東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~ 作:騎士シャムネコ
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「さて……」
魔理沙が帰って行った所で、魔理沙が持って来た鉄くずの中から一本の古びた剣を手に取る。
ミニ八卦炉の修復の代わりに僕が要求したこの剣。見た目は酷く汚れているが、その実態はとんでもない逸品だ。
その名を『草薙の剣』、紛れも無い本物の神器である。
かつて僕は、元々持っていた『未知のアイテムの名称と用途が判る程度の能力』でその正体を見抜いた訳だが、前世の能力を取り戻し、元々の能力が前世で取得した『識別』スキル、『鑑定』スキル、『看破』スキルなどと融合した今となっては、以前とは少々違った情報が僕の目には映っていた。
【武器アイテム:剣、刀】草薙の剣 品質X レア度‐
AP? M・AP? 破壊力? 耐久値?
魔力付与品 属性?
八岐大蛇の尾より出でし神々の霊剣。別名を「天叢雲剣」。
使用者の力を得て顕現する。素材の全てが緋々色金製。
『天下を取る程度の能力』を持つ、天地を平定する権威の象徴。
その刃は決して朽ちる事無く、相応しき者に祝福を与える。
僕の読み取った情報がこれだ。
内容的には、ゲーム時代の神仏の化身系統の敵が落とすレプリカの神器に近い物だろう。
とは言っても、ゲーム時代のレプリカ神器と違い耐久値の回復が不可能であるという制約は無い為、より正確に言えば僕が持つ唯一のオリジナル神器である『グレイプニル』が最も近いと言える。
このグレイプニルもまた、神器の名にふさわしいトンデモ性能を持っているのだが、まぁその話は後で良いだろう。今は草薙の剣が本題だ。
「しかし、相応しき者に祝福を与える。か、どういう条件なんだろうね?」
この剣の使い手として有名なのは、須佐之男命と日本武尊命の二名だ。
両者の共通点と言えば、やはり血縁関係にある事だろうか?
しかし、この剣は須佐之男命に討伐された八岐大蛇の尾から出て来た物である。敵対者の血縁の者に祝福を与えると言うのもおかしな話だ。
「あるいは、単純に神々に連なる存在であることが条件。とかか?」
この条件ならばある程度の説明はつく。そもそも、読み取った情報の中にはっきりと記されているのだ。この剣は『神々の霊剣』であると。
であれば、この剣は神、あるいは神の血を引く者が振るってこそ真の力を発揮するのだと考えられる。
「だとしたら、僕には関係の無い話だったな」
前世で神殺しの称号を得はしたが、今生の僕は正真正銘ただの半妖だ。
人間方の先祖に神々の血を引く者が居たと云う事は無いし、妖怪の方の先祖に神として祀られた存在が要る訳でも無い。
そもそも僕の両親は普通の人間だった。生まれつき銀髪に金の瞳を持っていたことから妖怪の子と言われ続け、実際この見た目の年まで育つと、それ以降老いることが無かった為半妖だと発覚したのだ。
僕の妖怪部分が何の妖怪であるかは、僕自身ですら把握していないが、正直興味が無いしどうでも良いと思っている。
ただ大雑把に、先祖返りか取り換え子(チェンジリング)だったのだろうと結論づけているだけだ。
話が逸れた。本題に戻るとしよう。
問題は、僕自身はこの剣の真の力を発揮出来ない可能性が高いという事だ。
「まぁ、それならそれで構わないが」
至高とも言える武器が目の前にあるのに、それの力を発揮することが出来ないというのは、正直苦々しくはあるが、実際問題として別に使う武器には不足していないので、問題は無いとも言える。
様々な形に変化する万能の武器『レーヴァテイン』、『ムシュフシュロード』の牙から作った『怒炎蛇竜神の小剣+』、投げても手元に戻って来る必中の槍である『グングニル』に、ゲーム時代に友人の鍛冶職人プレイヤーに作って貰った『オリハルコン合金』製の武装『オリハルコンランス』、『オリハルコンメイス』、『オリハルコンぺレクス』に『オリハルコンラブランデス』、『マハラジャアシパトラ』の翼から作った『神鋼鳥の刀+』に破滅の女神『ツィツィミトル』を両断した『虚無竜のデスサイズ+』などなど。
そして、ある意味最も凶悪な能力を持つ『グレイプニル』。
前世から引き継いだ武器たちに不足は感じていないし、寧ろ幻想郷では過剰火力になる事の方が多いだろう。
それにあまり強力過ぎる武器を使っても、それを振るうに足る強敵が居ない現状では、戦いが温くなるばかりでデメリットの方が大きい。
死力を尽くしてなお及ばない様な強敵が居るのならともかく、現状直ぐに戦える相手で一番強いのがレッドオーガの群れだからなぁ。せめてオーガロードの団体ならまだましなんだが。
「何にせよ、神器がこんな見る影もないほど薄汚れたままなのは居た堪れないな」
とりあえず修復技能で耐久値を全快させてから、洗浄や細かな整備をするとしよう。
そう思い、修復技能を使うために剣に魔力を注いだところで変化が起きた。
「何だ? これは……魔力が吸い取られている?」
そう口にしている間にも、手に持った草薙の剣は僕からどんどん魔力を吸い上げて行く。
その様は、僕には極度の飢餓状態から目の前に出された食料に無我夢中で食らいついているかの様に感じられた。
一度手放した方が良いのだろう。しかし、僕には剣の起こした一連の現象に、どこか生物的な必死さを感じられ、どうにも手放す気にはなれなかった。
剣は現在進行形で膨大な魔力を僕から吸い上げている。しかし、前世に置いて全てのプレイヤーの中で最も高レベルな魔法職であった僕の保有魔力の総量から見れば、吸い上げられている魔力はまだ危険域と言うほどでもない。
それに、いざとなれば相手の魔力を吸収する『禁呪』スキルの呪文『エナジードレイン』を使えば、逆に剣から魔力を奪い返す事が可能だろう。
故に、僕はもうしばらくこの状況を静観する事にした。
「……収まって来たか?」
大体、僕の保有魔力の三分の一ほどを吸収した辺りで、剣が魔力を吸い上げる勢いが落ち着いて来た。
かなり吸い取られたと言って良い量だが、この程度なら『スラー酒』を飲めば十分回復出来るし、単純な消費量で言えば一度の発動で最大保有量の半分を持って行く『英霊召喚』の方が消費量が多い。問題無しと言って良いだろう。
それからしばらく穏やかに魔力を吸い取られ続け、僕の魔力の四割ほどを吸った所で剣は吸収を止めた。
すると、剣は独りでに浮いて僕の手を離れ、光を放ってその姿を変えた。
「……これは、驚いたな。まさかこんな事になるとは」
剣の放っていた光が収まると、そこには目を閉じた一人の少女が佇んでいた。
身長は霊夢と同程度だろうか? 緑と白の着物を身に纏っている。
髪は緑銀とでも言うべき不思議な色合いをしており、側頭部には人外の証たる二本の白い角が生えていた。
だが、そんな見た目以上に印象的なのが、彼女が全身から放つ莫大な神気である。
剣の姿から変化したこの少女は、間違いなく神霊の類だ。
(ふむ、広義的な意味での付喪神。差し詰め『女神・草薙の剣』と言った所か)
日本における八百万の神々とは、森羅万象に神が宿るという概念だ。
元から神器として名高く、信仰の対象となっていた草薙の剣が神霊と化しているというのは、別段おかしな話では無い。
だがそう考えると、逆に何故草薙の剣が今まで鉄くずに紛れて薄汚れている状態に甘んじていたのかという疑問が出て来るが、その辺りの理由はこの剣が幻想郷に存在している事と、外の世界に形代として別の草薙の剣が祀られている事が関係しているのかもしれない。
そう考察していると、少女の姿となった草薙の剣が閉じていた目を開け、一瞬の迷いもなく真っ直ぐに僕を見つめて来た。
その瞳は、僕と同じ金色の瞳だった。
「―――この世に生まれ出でて幾星霜。もはや理想の担い手に巡り会う事など永劫無いと諦めていましたが、まさかこのような縁に恵まれるとは」
そう言って彼女は、喜びを噛み締める様に静かに涙を流していた。
僕は、色々と聞きたい事があったのだが、どうにも今話しかける事が無粋に思えて仕方なかった為、黙って彼女の言葉を聞いていた。
「強き方、名前をお聞かせいただけますか?」
「……霖之助、森近霖之助と言う」
「霖之助様……はい、しかとこの胸に刻みました」
僕の名前を嬉しそうに口にした彼女は、涙を拭って僕に歩み寄って来た。
「では、これから末永くお傍に侍らせていただきますわね。旦那様!」
「……はい?」
一瞬言葉が頭に入ってこなかったぞ。なんだ、彼女は今何と言った? 旦那様!?
いや、僕はこの店の店主だし、香霖堂の旦那様と言う意味なら理解出来るが、どう見てもそう言う意味での旦那様では無かったぞ。
「ふふ、随分長くかかりましたが、ようやく理想の殿方と巡り会うことが出来ました。この叢雲、精一杯旦那様にお仕え致しますね」
「待て待て待て、えーと……君の名は叢雲と言うのかい?」
「まぁ! 申し訳ありません。わたくしったら、嬉しさばかりが先走って自己紹介を疎かにしてしまいました」
そう言って彼女、叢雲は僕に謝罪すると、改めて僕に向き合い自己紹介を始めた。
「『都牟刈叢雲』、日の本において最強の剣を自負しております。どうぞご存分にお使いくださいませ、旦那様」
そう言って微笑む彼女を見て、僕は頭を抱えたい気分になった。
また厄介事が増えてしまったなぁ。
と言う訳で、草薙の剣の擬人化キャラとして『都牟刈 叢雲』、登場です。
外見や性格はFGOの清姫を元にしています。そう言えばサモナーさんの配下にも居るんですよね、清姫って言う名前のモンスターが。
個人的にサモナーさんの持つ武器の中で一番強いのはオリジナルの『グレイプニル』だと思います。ゼウスを捕まえるのにも役立ちましたし、縛り上げたら自力での脱出は不可能ですからね。