RIDERTIME Hameln   作:砂袋move

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うぅ…、日曜朝9時に投稿できませんでした…

今回は原作の『仮面ライダーソング』をリスペクトした挿入歌演出を入れてみました。

使用楽曲はツクヨミのキャラソン『月の満ちる時』。《》内が歌詞となっています、
実際に流しながら読んで頂ければ嬉しいです。


IF04「ザ・フューチャーソング2017」

ーこの本によれば、普通の高校生・常磐ソウゴ。彼には魔王にして時の王者、オーマジオウとなる未来が待っていた。

独想性の強い我が魔王に対し、本当に最高最善の魔王に導けるのか不安になるツクヨミ。そんな彼女が出会うのは新人アイドル、木村乙音であった。

果たして、我が魔王達は仮面ライダーソングの力を手に入れる事ができるのか。

たどり着いた先にあるメロディーを、しかと聴いて頂こう。

 

 

 

「ツクヨミちゃん、私の歌作るの手伝ってよ!」

「え?」

 乙音の突然のお願いにツクヨミは混乱した。

「ちょっと待って、私歌も歌えないのに曲を作るなんて無理よ」

 ツクヨミは慌てて立ち上がり、断ろうとするものの乙音は気にせずツクヨミの腕を引っ張り歩き出した。

「大丈夫大丈夫、きっと素敵な曲が作れるって」

 乙音の勢いに流されるままに、ツクヨミは彼女の後を着いていくのだった。

 

 一方、アナザーソングを攻撃できないジオウとゲイツ。

 彼女__音無カレンの境遇に同情する二人は、攻撃を戸惑い躊躇してしまっていた。

 その間によろよろと立ち上がるアナザーソングは、口から精一杯の高周波を発射し周りを撹乱する。

 ジオウ達はなんとかアーマーで防御するものの、攻撃を防ぎ視界が晴れた先にはもうアナザーソングの姿は無かった。

 変身を解除したソウゴは、現実の残酷さと虚しさに呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 ツクヨミは乙音に連れられ、ミライプロの控え室にやって来る。

 アイドルとしてこの事務所で活動している乙音のおかげで、ツクヨミは難無く建物に入る事ができた。

 乙音の部屋は、元々そこまで広くないとはいえキチンと清掃され置かれた物も綺麗に整頓してあり、彼女の真面目さと要領の良さが窺い知れる。

 そして壁にはよく見える位置に乙音のライブであろうポスターが貼られていた。

「ねぇ、乙音はなんでアイドルになろうと思ったの?」

 乙音がアイドルになった経緯を聞くツクヨミ。その質問に乙音は噛み締めるようにゆっくりと答えた。

「私、元々普通の高校生で、誰かの為に何かできないかずっと考えてたんだ。そしたら、この事務所の所長さんから直々にスカウトされて勇気を出してアイドルになったの。

最初は大変な事ばっかりだったし、挫けそうになった事も多かったけど、たくさんの人や頼りになる先輩達に支えられてここまで来たんだ。そして、来月初めて大きなライブを開いて貰えることになったの。

だから、今までの想いを込めた最高の曲をみんなに届けたいんだ」

 ポスターを見つめ強い熱意を込めて語る乙音にツクヨミは話す。

「だったら、尚更私なんかが曲を作っても駄目なんじゃない?」

 申し訳なさそうに答えるツクヨミに、乙音は笑顔を向けると首を横に振った。

「ううん。だからこそツクヨミちゃんにも考えて欲しいんだ。だって、今のツクヨミちゃんは過去の迷ってた私とおんなじだから。同じ共感できるところを持った人と私は一緒に作っていきたい」

 そう言って再び笑顔を見せる乙音。そんな彼女に、ツクヨミは意を決め頷いた。

 

 

 クジゴジ堂に戻ってきたソウゴとゲイツは、帰って来るなり席に深く腰掛けた。すると、順一郎が二人を出迎える。

「ソウゴくん、ゲイツくんおかえり〜ってあれ、何か二人ともお疲れみたいだね」

 二人の顔を覗き込んで心配する順一郎。

「あ、そうだレモンティー飲む?この前貰ったんだ。喉に良いらしいから、早速煎れるね」

 突然思い付くなりウキウキした調子で奥の部屋に入っていく順一郎。

 対してソウゴは順一郎の話で自然とカレンの事を思い出す。

「カレン…一体どうすれば」

 カレンを思い溜息を付くと、店を見渡しツクヨミが居ない事に気づく。

「あれ、ツクヨミがいない。ツクヨミもどうしちゃったんだろう」

 続いてツクヨミの事に関しても悩むソウゴ。しかしゲイツは、ツクヨミに関しては心配はしていなかった。

「ツクヨミなら大丈夫だ。きっと戻ってくる」

 そう言って立ち上がるなり、玄関の前に立った。

「それより今はアナザーライダーの方だ。恐らく彼女は、今も声を求めて彷徨っている筈だ」

 ゲイツの言葉にソウゴも席を立つ。

「うん。もうこれ以上、カレンに罪を重ねさせる訳にはいかない」

 ソウゴとゲイツは互いの顔を見合わせると直ぐ様クジゴジ堂を後にした。

 その数分後、入れ違うようにしてレモンティーを煎れた順一郎が二人がいない事に気づくのは、最早言うまでもない。

 

 

 事務所の控え室にて、共に歌詞を考えるツクヨミと乙音。

 乙音が今まで歩んできた思いや志とツクヨミが今胸に残す悩みや葛藤を元に、何度も話し合いながら歌詞を形作っていく。

 やがて、二人の想いを込めた曲が出来上がっていった。

 

 

 

私の魂を歌いあげれば

 

砕けぬ敵なんかない。響かぬ心なんてない

 

私の心の力を

 

誰かを救う武器と変えて

 

守るために戦う戦士となって

 

繰り出せ!キックを!突きだせ!槍を!

 

怖くても逃げ出さない。人助けが好きだから!

 

歌え!魂を!守れ!自由を!

 

それが!それが!それが!それが!それが!

 

 

 

 

 しかし、最後のフレーズがどうしても思い浮かばず、二人は行き詰まってしまう。

「最後のフレーズ、何にしたら良いかな?ツクヨミちゃん、何かある?」

 乙音がツクヨミに問い掛ける。

 対してツクヨミは乙音に疑問を浮かべる。

「え?最後の部分なんだし、乙音が歌詞を考えなくて良いの?」

「良いの、此処までやってきたんだもん。私はツクヨミちゃんに最後の歌詞を決めて欲しい」

 そう言われたツクヨミは、思いに答えるべく一生懸命考えた。やがて、ツクヨミは一つの言葉に辿り着き、ぼそりと呟いた。

 

 

『仮面ライダー…』

 

 

「え?仮面ライダーってあの都市伝説の事?」

 ツクヨミの言葉に乙音が口を開いた。

 取り敢えず口裏を合わせて、ツクヨミが話す。

「う、うん。誰かの為に戦ってる。そんな人を挙げるなら、きっとそれは仮面ライダーなんじゃないかって…」

 自信なさげにツクヨミは喋り終えた。共感されないかもしれない。そう思っていた中、乙音は予想外の反応を見せた。

「素敵…うん、とっても素敵だよ!ツクヨミちゃん!」

「えっ!?ホントに良いの、これで!?」

 乙音の反応に戸惑いを見せたツクヨミだったが、乙音は非常に気に入ったようだった。

「うん!ぴったりだよ!きっとこの曲にはこの言葉しか合わない…そう感じるんだ、ありがとうツクヨミちゃん!」

 乙音に礼を言われ、ツクヨミは自然と顔が綻んでいたのだった。

 

 

 音無カレンは人気の無い道をよろよろと歩き回っていた。

 ソウゴ達との戦いの傷が癒えず、ボロボロになりながら当てもなく足を進めていると、彼女の前に人影が現れる。

「お前にとっておきの情報を教えてやろう」

 現れた男__スウォルツはカレンに近付くととある話を耳打ちする。

「あの場所にお前の求めるものがある」

 そう言うスウォルツの後ろから弱々しい声が聞こえてくる。

「あのぉ…、スウォルツさん…?彼女は私の担当なのですが…」

「お前の意見は求めん」

 スウォルツは鬱陶しそうにツァイトの頭を退けさせる。

 カレンは言われるがままにミライプロの事務所に向けて歩を進め始める。

 そんな彼女を横目にスウォルツは不適な笑みを浮かべた。

 

 

 ツクヨミは乙音に連れられ、今度はレッスンルームへとやって来ていた。

 本来はアイドルが日々練習をする場所で、乙音はツクヨミの歌い方を指導する事にした。

「良いの?私なんかが此処で練習しても」

「大丈夫だよ、せっかく一緒に曲を作ってくれたんだもん。これぐらいなんて事ないよ」

 そう言ってツクヨミと向き合うように立つとアドバイスを語る。

「じゃあ、歌の練習をしようと言いたいところだけど、そもそも歌を歌うなんてそんな難しい事じゃないんだよ?自分の中の想いをそのまま声に込めるだけ」

「それができないから苦労してるんだけど…」

 乙音の言葉を受けて顔を俯かせ自信をなくすツクヨミ。だが、乙音はツクヨミの顔を真っ直ぐに見つめると優しく語る。

「大丈夫、心を落ち着かせて自分の中の想いを整理するの。そうすれば、自然と声に合わせて歌が生まれるよ」

 乙音の言葉を信頼して、ツクヨミは目を閉じるとゆっくりと口を開き__

 とその時、部屋の外で騒ぎが出ているのに気付き、ツクヨミは急いで向かおうとする。

「ごめん乙音、此処で待ってて!」

 慌てて扉を開け出て行ったツクヨミを乙音は心配そうに見守っていた。

 

 

 事務所の廊下では逃げ惑う人々でごった返しており、その奥ではアナザーソングが逃げ遅れた者たちを次々と襲っていた。

「やめなさい!!」

 ツクヨミはすかさずファイズフォンXを取り出し、アナザーソングに向けて発泡する。赤いエネルギー弾は全弾命中し、アナザーソングは一瞬怯む。

 だが、すかさずお返しとばかりに口から高周波を放ちツクヨミを吹っ飛ばす。高周波を喰らったツクヨミは地面を激しく転げ回るもののすぐに立ち上がり、牽制を行う。

 そうして必死に戦っているツクヨミの姿を、乙音は曲がり角の影からひっそり見守っていた。

 だが、ツクヨミの射撃がイマイチ効果を発揮せず、アナザーソングが悠々とツクヨミに近づいていくのが我慢できず、乙音は飛び出そうとしたところ__

「「たぁぁっ!!」」

 アナザーソングの背後からソウゴとゲイツが飛び蹴りをかまし、アナザーソングを怯ませる。その間にソウゴとゲイツはツクヨミに駆け寄る。

「ソウゴ、ゲイツ!来てくれたのね」

「まさかアナザーライダーに遭遇してたとはな。後は俺たちに任せろ」

 ゲイツはそうツクヨミに告げると、二人は彼女の前に立ち、変身態勢を取る。

『ジオウ!』『ゲイツ!』

 二人が同時にウォッチを起動する。その姿を見て、乙音は目を丸くするのだった。

「「変身!!」」

 ライダーの姿に変身完了した二人はアナザーソングに向かっていく。しかし、攻撃するのではなく彼女を押さえつけ動きを止めるようにすると、ジオウが必死に説得する。

「カレン、目を覚まして!これ以上人を襲うのはやめるんだ!」

 しかしアナザーソングはソウゴの言葉を聞き入れず、暴れて抵抗すると二人の拘束を解き一気に薙ぎ払う。

 攻撃を受けながらも諦めないジオウは、アナザーソングに向かって叫ぶ。

「やめてよカレン!自分で自分と同じ苦しみを人に与えてどうするんだよ!」

ソウゴの思いにアナザーソングは動きを止めるも、やがて辿々しい小さな言葉がゆっくりと悲痛にこだまする。

『…デモ…私ハ…歌イタイノ…』

 そう言ってその場で天に向けて咆哮するとありったけの力を集めて、今まで以上の高周波を発射させようとする。

 それに対してジオウはすぐ様対応すると、ジカンギレードを取り出しアナザーソングの元に駆け寄るなり攻撃を阻止するように斬り付ける。

 隙だらけだったアナザーソングにジオウが次々と斬撃を加えていき、最後に剣を真っ直ぐ突き立てる。しかし、相手も黙って攻撃を受ける筈もなく抵抗しようとした結果、最後の一撃はその大きな口に命中してしまう。

 今までで一番の攻撃を喰らったアナザーソングは派手に地面を転がり、カレンの姿に戻った。

 ジオウもまた先程の攻撃が予期せぬ部位に直撃した事に気付き戸惑う。

 立ち上がったカレンの首元からボロボロになってしまったマフラーがずり落ちる。そこには痛々しい傷が残る首元が露わになり、カレンは涙を流している。

 ジオウは彼女に駆け寄ろうとした矢先、彼らの目の前にとある人物が立ち塞がる。スウォルツである。

「ひどい事をするものだ。彼女は自分の夢を叶える為必死にやっているというのに、それを邪魔するとは」

 そう言ってカレンの後ろに回ると、そっと彼女の耳元で囁く。

「もはやこいつらはお前を邪魔する敵だ。夢を叶えたいのであれば、こいつらを蹴散らすのだ」

 そしてカレンの背中からアナザーウォッチを取り出すと、再び起動させカレンの体内に戻す。

 カレンが苦痛に顔を歪ませながら、やがて醜悪な嫉妬の塊に姿を変える。

『ソング…』

 スウォルツは目的を達成したとばかりにその場を去っていき、アナザーソングも高周波を放ち手を差し伸べようとしていたジオウを振り払うと、スウォルツと共に姿を消してしまう。

「カレン!!!」

 ジオウは手を伸ばすも、彼女はもうソウゴ達の手の届かない場所に行ってしまった。誰もいなくなった廊下でジオウとゲイツはゆっくりと変身を解除した。

 その光景をツクヨミと乙音はしっかりと見ていた。

 

 

 ソウゴ達はアナザーソングを止める為に意を決する。

「こうなったら、過去に言ってカレンを止めるしかない。きっと彼女がアナザーライダーになったのは事故に遭った年、2017年だ」

 ソウゴとゲイツは顔を合わせるとすぐに過去に向かおうとする。するとツクヨミもソウゴ達について行こうと彼らに向けて口を開く。

「待って二人とも私も行くわ」

 そう言うツクヨミにソウゴは向き合うと言葉を投げかける。

「いや、ツクヨミはまだやる事があるじゃない。こっちは俺たちに任せて、ツクヨミは自分の出来る事をやるんだ」

「だって、アナザーライダーの方が優先じゃない!」

 ツクヨミがそう反論するも、ソウゴは気にせず続ける。

「ツクヨミ、前に言ってたじゃない。何かを中途半端に投げ出したくないって。今ツクヨミは歌の練習をしてるんでしょ?だったら最後までやりきらなきゃ」

 ソウゴは真っ直ぐにツクヨミを見て答える。ツクヨミはソウゴの言葉に開きかけた口を閉じる。

「大丈夫、俺たちの事は気にせず最後まで貫き通すんだ」

 ソウゴに背中を押されたツクヨミは二人がタイムマジーンで過去に飛んでいく様を黙って見つめていた。

 

 

2017年

 事故により声を失ったカレンは、ミライプロの建物の前に来ていた。

 そこにはこの事務所で開催されるオーディションのポスターが貼られており、いつか自分が出ようとしていたものを前に、もう二度とそれが叶わない現実に絶望し、声を出せずにすすり泣き、手で口を覆うなりその場にくずおれた。

「可哀想に」

 だがそこに、ツァイトが現れる。突然周りの時間が止められ、その事実に気付いたカレンは、顔を上げると横にいる不審な人物に目を向ける。

「貴女様もオーディションに受けたい。しかし、決してそれが出来ない。何故ならその資格すらないのだから」

 ツァイトはカレンの心の内を探るようにゆっくりと語る。その言葉を受けカレンは顔を俯かせる。

 するとツァイトはいつもの時と違い、説得させるかのように感情を露わにして叫び始める。

「喋りたくても喋れない、歌いたくても歌えない、そんな貴女様の心の音は誰よりも響き渡っている筈だ!」

 オーバーな身振り手振りを加えながらカレンの周りをぐるぐる回る。

「"他人の歌声に嫉妬"し、"奪い取ってでも手に入れたい"その渇望…合格です」

 そう言って彼女の背後に立つとアナザーウォッチを取り出す。

「貴女様なら、きっといい歌手になれますよ…」

『ソング…』

 そして起動させるや否や彼女の身体にそれを取り込ませる。

 カレンはみるみるその華奢な姿を変えていく。

「思う存分、歌ってください」

 やがてそこには、歌声に魅入られた亡者__アナザーソングが立っていた。

「今日から貴方様が、仮面ライダーソングです…」

 

 

 

2017年

 

「オオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

咆哮と共に、怪物に飛び蹴りをくらわせる 乙音(ソング)。怪物もとっさに腕をクロスさせてガードするが、あまりの威力に怪物の腕にヒビが入っていく。

 

《歌え!魂を!守れ!自由を!》

 

そして、乙音が更に力を込めた瞬間、ヒビが怪物の身体中に走りーー

 

《それが!それが!それが!それが!それが!》

 

 

 

__瞬間、全てが消滅しそこには変身を解除した乙音が立っていた。

 アナザーソングの誕生によって、その時、仮面ライダーソングの歴史は消滅した。

 

 

 ツァイトによってアナザーソングに変貌したカレンは、そのままミライプロに侵入すると片っ端から暴れ始めた。それは彼女に溜まっていた鬱憤なのか、それとも誰にも伝えられない悲痛な叫びなのか。

 そんな彼女の前に2機のタイムマジーンが降り立ち、中からソウゴとゲイツが現れる。

「カレン…君を止める!」

 二人がドライバーにウォッチをセットして同時に回転させると力を込め叫ぶ。

「「変身!」」

『仮面ライダージオウ!』『仮面ライダーゲイツ!』

 ジオウ達は拳を握るとアナザーソングに向かっていった。

 

 

2018年

 ソウゴに言われたツクヨミは、現代に残り自分の事を見つめ直していた。

 自分は本当にソウゴがオーマジオウにならないように導けるのか、本当にソウゴを最高最善の魔王にする事ができるのか。

 そのモヤモヤした思いに区切りを付けるように深く息を吐くと乙音の元に戻る。

 レッスンルームに戻ると、乙音は何か考え事でもしているのかジッと立ったまま動かない。様子がおかしく感じツクヨミが声を掛けようとすると、向こうから話して来た。

「乙音…?」

「今のが、仮面ライダー…。ツクヨミちゃん、あの人達と一緒にずっと戦って来てくれたんだね」

 そこまで言って振り返ると、両手でギュッとツクヨミの手を握る。

「ありがとうツクヨミちゃん、私達の為に頑張ってくれて」

 その言葉にツクヨミは反応し乙音の顔をじっと見つめる。

「大丈夫だよ、ツクヨミちゃんならこの先どんな事があっても乗り越えれる。だから不安に負けずに自信を持って進めば良いんだよ!」

 乙音の心からの応援にツクヨミはすっと肩の力が抜けていくのを感じた。モヤモヤした悩みが無くなり、自信がみなぎっていく。

 乙音は手を離すと今度はポケットからツクヨミのよく知るものを取り出す。白にピンクの下地が付いた仮面ライダーソングのライドウォッチである。

「! 乙音、これ…!」

 驚くツクヨミに対して乙音は懐かしむように穏やかに話す。

「うん。いつの間にか持ってたんだけど、ツクヨミちゃん達を見てわかった。これはあなた達に必要なんだって」

 乙音はツクヨミの手にウォッチを優しく手渡す。

「後は頼んだよ、ツクヨミちゃん!」

「…ありがとう、乙音!」

 乙音からウォッチを託されるツクヨミは、乙音の手を強く握り返した。

 

 

2017年

 アナザーソングとジオウ達が交戦している。

 今の状況ではアナザーソングを完全に倒す術が存在せず、ただ時間稼ぎに過ぎないのだが、それでもソウゴはカレンを止める為に動かずにはいられなかった。

 事態は平行線を辿り、延々と攻防が展開していたのだが、そこに状況を打開させる切っ掛けがやって来る。

 戦闘中突如ゲイツのファイズフォンXに着信がなる。本来戦闘中に連絡が来るのは問題なのだが、この状況で通話ができる人間は限られている為相手を察したゲイツはすぐに電話に出た。

 すると電話相手であるツクヨミから有力な情報を得る。

「ゲイツ!ライドウォッチを手に入れたわ!」

「本当かツクヨミ!」

「私もそっちの時代に向かう!ゲイツ、迎えに来てくれる?」

 ただタイムマジーンは二人がそれぞれ乗ってきてしまった為、今ツクヨミも2017年に向かうにはどうしても一度2018年に戻らなければいけなかった。一瞬迷ったゲイツに事態を察したジオウが話す。

「ゲイツ!ここは俺に任せて、ゲイツはツクヨミを迎えに行って!」

 アナザーソングと戦いながら叫ぶジオウの提案に乗ったゲイツはツクヨミに伝える。

「分かった!今すぐそっちに向かう!」

 

 

2018年

 ゲイツと連絡を終えたツクヨミがファイズフォンXをしまい、ミライプロの事務所を出る。

 そこに丁度ゲイツが操縦するタイムマジーンが現われ、コクピットのハッチが開く。

「ツクヨミ!早く乗れ!」

 ゲイツのマジーンに乗り、ツクヨミは行き先を再び2017年に戻す。

「時空転移システム、起動!」

 時空の扉が開き、タイムマジーンは再び過去に跳躍し消えた。

 そんな一部始終を乙音は静かに見送った。

 

 

2017年

 ジオウは一人でアナザーソングを相手に戦いながら説得していた。

「確かに歌が歌えなくなるのは辛い。夢が叶えられなくなっちゃうのは悲しい。でも、諦めないで!いつかきっとまた立ち上がれる時が来るから!」

 しかし、アナザーソングは攻撃の手を休めずジオウを吹っ飛ばす。地に足つくジオウの後ろにタイムマジーンが到着する。

「ソウゴ!」

 外に出るなりツクヨミは真っ先にソウゴを呼び、持っていた物を投げ渡す。

「これ…!」

 思わずジオウが掴んだ物はツクヨミが乙音に渡されていたソングライドウォッチであった。

「そのウォッチならあのアナザーライダーを倒せる筈!」

「ありがとうツクヨミ!」

 礼を言うとすぐにアナザーソングに向き直りウォッチを起動させる。

『ソング!』

 次にドライバーの左スロットにセットすると再びドライバーを回す。

 アーマーが身に纏われジオウが姿を変える。

『アーマータイム!my song my soul!ソング!』

 両肩に備わるディスクとソングを模した腰布、そして顔に大きく書かれている"ソング"の文字。

 仮面ライダージオウ・ソングアーマーに変身完了した。

 すると突然ステージ上の電気が灯り、大音量のマイクが唸り始め人影が動き出す。そこにいたのは…

「祝え!!!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ・ソングアーマー。また一つ、ライダーの力を継承した瞬間であるッ!!!!!」

 ウォズがマイク越しに声高らかに祝う。すると何処からともなく歓声まで響き渡る。

「えぇ…、大袈裟だよぉ…」

 その勢いに圧倒されソウゴは静かに呟いた。

 その間にアナザーソングは部屋を出て、外に逃げ出してしまう。

「あっ!待てッ!」

 ジオウも直ぐ様追いかけステージは一気に静かになる。

 すると、突然ツクヨミがステージに登り始め台の上に一人立った。その光景をゲイツが目で追うと変身解除し静かにツクヨミを見つめる。

 いつの間にか何処からか音楽の前奏が聴こえてくる。

 ツクヨミは目を瞑り、深く深呼吸をすると口を開いた。

 そこから発せられる歌声は以前と全く違う、美しい音色がステージ中に響き渡った。

 

《時の声に耳をすませば》

 

《すれ違う歴史と物語》

 

 ゲイツも腕を組んで、ツクヨミの歌う姿を見守っている。

 

《月の光世界照らすように》

 

《本当のあなたへと導きたい》

 

 ツクヨミが真っ直ぐに目を見開く。

 

《巡る時代時空を超え駆け抜けて》

 

 事務所の外、ジオウはアナザーソングの攻撃を受け流すなりカウンターを仕掛けていく。

 

《あの闇に飲み込まれてしまわないように》

 

『フィニッシュタイム!』『ソング!』

 アナザーソングを吹っ飛ばし、ウォッチを起動して必殺技を発動させる。

 

《刻む時間繋ぐ歴史過去も未来も》

 

「心の音…(わめ)かせる!」

 

 よろよろと立ち上がるアナザーソングを前にドライバーを回し飛び上がる。

 

《物語紡ごう》

 

『シュート!タイムブレーク!』

 音符が周りを漂う中、七色のエネルギーを見に纏った足でキックをお見舞いし、アナザーソングは大爆発を起こした。

 

 曲が終わると同時に弾き出されたアナザーウォッチが音を立てて爆ぜた。

 

 自らの思いを歌に込め、伸びやかに歌い終えたツクヨミはステージの上でやりきった表情を浮かべる。そんなツクヨミに向けて、ゲイツは静かに拍手を送った。

 

 ソウゴはカレンのもとに駆け寄り優しく語り掛けた。

「きっと、君の思いが届く時が来るから。頑張っていこうよ」

 ソウゴの言葉を聞いた後、カレンはゆっくりと目を閉じた。

 

 

 2018年。

 とあるライブ会場にて、大勢の観客が熱狂する中、木村乙音の初ライブが行われていた。

《繰り出せ!キックを!突きだせ!槍を!》

 乙音はアイドルとしてツクヨミと一緒に作った曲を熱唱していた。

《怖くてっても、逃げ出さない。人助けが好きだから!》

 多くのファンに囲まれながらも決して変わらず一生懸命歌い続ける乙音。

《歌え!魂を!守れ!自由を!》

 やがてピークが近づいていき、観客達の熱狂もいよいよ盛り上がっていく。

《それが!それが!それが!それが!それが!》

 

《仮面ライダーだぁぁぁぁ!》

 

 高らかに歌い上げライブは大成功を収めたのだった。

 

 

 クジゴジ堂に戻ってきた3人は再び順一郎が入れ直したレモンティーを飲んでいた。喉が癒されるあったかい飲み心地に心を落ち着かせていると、ふとツクヨミは思い出したように立ち上がりソウゴの前に立つ。

「ソウゴ、私もう決めたわ。絶対にあなたをオーマジオウにならないように最高最善の魔王に導いてみせる」

 ツクヨミはソウゴに改めて魔王にならないよう導く事を宣言した。

 その言葉を受けてソウゴはにっこりと笑顔を向ける。

「うん、ありがとうツクヨミ。頼んだよ」

 そう言って立ち上がりソウゴもまたツクヨミに向き合った。

 声に出さずとも伝わっている、確かな信頼がそこにはあった。

 

 

 

 人気の多い都会の街。通行人を掻き分けて進む若者が一人いた。

 背中に背負った学生カバンには白い立方体型のキーホルダーがぶら下がっており、ナンプレ片手に歩いていた大学生がふと顔を上げる。

 栄度光一(さかえどこういち)は空を見上げた後すぐに人混みの中に消えていった。




今回登場したソングアーマーは、ソングの作者である天地優介さん直々に考案したものを使わせて頂きました!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=201945&uid=155171

ソング編はオーズ編や鎧武編のような歴史改変によるライダーにならないIFを描いた客演パターンになっています。
というのもソング本編は完結していますが、物語が途中2018年以降に飛んでしまうので、本編と地続きの話をジオウでは描けないと判断した上でこの展開にしました。
劇中で乙音とツクヨミが作った曲『My song My soul』は、本来はソングの基本形態のテーマ曲ですが歴史が変わってもこの曲は乙音にとって特別な歌になる事を意味しています。

今作では、乙音は本編ではならなかったアイドルとして活動をしています。
その他のキャラはこれといった変化は無いでしょうが、ボイスちゃんはきっと幸せに暮らしている事でしょう!

さて、次回はホワイト・ラムさんの作品「仮面ライダーパンドラ」が登場致します…が、少々今までと違う特殊な形式で展開していきます。
どうぞ楽しみにお待ちください。
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