東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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サモナーさんが初めて召喚した英霊はジャンヌ・ダルクでしたが、作者がFGOで初めて引いた星五のサーヴァントもジャンヌだったりします。

ちょっとした共通点ですねw


第五十六話 「転生香霖と緋炎聖女」

(緋炎聖女!)

 

「っ?」

 

 無詠唱で英霊召喚の呪文を唱える。

 本来なら、そのままこの場に英霊が召喚されるのだが、どうにも様子がおかしい。

 呪文を唱えるのと同時に地面の上に初めて見る術式が浮かび上がり、その更に上に十数個の光球が円形に出現する。

 その光球は虹色の光を伴いながら高速回転を始め、三つの光の輪となって広がったかと思うと次の瞬間、閃光と共に大きな馬に騎乗した甲冑姿の人物が出現した。

 

「サーヴァント・ライダー。『ジャンヌ・ダルク』、参上しました。こうして顔を合わせるのは随分と久しぶりですね、キース」

 

 鎧の中からくぐもった女性の声が聞こえて来る。

 前世の僕の名を口にしながら兜を脱いだその女性は、嬉しさとも懐かしさともつかない笑顔を浮かべた。

 『ジャンヌ・ダルク』。そう名乗った以上、間違いなく彼女は僕の英霊召喚で呼び出された英霊だ。

 

 ―――そのはずなのだが………

 

「え、いや、誰……?」

「え?」

 

 僕が困惑しながらそう呟くと、隣の立香くんが驚きながら僕へと振り返る。

 それに対し、ジャンヌ・ダルクを名乗った女性は笑顔を引き攣らせながら下馬すると、つかつかと歩いて僕の目の前に立ち、ビシッと僕へ指を突き付けた。

 なお、彼女の身長は僕と比べて顔一つ分以上低い。

 

「あなたに召喚された! 緋炎聖女の英霊! ジャンヌ・ダルク! です! いくら以前会ってから千年以上の時が経っているとは言え、共に数々の戦場を乗り越えた私を忘れたのですか!? キース!!」

「いや、ジャンヌ・ダルクにお世話になったことはもちろん憶えているけれど……本人なのかい? 以前会った時と、姿が全然違うじゃないか」

「そうなんですか?」

 

 知っているジャンヌ・ダルク姿と全然違うと僕が言うと、立香くんが不思議そうにそう訊ねて来た。

 どうも、立香くんはジャンヌ・ダルクがこの姿である事に疑問を抱いていない。というより、この姿であるのを当然だと感じているようだった。

 カルデアには様々な英霊が召喚されているそうだし、立香くんの知るジャンヌ・ダルクはこの姿なのかもしれない。

 

 しかし、僕が前世で召喚していたジャンヌ・ダルクは全く姿が違っている。

 ゲーム時代の彼女は、男装の麗人という言葉がピッタリの凛々しい女性だった。

 だが、今目の前に居る彼女は、幾分幼さも残した少女の姿をしている。

 年の頃は、霊夢たちよりも上、咲夜と同じくらいだろうか?

 

 僕と共に戦った記憶があるなら、彼女は僕の知るジャンヌ・ダルクの筈だが、姿は立香くんの知るジャンヌ・ダルクのものであるらしい。

 先程の召喚時に浮かんだ術式に関係があるのだろうか?

 そう考えていると、ジャンヌ・ダルク本人が答えを教えてくれた。

 

「……本来今の私は、あなたの能力に組み込まれた存在ですが、この特異な空間で召喚されるに当たり、こちらの世界のジャンヌ・ダルクと統合された状態で召喚されてしまったようです。サーヴァントのクラスに当てはめられているのが、その証拠ですね」

 

 自分で説明しながら、僕が困惑した事について納得してくれたらしいジャンヌ・ダルクは、ふっと息を吐いて表情を穏やかなものに戻した。

 

「ともかく、これで私があなたの知るジャンヌ・ダルクであるという事には、納得して貰えましたか? 何なら、あなたの『眼』で確認してくれても良いのですが」

「いや、それには及ばないよ。嘘をついていないという事ぐらいは判るしね」

 

 彼女の申し出を断りつつ、僕は彼女に握手を求めて手を差し出した。

 

「改めてお久しぶりです、ジャンヌ・ダルク。またお世話になります」

 

 僕がそう言うと、ジャンヌ・ダルクは苦笑しながら握手に応じてくれた。

 

「あなた以外ならそのままの意味で受け取るセリフですが、お世話になりますと言うのは、また稽古をつけて欲しいという話ですか?」

「ええ、是非に」

「千年以上も経っているというのに、全然変わっていませんね、あなたは。それでこそキース、と言うべきかもしれませんが」

 

 手加減はしませんよ、そう言いつつ手を握り返してくれた彼女に対し、感慨深い気持ちになる。

 ゲーム時代はこうして言葉を交わすことは出来なかった為、こうして会話出来ている状況が妙に嬉しく感じる。

 これならもっと早く他の英霊たちも召喚するべきだったな。話したい事や聞きたいことは山ほどあるというのに。

 と言うかそもそも、魔理沙が夢幻放浪の英霊たちと会話しているという話しは既に聞いていたじゃないか。僕ってば抜けすぎ!

 

「……あの、オレも挨拶しても良いですか?」

「ああ、すまない。置いてきぼりにしてしまったね。ジャンヌ・ダルク、彼は藤丸立香くん。僕の同行者だよ」

「ジャンヌで構いませんよ、キース。それに、もっとフランクに話してくれて構いません。 ――では改めて、初めまして、カルデアのマスター。あなたの事は、こちらの私の記録からある程度知識として知っています。私は緋炎聖女ジャンヌ・ダルク。あなたの知る私とは半分くらい違うので戸惑う事もあると思いますが、よろしくお願いしますね」

「こちらこそ、よろしくお願いします。 ……ところで、キースって言うのは?」

 

 ジャンヌと挨拶を交わした立香くんが、首を傾げながら訊ねて来る。

 当然の疑問だね、僕は立香くんに森近霖之助としか名乗っていないのだから。

 前世云々のややこしい話は抜きに、ざっくりと説明しよう。

 

「キースと言うのは、僕が昔名乗っていた名前だよ。今は森近霖之助と名乗っているしそう呼ばれているけど、当時からの知り合いは僕の事を今でもキースと呼ぶんだ」

「なるほど」

 

 大分ざっくりした説明だが、立香くんが納得してくれたし問題無いだろう。

 それより、僕も一つ気になっている事があるのだが……。

 

「ジャンヌ、さっき前に会ってから千年以上経っていると言っていたけど、どういう事なんだい? そんなに長くは経っていないと思っていたんだが」

 

 もしかして、僕が死んでから転生するまでの間に数百年の間があったのかな?

 そう思って訊ねると、ジャンヌは頭が痛そう溜息を付きながら答えてくれた。

 

「はぁ……キース、前々から言いたかったのですが……」

「?」

「あなた自分が数百歳だと思ってますけど、違いますよ? あなたはとっくに千三百年以上生きています!」

「???」

 

 え? マジで?

 

「千三百年……霖之助さんってそんなに長生きだったんですか?」

「ええ、本人に自覚が無かっただけでそんなに長生きだったんです」

 

 立香くんとジャンヌがそんな風に話し合っているが、ちょっと頭が追い付かないな。

 えぇ~、そんなに経ってたのか? ……全く自覚なかったなぁ。

 

「精々長くても六~七百歳程度だと思ってたよ……」

「キースの生まれは、西暦換算なら大体680年代の初頭頃ですよ? それなのにどうして、今までその半分程度だと思っていたんですか?」

「いや、暦とかいちいち確認して無かったから……」

「それにしたって、六~七百年はサバ読み過ぎです!」

「仰る通りで」

 

 参ったなぁ。西暦680年代初頭って言う事は、妹紅よりも年上って事じゃないか。

 今まで散々妹紅の事を年上扱いしておいて、僕の方が親子ほどに年上とか……一発二発殴られる覚悟はしておいた方が良いかもしれない。

 

「ふぅ、長年言いたかったことがようやく言えました。それで、これから二人はどう行動しようと考えているんですか? 私はもちろん何処へだろうと着いて行きますが」

「それについては――『主よ、ハスターが帰還しました』『ただいまぁ~、マスター』――お帰り、ハスター」

 

 ジャンヌを召喚している間、周囲の監視と警護を頼んでいたクトゥグアが、立香くんから提供された情報を元に冬木の街の探索に出ていたハスターを連れて戻って来た。

 これだけ早く帰って来たという事は、目的の物が見つかったかな?

 

 まぁその確認の前に、とりあえずジャンヌの紹介をしようか。

 

「クトゥグア、ハスター、彼女は僕が召喚した英霊のジャンヌ・ダルクだ。ジャンヌの方は……」

「私への紹介は不要ですよ。非召喚状態の時にあなたが見聞きした情報は、私たちにも共有されていますから。初めまして、クトゥグア、ハスター。私はジャンヌ・ダルクです」

『クトゥグアが。よろしく頼む、ジャンヌ殿』

『ハスターだよ。よろしくね、ジャンヌちゃん』

 

 三人が軽く自己紹介を済ませたところで本題に入るとしよう。

 ハスターは何か見つけてくれただろうか?

 

「それでハスター、立香くんから聞いた例の場所には何かあったかい?」

 

 『例の場所』というのは、以前立香くんがこの冬木の地で『聖杯』と言うものを見たという大洞窟の事だ。

 立香くんは何度もこの特異点に足を踏み入れているそうだが、大体の異常の原因はその場所で見つかる事が多いらしい。

 

『うん、中までは確認出来なかったけど、その場所から強い魔力を感じたよ』

「ビンゴだね。早速その場所に向かおうかと思うけど、立香くんやジャンヌはどうだい?」

「俺は賛成です。戦いは皆さんに任せっきりになっちゃいますけど」

「私もです。もっとも、私はどこへだろうとあなたと共に進むだけですが」

 

 二人共賛成してくれるなら、善は急げだ。

 特に立香くんは早く仲間たちの元に帰りたいだろうし、警戒しつつ駆け足で進むとしよう。

 

『あ、けど一つだけ注意した方が良い事があるよ』

 

 出立しようと杖を手に取ると、ハスターがそう言ってからその場に立体映像の様な物を映し出した。

 そこには、黒い煙か何かに包まれた様な、巨大な人型の何かが存在していた。

 

『洞窟の入り口前にこいつが居たんだぁ。多分番人か何かかな?』

「これは……ヘラクレス!」

「知っているのかい? 立香くん」

 

 黒い人型の正体を立香くんは知っていたらしく、『ヘラクレス』と口にして驚いていた。

 ヘラクレスと言えば、僕の英霊召喚呪文の一つである『剛力無双』の英霊であり、星座にもなっているギリシャ神話の大英雄だ。

 

「映像を見ただけですけど、間違いなくヘラクレスのシャドウサーヴァントだと思います」

「シャドウサーヴァント……か」

 

 立香くんの話だと、確か何かしらの要因で劣化したような状態のサーヴァントだったかな?

 劣化しているとなると、あまり期待できないかもしれないが……ま、本命は洞窟内の魔力反応の元な訳だし、ウォーミングアップだと考えれば丁度良いか。

 

「うん、行こうか」

「行くんですか!? ……その、例えシャドウサーヴァントでも、ヘラクレスは物凄く強いですよ?」

「なぁに、何とでもなるよ」

 

 と言うより、強敵であるなら寧ろ望むところだ。

 獣の様な狂気を撒き散らしながら、全力で殺しにかかって来て欲しい所だね。

 それくらいが僕の理想だ。




転生香霖が召喚したジャンヌの状態は、外見がFateで中身が緋炎聖女って感じです。


【真名】 緋炎聖女ジャンヌ・ダルク
【クラス】 ライダー
【属性】 秩序・善
【時代】 現代
【地域】 幻想郷(森近霖之助)
【筋力】 B++
【耐久】 B++
【敏捷】 A+
【魔力】 A+
【幸運】 B+
【宝具】 A++


『保有スキル』

・緋炎聖女:A++

・啓示:A

・魔力放出(炎):A+


『クラススキル』

・対魔力:EX

・騎乗:A++

・神殺しの同胞:EX

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