東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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お久しぶりです。


第六十四話 「転生香霖に会うために」

 森近霖之助に召喚されたというサーヴァント、『葦名 弦一郎』の案内の下、立香たちは森の中を進む。

 その道中、立香は弦一郎からこの特異点『葦名』の事や戦いの様子、そして霖之助の近況など様々な話を聞いていた。

 

 

 

 

「―――そうですか、霖之助さんが元気そうで何よりです」

「ああ、つい先日も気分転換と称して、襲い来る巨人たちを竜の姿で迎え撃ち、その全てを組打ちで首を圧し折って仕留めていた」

「あはは、本当に相変わらずだなぁ……」

 

 容易に光景が想像出来る話を聞き、立香は苦笑いをしながら頬を掻いた。

 

 

 弦一郎の話によると、この特異点『葦名』にサーヴァントが召喚されたのはおよそ二週間ほど前であるそうだ。

 最初に十数騎のサーヴァントが召喚され、その中に『葦名』所縁のサーヴァントがおり、その縁で弦一郎ら葦名出身の英霊たちが召喚されたらしい。

 現在は、最初に召喚されたサーヴァントたちと葦名英霊のサーヴァントたちが協力して、女神勢力の迎撃に当たっているという。

 相互の戦力は現在、葦名側が優勢であるそうだ。

 

 

「―――とは言え、我らサーヴァント以上に活躍しているのが、我らが主である森近霖之助殿なのだがな」

「まぁ、そうでしょうね。彼は戦士としてだけでなく術師としても超一流ですから」

「まったくだ。敵勢全てに対して痛痒を強いる術、自陣に有利な地形を作り出す術、自陣を支援し強化・回復する術……どれもこれも強力で、生前あの方が味方に居れば。と、思う事も多い」

「ああ、判ります。ただでさえ戦士としての実力が飛び抜けているのに、術師としての万能さまで持ち合わせていますから、味方にすればこの上なく頼もしいのですよね……敵からすれば悪夢でしょうけど」

「くく、違いない」

 

 弦一郎とジャンヌは、共に霖之助に召喚されたサーヴァントだ。

 ジャンヌは現在立香と契約している状態だが、共に霖之助の性格や戦い方を知っているという点では共通している。

 共通の話題がある事で話も弾み、弦一郎と立香たちは徐々に打ち解けて行った。

 

「ほう、貴殿がかの有名な足柄山の金時童子であったか……共に戦えるのは光栄だが、その装いは一体?」

「おうイカすだろ? オレッちのゴールデンコスチュームだ! 何せバイカーでライダーだからな。アンタもどうだい?」

「ふむ……時代も地域も異なる場所に呼び出されるのが我らサーヴァント、その場に合った装いに身を包む事も時には必要か……」

「はっはっは! そんな堅く考えずに、現代の文化を楽しむって考えりゃあ良いさ。アンタだって、自分が生きたよりもずっと先の世界の事は、多かれ少なかれ気になるだろう?」

「ふむ、確かに」

 

 同じ日本の出身という事で、金時の話を聞きたいらしい弦一郎と、そんな彼に現代服を勧める金時。

 真面目な弦一郎の受け答えに快活に笑うアーラシュと、男性サーヴァントたちはあっという間に仲良くなっていた。

 そんな三人の様子を見て、立香は自分も話に混ざりたそうにソワソワしていた。

 

 

「……ねぇ、移動用の魔物とやらの所へはまだ着かないの?」

 

 

 そんな中、弦一郎に対して不機嫌そうに質問したのはアヴェンジャーのサーヴァント、『ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕』であった。

 彼女は本来今回の特異点攻略に参加する予定は無かったのだが、当日強引に同行を申し出て来たのだ。

 

 カルデアに緋炎聖女ジャンヌ・ダルクが召喚されて以来、ジャンヌ・オルタは何かと張り合う様に模擬戦を申し込んだりなどしていたが、結果は全戦全敗。

 ジャンヌ・オルタ自身も戦闘力の高い方であったが、カルデア所属のサーヴァントの中でも最上位に位置する者達と日々対等に戦い続ける緋炎聖女相手では分が悪かった。

 

 直接的な戦闘では自分の方が不利だと悟ったジャンヌ・オルタは、それ以降緋炎ジャンヌの行く先々に付き纏い、緋炎ジャンヌ以上の活躍をして見返してやろうと躍起になっていた。

 今回の強引な同行も、特異点攻略時に緋炎ジャンヌ以上に活躍して、緋炎ジャンヌを悔しがらせようと画策してのものである。

 

 ……まぁ、そんなジャンヌ・オルタの姿を、緋炎ジャンヌは微笑ましく思っているのだが。

 

 そんなジャンヌ・オルタの質問に対し、弦一郎は生真面目な態度のまま返した。

 

「もう直ぐだ、オルタ殿。そこの茂みを超えた先に、同行者と共に魔物が待機している」

「同行者って?」

「俺と同じく、霖之助殿に召喚されたサーヴァントの一人だ。と言っても、召喚されたのは俺よりもかの御仁の方が先なのだがな」

 

 立香質問に、弦一郎がそう返す。

 

 茂みをかき分けながら進むと、開けた先には見上げるほど大きな鳥と、その傍らに佇む白い女武者の姿があった。

 

「おや、戻られましたか弦一郎殿。無事にカルデアの方々を見付けられたようですね」

「ああ、今戻った……『巴殿』」

 

 名前を呼ぶ際、何故か少し言い淀む弦一郎。

 その事も少し気になったが、それよりも立香は自分も良く知るサーヴァントの姿をした女武者に気を取られていた。

 

「あの、貴女はもしかして……」

「ええ、私は貴方の想像通りの経歴のサーヴァントですよ」

 

 みなまで言わずとも、立香の言いたい事を大体理解したそのサーヴァントは、緋炎ジャンヌに目を向けてから自己紹介をした。

 

 

「初めまして、カルデアのマスター藤丸立香殿とそのサーヴァントの方々。私はサーヴァント・セイバー『剣豪降臨 巴御前』。そちらのジャンヌ殿と同じく、キースに召喚された英霊です」

 

 

 そう言って柔らかく微笑んだ顔は、立香の知るアーチャーのサーヴァント『巴御前』と同じ物だった。




なろうでの毎日投稿も板について来たので、ぼちぼちこちらも進めて行きます。

次回辺りには、ぐだ男と転生香霖を再会させる予定です。

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