東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
やっぱり夜中にテンションだけで書くと、誤字率高まるなぁ。
「よっと」
ゴキリッ、という鈍い音が鳴り、続いてドサッと何かが倒れる音がする。
前者は僕が首の骨を折った音、後者は首を折られて死んだモンスターの体が地面に倒れた音だった。
「よし、さっさと血抜きを済ませてしまおう」
僕が現在いる洞窟は、『節制の石板』によって香霖堂の地下に形成されたダンジョンの内部だ。
そしてつい先ほど仕留めたモンスターは、ゲーム時代にも狩った相手で名称は『闘牛』。
名前の通り牛型のモンスターだった。
この闘牛はドロップアイテムとして各部位の肉を落とす為、ゲーム時代はレアドロップのサーロインを目当てに沢山狩ったりもしたのだが、香霖堂地下ダンジョン出現したものを何度か倒して行く内に、有る事に気付いた。
それは、ゲームから現実の物へとなったことによる変化であり、その内容とは倒したモンスターの死体が消えない事である。
ゲーム時代、倒したモンスターの死体は一定時間経過するか、『剥ぎ取りナイフ』を突き立てるかすると消滅するという仕様だった。(剥ぎ取りナイフを使うと、一定確率でアイテムがドロップする)
しかし、現実となったこのダンジョンでは、僕が剥ぎ取りナイフを使わない限り死体が消滅しないのである。
これは正直に嬉しい誤算だった。死体が消えないという事は、自分で解体する手間はかかるが、倒したモンスターの素材をドロップ率に関係無く利用出来るという事なのだ。
中にはアイテムドロップとしてしか手に入らない物もあるだろうが、少なくともこの闘牛の肉ならばドロップに頼らずとも全て利用することが出来る。
この事が判明して以来、僕は嬉々としてダンジョンに潜り闘牛を一頭確保しては、地下ダンジョンと地上の香霖堂の間にある、『塔の石板』によって形成された地下塔の工房に運んでいるのだ。
おかげで最近は、毎日好きな時にサーロインが食べられるという贅沢な状況となっている。
ちなみに、余った他の部位の肉は霊夢や魔理沙におすそ分けをしている。記憶を取り戻してから、僕は前世同様に食欲旺盛となっていたが、流石に牛一頭丸々分の肉を一人で消費するのは無理がある。
霊夢や魔理沙も、ただで肉が食べられるとあって喜んでいるし、Win‐Winの関係と言えるだろう。
ただ一つ心配な事は、最近二人に僕が独占しているサーロインの存在が感づかれつつあるという事か。
「さて、血抜きと解体も終わったし、もう少し潜るか」
魔法も併用して、闘牛の血抜きと解体を手早く済ませた僕は、もう一度ダンジョンに潜る事にした。
今度の目的は牛肉の確保では無く、ダンジョン内の掃除が目的である。
現実になったことで、死体が消えないというメリットが生まれたが、それは同時にデメリットでもある。
ダンジョン内のモンスターはゲーム時代と違い、時間経過でデスポーン(自然消滅)する事も無く増え続ける。
定期的に内部のモンスターたちを掃討しなければ、ダンジョン内が増え過ぎたモンスターやモンスター同士の争いで発生した死体などで埋め尽くされてしまうのだ。
ダンジョンの入り口に結界を張っている為、溢れかえったモンスターがダンジョンの外に出るという事は無いが、溢れた死体が原因で疫病でも発生したら目も当てられない。
定期的なダンジョン内の清掃、という名の殲滅戦は必須事項であった。
「しかし、出て来るモンスターの種類もいい感じに増えて来たな」
現在ダンジョン内で出現するモンスターの代表例は、キノコ類をドロップする『ファンガス』系統のモンスター、原木類をドロップする『ブランチゴーレム』、各部位の肉をドロップする『闘牛』、肉と卵をドロップする『暴れキンケイ』など。
そして目玉であり、現在出現するモンスターの中で一番強いのが、『魔水晶』をドロップする『レッドオーガ』だ!
地下ダンジョンの掃討戦は、入り口から入って徐々に最下層を目指しながらモンスターを狩って行くのだが、最深部で待ち構えているのがこのレッドオーガの群れであり、こいつらを格闘戦で全滅させるのが最近の楽しみとなっている。
オーガと言えば日本の鬼に匹敵する強大な種族なのだが、残念ながら今の僕にとってはレッドオーガ程度、徒手空拳で群れを全滅させてようやく楽しみを見出せる程度の相手でしかない。
早くその更に上位種である『オーガロード』が出現するようになって欲しい物だ。
一番は僕が『召魔の森』や配下のモンスターたちを取り戻す事なのだが。特に僕の配下であるオーガロードの『戦鬼』は、僕でも素の状態での格闘戦を躊躇うような奴なのだ、早くアイツにも会いたい。
「おや、随分と懐かしいのが居るな」
掃討を続けながら進んで行くと、ここに来て今までは出現しなかった新しいモンスターの姿を見つけた。
牛の頭を持つ人型と馬の頭を持つ人型、『牛頭』と『馬頭』だ。こいつらは確か『地獄の閂』という木材のアイテムをドロップしたはずだ。
魔法発動にはほぼ寄与しないという特性があったため、霊夢の御払い棒の素材には使えそうにないが、まぁ頑丈な木材ではあるし、何かしらの使い道はあるだろう。
牛頭と馬頭は、今にも僕に飛び掛からんと此方を睨み付けている。が、
「今更お前たち程度が出て来てもねぇ……」
(サンダー・シャワー!)
比較的、洞窟への被害が少ないであろう雷の範囲攻撃魔法で瞬殺だった。
魔法の雷撃が過ぎ去った後には牛頭と馬頭の姿は無く、ドロップアイテムである地獄の閂だけが残っていた。
牛頭と馬頭がそうだが、ゲーム時代にはこんな風に剥ぎ取りナイフを使うまでも無く、倒せばドロップアイテムを残して姿を消すモンスターも存在していたと記憶している。確か妖怪類や神仏系統の敵がそうだったはずだ。
しかし、まぁ判ってはいたが呆気ない物だ。出て来るならせめて、『六道の閂』を落とす『牛頭獄将』や『馬頭獄将』あたりとして出て来て欲しかった。
「もう目新しいのも出てこないだろうし、さっさと終わらせて帰るかな」
ドロップした地獄の閂を回収した僕は、それを片手に足早に洞窟中を回り、ダンジョンの掃討戦を終わらせた。
若干面倒になったので、最奥のレッドオーガの群れも範囲攻撃魔法で消し飛ばしたから、いつもより少し早く終わった位だった。
店に戻ったら風呂に入って寝るとしよう。夜明けまでまだ数時間あるし、店を開ける時間には間に合うだろう。
「おーい、香霖。遊びに来たぜー」
「冷やかしに来たの間違いじゃ無いのか?」
「まぁそう言うなよ。ほら、お土産のキノコもあるぜ、有難く思えよな」
「ああ、助かるよ。そこに置いておいてくれ」
うちの地下ダンジョンのドロップアイテムでもキノコは手に入るが、魔法の森で取れるキノコは独自の物が多いし、魔理沙の持て来る物は質の良い物ばかりなので素直にありがたい。
帰りには牛肉と……暴れキンケイからドロップした鶏肉と卵を持たせるとしよう。毎回牛肉ばかりと言うのも飽きるからな。
「ん? 香霖、何だその板?」
「これかい? これは昨日手に入れた、ちょっと珍しい木材だよ」
魔理沙が目を付けたのは、昨夜牛頭たちからドロップした地獄の閂だった。いや、日付は変わっていたはずだから昨日でも昨夜でも無いか。
まぁどっちでもいいか。そう結論付けて僕は地獄の閂を魔理沙に見せた。
「おう、これは……何だか禍々しい感じの木材だな」
「地獄の閂、と呼ばれるものだよ。地獄樹から削り出された木材だそうだ」
と言っても、これはゲーム内のアイテムだったものだから、実際の物はまた違うのだろうけど。
「地獄ねぇ……何だか縁起の悪い感じがするな」
「頑丈な素材ではあるし、何かの役には立つと思うんだが。マジックアイテムの素材には向かない様だから、使い道は考え中かな?」
「ふーん、そっか」
マジックアイテムに使えないと知ったとたん、魔理沙は目に見えて地獄の閂への興味を失ったようだった。
全く、マジックアイテムに向かなくても使い道は色々あるんだぞ。杖やトンファーに加工して、妖怪や悪霊をぶん殴るとか。
「そういえば香霖。前から思ってたけど、私や霊夢に何か隠している事が無いか?」
ドキッとした。まさか、まさか遂にバレたのか? 僕のサーロインの存在が!
「……あいにく、何の事だかさっぱり判らないのですが」
「香霖に足りないものは嘘をつく能力だな。他にも足りない物ばかりだが」
その後、僕は何とかのらりくらりと魔理沙のしつこい追及を躱していたのだが、後からやって来た霊夢までもが加わり、最後は二人にサーロインの存在がばれ、そのまま昼食として提供する事となってしまったのだった。
「んー、美味しー!」
「おい香霖! こんな美味い物を独り占めしてたなんてとんでもない奴だな!」
「はいはい。お代わりならまだあるけど、貴重な部位には変わらないんだから二人共、良く味わって食べなさい」
「「はーい!」」
やれやれ、結局取っておいたサーロインの在庫は食いつくされ、僕の家での昼食だというのに僕自身はあまり肉にありつけなかったが……まぁ、たまにはこんな日も良いだろう。
自分の作った料理を食べて喜ばれるなんて、前世では出来なかった経験だしね。
今回はサモナーさん成分多めで書いてみました。
転生香霖の戦闘能力ですが、素の状態で鬼と正面から戦って勝てるくらい強いです。
サモナーさんが行く本編でも、鬼から進化して神将となった配下のモンスターと自己強化バフ無しで格闘戦をするくらい強いですからね。
これで魔法や武技なんかのバフでステータスを超強化して来るんだから、全盛期サモナーさんホント強過ぎ。