東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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正真正銘、今年最後の投稿だぁ!!

来年もよろしくお願いしまぁーすっ!!

良いお年を!!


第五十二話 「転生香霖と七夕祭り(後篇その三)」

 煙晶竜の元でアリスと共に短冊を吊るした後、僕は一人神社の裏に広がる森の中へと来ていた。

 すっかり夜闇に染まった周囲一帯には、人間はおろか妖怪や妖精の気配も感じられない。

 まぁ、そう言った場所を探してここまで来たのだから、当然と言えば当然なのだが。

 

 何故こんな場所まで来たかと言えば、サプライズの準備をする為である。

 サプライズである以上、こっそりやるのが望ましい。喜んで貰えると良いのだが……。

 

「……さて、始めようか。召喚(サモン)」

 

 今回行う召喚術は、僕自身初めての試みだが……まぁ、上手く行くだろう。

 

 掌を開いて前へと翳した右手の先で、眩いばかりの光が生まれる。

 莫大な魔力の消費と共に、僕が召喚しようとしている存在が、徐々にその姿を現した。

 現れた『ソレ』の姿を見て、僕は確信を抱いた。これなら、みんな喜んでくれるだろうと。

 

 

 

 祭りの喧騒から少し離れた博麗神社の母屋の縁側前、既に魔理沙さんやレミリアさんたちが酒盛りを始めている中、わたくしは霊夢さんに引き摺られるように連れてこられました。

 旦那様から出店の事を頼まれた以上、余り離れたくは無かったのですが……。

 

「あの、霊夢さん? わたくし、旦那様から任されましたので、出店の方から離れる訳には行かなかったのですが? それに、今回の祭りの主催は竜信仰ですし、巫女を務めているわたくしまで離れる訳には……」

「それを言ったら、場所を貸して共同開催って事になってる私だって現場から離れているでしょう? 境内に煙晶竜も邪神たちも残っているんだから、少しぐらい離れたって大丈夫よ。それに、そんな事で文句を言うような人なんて居ないわ」

「ですが……」

「叢雲、初詣の時もそうだったけど、あんたこういう時、気を使って酒盛りに参加しないで働いてることが多いでしょう? もう少し肩の力を抜きなさいよ。霖之助さんだって、自分たちが開いた祭りなんだから楽しまずにずっと働け。何て事言わないわよ」

「確かに旦那様は、その様な事を仰る方ではありませんが……」

「なら決まりね、さっさと行くわよ」

 

 霊夢さんはずっとこの調子で、わたくしの手を引っ張ってここまで連れて来たのです。

 

 確かに霊夢さんの言う通り、わたくしはこういった催し物際、あまり皆さんと交流をせずに裏方に回っていたことが多い自覚があります。

 わたくしとしては、旦那様が快適に過ごされるためサポートの一環と思っての行動でしたが、こうして指摘されるという事は、霊夢さんから不快に思われていたのかもしれません。

 

 ……いえ、こういう言い方はよくありませんね。

 霊夢さんは、わたくしを気遣ってこうして手を引いてくれたのです。それを拒もうなどと言う気持ちは、わたくしの中にはありません。

 強引な所には、多少言いたい事もございますが。

 

「……はぁ、判りました。けど、もし旦那様にお店を離れたことを叱られてしまったら、その時は一緒に叱られて下さいね。霊夢さん?」

「大丈夫よ。私、霖之助さんに怒られた事なんてほとんど無いもの」

「では注意されたことは?」

「……憶えて無いわね」

 

 それはもしかしなくても、注意されたことが多過ぎて憶えて無いという事ですよね?

 

 気まずげな顔でわたくしの視線から逃れようとする霊夢さんにまたしても溜息を付きたくなりましたが、そうこうしている内に魔理沙さんたちが酒盛りをしている姿が見えてきました。

 

「おー、叢雲に霊夢。ようやく来たのか、こっちはもう始めてるぞー!」

 

 盃を片手にブンブンと元気良く手を振る魔理沙さんは、何と言うかもう既に出来上がっている感じがしています。

 大変機嫌が良さそうで、酒が入っているからと言う以上に顔が真っ赤です。

 そんな魔理沙さんの隣で飲んでいたアリスさんが、魔理沙さんを気遣わしげに見ていました。

 

「ちょっと魔理沙、いくら何でも飲むペース早過ぎじゃない? そんなんじゃ直ぐに酔い潰れるわよ?」

「あぁん? べつにこのくらいへーきだぜ!」

「きゃっ、ちょっと! 中身が入ったまま振り回さないでよ!」

「おお、わりぃわりぃ」

 

 盃を持った手を大きく振った際、まだ中に入っていた酒が雫となってアリスさんの近くに飛び散りました。

 その事にアリスさんは文句を言っていますが、魔理沙さんはまったく気にした様子が無くからからと笑っています。

 そんな魔理沙さんの様子に、アリスさんは溜息を付きました。

 

「はぁ、まったく……戻って来てからずっとこの調子なんだから」

「戻って来てからと言うと、出店の前で魔理沙さんが走り去ってからですか?」

「ええ、そうよ」

 

 わたくしが訊ねると、アリスさんはその通りであると答えました。

 確か、旦那様から口説き文句的な事を言われた恥ずかしさから駆け出したのでしたね。

 こうして戻って来たのですから恥ずかしさの方はもう大丈夫みたいですが、代わりにすこぶる機嫌が良さそうです。

 

 こうして見ている間にも、魔理沙さんは盃に追加の酒を注いでごくごくと飲んでいます。

 実にいい飲みっぷり……なのですが、アリスさんが心配する通り少しペースが速すぎるように思えます。

 

「あら、いつにも増していい飲みっぷりね、魔理沙? 何か良い事でもあったの?」

 

 この場で唯一あの時現場に居なかった霊夢さんが魔理沙さんにそう訊ねます。

 その質問を受けた魔理沙さんは、何と言うか……実に鬱陶しい感じで答えを焦らしていました。

 

「ん~? 知りたいのか、霊夢? 知りたいよなぁ~、別に教えても良いんだが、どうしよっかなぁ~?? ん~???」

「ぶん殴られたいの魔理沙?」

 

 わざとらしく首を傾げて悩む様子を見せる魔理沙さんに、霊夢さんは冷めた目を向けながら拳を握り締めました。

 腰を落とし、拳を構える姿は実に堂に入っています。日頃の旦那様との鍛錬の賜物でしょう。

 それを見ても魔理沙さんの余裕が崩れなかったのは、同じく旦那様から訓練を受けていて、避けるなり防ぐなりする自信があったからでしょうか?

 どちらにせよ、喧嘩に発展する前に止めなければと思い前に出ようとしたところで、アリスさんがあっさりと何があったのかを話してしまいました。

 

「霊夢、魔理沙は霖之助さんから口説き文句みたいなセリフを面と向かって言われたから機嫌が良いのよ。言われた時は恥ずかしくって、全力で霖之助さんの前から逃げ出したくせにね」

「……ああ、そう言うこと」

「ちょ、アリス! 何でバラすんだよ!?」

「別に良いじゃない、いつもの事でしょ?」

 

 自分が恥ずかしさから逃げ出した事も含めて暴露された魔理沙さんは、更に顔を真っ赤にしてアリスさんに詰め寄り、霊夢さんはアリスさんの話に静かに納得した後座った目つきになり、アリスさんは詰め寄る魔理沙さんからツーンと顔を逸らしつつも、何かを思い出したのか顔を赤くしていました。

 中々に混沌とした状況です。まぁ、旦那様が絡んだ場合はいつもの事と言えるくらいには、よくある状況ではありますが。

 

 さて、どう収拾をを付けたものかと悩んでいると、突如として境内のあちこちから驚きの声や歓声が上がりました。

 

「ん? 何よ急に……って、あれ」

「うん? ありゃぁ香霖の……」

「霖之助さんが言ってた用事って、この事だったのね」

 

 頭上から光が降り注ぎ、周りの人たちがみんな空を見上げます。

 それにつられてわたくしも上を向くと、そこには白銀竜の姿となった旦那様が周囲に魔法の弾幕や炎に雷、光の帯などを放ちながら博麗神社の上空を旋回していました。

 白銀に輝く巨大な竜が空を舞い、周囲に弾幕の様な色とりどりの魔法を振り撒く姿は、豪快で美しく夜空を彩っています。

 その姿を見て、祭りに集まった方々は人妖を問わず、最高潮の盛り上がりを見せています。

 

「見て見て咲夜! ドラゴンがあんなに派手に美しく弾幕を放っているわ!」

「ええ、そうですね。煙晶竜が放つ弾幕は見た事がありましたが、霖之助さんが弾幕を使うのは初めて見ます」

「はぁ~綺麗ですねぇ~。霖之助さんって格闘だけでなく、魔法もあんなに得意なんですね。パチュリー様?」

「あの弾幕、所々に霊夢や魔理沙、他にも大勢の弾幕を参考にした節が見られるわね。けど、ベースは外の世界の花火みたいね。避け難さは一切考えず、派手に美しく見せる事のみを追求しているわ」

「もぉ、パチュリー。お祭りなのに真面目に考察しているのよ! 折角霖之助があんなに綺麗な弾幕でお祭りを盛り上げようとしてくれているんだから楽しまないとでしょ!」

 

 レミリアさんを始めとした紅魔館の方たちが、旦那様の弾幕を見て盛り上がっています。(約一名は真剣な目で考察していましたが)

 パチュリーさんの言う通り、今回旦那様が使っている弾幕は、パフォーマンス用に開発した見た目の美しさと豪華さのみを追求した弾幕です。

 連日のお祭りの準備の途中、何かしらのサプライズを行いたいと仰った旦那様がわたくしや煙晶竜様にもアドバイスを求めながら開発したものです。

 

「ふわ~、霖之助さんって弾幕もお上手だったんですね。避けるのは難しくなさそうですが、とっても綺麗です!」

「うふふ、妖夢。この弾幕は魅せる事を重視した弾幕だから、避けられる事なんて考慮して無いのよ?」

「そうなんですか、幽々子様?」

「ええ、そうよ。それが見抜けないなんて、まだまだねぇ」

「うっ……精進します」

「うふふ、頑張りなさい」

「メェ~! メェ~!」

 

 少し離れた場所では、妖夢さんと幽々子さんがそんな風に話し合っており、その周りでは空を舞う色とりどりの光に興奮したらしい日輪が駆け回っています。

 日輪は黄金の毛並みを持つ大きな羊な訳ですが、弾幕の光に照らされて七色に輝くかのようでした。こっちもすごく綺麗ですね。

 

 美しい弾幕を見て争う気力が削がれたのか、霊夢さんと魔理沙さん、それにアリスさんの三人は揃って空を見上げていました。

 その様子を見て、わたくしが何かするまでもなかったですね。と、安心していると、後ろから声がかかりました。

 

「―――やぁみんな、僕の用意したサプライズは楽しんで貰えているかな?」

「「「「霖之助さん(香霖)(旦那様)!?」」」」

 

 そこに居たのは、今まさに上空でドラゴンの姿となり弾幕を披露しているはずの旦那様でした。

 その傍らには、扇子で口元を隠しながら優雅に微笑む紫さんの姿もあります。

 

 旦那様が二人? 一体何が起こっているのでしょうか?

 

 

 

 時は少し遡り、僕が召喚術を行使した場面へと戻る。

 

 召喚術を使って目の前に現れたのは、僕のドラゴン形態の姿である白銀竜その物であった。

 

「……よし、上手く行ったようだな」

 

 目の前に現れた白銀竜と瓜二つのドラゴン、これは僕の能力で召喚した存在であり、名付けるとしたら『白銀竜の写身』と言った所か。

 これは僕が白銀竜としての信仰を得て、神としての側面を持つようになったからこそ出来る様になった新たな召喚術だ。

 日本における神霊とは、神の精神部分を示す物であり、思想を他者に伝えても減ることが無いように、分割しても同じ力を持つという特性を持っている。

 これはゲーム時代に敵として出て来た、神の力を写し取った存在である『化身』系統のモンスターと非常に相性が良く、この世界の神霊の法則とゲーム時代のモンスターの特性を合わせる事で、僕は僕自身の分霊を実体化させて召喚する事が出来る様になったのだ。

 

 僕の分身である以上、白銀竜の写身は特に命令せずとも、自身が何をすべきなのかを理解している。

 白銀竜の写身は、僕からの合図を待たずに飛び上がり、複数の魔法を発動させながら博麗神社の境内へと向かった。

 

「―――見事なものね。自分の神霊を召喚して使役する神様なんて、そうそう居ないわよ?」

「おや、戻ったのかい紫?」

 

 背後から掛かった声に振り返ると、そこには藍と橙を伴った紫が立っていた。

 

「こんばんは藍、それに橙も」

「はい、こんばんは霖之助様」

「こんばんはです。霖之助様!」

 

 しばらくぶりに見た橙だが、少し背が伸びたようだね。

 言葉遣いにも以前の様なたどたどしさが無くなっているし、これも豊穣の乳の効果かな?

 

 そんな風に考えていると、橙が少し遠慮しながら僕に訊ねて来た。

 

「あの、霖之助様……今日はバーストも来ているんですよね?」

「ああ、出店の方を任せているんだけど……橙はバーストと知り合いだったのかい?」

「前に妖怪の山の近くをうろうろしていた時に、弾幕ごっこをしてから友達になりました! 初めて戦った時は私が勝ったんですよ!」

「ほぉ、それはまた、大金星と言う奴だね」

「はい!」

 

 自慢気に笑う橙に改めて感心する。

 バーストは弾幕ごっこの初心者同然だが、それでも本物の邪神であるのだ。しかも、猫に属する獣を統べる女神である。

 それに化け猫の橙が勝利したというの、経験の差があるとはいえ大金星と言って差し支えない。

 しかも友誼まで結んだと言うのだから、橙は将来大物になりそうだ。

 

 そんな風に考えていると、藍が橙の頭にポンと手を置きながら注意した。

 

「こらっ、駄目じゃないか橙! 紫様を差し置いて先に霖之助様とお話するなんて。すみません紫様、霖之助様」

「僕は別に気にしないよ。うちのバーストの交友関係が広がっていると知れて嬉しかったしね」

「私も別に気にしないわよ。霖之助さんとは、いつでも好きな時にお話出来るし」

 

 僕も紫も、特に気にしてはいないのだが、藍の方は申し訳なさそうにしていた。

 真面目だなぁ、藍は。その真面目さを、叶うなら霊夢や魔理沙たちにも分けてあげて欲しいと切に思う。

 

「あら、それなら霖之助さんも藍の真面目さを分けて貰うべきじゃないかしら?」

「息を吸う様に僕の思考が読まれているのは何故なんだろうね? 今紫、能力も何も使っていなかったよね?」

「顔を見れば判るわよ。霊夢や魔理沙にだって判ると思うわ」

「僕は一体どんな顔をしていたって言うんだ……」

 

 実際に鏡を召喚して自分の顔を見て見たが……うーん、判らん。

 とりあえず、女性の感性は鋭いという事で納得しておこう。

 

 僕が鏡を見て自分の表情を確認している間に、藍は橙を連れて出店の方に行くように指示を出していた。

 

「藍、橙を連れて霖之助さんの屋台の食べ物を買って来て頂戴。私は霖之助さんと先に霊夢たちの所へ行っているわ」

「はい、判りました」

「それと橙、料理を運ぶのは藍一人で十分だから、あなたはバーストと話してて良いわよ。お店の方が忙しそうなら手伝ってあげなさい」

「はい、任せて下さい!」

「おや、良いのかい紫? 確かに手伝って貰えると助かるけど」

「良いのよ。橙だって、折角のお祭りなんだから友達と一緒に居たいでしょうし。それに、霖之助さんには普段からお世話になっているもの。 ……主に幽々子の事で」

「ああ、そういう……」

 

 これはあれかな? これからも幽々子の事をよろしくという事かな?

 幽々子の食欲が増しているとか予想外だったし、これからは更に気合を入れないと色々ヤバいかも知れない。

 幽々子の事を口にした時に、どことなく哀愁を漂わせた紫の態度が僕にそう感じさせた。

 

「……本当に頼むわよ。私、親友が食料を食い尽くして幻想郷が滅びるとこなんて見たくないから」

「流石に幽々子もそこまでは……まぁ、善処するよ」

 

 お互いに幽々子ならあるいは! と思ってしまったらしく、視線が明後日の方向にそれてしまっている。

 微妙な空気を察した藍が、橙を連れてスキマを使って移動して行った。

 

「ええっと、それでは紫様、行って参ります」

「ええ、頼んだわよ。藍」

「霖之助様、行って来ます!」

「ああ、バーストによろしくね。橙」

 

 開いた隙間の中に二人が消えて行く。

 その姿を見届けた僕と紫は、どちらからともなく霊夢たちの集まるいつもの場所へと向かって歩き出した。

 しばらく歩いていると、紫が思い出したように僕に訊ねて来る。

 

「……そう言えば霖之助さん、あのドラゴンの今後の扱いはどうするの?」

 

 紫は空を舞う白銀竜の写身を見ながらそう聞いて来る。

 ふむ、写身の扱いか……。

 

「そうだね。このまま送還せず、幻想郷に常駐させようかと思うのだけど、どうだろうか?」

「うーん、そうね……悪くないんじゃないかしら。目に見える信仰対象が居るのって大きいものですし。霖之助さん、白銀竜の正体が自分だってバラすのは良いにしても、店に拝まれに来るのは嫌でしょう?」

「あぁ、それは確かに嫌だね。店に来る以上は、お客様として来て欲しいし。それに香霖堂は、大勢の参拝客を受け入れられる場所じゃないからねぇ」

 

 香霖堂に、今日の祭りに集まった様な人数が押し掛けるのを想像する。

 ……うん、人の圧で店舗が倒壊するイメージしか想像出来ないな。

 

 そんな事を思い浮かべながら、空を舞う僕自身の写身の姿を眺めていると、写身が雷の魔法を使うのと同時に、突如眼前に雷が発生する。

 

「!? これは一体……」

「誰かからの攻撃、と言う訳じゃないみたいね? 少しずつ勢いが収まって行くわ……」

 

 バチバチと言う激しい帯電音と発光が徐々に収まって行くと、そこには黄金に輝く一本の槍が存在していた。

 その槍に、僕は見覚えがあった。

 

「これは……確かゼウスの槍、だったか?」

「ゼウスの槍、と言うと『ケラウノス』? ……確かに霖之助さんの記憶で見た事があるわね」

 

 紫が口にした通り、僕の目も目の前の槍の名前が『ケラウノス』であると伝えている。

 この槍は、確かゲーム時代にゼウスを拘束した時に拾おうとして、掴んだ瞬間に消えてしまった物の筈だ。

 それが今になって、こんな形で姿を現すとは……。

 

 帯電の収まったケラウノスを手で掴むと、まるで吸い付くかのようにしっくりきた。

 この槍もまた、叢雲同様に使い手を選ぶ類のようだが、僕は問題無く受け入れられているらしい。

 それを確認した僕は、送還の要領でアイテムボックス内にケラウノスを収納した。

 

「うん、まぁ……驚くべき事ではあったけど、特に問題がある訳じゃ無いみたいだね」

「……あぁ、また頭痛の種が増えたのね。判るわ」

 

 紫がこめかみに手を当てながら呻いている。

 いやまぁ、これは別に僕が悪い訳では無いし……うん、すまない紫。

 

「はぁ……まぁいいわ。その槍の事はまた後日話し合うとして、今日はお祭りを楽しみましょう」

「そう言って貰えると助かるよ」

「ええ、楽しみますとも。こんな日は、酒を呑まなきゃやってられないわよ!」

 

 自棄になったような口調で、紫はズンズンと歩いて行く。

 本当にすまないなぁ。と思っていると、神社に近づくにつれて、大きな歓声が聞こえるようになって来た。

 

「どうやら、パフォーマンスは大成功の様ね」

「ああ、少し不安だったけど、上手く行って良かったよ」

「ふふ、そりゃぁ上手く行くわよ。アレだけ工夫を凝らした弾幕を披露すればね」

「……そうかい、君にそう言って貰えると光栄だよ」

 

 上空を旋回しながら弾幕を放つ、写身を見ながら紫が微笑む。

 あの弾幕は、ここ数日色々と考え抜いて作った自信作だったが、弾幕ごっこの第一人者の一人とも言える紫にそう言って貰えるのは嬉しかった。

 

 喜びを噛み締めて居ると、やがて森を抜け、空を見上げている霊夢たちの姿が見えて来た。

 

「―――やぁみんな、僕の用意したサプライズは楽しんで貰えているかな?」

 

 僕が考えて作った弾幕をみんなに楽しんで貰えている。

 その事が、とても誇らしかった。




駆け足気味だが、何とか終わらせたぞ!(それでも文字数は膨れ上がりまくった)

来年の『東方転霖堂』は、本格的に永夜抄に突入しますので、どうぞお楽しみに。
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