東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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消失したとは言っていない。


第五十三話 「転生香霖の消失」

 ギラギラと照りつく太陽。

 騒がしい蝉の声に混じって時折風鈴の音色が響いている。

 快晴の空の下、夏の風物詩を感じながら読書をしていると、大きな魔力の反応と共に見慣れた白黒と金の流れ星が落ちて来るのが目に入った。

 

「おーい霊夢、大変だ! 叢雲の奴が、香霖が行方不明になった……って……?」

「うーん……何よ魔理沙、昼寝の邪魔しないでよ」

『やぁ魔理沙、僕がどうしたって?』

「居たぁーーーーーっ!!!???」

「わっ」

『おっと』

 

 突然魔理沙が上げた大声に驚いて、背中からずり落ちそうになった霊夢を尻尾の先で支える。

 叢雲からちゃんと話を聞いていたのならここまで驚く訳は無いし、さては中途半端に話を聞いて、話の途中で飛び出して来たな。

 やれやれ。

 

『魔理沙、叢雲が話している途中で飛び出して来たんじゃないかい? 叢雲も僕が博麗神社に居るって事は知っているはずなんだが?』

「うっ、それは……」

 

 魔理沙が気不味げに目を逸らす。

 帽子のつばを引っ張って顔を隠そうとしているが、端から見える頬が赤い事から、早とちりで騒いだのが恥ずかしかったと見える。

 

 まぁ、完全な早とちりと言う訳でも無いのだが。

 

「な、なんだよ。神社に居るって言うなら最初からそう言えよな! 叢雲も行方不明になったなんて言うからびっくりした……うん? おかしくないか? 叢雲も香霖が神社に居る事は知ってるんだよな?」

『ああ、叢雲だけじゃなく煙晶竜や邪神たちも知っているよ』

「なら、何で『行方不明』なんて事を叢雲は言ったんだ? 居場所が判っているなら普通行方不明なんて言わないよな?」

『実際に僕が行方不明になっているから、叢雲はそう言ったんだよ。別に嘘でも誇大表現でも無い』

「???」

 

 言っている意味が理解出来なかったようで、魔理沙が頭に疑問符を浮かべている。

 まぁきちんと説明しなければさもありなん、と言った所か。

 苦笑しながら僕が説明しよとすると、それよりも早く霊夢が種明かしをしてしまった。

 

「行方不明になったって言うのは霖之助さんの本体の話よ。ここに居るのは七夕祭りの時に召喚してた神霊の方」

「あ、そう言う事か!」

 

 魔理沙が得心が行ったという表情で手を打つ。

 そう、霊夢が言う通り、ここに居る僕は七夕祭りの時に召喚した分身体、『白銀竜の写身』であった。

 

 

 

 七夕祭り以降、僕は本体が香霖堂の経営を、写身が竜信仰の祭神としての活動を、と言う風に役割分担をして来た。

 その為、邪神たち同様に僕は写身を召喚したままにしていた訳だが、今回はそれが役に立ってくれた。

 何せ、写身の僕が幻想郷に残っていなければ、僕は皆に無事を伝える事も、望めば直ぐに幻想郷に帰還出来るという状態にもなれなかったのだから。

 

『今朝目が覚めたら、僕の本体の方がクトゥグアやハスターと一緒にどこか別の場所に転移していてね。幸い本体と写身との間で情報は共有で来ているし、いざとなれば写身側の僕が本体側の僕を召喚するという形で帰還することも出来るから、心配いらないよ』

「そうだったのか……けど、どうしてそんなことになっているんだ?」

 

 僕の本体が無事だと聞いて、安心した様子の魔理沙が当然の質問をして来た。

 

『さてね。まだ僕自身把握しきれて無いんだけれど……煙晶竜が言うには「時が来た」という事らしいよ』

「それって……」

『……ま、僕としては結構期待しているよ。ようやく全てを取り戻せるんじゃないか、ってね』

 

 煙晶竜は多くを語らなかったが、恐らく間違ってはいないだろう。なにせ、含み笑いをしていたからね。

 なにが、『その時が来れば自ずと判る』だよ。格好つけやがってからに。

 

 まぁいい、元々何十年でも何百年でも待つつもりでいたんだ。

 ゴールが目前と判っているなら、いくらでも待てるさ。

 

『少し気が早いかも知れないが……僕が配下たちや城を取り戻したらパーティーでも開こうと思うんだけど、二人は何か食べたいものはあるかい?』

「私はとにかく色んな美味しい物を沢山食べたいわ!」

「私は……そうだな、香霖が作るやつなら何だって良いかな?」

『何でも良いが一番困るんだけどなぁ……』

 

 具体的なリクエストが無いと結構困るんだが……いや、ここは発想を逆転させよう。

 

 逆に考えるんだ、思いつく限りの料理を好きなだけ作っちゃって良いさ! と。

 

『ふむ、ふむ……食材の貯蔵量、召魔の森の生産技能向上効果、それに召喚モンスターたちの手伝いも含めれば……行けるか? いざとなれば、写身を複数対召喚すれば良いし‥‥…よし、任せなさい! 君たちが今まで見た事無いほどのご馳走の山を用意しようじゃないか!!』

「「やったぁ!」」

 

 行ける、そう判断した僕が太鼓判を押すと、二人ははしゃいだ声で喜んでくれた。

 これは腕が鳴るな。

 

 やるからには徹底的にだ。

 和、洋、中、海の幸、山の幸、神話の食べ物に至るまで、全てを使って過去最高の宴会料理を用意して見せよう。

 一度そう決めると、次から次に作りたいものが浮かんで来る。

 あれも作りたいし、これも作りたいし、料理だけでなくお菓子類も沢山用意したい。

 

 いやぁ、今から楽しみだなぁ。

 そう考えていると、その気持ちが無意識に体を動かしてしまったらしく、いつの間にやらパタパタと動いていた尻尾が砂埃を立ててしまい、霊夢から怒られてしまった。

 

「ちょ、霖之助さん。砂埃なんて巻き上げないでよ」

『ああ、ごめん。気付かなかったよ、すまないね』

 

 霊夢に謝りつつ、魔法で適当に風を起こして砂埃を吹き飛ばしていると、そう言えばと前置きした魔理沙が僕に質問をして来た。

 

「そう言えば……なぁ香霖、香霖の本体は今どこに居るんだ?」

『どこに居るか、か……』

 

 写身である僕と、本体の僕は現在リアルタイムで情報共有を行っている。

 その為、本体が現在どんな場所に居るのかは判るのだが……

 

『どこなんだろうね? 四方八方で火災が起き、人っ子一人見当たらない外の世界の街並が広がっているよ』

「外の世界の街並? って事は、香霖の本体は今、外の世界に居るのか?」

『いや、どうも違うらしい。単純に外の世界の何処かと言う訳でなく、外の世界の街並が広がる異空間のような場所みたいだ』

「異空間……と言うと、萃香と戦ったあの場所みたいな物かしら?」

『多分違うね。この幻想郷自体もそうだが、内部に侵入出来ない様に閉鎖されているのではなく、本体が居る場所はそもそも現世とは地続きですらないようだ。何かこう、現実にあるモノを写真の様に写し取った上で着色してあるというか……』

「? 良く判らないんだぜ」

『すまないね。今の段階だと、どうもうまく説明出来そうにない』

 

 こういった分野は、僕よりも紫の方が詳しいんだろうが、考察の一つもせずに彼女に訊ねるのは性に合わない。

 僕なりの考えを纏めてから、二人にはまた説明するとしよう。

 

「なぁ、本体の方の香霖は、その燃えてる街で今何してるんだ? どうせなら、外の世界の珍しい道具でもついでに拾って来てくれよ」

「そうね、私も外の世界のお茶やお菓子を食べたいわ」

『あっけらかんと火事場泥棒を要求するんじゃ無いよ。いやまぁ、色々拾っては居るけどね』

 

 本体の方は今、燃え上がる街を探索しながら使えそうな物を色々と拾い集めている。

 こればっかりは習い性と言うか……外の世界そのものでは無いにしても、外の世界の道具が大量に手に入る良い機会だし、多少はね?

 

「ほらやっぱり! 香霖なら絶対何か拾っていると思ったぜ!」

「私たちが何か言うまでも無く火事場泥棒してるわよねぇ」

『いやいや、これは火事場泥棒では無く保護だよ保護。このまま放っておいてもみんな燃えて灰になるだけだしね……おや?』

「? どうしたの、霖之助さん?」

『生存者が居たんだよ。しかも襲われていてね、とりあえず助けたから話を聞いてみるよ』

「助けるの速いな!? 見つけて直ぐじゃないか。魔法で倒したのか?」

『いや? 持ってた杖で殴り倒したよ』

「あ、そう」

 

 何故そこで呆れた顔になるのかは敢えて問うまい。

 それより助けた少年から話を聞く事に集中しよう。写身の方の僕が集中する意味は無いんだが。

 

 僕の『見たモノの情報を閲覧する程度の能力』で判明した少年の名前は『藤丸立香』か。

 能力を使えば彼の事情を知るのは簡単だが、それをやるのは少し無粋だ。

 まずは話し合いをしないとね。




原作サモナーさんが増えたので、こっちの転生香霖も増えましたw(原理は違いますが)

次回は転生香霖とぐだ男くんの邂逅です。
ようやくFGOタグが役立つぞう!
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