東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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Q、作者の思う主人公と相性の良さそうなサーヴァントは?

A、長尾景虎かな? 何となく、転生香霖と景虎さんは相性が良い様に感じる。なんでだろうなぁ(棒)


第五十七話 「転生香霖と大英雄の影」

「霖之助さんて、色んな武器を使うんですね」

「うん? まぁそうだね」

 

 ハスターが見つけた洞窟を目指しての移動中、何度目かのスケルトンたちの襲撃を撃破したところで、立香くんが僕の手にする武器を見ながらそう言って来た。

 

 僕が今手にしているのは、『オリハルコンメイス』と『オリハルコンラブランデス』の変則二刀流だった。

 その前にも、立香くんの見ている前で剣や槍、両手斧や大鎌など、色々な武器を使ってスケルトンを倒して行ったのだが、その様子が立香くんの目に留まったようだ。

 

「色々な武器を切り替えて使うのは珍しいかい?」

「ええ、まぁ。カルデアにも武器を切り替えて戦う人は居ますけど、基本的に一つか二つの武器を使うって人が多いですね」

 

 立香くんがそう説明すると、騎乗したジャンヌが補足説明をして来た。

 

「サーヴァントの場合、持っている武装がそのまま『宝具』である事も多いですからね。使わないというより、持ち込めないと言った方が正しいかも知れません」

「『宝具』……か」

 

 『宝具』、あるいは『ノーブル・ファンタズム』。

 英霊の象徴となる切り札と、立香くんは言っていたかな?

 時にそれは英霊の持つ名剣、魔剣の類だったり、英霊の逸話を体現した特殊能力だったりと種類は様々。

 有名どころだと、アーサー王の持つ聖剣『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』だとかが宝具に当たるそうだ。

 

「幻想郷、というか僕の居た世界には無かった概念だね。ジャンヌも持っているのかい?」

「ええ。こちらの世界の私から引き継いだものに加えて、緋炎聖女であるこの私がサーヴァントとして成立した時に獲得したものも所有しています。この子も宝具扱いなんですよ?」

 

 そう言いながら、ジャンヌは騎乗している馬の首筋を撫でた。

 

 彼女が騎乗しているのは、ホース系統の召喚モンスターの最終進化先の一つ、『キングスホース』である。

 僕の場合は進化先として選ばなかったから、その性能や特性は気になるところだ。

 宝具としての名前は『王者の軍馬(キングスホース)』と言うそうだ。

 

「確かライダークラスは、多くの宝具を持てるクラスなんだったっけ? 他にはどんなものを持っているんだい?」

「そうですね……」

「あの、それってオレが聞いちゃっても良いんですか?」

 

 立香くんが少し心配そうにそう訊ねて来る。

 確か、基本的に英霊の真名や宝具に関する情報は隠匿するものだったか。

 まぁ、手の内を隠すのは当然のことではあるが……

 

「別に構わないよ。僕と立香くんは別に敵対していると言う訳では無いし、一応は共闘関係なんだから、情報の共有はしておこう」

「あはは……共闘と言っても、オレは全然役に立ててませんけどね」

「なに、情報提供をしてくれたという時点で、君は既に貢献してくれているさ。何せ、僕はサーヴァントや特異点に関する知識は全く持っていなかったからね」

 

 僕の眼は見ただけで対象の情報を全て看破するが、別に全知である訳では無い。

 その場にあるものと無関係の情報は、どうやったって引き出すことは出来ないのだ。

 その点で言うと、立香くんはただ闇雲にこの特異点内を歩き回るだけでは知り様の無い情報を数多く提供してくれた。

 僕の方が、先に多くのものを貰っている状態なのだ。

 こうして僕が護衛を務めているのは、その対価に過ぎない。

 

「ジャンヌ、立香くんにも君の宝具の説明をしてあげてくれ」

「判りました。 ―――私の持つ宝具は四つ、こちらの私から引き継いだ結界宝具『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』と特攻宝具『紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)』、そして先ほど説明した『王者の軍馬(キングスホース)』と、それから―――」

 

 

 カタカタカタッ

 

 

 ジャンヌが四つ目の宝具の名を口に出そうとしたところで、再びスケルトンの集団が現れた。

 

 話の途中で無粋な。

 さっさと片付けて続きを聞こうと思い、範囲攻撃呪文で纏めて消し飛ばそうとすると、それをジャンヌが手で制して来た。

 

「丁度良いので、任せて貰えますか? 四つ目の宝具の実演を見せましょう」

「ふむ、そう言う事なら……立香くんも構わないかい?」

「はい。 ……けど、一人で無茶しないで下さいね?」

「ふふっ、ええ、気を付けます。けど、そのセリフが世界一相応しいかも知れない人が隣に居ますよ?」

 

 立香くんの「無茶しないで」と言う言葉に対し、ジャンヌは僕に目を向けながら笑っていた。

 おかしいな? 僕は無理も無茶も無謀もしない主義なんだが。

 ちょっとお互いに認識の違いがあるのでは? と思ったが、それを問いただす前にジャンヌはスケルトンの群れへと突貫して行ってしまった。

 

 ジャンヌの主武装である槍の穂先を持つ旗を真っ直ぐに構え、ジャンヌ自身や騎乗しているキングスホースから炎が巻き起こる。

 それらは断続的な爆炎と衝撃波を放ち、その勢いに更に後押しされるように加速して、ジャンヌは敵陣へと突っ込んだ。

 

 

「『爆ぜ轟け、激震の穂先(デトネーション・マキシマム・チャージ)』―――ッ!!!」

 

 

 着弾と共に天を衝く様な火柱が立ち、轟音と振動が周囲に広がる。

 ジャンヌを中心に炸裂した爆炎は、津波の様に僕と立香くんの居る辺りまで押し寄せて来た。

 

「おっと」

 

(((ウィンド・シールド!)))

(ミラーリング!)

 

 殺到する炎の津波を風の防壁で防いでいると、やがて爆炎が晴れて中から変わらぬ様子のジャンヌが姿を現した。

 

「―――これが私の第四宝具、『爆ぜ轟け、激震の穂先』です。いかがでしたか?」

「いや、いかかがも何も……とりあえずジャンヌ、僕はともかく立香くんが余波で怪我をするとか考えなかったのかい?」

「……あ」

 

 おおい! 何も考えて無かったのかよ!?

 大丈夫か、この聖女? 考え無しで突っ込み過ぎでは無いだろうか?

 

「……キースにだけは言われたくないです」

「いや、何も言っていないんだが?」

「心の中では言っていたでしょう? 判るんですよ、そう言うの」

 

 どうして誰も彼も人の心を容易く読んで来るのだろうか? そんなに僕って判り易いかなぁ?

 

「話を戻しますが、私は別に立香くんが巻き込まれて怪我をしても構わないなどと思っていた訳ではありませんよ? 立香くんは、キースや邪神たちに守られているから問題無いと判断しただけです」

「それにしたってねぇ」

「逆に聞きますが、神殺しと炎と風の邪神たちに守られている立香くんを一体誰が傷付けられるって言うんですか?」

 

 いやまぁ、確かにこのメンバーで対応しきれない攻撃なんてそうそう思いつかないけどさ。

 それでも一言くらい、突撃前に僕や立香くんに声を掛けてくれても良かったんじゃないかなぁ?

 

「あの、霖之助さん。俺は気にしてないから大丈夫ですよ?」

「そうかい? 文句があるなら遠慮せず言ってくれて良いんだよ? ある意味召喚主である僕の監督不行き届きみたいなものなんだから」

 

 立香くんの言葉に僕がそう返すと、立香くんは笑って首を振った。

 

「いいえ。ジャンヌさんがこちらへの被害を気にしていなかったのは、霖之助さんが対応してくれると信頼しているからだと感じましたから」

「……そうかい」

 

 一歩間違えば、と言うより僕が居なければ確実に死んでいただろう余波を撒き散らした相手にもそう言えるのか、立香くんは。

 何と言うか、底抜けのお人好しだな、立香くんは。

 彼がこんな人柄だから、沢山の英霊たちが立香くんに力を貸してくれているのかもしれないな。

 

 ふむ……なら、僕もジャンヌの大雑把な行動のお詫びに何か役立つ者を渡しておくか。

 

「……立香くんはそう言ってくれるが、ジャンヌの召喚主として僕は何かお詫びしたいって思っている」

「そんな、お詫びなんて良いですよ。霖之助さんが居なければ、オレはいつスケルトンたちに倒されててもおかしくなかったんですから」

「まぁまぁ、あくまで僕の気持ちの問題だから、お詫びとしてこれを受け取ってくれ」

 

 遠慮する立香くんへ、僕は半ば強引にお詫びの品を渡した。

 

「あの、これは?」

「元々あった『炎の精のランプ』と言う物を即席で改良した『緋炎のランプ』と言う物だ。きっと役に立つだろう」

 

 ランプのデザイン自体は、人里で普及している量産型の『炎の精のランプ』と同じだ。

 だが、立香くんに渡した物は台座を『涅槃の閂』、ガラス部分を『封神のフラスコ』、金具部分を『オリハルコン合金』で作成し、燃料部分に『火結晶』と『魔結晶』、『星結晶』を使用した上でクトゥグアの眷属である『炎の精』の統率個体『フサッグァ』を宿らせた特別製だ。

 更にそこへ、立香くんに手渡す際に『緋炎聖女の札』も組み込んである。

 これならば、人理を取り戻すという戦いに臨んでいる立香くんにも十分役立ってくれるだろう。

 

 ランプを見たジャンヌが思いっきり顔を引きつらせているのが気になったが。

 

「えっと、良いんですか? 何だか物凄い物に感じられるんですけど、今だって助けられてばかりのオレが貰ってしまって」

「なに、道具と言うのは必要としている者に使って貰うのが一番だよ。遠慮なく受け取りなさい」

「そうですよ、立香くん。 ……先ほどは、配慮が足りず申し訳ありませんでした。この失態はこれからの戦いで雪いでいきますので、よろしくお願いしますね?」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

 ジャンヌが謝罪して頭を下げ、立香くんもつられて頭を下げている。

 こんな状況だというのに、妙に平和だなぁと感じてしまう光景であった。

 

「さて、それじゃあそろそろ移動しよう。いい加減、ヘラクレスの影も待ちくたびれている頃だろうからね」

「霖之助さん、楽しそうですね?」

「ああ、遠足前の小学生の気分だね!」

 

 

 

 幸か不幸か、その後はスケルトンたちの襲撃に遭遇する事も無く、スムーズに洞窟前へと辿り着けた。

 そして洞窟前には………影、あるいは黒い霧の様な物を纏った、巌の巨人が佇んでいた。

 能力で確認するまでも無い、ヘラクレスのシャドウサーヴァントである。

 

「ようやくご対面できたな。ジャンヌ」

「判っています。手出し無用、ですね?」

「ああ、当然だとも。クトゥグアとハスターは立香くんを頼むよ」

『了解』

『任せて~』

「あの、本当に一人で行くんですか? 霖之助さん」

「ああ、こればっかりは性分でね。 ――行って来るよ」

 

 心配そうに背中に声を掛けて来る立香くんに軽く腕を上げて応え、掛けていた眼鏡を外しながらヘラクレスの影と対峙した。

 

『■■■■■―――』

「……ハハッ」

 

 こちらの接近に気付いたヘラクレスと目が合い、思わず笑い声が出るのと同時に背筋が震えた。

 これは確かに劣化しているのだろう。間違いなく僕より弱いと言える。

 だが、それでも目の前に居るのはあのヘラクレスなのだ。

 理屈では無く本能、あるいは僕の中の獣が喜びと共に唸り声を上げたのを感じた。

 

 そしてそれは、ヘラクレスも同じだった。

 

『■■■■■■■■■―――――ッ!!!』

「シャァァァァァァァッーーーーー!!!」

 

 言葉などもはや不要。

 ここからは獣の様に戦うのみ。

 狂気と共に、打ち込め!




善意100%チートアイテムを渡して行くスタイル。
まぁ無双出来るほどの性能では無いから、原作ブレイクは起こらない。はず……


『緋炎のランプ』

クトゥグアの眷属である炎の精の統率個体『フサッグァ』が宿り、英霊召喚の呪文の呪符『緋炎聖女の札』が組み込まれている。
魔結晶類が組み込まれている為、使用者の魔力消費無しで利用することが出来る。
『緋炎聖女ジャンヌ・ダルク』と『フサッグァ』、『フサッグァ』の部下である大量の炎の精を自動召喚してくれるチートアイテム。



『フォーマルハウトの大火:A+++』

敵対者に災いと呪詛を齎す、炎の邪神クトゥグアの権能。
元ネタはクトゥグアと関わりが深いとされる恒星『フォーマルハウト』から。

敵対陣営は全ステータスが低下した上で、解除不能の呪詛の炎に焼かれ続ける事となる。
クトゥグアを配下とする森近霖之助は、このスキルを非常に高ランクで所持しているが、基本的に使う事は無い。
何故ならば、このスキルの大本である邪神クトゥグア自身が常に傍らにいるため、自分で使用する必要が無いからである。


『アルデバランの追い風:A+++』

味方に祝福と加護を齎す、風の邪神ハスターの権能。
元ネタはハスターとかかわりが深いとされる恒星『アルデバラン』から。

味方陣営の全ステータスが上昇し、かつ矢避けに類する加護を与える。
『フォーマルハウトの大火』同様、霖之助は基本的に使用しない。



『緋炎聖女:A++』

緋炎聖女の英霊、ジャンヌ・ダルクが持つ特殊能力。
現界中は継続的に味方陣営を癒し続け、魔力を回復し続ける。


『魔力放出(炎):A+』

緋炎聖女ジャンヌ・ダルクは森近霖之助の持つ『召喚術を操る程度の能力』に組み込まれた存在であり、霖之助の持つ技能を一部共有している。
このスキルは霖之助の持つ『火魔法』スキルとリンクしており、無詠唱で火魔法の呪文と同等の効果を発動することが出来る。



『爆ぜ轟け、激震の穂先』
ランク:A+ 種別:対軍宝具

デトネーション・マキシマム・チャージ。
元ネタはサモナーさんの持つ『馬上槍』スキルの武技『マキシマム・チャージ』と『火魔法』の攻撃呪文『デトネーション』。
デトネーションとは『爆轟』と言う意味であり、名前の通り爆炎と衝撃波を撒き散らしながら敵陣に突っ込む突撃宝具。
騎乗状態で無くとも、と言うか素手でも発動可能だが、騎乗状態の『A+』を最高威力として、非騎乗状態なら『A』、素手でなら『A-』と言った具合にランクと威力が下がって行く。

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