前回とはまた違った客演をお楽しみください!
天地優介さん、使用許可ありがとうございます!
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IF03「シンガー・ソング・ライダー2018」
ーこの本によれば、普通の高校生・常磐ソウゴ。彼には魔王にして時の王者、オーマジオウとなる未来が待っていた。
仮面ライダーフリーゲルこと飛山翼達と出会いフリーゲルの力を手に入れた我が魔王。その後フォーゼ、ファイズ、ウィザードと順調にレジェンドの力を継承していくのだった。
そして、次に出会うレジェンドに触れるのは我が魔王でも明光院ゲイツでもなく…
「デュッフフフ…」
とあるビルの屋上。巨大なパラボラアンテナが目立つその場所に腰掛けながら、ツァイトは一人タブレットを弄っては下品な笑いをあげていた。
「随分と楽しそうだな、ツァイト」
しかし、後ろから不意に声を掛けられるとたちまち顔は引きつり、背後に立つ気配に背筋が凍りながら恐る恐る首を回す。
「ス、スウォルツさん…」
振り向いた先には彼の(一応)所属するタイムジャッカーのリーダー的存在、スウォルツの姿があった。その切れ長の冷淡な瞳に視線を合わせると、ツァイトはたちまち萎縮しオドオドとタブレットを仕舞おうとする。
そんなツァイトに対して、スウォルツは嫌味たらしく口を開いた。
「どうした?気にせず続けて構わんぞ?只我々の目的を忘れた訳ではあるまいな。遊んでばかりも結構だが、そろそろ新たな王を擁立してもらわんとな?」
スウォルツは前に回り込むと、横目でツァイトを見下しながらネチネチと話を続ける。
そんな威圧を掛けられながら、ツァイトは顔を流れる冷や汗を拭うと精一杯の声で平静を装った。
「ご、ご安心ください…。既に手は打ってありますよ。スウォルツさんのお手は煩わせません」
動揺を隠し切れず眼鏡をくいと上げたツァイトの言葉に、スウォルツが不敵な笑みを浮かべる。
*
ーもし俺がオーマジオウになると確信したら、その時はいつでも倒してくれ!二人の判断なら、俺は信用できるから
ーツクヨミ、俺たちはとてつもない奴を相手にしているのかもしれない
ツクヨミは一人溜息を漏らした。
彼女はいつか最低最悪の魔王となる未来が待つ常磐ソウゴを、最高最善の魔王へと導く事を決めた。
ソウゴ自身を倒し未来を変えようとするゲイツや新たな王を擁立し歴史を書き換えようとするタイムジャッカー達とは違い、ソウゴ自身を変えさせる事によって最低最悪の結末を阻止しようとしていた。
しかし、それが上手くいかず彼女は現在行き詰まっていた。
魔王の素質があるだけあって常磐ソウゴの独善性というものは強く、ツクヨミは逆に振り回されてばかりであった。
また、前回のアナザーウィザードとの戦いで、ゲイツもまたソウゴの持つ底知れない強さに触れ珍しく苦言を呈する始末であった。
故にツクヨミは自分が本当に、常磐ソウゴを最低最悪の魔王にならないように導けるのか、不安を感じていた。
そんな悩みを抱え物思いにふけるツクヨミに対して、当のソウゴは本人の気も知らずに気楽に声を掛けるのだった。
「ツクヨミどうしたの?そんな難しい顔して」
「ううん、何でもない」
そう言って笑顔を作るも、ゲイツはツクヨミに映る深刻な表情を見逃さず黙って視線を向け続ける。
そんな中、順一郎が奥の部屋からやってくると台の上にドンと何かを置く。
「いや〜、ようやく直った」
「あれ?叔父さん、それラジカセ?」
「うん、この前依頼があったラジカセがようやく直ったんだ。うち時計屋なんだけどね…」
そう言って順一郎はいつものように顔をしかめる。そうは言いながらも達成感を露わにしながらラジカセのスイッチを起動し始めた。
「動くかな〜」
『…続いての曲は、心 刀奈で「Destiny change」…』
音量を上げていくと、幾分綺麗な音声でラジオが流れ始めた。偶然聞こえた内容に順一郎が話題を振った。
「おっ、刀奈ちゃんだ。良い曲だよね〜、叔父さん結構ファンなんだ」
「えっ、誰?心 刀奈って」
順一郎の言葉にソウゴが疑問を口にする。ゲイツとツクヨミに顔を向けるも、二人とも首を横に振る。
「あれ?ソウゴくん達知らない?最近の若い子に人気だと思うんだけどな〜」
順一郎は驚きながらも思い出した様に話を進めた。
「そういえば最近この子の所属する事務所で変な噂が出てるんだよね」
「変な噂?」
「うん。この事務所のオーディションを受けた子達が行方不明になってるんだって。何人かの子は見つかってるらしいんだけど、みんな決まって声が出なくなってるらしいよ、何か怖いよね〜」
ラジカセの音を確認した順一郎はそう言って部屋に戻っていった。
一方、その話に何処か心当たりのあるソウゴ達は同時に顔を見合わせた。
*
「ミライプロ、心 刀奈を初め実力派の人気アイドルが多数所属するアイドル事務所ね」
ソウゴ達は外に出ると、先程の話にあった事件を調べ始めた。ツクヨミがタブレットを使い、詳しい情報を集める。
「2017年からこの事務所が開くオーディションで毎回何人かの子が事件に巻き込まれてるみたい」
「やはりアナザーライダーの仕業か。詳しく調べてみる必要があるな」
ツクヨミの話にゲイツが腕を組みながら答えるとソウゴが今後の方針を語る。
「うん、オーディションに潜入してアナザーライダーが関わっているかどうか調べよう!」
そう言って早速行動に移ろうとするソウゴにツクヨミが声を出して止める。
「待って、観てこれ」
ツクヨミが指差す先には"14歳から25歳の女性対象"と書かれている。
その文が示す意味に三人は顔を合わせて考え込むが、すぐにソウゴがツクヨミに提案を持ち込む。
「ねぇツクヨミ、このオーディションに参加してくれないかな?」
「えぇ!私が?」
突然の発言に流石のツクヨミも驚くが、対するソウゴはもはや当然と言うように話を続ける。
「うん、俺もゲイツもオーディションに参加できないからツクヨミに参加者として中から情報を集めて欲しいんだ」
「でも、私歌なんて歌った事ないし…」
何処か思う所があるのか、ツクヨミは否定的な反応を見せるがソウゴは顔を覗き込んでくると笑顔を見せ後押しする。
「ね?良いでしょ?」
「…分かったわ」
ツクヨミはソウゴに言われるがままに頷いてしまった。
*
オーディションに無事エントリーしミライプロに潜入したツクヨミ。オーディションを行う会場まで長い廊下を他の参加者と共に移動する中、ツクヨミは事務所内に何か不審な物は無いか、怪しい人物はいないか入念にチェックしていた。事務所の壁には所属している様々なアイドルのポスターが貼られており、順一郎が話していた心刀奈を始め男性アーティストから女性ダンサーまで幅広い人材が紹介されていた。
その途中、ふと目に止まったポスターがあった。そこには新人アイドルが掲載されており、この事務所の現在の一押しなのだという。
『木村乙音』。ツクヨミは自然とその名を目で追っていた。
しかし、すぐに気を取り直しツクヨミはついにオーディション会場にたどり着いたのだった。
*
一方その頃、ツクヨミがオーディションに参加している間ソウゴとゲイツは事務所周りの探索していた。
事務所内はツクヨミがいる為、万が一内部で異変のあった時はすぐ様駆けつけれる様になっていた。
しかし、仕方ないとはいえソウゴと共に行動する事にゲイツは少々不満そうであった。
「しかし、なぜ俺がお前と行動しなければならないんだ」
「だって仕方ないじゃん、オーディションに参加できるのはツクヨミだけなんだからさ。俺達は俺達でやれる事をやるだけだ!行くよ、ゲイツ!」
対してソウゴはむしろ楽しそうであり、乗り気でないゲイツに発破を掛けると張り切って事務所周辺の張り込みを行っている。
「仕方ないな」
ゲイツは溜息を付くもソウゴの後を追いかけていった。
*
ところ変わってオーディションでは。
会場に到着したツクヨミ達参加者はその後6人ごとのグループに分けられるとそれぞれの個室に案内され、一人一人が数人の審査員の前で歌声を披露するというものであった。
ツクヨミは緊張しているものの、やるからには全力でやる事を決め個室に入っていった。
その時、何処かで悲鳴が響き渡った。
ソウゴとゲイツが慌てて駆けつけた時には、審査が終わり外の休憩所でひと段落していた参加者達が異形の怪物に襲われている最中であった。
白く機械的な身体をしており所々丸みを帯びているが、頭部にはぐにゃくにゃに捻れたヤリが生えておりボロボロの腰布を纏っている。
胸元は僅かに膨らんでおり体つきは全体的に女性を思わせるラインをしている。そこには『2017』『SONG』の文字が刻まれている。
そして、口は大きく開かれ耳まで裂けており、仮面の奥に薄らと映る見開かれた両眼も相まって悲痛な表情を思わせる姿をしていた。
その巨大な口が、胸ぐらを掴んで持ち上げている女性の口から七色の光を吸い上げていた。
この光景にすぐ様ソウゴとゲイツはウォッチを取り出し戦闘態勢に入る。
『ジオウ!』『ゲイツ!』
ジクウドライバーに起動したウォッチを挿すとそれぞれの待機音が流れ始める。その音に釣られて怪人__アナザーソングは振り向いた。
「「変身!!」」
『『ライダータイム!』』
『仮面ライダージオウ!』『仮面ライダーゲイツ!』
変身完了するや否や、二人はアナザーソングの元に駆け出した。
襲われている参加者達から引き剥がすと、敵に一切反撃の隙を与える事なく殴る蹴ると攻撃を加えていく。
対するアナザーソングは余り戦闘慣れしていないのか、一方的にやられっぱなしでありジオウ、ゲイツのダブルパンチに遠くまで吹っ飛ばされる。
「大した強さじゃないな」
相手の力量を見極めた二人は一気に必殺技で畳み掛けようとするものの、突然アナザーソングが立ち上がりその開かれた口から絞り出す様に金切り音のような声を発し始めた。
《ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!》
いきなり聞こえ始めた不協和音に二人は対処できず耳を押さえて悶絶する。
その隙にアナザーソングは姿を消してしまった。
音が止んだ瞬間にその事に気付いた二人は、渋々変身を解除した。
「今のアナザーライダーがやっぱり事件に関わってるんだ…ツクヨミにも知らせなきゃ!」
ソウゴがすぐにファイズフォンXを使って連絡を入れようとする。
「ツクヨミもうオーディション終わったかな?まさか合格してたりして…」
「いや、それは恐らく…」
ソウゴが呟いた言葉に思わずゲイツが思いを口から溢す。
「え?どういう事ゲイツ?」
ソウゴに尋ねられ少々気不味そうな顔した後、ゲイツは口を開いた。
「ツクヨミは…」
*
オーディションではついにツクヨミの番に回っていた。審査員が鋭い目でツクヨミを舐めるように見回すと一つ質問をした。
「では何か歌を一つ歌ってみてください」
唐突かつ難儀な内容にツクヨミは一瞬たじろぐもののすぐに意を決める。
「はい、では」
そう言って深く深呼吸すると己の歌声という歌声を喉奥まで引き摺り出し、ツクヨミは発した。
「と"き"の"こ"え"〜に"み"〜み"を"〜す"ま"せ"ば〜↑↑↑」
「はい、もう結構です」
「え"」
それは一瞬の事であった。
ツクヨミの口から放たれたその異音は、思わず後ろにいた他の参加者が耳を押さえる程であり、審査員も一瞬後ろにみじろぐものであった。
すぐ様止められ、思わずツクヨミは唖然とした。
そう、ツクヨミは歌が下手だったのだ。
*
クジゴジ堂にてうなだれるツクヨミ。
アナザーソングと交戦した後ツクヨミを迎えにいったソウゴ達だったが、そこで待っていたのは茫然自失とした変わり果てた姿であった。
先の歌声で結果は当然落選。見事に惨敗したツクヨミはこうしてクジゴジ堂までこの調子であった。
そんなツクヨミにソウゴとゲイツはしどろもどろにフォローを入れ励まそうとする。
「あぁ…、なぁツクヨミ。今から他の方法を探さないか?」
「うんうん…!ちょっとこれは難しいっていうか、ちょっと無謀だったしもうやめようか…」
「嫌!私諦めないから!」
そう言う二人に対して、顔を上げたツクヨミは涙目ながら意地になって食い下がる。
そんなツクヨミを何とかなだめようとソウゴが両手を広げて優しく問い掛ける。
「いや、でもね?何というかハードルが高すぎるというか、道のりが険し過ぎるっていうか…」
「う"る"さ"い"!!二人はアナザーライダーの居場所見つけておいてッッッ!!!!」
「「はいッッ!!」」
思わず出たツクヨミの怒号にソウゴとゲイツは直立不動の態勢を取り、そろって仲良く返事をするのだった。
*
ツクヨミに言われアナザーソングの手掛かりを見つける為に外を歩き回る二人。ソウゴがツクヨミに関する質問をゲイツにぶつける。
「ねぇ、ツクヨミって何であんなに向きになってるの?」
「アイツは昔から負けず嫌いだからな」
ソウゴの問いにゲイツが答える。
レジスタンス時代。
荒廃した岩場でゲイツとツクヨミは射撃の訓練をしていた。
数メートル離れた先にある岩を的にファイズフォンXを発射する2人。
ゲイツはそこそこ命中するものの、ツクヨミは全く当たらない。岩に擦ることもあれば全く見当違いの場所に飛んでいくこともある。
そこでツクヨミはその日の夜まで休みなく、ひたすら練習を続けていた。
どんなに上手くいかなくても決して諦めることなく、黙々と鍛錬を重ねていく。
やがて精度が上がっていき、気付けば思い思いの場所にしっかり狙撃できるようになっていた。
そんな必死に努力するツクヨミの姿を、ゲイツはずっと見てきていた。
そこまでゲイツが話すとソウゴは路上で飛散した荷物を必死に拾っている少女と出会う。すぐに駆け寄っていき何を言うにも無しに荷物を拾い集めるソウゴ。
「はい、これ。大丈夫?」
荷物を渡された少女は一瞬そわそわとするも、荷物を受け取ると深く頭を下げた。少女はまだ早いと言うのにも関わらず首にマフラーを巻いており口元まで隠していた。また、何処か痛むのか身体中をさすっていた。
「君、ここら辺の子?具合悪そうだけど大丈夫?」
変に思ったソウゴは純粋な優しさで尋ねるも、少女は目を合わせず声も出さない。その内少女は荷物から紙とペンを取り出すとサラサラと文字を書き記しソウゴに見せる。
『私、声が出せないんです』
その内容にソウゴがはっとすると、すぐに優しい笑顔を向け少女に語り掛ける。
「そうだったんだね、大丈夫。そんな不安にしなくていいよ。俺常盤ソウゴ、君は?」
少女は今度は身分証明書を見せた。
「音無カレン…カレンちゃん、よろしくね」
ソウゴはカレンに対して何も扱いを変える事なく普通に接した。
*
とある広い河原で、ツクヨミは溜息を付いて座り込んでいた。
先程は意固地になってしまったが、何もオーディションに合格したい訳では無かった。しかし、ソウゴの事に関して悩んでいる今、何かをやり遂げる事無く諦めるという事はツクヨミはしたくなかった。
これからの事に対する不安と自身の歌声に対する不満とが積もりに積もって、ツクヨミは思わず立ち上がると遠くの橋に向かって大声で叫び始めた。
「あ"!え"!い"!う"!え"!お"!あ"!お"!」
彼女なりの発声練習なのだが、突然の大声に道ゆく通行人は驚きのあまり距離を取ってしまうのであった。
しかし一人だけ、その声に導かれツクヨミに近づく者がいた。
「貴女…もしかしてオーディションに出てた子?」
声を掛けられツクヨミが振り向くと、そこには首にタオルを巻き運動着姿でランニングをしていたであろう少女の姿があった。それだけ見れば何の変哲も無い普通の人なのだが、彼女は何処か他の人には無い自信と輝きを持っている様に感じられた。その顔に見覚えのあるツクヨミは記憶を振り返っていくと思わず声を上げた。
「…もしかして、木村乙音?」
名前を言われたのが嬉しかったのか、乙音は照れ臭そうに笑った。
*
ソウゴ達は声の出ない少女、カレンと出会い公園で腰を下ろしていた。
「そうか、カレンちゃんは歌が好きだったんだね」
彼女曰く昔から歌が大好きで将来はアイドルになるのが夢だった。憧れの夢を叶える為に、小さい頃から頑張り続けてきたという。
そして、ついにオーディションに出られるという時に彼女は事故に遭った。
一命は取り留めたものの、喉への負傷が酷く彼女は一番大切な声を失った。
ソウゴはカレンの話を聞き、心を打たれると彼女に優しく寄り添うのだった。ゲイツもまた、本来は時間の無駄だと言うところを彼女の話を聞き流さず、同情の眼差しを向け複雑な表情を作った。
カレンも話を聞いてもらい僅かでも気を落ち着かせたのか、ベンチから立ち上がるとソウゴとゲイツに深々と礼をしそのままトボトボと公園を後にしようとした。
そんな彼女の背中を見送るソウゴは不意に言葉を呟く。
「あの子みたいに声を失うって事は、とっても辛い事なんだ。そんな悲劇を生むアナザーライダーは絶対に止めないと」
ソウゴは強く決意を胸に語る。ゲイツもまたソウゴの意見に賛同したのか無言でソウゴの横に並んだ。
すると公園の近くで路上ライブが始まっていた。大人びた女性がギター片手に弾き語りをしており、何人か客が集まっている。
その光景に気付くと公園を出ようとしたカレンがたちまち動きを止める。大事に持っていた荷物を落とし、目には憎悪を滾らせている。
カレンの違和感に気付いたソウゴとゲイツだったが、次の瞬間カレンが紫のオーラに包まれ異形に姿を変える。
『ソング…』
カレンの本来の背丈から幾分か高くなり、女性的なフォルムが強調された醜い姿が露わになる。間違い無く、先程事務所近くでソウゴ達と交戦したアナザーソングであった。
見開かれた瞳でライブの人達を凝視すると、身体を震わせ彼らに襲い掛かる。人々は怪人に気付くとライブそっちのけで逃げ惑いはじめた。
その光景に信じられず、二人は暫く立ち竦んでいた。
「そんな…カレンがアナザーライダーだったなんて…」
しかし、罪のない人々が襲われているのを見過ごす事は出来ず二人は同時にウォッチを起動しジクウドライバーにはめ込む。
「「変身!!」」
アナザーソングは弾き語りの女性を掴むと、大きく裂けた口からボソボソと悲痛な叫びをひり出した。
『ウ…タイ…タイ…』
しかし、ジオウとゲイツが止めに入ると女性を離す。
「やめてカレン!そんな事しても何にもならない!!」
だが、今の彼女には何も聞こえない。口に手を当てると前回以上の高周波を発する。
《キィッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!》
近くの物が振動で倒れ、その音にもはや二人の声ですらかき消される。
「ジオ…!…ーマーを付けろ…!」
しかし辛うじて聞こえたゲイツの助言にソウゴが気付き答える。
「分…った!」
二人はそれぞれウォッチを取り出し起動する。
『フリーゲル!』『シャドウ!』
迫り来る不協和音の波に耐えながらさらにウォッチをスロットに差し込みドライバーを回す。
『アーマータイム!ビルドアップ!フリーゲル!』
『アーマータイム!stand up…シャドウ!』
二人はそれぞれアーマーを身に纏うと高周波を跳ね返し、アナザーソングに飛び掛かる。
フリーゲルアーマーのビームソードでアナザーソングを切り裂き、シャドウアーマーの闇の力で相手の動きを止める。
戦況が変わり二対一の不利な状況に、アナザーソングは圧倒され転げ回る。
「これで決める…!」
ジオウが必殺技を発動する為ウォッチに手を伸ばそうとするが、直前で止まる。
ソウゴの脳裏にはカレンの過去が浮かんでいた。
ゲイツも同じなのか、トドメを指す事を躊躇し明らかに動揺していた。
よろよろと立ち上がるアナザーソングを前にソウゴ達は踏ん切りが付かないでいた。
*
一方ツクヨミは河原で偶然で会った少女、木村乙音と話をしていた。
「歌が歌えない…か」
「別にどうしても上手くなりたい訳じゃないけど、今のままじゃどうしても納得できなくて」
話をする内にツクヨミは自然と乙音に今の悩みを打ち明けていた。そんなツクヨミに対して乙音は優しく言う。
「歌って別に無理してやる事じゃないからね。自分の思いとか心の音とかを気持ちのまま、自然にのせる事だから」
「でも私には…」
そう言って俯くツクヨミに、乙音は思い付いたように手を叩いて立ち上がると楽しげに提案した。
「あ、それじゃあツクヨミちゃん。私の歌作るの手伝ってよ!」
「え?」
こうしてツクヨミとレジェンドの繋がりが強まっていった。
という事で、今回のソング編はツクヨミメイン回と並行して行っていきます!
女性主人公の作品であるソングにヒロインのツクヨミを絡めてみました。ソングと一緒にツクヨミにもさらに愛着が湧いてくれたらいいなぁと思います。
では、次回もよろしくお願いします!