東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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なろうの方で新作「現実世界にダンジョンが出来ましたが、そんな事より今日もペットたちの食費を稼がなくちゃなぁ……。」の連載を開始しました。

二次創作では無く、オリジナル作品だからこそ吐き出せる妄想とか設定とかってありますよね。


第六十一話 「転生香霖と魔術師の別れ」

 自分でやっておいてなんだけど、あっけないほどの瞬殺で巨神たちを消し飛ばしてしまった。

 

 『星間飛翔形態』は、あくまで他の天体を目指して宇宙空間を飛行する為の形態である為、戦闘能力とかはあまり考えていなかったんだが……よくよく考えてみれば、鉛玉を音速程度で飛ばす拳銃があれだけの殺傷力を持っているんだから、邪神たちやケラウノスを取り込んだ状態のドラゴンが光速以上の速さで飛翔すれば、絶大な破壊力を発揮するのは当然の話か。

 

 いやぁ、周りに被害が出ないよう注意して、突進を直撃させるのではなく最小限の余波だけでダメージを与えるように飛んで本当に良かった。

 正に慧眼と言えるだろう。

 余波だけで粉微塵に消し飛んだのは、正直ちょっと驚いたけど。

 

 

 きちんと手加減をした自分自身を褒め称えていると、消し飛んだ巨神の写身の居た辺りから黄金の光を放つ何かが出現した。

 ドロップ品かな? 解体師匠が頑張ってくれたのかもしれない。

 

 近づいて確認すると、それは黄金の光を放つ、古めかしい金属製に見える杯であった。

 能力で判明した名称は『聖杯』。

 用途は『あらゆる願望を叶える』、か。

 

 そうか、これが立香くんの言っていた万能の願望器と言う奴か。

 ふむふむ、なるほど……あれ、これ頑張ったら作れそうじゃないか?

 というか、機能的に魔理沙のミニ八卦炉とかなり似通った部分があるんだが……これ下手すると、その内ミニ八卦炉が願望器として機能し出すんじゃ……。

 

 ………後で何かしら理由をつけて、ミニ八卦炉を整備しておいた方が良いかも知れないな。

 

 

 予想外の事実に驚いたが、今は置いておいて立香くんたちの元に戻るとしよう。

 星間飛翔形態のまま、僕は翼脚からの軽い噴射で方向転換をして、二人の元へと戻った。

 

 

『やぁ、戻ったよ。待たせて悪かったね』

「いえ、全然待ってませんよ? と言うかなんですかあれ? 何か、一瞬で決着がついて良く判らなかったんですけど……」

『あれはまぁ……要は体当たりだよ、体当たり。と言っても、直接ぶつかるんじゃなくて、通過した時の余波で蹴散らした形だけれど』

「余波だけで爆散させたんですか……」

『あれでもかなり手加減してたんだけどね? 手加減無しだと、この冬木の街くらい簡単に消し飛んじゃうから』

「ええ……」

「二人共、そんな無駄話で時間を潰していて良いんですか? 立香くんの体、消えて行っているみたいですよ?」

「え? ……うわっ、本当だ!?」

『おやおや、どうやら目覚めの時みたいだね』

 

 ジャンヌが言う様に、立香くんの体が徐々に薄らいで消え始めていた。

 肉体ごとこの特異点に来ていた僕や、この特異点内で召喚したジャンヌと違って、立香くんは夢を見るという形でこの特異点へと来ていたのだ。

 能力を使って立香くんの体と聖杯を確認したところ、どうやらこの聖杯が立香くんを呼び寄せたらしい。

 

『参ったな。立香くんには色々と話しておきたい事があったんだが、時間が無い様だね』

「みたいです。足の先から消えてるから、幽霊にでもなったみたいだ……」

『はっはっは。確かに足が無いのは幽霊の特徴だね。もっとも、知り合いの亡霊の姫君はきちんと足があるんだけど』

「それを言ったら、英霊である私も幽霊みたいなものですけど、きちんと足はありますよ?」

 

 そう言ってジャンヌは、騎乗したままグリーブに包まれた自分の足を見下ろす。

 ……そう言えば、足の無い典型的な幽霊よりも、足の有る亡霊だの英霊だのの方が、周りには多かったな。

 

 まぁそれはそれとして、立香くんが完全にこの特異点から退去する前に、伝えるべきことを伝えておかないとね。

 

『立香くん、あの女神たちはかつて僕が討伐した存在だ。目的はおそらく、と言うか間違いなく僕への復讐だろう。巻き込んでしまったようで悪かったね』

 

 そう言って僕が頭を下げると、立夏君は首を振ってそんな事は無いと否定した。

 

「いいえ、巻き込まれたなんて思ってませんよ。オレがこの場所に来たことには、ちゃんと意味があったと思ってますから」

『そうかい? 君がこの特異点で得られたものなんてあまり無いと思うけど』

「そんな事ありませんよ。霖之助さんからこのランプを貰いましたし、それにこうして霖之助さんと縁を結べたこと自体に価値があると思ってますから」

 

 そう言って立香くんは、腰から下げた『緋炎のランプ』に手を添えた。

 それにしても、僕と縁を結べて事が価値ある物、か。

 個人としても、商売人としても、冥利に尽きる事を言ってくれるじゃないか。

 

 クツクツと腹の底から笑い声が出て来る。何と言うか、立香くんは相手の望む言葉を自然と言えてしまうんだね。

 

『クックック、嬉しい事を言ってくれるね。立香くん、君、よく人たらしだ、なんて言われないかい?』

「実は結構。そんな風に自分の事を思った事は無いんですけどね」

『無自覚な所も含めて才能だよ。是非とも香霖堂の営業としてスカウトしたいくらいさ』

 

 割と本気でそう思っているが、実際にスカウトするつもりは今のところない。

 何せ、立香くんもまた、現在進行形で戦っている真っ最中なんだからね。

 

『さて、では迷惑をかけたお詫びにこれを渡しておこう。君の所で役立ててくれ』

「聖杯!? 良いんですか、そんな簡単に渡してしまって?」

『今の僕には、特に必要の無いものだからね。それにカルデアでは『聖杯転臨』とか言う、サーヴァントを強化する手段の一つとして、これを使うんだろう? なら、君達の戦力アップに使ってくれ』

 

 僕の手の中で浮かんでいた聖杯が、僕の意思に従ってふわふわと飛んで行き、そのまま立香くんの手に収まる。

 

「……ありがとうございます。必ず役立てて見せます」

『ああ、君の道行きに幸運がある事を願っているよ』

 

 と、そんな事を話していると、いよいよ立香くんの体の消滅が加速する。

 後三十秒もしない内に、立香くんはこの特異点から完全に退去するだろう。

 その事を自覚した立香くんは、最後に一つ、質問をして来た。

 

「霖之助さん! また、会えますか?」

『ああ、もちろんだとも。それこそ、君風に言えば縁が結ばれたのだからね。また会おう、立香くん』

「はい!」

 

 元気の良い返事を残して、立香くんはカルデアへと退去して行った。

 彼とはいずれ、また会う事となるだろう。

 その時は、きちんと彼が欲しがりそうな商品を取り揃えておかないとね。

 

 周囲から地響きが聞こえ始め、ホワイトナイツで強制的に青空に変えられた空が、端の方から崩れる様に消えて行く。

 どうやら立香くんが去った、あるいはこの特異点から聖杯が無くなったのを皮切りに、特異点自体が消滅を始めたようだ。

 

『――さて、僕はそろそろ行くが、ジャンヌはどうする?』

「そうですね……私はカルデアを尋ねてみようかと思います。まだ立香くんを宝具に巻き込みかけたお詫びをしきれていませんからね」

『そうかい』

「キースはあの女神たちを追うのですか?」

『まぁね、向こうも僕を待ち構えて色々準備しているだろうし、精々歓迎して貰うとするよ』

「……やっぱり、態と逃がしたんですね。あなたなら逃げる隙も与えずに全滅させられたでしょうに」

 

 ジャンヌの言う通り、ツィツィミトルたちを逃がさずその場で仕留める事は出来た。大鎌を振るうまでも無く、連装呪文を叩き込めばそれだけで妨害出来ただろう。

 それをしなかったのは、彼女らの本拠地を見付けたかったからだ。

 僕を罠に嵌めるにしろ、僕を叩き潰すだけの戦力を整えるにしろ、その準備をする為の本拠地をどこかに作っているはずだ。

 それを見つけ出す為の手掛かりとして、ツィツィミトルたちの存在はこの上ない道標となる。

 彼女たちの後を追えば、そこに辿り着けるはずだ。

 

「幻想郷には帰らないのですか? 皆心配しているでしょうに」

『写身を残しているから、大丈夫じゃないかな? それに、ツィツィミトルたちが幻想郷にちょっかいをかけて来たりするのは嫌だから、帰るならきちんと全滅させてからにするよ』

 

 もしツィツィミトルたちが、用意した戦力でもって幻想郷に攻め入るようなことになれば、その時は写身の方から僕自身を召喚して即時帰還するつもりだ。

 出来れば幻想郷を戦場にはしたくないから、さっさとケリをつけたいものだな。

 

 そんな事を考えている内に、いよいよ特異点の崩壊が直ぐ傍まで迫って来た。

 

『もう時間だね、カルデアに行くなら僕が能力で送って行くけど?』

「そうですか? ではお願いします」

『了解。じゃあ、立香くんに宜しく伝えておいてくれ』

 

 『召喚術を操る程度の能力』を使い、立香くんの持つ緋炎のランプの元へとジャンヌを召喚する。

 これでこの特異点でするべきことは全て終えた。僕らもそろそろ出発するとしよう。

 

『クトゥグア、ハスター、そろそろ出発しようか』

『承知しました』

『ガイドは任せて! あの女神たちの行方は、きちんとマークしてあるからね』

『ああ、頼んだ』

 

 女神たちの追跡をハスターに任せて、僕はドラゴンとしての時空や次元に介入する力で世界を渡る。

 僕らが去るのと同時に、冬木の特異点は完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 後日、ノウムカルデアでは、マスター・藤丸立香の提案による英霊召喚が行われていた。

 

「先輩、召喚の準備が整いました。いつでも行けます」

「うん、ありがとうマシュ」

 

 きっかけは、藤丸立香のマイルームで発見された材質不明のランプから、異常なまでに高まった魔力反応が感知された事だった。

 ある日目覚めると、マイルーム内のベッドの枕元に聖杯と共に置かれていたこのランプは、解析の為にダ・ヴィンチ工房へと預けられていたのだが、それが突如として活性化し、活性状態のランプを見た藤丸立香が、英霊召喚を行うべきだと提案したのだ。

 

『藤丸君、君の言う事だから信じるけど、十分注意はするんだよ? そのランプに関してはこの私でさえも、判らないことだらけなんだから』

「大丈夫だよ、ダ・ヴィンチちゃん。来てくれるのは、きっとジャンヌさんだと思うから」

『ふむ……こちらの人類史に刻まれたジャンヌ・ダルクと統合された、異なる世界のジャンヌ・ダルク。藤丸君が言う所の緋炎聖女ジャンヌ・ダルクか。実に興味深い』

『私としては、そんなもの夢落ちだと思って見なかった事にしたいがね! 私のゴルドルフ・アイが、そのランプはとんでもなくヤバイ代物だと言っているのだよ! 時計塔でもここまで強大な魔力を感じる礼装はお目にかかったことが無い。 ……本当に大丈夫なのかね?』

 

 スピーカーを通して三人の声が聞こえる。

 カルデア所属のサーヴァントである『レオナルド・ダ・ヴィンチ』と『シャーロック・ホームズ』、そしてカルデア新所長の『ゴルドルフ・ムジーク』だ。

 

『大丈夫! なにせ、天才であるこの私が万全の準備を整えたのだからね。藤丸君、さっさとやっちゃって!』

「了解、行きます!」

『ちょ、まだ心の準備が!』

 

 ゴルドルフの情けない声が響くが、それを無視して藤丸立香は召喚サークルの中心に緋炎のランプを置く。

 途端に召喚サークルが回転を始め、光の中から藤丸立香取っては見覚えのある人物が、騎乗したままの状態で現れた。

 

 

 

「サーヴァント・ライダー。『緋炎聖女ジャンヌ・ダルク』、参上しました。これからお世話になりますね、立香くん」

「はい、ジャンヌさん!」

 

 思っていた以上に速い再会に、藤丸立香は笑顔を浮かべた。




次回予告


第三の異聞帯「シン」を攻略し、一時の休息を取っていたカルデア。

そんな中、突如として日本東北地方の一角で巨大な特異点が新たに観測された。

調査の為にレイシフトを行ったカルデア一行がそこで目にしたものは、巨人や魔物の軍勢、天使や悪魔たちに襲われる城郭都市と、それを撃退する侍たちであった。


次回『剣豪集結戦場 葦名 神々の帰還』


隻狼コラボ、始まります。
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