぐ修正しようじゃないか。さぁ! さぁ!!
「遠慮はいらないから、正直に答えると良い。どこが問題だって言うんだね?」
「いやあの……パジャマって寝間着の事でしょ? 寝間着で外で歩いていいのかなって」
「……うん、そうだね」
ド正論だった。
そうだよ、人里で普通に着られているから麻痺していたが、普通パジャマって外出する時に着る服じゃないじゃないか!
この辺、僕もちょっと感覚おかしくなってたなぁ。
「すまない、てゐ。君の言う通りだ。人里で当たり前に着られるようになってたから、パジャマと言うものの本質を見失っていたようだ」
「いや、別に良いけど……人里だとこういう服で出歩くの?」
「ああ、最近子供や女性の間で流行っていてね。人里に行けば、どこに居ても何人か着ぐるみパジャマを着て出歩いている人の姿が見られるよ」
「ふーん」
僕の話を聞いて興味が出たのか、てゐは興味深そうに妹紅の着ぐるみパジャマをじろじろ見ていた。
見られている妹紅は、少し恥ずかしそうに腕を組み直し、明後日の方向を向いていた。
「こう言うのが流行っているんだ。なら、お詫びに私にも何か作って貰おうかなぁ~?」
「毎度あり、お安くしとくよ」
「金取るの!?」
「もちろん、商売だからね」
妹紅たちと違い、てゐは香霖堂のお得意様だったり、昔から親しくしていた友人などでは無く、単に妹紅が迷いの竹林に住み始めてから顔見知りになった知り合いだからね。無料でプレゼントするほどの仲じゃないかなぁ。
「……霖之助、あんたまだ昔落とし穴に引っ掛けたこと根に持ってるでしょ?」
「何のことかさっぱり判らないな。あの落とし穴のせいで、折角君に持って行こうと思っていた秘蔵の酒の酒瓶が割れて駄目になった事とか、僕は全然気にしてないよ?」
「ごめんてば~!」
手を合わせて拝む様に謝って来るが、その手は乗らないぞ。
てゐがとことん懲りない性格である事なんてとっくに承知だ。
食べ物と酒の恨みは根深いものであると知れ!
……いや、本当はもうそんなに怒っていないんだが。何分てゐが懲りない性格だから、どうも許すタイミングを失っているんだよなぁ。
てゐが悪戯をきっぱりやめるならこちらから歩み寄れるんだが、悪戯をしないてゐなんて想像出来ないし、そんな事になったら寧ろこっちが心配するレベルだ。
やれやれ、上手く行かない物だな。
手を合わせて拝みつつ、チラチラとこちらの様子を窺うてゐを前に、さてどうしたものかと悩んでいると、初めて聞く少女の怒った声がてゐの来た方向から聞こえて来た。
「―――てゐー! どこ行ったの!? 出て来なさーい!!」
「うぇ、やば。忘れてた!」
「……その言葉だけで大体察せるよ。また誰かに悪戯したんだね? てゐ」
「ありゃ『鈴仙』の声だな」
「鈴仙?」
妹紅が初めて聞く誰かの名前を呟く。どうやら、妹紅はこの声の主の事を知っているようだ。
「あー、何と言うか……竹林の奥に住んでいる連中の一員と言うか、風変わりな妖怪兎と言うか」
「? 風変わりねぇ」
妹紅の説明はあまり要領を得ないが、まぁ本人がこちらに近づいてきているようだし、どう風変わりなのかは直ぐに分かるだろう。
とりあえず、こっそりこの場から逃げ出そうとしている悪戯兎の襟首を掴んで持ち上げ、逃げられない様に捕まえておく。
「わきゅっ!? ちょっと、なにすんのさ!!」
「どうせまた、君が悪戯を仕掛けた相手が怒って追いかけて来ているんだろう? 折角だから、きっちり怒られて行くと良い。その代わり、君の着ぐるみパジャマは無料で仕立てようじゃないか」
「メリットとデメリットが釣り合って無ーい!!」
「寧ろメリットしか無いだろう? 怒られるの事態は、君の自業自得なんだから」
てゐはジタバタ暴れているが、無駄無駄。
半竜の筋力を総動員してでも捕まえておいてやろう。
「うーっ! 霖之助、何かしばらく見ない間に力が更に増してない!?」
「? おや、てゐはまだ知らなかったのかい? 実は去年、ようやく僕の妖怪部分の種族が判ってね。自覚が出るのと同時にその種族の力も使えるようになったから、筋力もかなり増しているんだよ」
「え、そうなの? ずっと謎だったのに判ったんだ。なになに気になる! 教えて教えて!!」
さっきまでとは、また違った意味で暴れ始めるてゐ。
先程は逃げるために暴れていたが、今はまるで駄々っ子の様な暴れ方だ。
その様子を見て、既に僕の種族の事などを知っている妹紅は苦笑いしている。
……うん、折角だから、今回は僕が驚かしてみようか。
「知りたいかい?」
「知りたい知りたい!」
「―――それじゃあ教えてあげよう。それっ!」
「ひゃぁっ!?」
てゐを竹の枝に当たらない様に注意しながら上へと放り投げ、同時に白銀竜の姿となって落ちて来たてゐをドラゴンの腕でキャッチする。
掌の上にぽてっと着地した体の顔を覗き込みながら、ドラゴンの顔で笑って見せる。
『改めて自己紹介をしよう。半人半竜、森近霖之助だ。驚いたかい?』
「………きゅぅ」(ぱたん)
『あれま、気絶させちゃったか』
「そりゃそうなるわよ」
てゐは掌の中で、ぱたりと倒れて気絶してしまった。僕が少し驚いている横で、妹紅は呆れた様子でそう言って来た。
それと同時に、妹紅は僕の姿を興味深げに見ている。まぁ、妹紅にこの姿を見せるのは初めてだったしね。
何て事を考えていると、茂みをかき分けて件の風変わりだという妖怪兎、『鈴仙』らしき者が姿を現した。
「てゐー! もう、一体どこに……うっひゃぁああ!?」
―――ぱたん、きゅぅー
……気絶兎が二人に増えた。
「あーあ、どうすんのよこれ?」
『……とりあえず、二人を君の家で休ませて貰えるかい?』
「良いけど。その代わり、今度背中に乗せてくれないか? そう言うサービスもやってるって聞いたぞ」
『別にお金を取っている訳じゃないが、乗せて欲しいと言うのならいつでもどうぞ。そうだな、今度慧音も誘ってみるか』
「お、良いね。それじゃあ今度三人で、話に聞く夜の遊覧飛行とやらを頼むよ」
『了解。雲海が見れそうな空の日を選ぼう』
僕は妹紅と雑談をしながら、気絶した二人をテレキネシスで妹紅の家の中へと運び入れた。
本当は人の姿に戻ってやった方が簡単だったんだが、姿を戻そうとしたら妹紅が残念そうにしてね。
やはり、ドラゴンの姿は老若男女問わず、人を惹きつけるものがあるようだ。
……そりゃ草食動物の前に急に生命体の頂点のドラゴンが現れたら、気絶位しますよねぇ。
それはそうと、古今東西の龍やドラゴンが酒好きである様に、転生香霖も結構酒にこだわりがあるので、酒関連の事は結構根に持ったりします。
まぁ、基本交友のある相手にはだだ甘ですので、ちょっと意地悪になる程度ですけどね。