東方転霖堂 ~霖之助の前世はサモナーさん!?~   作:騎士シャムネコ

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タイトルが地味かなと思い、ちょっと変えてみました。

よろしくお願いします。


第九話 「転生香霖と煙晶竜」

 ニコニコと嬉しそうに微笑む少女が僕を見つめている。

 彼女の名は叢雲。魔理沙から受け取った神器、草薙の剣の神霊だ。

 問題は、この少女が僕の事を旦那様と呼び、仕えると言っている事なのだが、とりあえず理由を聞いてみよう。

 

「あー、叢雲。聞いても良いかな?」

「はい、何なりとお申し付けください」

「何故僕の事を旦那様と呼ぶのかな? それは僕が君の使い手として認められたという解釈で良いのかな?」

 

 出来ればそうであって欲しい。担い手として選ばれた僕が男だったから旦那様と呼んだだけで、女性だったらまた呼び方が違っていたとか言うオチなら大歓迎なのだが。

 だが、僕の言葉を聞いた叢雲は、ぱぁっと顔を輝かせると、嬉しそうに口早に捲し立てて来た。

 

「もちろん、わたくしの担い手として認めたという意味でもございます。しかし旦那様と呼んだのはわたくしが旦那様のご寵愛を賜りたいからに他なりません! 旦那様はわたくしの理想の殿方なのです。剣として生まれた以上、使い手には比類なき強者が望ましく、同時に女として生まれた以上、共にある方は好みの殿方が良いとわたくしは常々考えていました。そんな中で出会ったのが旦那様なのです! 手にしただけで伝わる凄まじいまでの武威、わたくしを顕現させてなお余りある膨大な魔力、そのお体から感じられる懐かしき竜の力、加えてお姿もわたくし好みの美男子と来ればもう! 旦那様とお呼びして生涯仕えるしかありませ―――」

「待て待て、ちょっと待ってくれ! 色々ツッコミたいが気になる一言があった。僕の体から竜の力を感じる、だって?」

 

 放っておいたら延々と続きそうな叢雲の話を割り込んで強引に中断させる。

 言葉の内容は頭の痛くなるようなものだったが、その中に非常に重要な単語が混じっていた。

 

「はい、旦那様のお体からは竜の力を色濃く感じます。差し詰め半人半竜と言った所ですね」

 

 わたくしも竜の特性があるので、竜の力には敏感なのですよ? そう言って彼女は首を傾けて、側頭部に生えた白い角を見せて来た。

 僕が半人半竜だって? 今まで自分の妖怪部分が何なのか分からなかったが、その正体が竜だというのか?

 

「……」

「あの、旦那様。如何なさいましたか?」

 

 僕は叢雲に返事もせずに深く考え込む。

 今まで僕の半妖のルーツは、先祖返りか取り換え子の類だと思い、真相を調べる方法が無い為そのまま放置していたが、半竜であると言うのならそのルーツに心当たりがある。

 

 僕は前世のゲーム時代に竜、と言うかドラゴン達と深い関わりを持っていた。

 名持ちドラゴンと呼ばれるドラゴンの長たちと友誼を結び、数々の称号を得てドラゴンを召喚する資格を得ていたのだ。

 僕の配下たちの中にはドラゴンの召喚モンスターが何体も居たが、その中には一体だけ変わり種が存在していた。

 その名は『ビーコン』。否、真実の名は『転生煙晶竜』。ゲーム内では遥か昔に滅びたドラゴン達の最初の王であり、紆余曲折を経て僕の召喚したドラゴンの体に憑依するという形で現世に復活した存在だった。

 今は召喚出来ないが、僕の『召喚術を操る程度の能力』の延長には僕の配下たちや拠点であった召魔の森が存在している事について、僕は確信を持っている。

 であれば、一応は僕の召喚モンスター扱いであった彼の竜が、一緒に来ている可能性は非常に高い。

 それに、ゲーム時代あのドラゴンが復活するまでの間、僕は知らず知らずの内に転生する前の『煙晶竜』の霊に取り憑かれていた。

 僕が召喚せずとも、自分の意志で召喚と帰還を自在に行えたあの竜が、もし肉体を呼び出せない代わりに霊体だけで僕に憑依しているのだとしたら、その影響で僕の肉体が変化しているかしている可能性は十分にある。

 

「煙晶竜! 居るなら出て来て下さい、煙晶竜!」

「だ、旦那様!? いきなり何を……ッ!」

 

 叢雲が困惑するのも構わず、僕が大声で呼びかけると途端に変化が起きた。

 僕の体から光の粒子たちが飛び出し、それらは渦を巻いて僕と叢雲の間で集まり、やがて形の無い霊体として姿を現した。

 

『……久しいのう、キースよ』

「ええ、お久しぶりです。煙晶竜」

 

 懐かしい名前で呼ばれた、ゲーム時代の僕のプレイヤーネームだ。

 

 そしてやはり居た。その姿はゲーム時代にも目にした事のあるモンスター『ファントム』とよく似た姿であり、ドラゴンの要素は欠片も無かったが、それでも僕には目の前の存在がかつて共に戦った煙晶竜だとはっきり確信出来た。

 霊体であるが故に表情は分からないが、どうにも声を聴く限り煙晶竜はバツが悪そうにしているようだ。

 

『すまんのう、汝とは母親の胎内にいた時から共に居たのだが、今の今まで姿を現さんでな』

「いえ、事情は説明してくれるのでしょう」

『うむ』

 

 驚きの余り声を失っている叢雲を横に、僕は煙晶竜と会話を進めた。

 煙晶竜の話によれば、煙晶竜自身もそうだが未だ召喚出来ない配下達や召魔の森なんかも、厳密には僕がゲーム時代に手に入れたものでは無いらしい。

 

「そうなんですか?」

『うむ、儂を含め汝の能力は、汝がこの世界の生命として魂を宿した際に能力として形作られたものじゃ。ただ、能力の規模が巨大過ぎて十全に機能を発揮出来ていなかったがな』

 

 なんと、煙晶竜によれば僕の能力として組み込まれた煙晶竜たちは、分かり易く言えばゲーム時代のデータからコピーされたような存在であるらしい。まぁ元々ゲームであった訳だしある意味納得だが。

 しかも、そうやって僕の能力に組み込まれたものは非常に多く、所持品や配下のモンスターから始まり召魔の森やもう一つの拠点である『海魔の島』、それから煙晶竜以外の名持ちドラゴン達やその生息地に、それらに棲むドラゴン達まで含まれているらしい。

 

「多くないですか、流石に」

『儂もそう思う。原因はおそらく、汝の持つ『ドラゴンメンター』の称号であろう。我ら竜と共にある存在、汝は世界にそう定義されたのだ』

 

 それから煙晶竜は僕が生まれてから今までの間、僕の中でどんな行動をしていたのか教えてくれた。

 僕の魂が赤ん坊に宿った際、確立された能力が巨大過ぎて殆ど赤ん坊に宿らなかった事に気付いた煙晶竜は、霊体だけで赤ん坊の僕に宿り、何とか能力との接続が分断されない様に保ってくれたそうだ。

 そこからは、前世の記憶も能力も無い僕の体に宿りながら、少しずつ僕と能力のつながりを強めて言ってくれていたらしい。

 そうして、ようやく僕自身と前世の記憶と能力をつなげられるようになったのがついこの間、『紅霧異変』の時だったそうだ。

 

「なるほど、それであのタイミングで記憶と能力が戻ったんですね」

『苦労したぞ。そもそも従者たちを抜きにした汝個人の力が既に強力過ぎて、接続するのに数百年もかかってしまった』

 

 少しずつ戻すのでも良かったのでは? と聞いてみたが、土台となる僕自身の力をきちんと取り戻してからでなければ先に進めなかった為、一度に戻すように調整したのだそうだ。

 まぁ理由があるのなら全然構わないが、それにしたって今まで姿を現さなかったのは何故だろうか、少なくとも紅霧異変の後からは記憶も戻っていたのに。

 

『あー、その、な。 ……汝は半竜として生まれたせいで色々と苦労をして来たじゃろう? その原因は儂にある、顔を合わせ辛くてのう』

「なんだ、そんな事だったんですか」

 

 確かに、半妖として生まれたせいで僕は人間からも妖怪からも長く半端者として迫害されて来た。記憶を取り戻す以前の僕なら、その事に思う所もあっただろう。

 だがまぁ記憶を取り戻した今となっては気にしていない。そもそも半妖では無い純粋な人間だったころから僕は人でなしの類だったのだ。血筋と、何より爺様の教えがあの頃の僕をそうさせていた。

 それに、あの頃の僕に比べれば今の僕の方がずっとましだろう。相変わらず戦うのは大好きだが、禁断症状が出るほど酷くも無いしね。

 

「その事なら気に病まないで下さい。大して気にしていませんから」

『ううむ、そうかの?』

「ええ。ところで、でしたら僕の持っていた『未知の道具の名称と用途が判る程度の能力』。アレは一体何だったんですか?」

『ああそれか。それはあの太陽神たちの仕業だな』

 

 なんと、ゲーム内で遭遇し色々とお世話になったアポロン神やアルテミス女神らの神々まで、領域ごと僕の能力に組み込まれているそうだ。

 神々の場合は、僕がゲーム時代に取得した『女神の祝福』の称号などを辿って無理やり組み込んだそうだが。おかげで余計に能力の規模が膨れ上がって能力を接続するのが難しくなったと煙晶竜がぼやいていた。

 僕のかつての能力は、ゲーム時代に手に入れた称号『百眼巨神の瞳』の影響で鑑定スキルなどが不完全に発揮された結果のものであるそうだ。どうも、今生の僕の様子を覗き見る為に、アポロン神がごり押ししたらしい。

 

「まぁ、結果的には良かったんじゃないですかね。役には立ちましたし」

『うむ、まぁそうではあるがな』

 

 結果的に、僕はこの能力があったからこうして古道具屋を開いている訳だし、様々な道具を製作する腕を磨くことも出来た。

 過去は代えられないのだから、何事も前向きに受け取るべきである。

 

「それで煙晶竜、その能力とのつながりを強めるために、僕に手伝えることは何かありますか?」

 

 一番気になっていた部分を訊ねてみる。

 煙晶竜の説明から、今の僕の目的であるかつての配下達を取り戻す為の具体的な方法が判ったのだ。

 ならば、後は僕がそれをサポートしてそれを速めれば良いだけである。

 

『ふむ、その事か……時にそこの少女よ、少し良いかな?』

「は、はい!?」

 

 突然煙晶竜から声を掛けられた叢雲が、ビックリしてきょどった返事をする。

 それを気にした様子も無く、煙晶竜は話を続けた。

 

『汝はキース。あー、今は霖之助と名乗っているのだったな? 霖之助に仕えるつもりであると、そう言う事で間違い無いな』

「え、ええ。もちろんです! この叢雲、全力で旦那様にご奉仕する所存です!」

『うむうむ、良い心がけじゃ』

「えー」

 

 そんな心がけして欲しくないんだが。そう思う僕を無視して二人は話を進めて行く。

 

『儂も一応は霖之助の従者の一人での。つまりは汝の先達に当たる訳だ』

「なるほど、先達の方でしたか。わたくし、都牟刈叢雲と申します。お見知りおき」

『我が名は煙晶竜である。よしなにな。うむ、中々礼儀正しく、可愛らしい娘じゃな』

「まぁ! うふふ。ありがとうございます」

 

 なんか、僕の関係無い所で急激に仲良くなっているな。あの二人。

 しかしよくよく考えたらとんでもない組み合わせの二人だな。片やドラゴンの最初の王の霊体、片や龍神とも伝えられる八岐大蛇の尾から現れた最強の神剣。叢雲は竜の特性を持っているし、相性は良さそうだ。

 

『実はの、霖之助には儂の様な従者が数多く存在している。が、その者達を呼び出すことが出来なくなっていてな。儂はそれを何とかする為に動いているのじゃが、仲間となる汝にもそれを手伝って欲しいと思って居る。どうじゃ、手伝ってくれるかな?』

「旦那様の従者たち……はい! この叢雲、旦那様のお役に立てるのなら全身全霊を尽くします!」

『うむうむ! そうかそうか』

 

 どうやら、話が纏まりそうである。しかし、未だに煙晶竜具体的な事を何一つ口にしていないのが不安だ。

 一体何をやらせるつもりなのか。

 

「それで煙晶竜、叢雲に何をやらせるつもりなんです? 僕に手伝えることは?」

『うむ、それなんじゃが。今から頼むことは叢雲一人にやって貰おうと思う。どうにも、キースには不向きそうであるからな』

「はぁ、結局何なんです?」

『うむ、それはじゃな……』

 

 煙晶竜はもったいぶって溜めを作ってから、高らかにこう言った。

 

『叢雲よ。汝にはこの幻想郷で、我らドラゴンへの信仰を集めて貰う!』




これが、後に幻想郷最大宗派の一つとして君臨する『竜信仰』の始まりである。

と言う訳で、今回はサモナーさんが行くの原作キャラ『煙晶竜』の登場です。
また、煙晶竜が登場した事で判明した情報として、転生香霖がサモナーさんの能力を仕える理由と転生香霖が何の半妖なのかが判明しました。

そして叢雲よ、君は竜信仰の巫女として自機組となり異変解決に参戦するのです。
出自的に六面ボスかEXボスの方が似合いそうだけど。
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