RIDERTIME Hameln   作:砂袋move

5 / 6
今日ゼロワン休みですね。そんな時は、RIDERTIME Hamelnを読んで楽しんでください!(言ってみたかっただけ)

今回はいつもと違い、本編14話、15話のゴースト編に成り変わる形で展開するIFの物語となっています。
コンセプトとしては「もしどうしても西銘さんが出演する事が出来ずゴースト以外でディケイドアーマー回をやったら」と言った感じです。
今回はホワイト・ラムさんの作品「仮面ライダーパンドラ」との客演回です!
ホワイト・ラムさん、使用許可ありがとうございます!
https://syosetu.org/novel/62376/


パンドラorジェイルfeat.ディケイド編
IF05「パンドラクロスロード2015」


ーこの本によれば、普通の高校生・常磐ソウゴ。彼には魔王にして時の王者、オーマジオウとなる未来が待っていた。

ソング、オーズ、鎧武の力を手に入れる中で明光院ゲイツを助ける為に時間の流れを変えようとするのだった。

まさか、我が魔王の行動によって未来が変わり、この本まで書き換わってしまうとは…。

だから、私はタイムジャッカーに味方する事に…。

 

 

 

 とあるバーにて、タイムジャッカーの3人は集まっていた。オーマジオウに代わる新たな王を擁立するという共通の目的の為に、彼らは頻繁に場所を転々としながら互いに情報交換を行っていた。

 しかし、今回は少し違った。本来なら決して来るはずのない人物が現れたからだ。

「それで、何が目的だ?」

 タイムジャッカーのまとめ役であるスウォルツは、横に座っている男に尋ねる。

 フードの付いた分厚いコート、床にまで着きそうな長いマフラー、そして『逢魔降臨歴』を手に持つ端正な顔立ちの青年。紛れもなくウォズであった。

「君達に手を貸してもらいたくてね」

 余りにもアウェーな空間であるにも関わらず、ウォズはいつもの飄々とした態度を変えずに答える。

 すると、二つ隣の席に座るウールがオレンジジュースを飲みながら口出しをする。

「あんた、今更何言ってんだよ」

「誰があんたを信用すると思ってるのよ」

 ウォズの右隣りに座るオーラも追随する。

 タイミングを計っていたかのように、スウォルツが最後に念押しをする。

「そう言う事だ。我々と手を組みたければ、それ相応の得がある事を証明して見せろ」

 対するウォズは待ってましたと言わんばかりにとっておきの切り札を口にする。

「実は君達タイムジャッカーに参加希望するのは私だけじゃ無いんだ」

「何?」

 ウォズの言葉にスウォルツは顔をしかめる。

「彼は気まぐれだからね、今は居ないがきっと君達の力になる筈さ。何たって彼は全てを破壊し、歴史を変える者ー」

 そこまで言った時、さらに思いがけない人物が乱入する。

 

「それは本当でごさいますか!!!」

 

 いつから居たのだろうか、気付くと後ろの席でツァイトが声を上げた。

 タイムジャッカー達の中でも彼のみはその性格により孤立しがちであり、こういった集まりには滅多に顔を出さないのだが、今回はウォズのその言葉を聞きつけ駆けつけたようで世にも珍しいタイムジャッカーが4人集まった瞬間であった。

「ツァイト、お前いたのかよ」

「急に大声出さないでくれる…?」

 ツァイトに対して、相変わらずウールとオーラは辛辣な言葉を浴びせる。しかし当の本人は興奮のあまりそれどころでは無かった。

「まさかあのお方に会えるなんて…。いえ世界を渡り歩きながら旅をしているのですからいつかは巡り合えるかと夢見ていましたが、まさかこんな所で逢えるとは…!自身の世界を追い求める旅人であり、全てを破壊し全てを繋ぐ悪魔とも称される世界の破壊者…」

 普段は彼らの前に滅多に顔を見せないツァイトは絶えずマシンガントークを一人延々と呟いていた。故に他のタイムジャッカー3人は引き気味である。

「いい加減口を閉じろ、ツァイト」

 ついにスウォルツが静止するもそれでも興奮冷めやらぬツァイトは思いついたように考えを語り始める。

「ならばこうしてはいられません…!あのお方を迎える為にはとっておきのアナザーライダーを用意しませんと…!あぁ、何て待ち遠しい…!!」

 そう言ってツァイトは急に掛け始めるとたちまちバーから姿を消した。

 それらの奇行を目の当たりにして残るメンバーは気不味い空気に包まれた。

「見苦しい所をお見せした、忘れてくれ」

「いや、私は彼の事は嫌いじゃ無いよ」

 そう言って2人は対談を再開させる。

「それで、そのもう1人はいつ来るのだ」

 スウォルツは肝心の内容を口にする。それにウォズは勿体ぶるように意味深な返答をする。

「いずれきっと現れるよ…嫌だとしてもね」

 

 

 夜明けの都会。日の出が登り始める空が歩道橋に登って世界を見下ろす男を写す。

「ここが次の世界か」

 そう言って首に下げるマゼンタの二眼トイカメラのシャッターを切る。歪んだ被写体の映った写真を取り出すと、それを見つめてさらに呟く。

「楽しめそうだな」

 光が徐々に男の顔を照らしてゆく。

 

 

「おはよ…」

 朝。ソウゴが一階に降りてくると階段下でゲイツが此方を向きながら右手のウォッチに手を添えて立っていた。

 恐る恐るゲイツの横を通過しコップと牛乳を冷蔵庫から取り出し扉を閉めると先程と同じ体勢で目の前にゲイツが立ち塞がっていた。

「うお!ど、どうしたの?」

「言ったはずだ。俺はお前を倒す為に未来からやって来たとな」

 いつでもウォッチを取り出せるように腕を構えた状態でゲイツが喋る。

「ん…でもだからってずっと構えてなくても」

「お前は信用できん。あの時の戦いで学んだ。俺はもうお前の前では一瞬たりとも油断したりせん」

 ソウゴが再びスルーしてリビングに行こうとするのを、ゲイツが体勢を崩さぬまま追い掛けソウゴの前に回り込む。

「ん…でもテレビ見えないんだけど」

 ゲイツが見下ろすように睨みながらテレビの前で仁王立ちしている。

 一連の流れを見てツクヨミは呆れたように溜息をついた。

 すると朝早くにも関わらず騒がしく順一郎が新聞片手に玄関に入ってくる。

「た、大変だよ!」

「叔父さん?どうしたの」

 ソウゴ達は怪訝な表情で尋ねる。

「今外で騒ぎあるみたいで、危ないからソウゴくん達ここでジッとしてるんだよ」

 そう忠告する順一郎に対してソウゴとゲイツは思わず顔を見合わせる。

「騒ぎ?」「まさか」

「「アナザーライダー!?」」

 ソウゴとゲイツが声を揃えて顔を合わせると直ぐ様クジゴジ堂を飛び出した。

「え?いやだから今外危ないんだってソウゴくん!」

 ツクヨミもまた2人の後を追って駆け出した。

「ごめんなさい、私も行ってきます!」

「え?いや、ツクヨミちゃんまでー!」

「私達は大丈夫ですから、叔父さんこそ外に出ないで下さいね」

 ツクヨミは振り向きざまに言い聞かせると玄関を出て行った。

「え、いやあの、気を付けてー、いってらっしゃい…」

 一人残された順一郎はそう心配そうに呟いた。

 

 

 早朝の広場では多くの人が逃げ惑い、あちこちで火の手が上がっている。

「キャハハハ!ほらほら逃げないと危ないよ〜」

 ソウゴとゲイツが駆けつけた時には、その奥でこの光景を見てはしゃいでいるチャラチャラした服を着た青年を目撃した。

「あいつか?」

 二人が睨んでいると向こうもこちらに気付いたらしく、笑みを浮かべるとじりじりと近付いてくる。

「ん?何君達?僕と遊んでくれるのかな?」

 そう言うと紫の光に包まれ、たちまち異形の怪物に姿を変える。

「アナザーライダー…?」

 身体のあちこちには多くの直線の切れ目が垂直に交差しており、まるで教育ノートのマス目のような立方体型の模様が無数に浮かんでいる。

 顔にも立方体が顔中に歪にくっついており、片目がその隙間からギロッと覗かせていた。

 そして、胸の立方体には『2015』『PANDORA』の文字。

『パンドラ…』

 ソウゴとゲイツの前で変身したアナザーパンドラはすぐ様二人に襲い掛かる。

「僕を楽しませてよね!」

 ソウゴ達は身を翻してそれぞれ攻撃を躱すとウォッチを構え変身態勢を取る。

『ジオウ!』『ゲイツ!』

 ウォッチを起動しドライバーをはめるとポーズを決め回す。

「「変身!」」

『『ライダータイム!』』

『仮面ライダージオウ!』『仮面ライダーゲイツ!』

 ジオウとゲイツはアナザーパンドラに向かっていく。しかし、相手はヘラヘラとしながら攻撃を受け流していき挑発的な態度を取り続ける。

「ほらほら、そんなもの〜?」

「馬鹿にするな!」

 業を煮やしたゲイツはジカンザックスにウォッチをはめ必殺技を決めようとする。

『フィニッシュタァイム!』

『ゲイツ!ザックリカッティング!』

 しかし、その機を待っていたかのようにアナザーパンドラは両手を地面に付けると、そこから巨大な立方体型のブロックが現れ攻撃を受け止めた。

 するとブロックが細かいパーツに砕け、辺りに散乱する。その一部はジオウやゲイツにもくっつき表面にクロスワードパズルのような図が浮かび上がる。

「何これ?」

 ジオウが困惑する中、アナザーパンドラは愉快そうに呟く。

「そのブロックは一定時間経つと爆発するんだ。早くそのパズルを解かないと解除できないよ〜」

 軽々しく語るアナザーパンドラに対して2人は焦りを感じ始める。

「何!?貴様ふざけるな!」

「ヘヘッ、じゃあね〜」

 ゲイツが叫ぶ中アナザーパンドラは撤退していった。その間にもブロックはどんどん熱を帯びていき、タイムリミットが迫っていった。

「不味いよ、ゲイツ!」

「くそっ!どうすれば…」

 クロスワードパズルなどやり慣れていない2人は、破片に浮かぶ空白の数字に何が入るか分からず手が付けられない。

 絶体絶命のその時、二人の前に駆け寄る一人の学生がやって来る。

「おいそこの黒いの!その空白は2と0と1、8だ!赤いやつは2、0、6、8と入れてみろ!」

「え?」「何!?」

 突然の事態に二人は戸惑いながらも、言われるがままに数字を入れるとくっ付いていたブロックは機能を停止し体から離れた。

「早く!その場から離れろ!」

 気付くと他の散乱していた破片達は今にも爆発しそうであった。反射的にジオウとゲイツは飛び退くとすんでの差で爆発が巻き起こった。

「あぶねー」

 ジオウ達はギリギリ爆発から逃れられ、地面に転がる。対する学生も安堵の表情を浮かべると二人に近づいていった。

「あんた達仮面ライダー?」

「え?何で知ってるの!?」

 ジオウが驚きを口にするも対する相手は呆れたように口を開く。

「だって顔に書いてあるじゃん」

 ジオウとゲイツがお互いの顔を向ける。

 すぐに向き直るとゲイツが話した。

「貴様は誰だ」

「俺は栄度(さかえど)光一(こういち)。"今はもう"普通の大学生だ」

 光一は少し寂しそうに顔を向けた。

 

 

 街並みを歩くアナザーパンドラの青年__解良(かいら)の前にツァイトが現れる。

「順調そうですね」

「あ、この前の!ありがとね、アンタのおかげでこんな楽しい遊びができてるんだから」

 解良は嬉しそうに礼を言う。

 遡ること2015年、元々彼は自らの快楽の為に罪を犯す悪人であり、良心のタガなど無く平気で人を傷つけては警察に何度捕まったとしても懲りずに悪事を繰り返す男だった。

 そんな解良にツァイトは目をつけた。

 

「今日から貴方様が、仮面ライダーパンドラです…」

『パンドラ…』

 

 ツァイトはこの男と契約してライダーの力を渡し、アナザーパンドラを擁立したのだった。

「いえいえ、貴方様にはこのまま王様になって頂きたいですから」

 タブレットを弄りながら不敵な笑みを浮かべて呟く。

「え?王様?よく分かんないけど、楽しそうだから良いよ〜」

 そう言って解良は気分良さそうに街並みの雑踏に消えていく。

 

 

「あんた人の話聞いてんの?」

 一方オーラは先程ウォズの言っていた助っ人を迎える役目を担わされていた。とある展望台で呑気に椅子に座る男にオーラは不満を露わにする。

「あぁ…、大体分かった」

 そう言ってマゼンタのカメラを手に取り、オーラを無視して階段を降り始めた。

「何この感じ悪い男」

 オーラはそっと呟き男の後ろ姿を凝視した。

 

 

 光一をクジゴジ堂に招いたソウゴ達は話を聞いていた。

「ねぇ、何であの怪人や仮面ライダーについて知ってたの?」

「俺も昔はライダーだったからな」

 ソウゴの質問にそっけなく答える光一にゲイツとツクヨミは驚きを隠せずに食いつく。

「貴様、記憶が残ってるのか!?」

 そう言われた光一は床に置いた学生カバンを持ち上げると中の物を漁り始める。学生カバンには白い立方体型のキーホルダーが付いており、ソウゴはその揺れるカバンのアクセサリが目に付いた。

 光一は机の上に四角いくぼみの付いたベルトを置く。

「このベルトは世界の影響を受けないんだ。だから、あの怪物が現れても俺の記憶は消えない」

 光一は長年使ってきたベルト__パラドクスドライバーを仕舞った。

 パラドクスドライバーは本来別の次元に移動する為に作られた防衛システムであり、空間を超える際の衝撃や影響から装着者の身を守る力を持っていた。

 そのシステムがアナザーライダーによる歴史改変にも通用したらしく、故に光一はアナザーパンドラが生まれているにも関わらず本来のライダーとしての記憶を保っていたのだった。

「あの怪人は3年前に現れて以降ずっと暴れてる。俺がライダーになった時と同じタイミングでな」

 それに対してソウゴは顔を近づけ話す。

「じゃあ、光一はまだ戦えるの?」

 その言葉に光一は目を伏せた。

「いや、それはもうできないな。俺一人じゃ…」

 光一は学生カバンに付いたキーホルダーを通してかつての相棒を思い出していた。

「だが、しかし好都合だ。貴様が仮面ライダーパンドラならばウォッチを手に入れるのは容易い」

 ゲイツが光一の前に立ち語ると、光一がポケットを探り何かを取り出す。

「これの事か」

「ライドウォッチ!いつの間に…」

 光一が手に持つ白いパンドラのライドウォッチにソウゴが驚く。

「気付いたら持っていてな、こいつがあればあの怪人を倒せるわけか」

「そうだ。渡してもらおうか」

 そう言うゲイツ達に対して光一は拒否反応を示した。

「悪いがこれは渡せない」

「え!?」

 思わぬ言葉にソウゴは言葉を失う。

「あの怪物は俺が何とかする。おまえらは首を突っ込まなくていい」

「何だと…」

 掴みかかろうとしたゲイツを翻し光一はクジゴジ堂を出た。

 追いかけようとするソウゴ達だったが、ツクヨミが声を上げ二人を静止する。

「ソウゴ、ゲイツ!アナザーライダーよ!さっきの奴がまた街で暴れてる!」

 二人は仕方なくそちらに向かった。

 パニックになった繁華街では、今度は無数の怪物達が人々を襲っていた。顔、胸、両手両足に穴の空いた不気味な風貌の怪人達はかつて仮面ライダーパンドラが戦っていた怪人、エラーであった。

 エラー達の中心にはまたもや解良が楽しそうに状況を眺めていた。

そこにソウゴ達が駆け付ける。

「あっ、来たんだ〜」

 解良はソウゴ達を見つけ彼らの前に立ちはだかる。

「君達は倒すように言われてたけど、せっかくだから遊んじゃおっかな!すぐにやられないでよ…?アハハハハ!」

『パンドラ…!』

 小馬鹿にしたように笑い転げるとアナザーパンドラに姿を変える。ソウゴ達も応戦してウォッチを構えて並び立つ。

「「変身!!」」

 ジオウとゲイツは武器を構え、アナザーパンドラに飛び掛かる。

 

 

 光一はしばらく人気の無い路地裏を歩いているとウォッチを取り出し静かに考え込んだ。

 すると、後ろから不意に声を掛けられる。

「いつまでうじうじ考えてるつもりだ」

 見るとマゼンタカラーのカメラをぶら下げた怪しげな男が立っている。

「何だあんた」

 不審に感じる光一をよそに男は話を続けた。

「お前はまだ自分の責任を感じているのかもしれないが、もうその必要もないんじゃないか?お前の後を継いでくれる奴らが現れたんだ」

 その言葉に思うところがありながらも光一は反論する。

「だけど、俺じゃなきゃ駄目なんだ。あの怪物を倒す為には俺の力が必要だから…」

「だとしても、相棒がいない中どうやって戦うつもりだ。一人で何でも背負わないんじゃなかったのか?」

 男に見透かされたように言われ光一は言葉に詰まる。

「奴らを信じてみろ。奴らならお前の思いを引き継いでくれるかもしれんぞ。ま、お前の相棒と相談して決めるんだな。そのウォッチを通せば声は届くはずだ」

 そう言って男は背を向けて去っていった。光一は言われた通り、ジッとウォッチを見つめて意識を集中した。すると路地裏に光が差し込み、光一に取って懐かしい声が響いた。

ーなんだい?僕がいなくていつまでもメソメソしてたのかい?

「んな訳ねぇだろ、やり甲斐のあるパズルが無くて退屈してただけだよ」

 光一は楽しそうに軽口を言い合っていた。

ーでも、もういいんじゃないか?君が今まで頑張ってきた事は僕も知ってる。後のことは他の奴に任せても大丈夫さ

「お前もそう思うか…。大丈夫なのか、あいつらに任せて」

ー信じるのさ。後輩を信じてやるのも先輩の務めだぜ?

「…分かったよ、相棒」

 光一はフッと笑うと、ウォッチから目を離し路地裏から外へ出ていった。

 

 

 ジオウ達はアナザーパンドラと対決していたが、中々決着が付かない。ブロックで作った自分の身代わりで撹乱し、その隙にさらにエラーを召喚しジオウ達や周りの人々を襲わせる。エラー自体は弱く、人々に襲い掛かる者達はツクヨミが警護し撃破しているが、ジオウ達の方はエラーに気を取られ過ぎて本体のアナザーパンドラと戦えないでいた。

「そんなものなの〜?ま、僕は"王様"だからね!誰も僕には勝てないのさ!」

 その言葉にソウゴの目の色が変わる。

「王様…?」

 途端にジカンギレードでエラー達を瞬時に切り捨てアナザーパンドラの元に向かう。少し驚きながらも腕に立方体型の盾を作り出し攻撃を受け止める。

 ジオウは武器を挟んで、アナザーパンドラに語りかけた。

「あんた…王様が何か分かってるの?」

「え?王様って…一番強くて偉い奴の事でしょ?じゃあ僕が王様だ!」

 しかし、対するアナザーパンドラは小馬鹿にしたようにジオウを蹴散らすとエラーを放つ。

「あんたに、王様を名乗る資格は無いよ!」

 ジオウはそう言い放つと新たなウォッチを取り出す。

『ソング!』

 エラーを倒しながらドライバーにウォッチをセットして回転させる。

『アーマータイム!my song my soul!ソング!』

 ソングアーマーを身に纏うと両肩のディスクから超音波を放ちエラー達の動きを止め、さらに衝撃波を放ちエラーを粉砕して後ろのアナザーパンドラを吹っ飛ばす。

 しかし、アナザーパンドラが放ったブロックが目の前で爆発し、ジオウは吹っ飛ばされてしまう。すると、光一が駆けつけてジオウに駆け寄る。

「おい、大丈夫か!」

「光一、何で…?」

 光一に立たせられるとジオウが向き合う。

「決めた。このウォッチはお前達に託す」

 そういってパンドラのウォッチを渡した。

「いいか、心の無い力はあいつらと何も変わらない。自分の目的が何か忘れるなよ」

 そう言うとジオウの手にウォッチを握らせる。

 その思いをしかと受け取ったジオウはウォッチを掲げ礼を言う。

「分かった。ありがとう光一!」

 

 

 一方遠くで彼らの戦いを観察する者がいた。

「俺もそろそろ動き出すとするか…」

 物陰で電子音がこだまする。

『カメンライド…パンドラ!』

 

 

「ジオウ!お前は2015年に向かえ!」

 大量のエラーを捌きながらゲイツが叫ぶ。今アナザーパンドラに対応するウォッチを持つジオウが過去に飛んで、歴史改変の根本を叩いた方が効率的だと判断したのだ。

 ゲイツの意図を察したジオウはタイムマジーンを呼び出し直ぐ様乗り込んだ。

「時空転移システム、起動!」

 行き先を2015年に設定し、ワームホールを通してマジーンが時空の彼方に消える。

 しかし、そこに既に問題が生じていた事に彼は気付かなかった。

 ゲイツがその間、現在の被害を食い止めようとしたところ突然何者かに襲撃される。その相手にゲイツはおろか光一でさえ驚いた。

 その人物はあろう事か仮面ライダーパンドラであったからだ。しかし、光一は何処か違和感を覚える。その理由は腰に巻かれたベルトがパラドクスドライバーではなく、形状の違うマゼンタのベルトを着けていたからだった。

「お前、今のままだとヤバイぞ。自分で何とかしてこい」

 パンドラはアナザーパンドラにそう話しかけると手をかざし、背後から謎のオーロラを出すと有無を言わさずアナザーパンドラをそこに放り込んだ。

 突如謎の現象と共にアナザーパンドラが姿を消し、ゲイツは警戒した。

「貴様!奴をどこへやった!」

「さぁ、何処だろうな…?」

 しかし、対するパンドラは惚けると腰の装備からカードを一枚取り出す。パンドラのレリーフが描かれたそのカードをベルトに差し込み読み込ませる。

『ファイナルアタックライド…パ・パ・パ・パンドラ!』

 するとパンドラの両膝が黄色に輝き始め、飛び上がるや否やゲイツに向かって両足蹴りを叩き込もうとする。

 思わずゲイツはジカンザックスを両腕に構え防御しようとするも、威力に耐え切れず吹っ飛ばされ変身解除してしまう。

「またな」

 そう言って立ち去っていくパンドラを光一は静かに見つめていた。

 

 

 過去に到着するジオウ。しかし、その目的地に混乱する。

「あれ?ここ2015年じゃない…?」

 ジオウがやって来たのは『2017年』。何故か本来の予定より2年ずれた事に違和感を感じる。その奥ではウォズがジオウの反応を確認すると不敵な笑みを浮かべ姿を消す。

 すると、後から遅れてアナザーパンドラも現代から飛ばされてやって来た。

 突然の事態に流石の本人も戸惑ってるようだった。

「え?何ここ?」

 ジオウは気持ちを切り替え、アナザーパンドラと相対する。

「取り敢えず、今はこいつを!」

『パンドラ!』

 託されたウォッチを起動させ、左スロットに挿入する。

『アーマータイム!』

 ドライバーを回転させたと同時にジオウの周りに無数の立方体が現れ、勢いよくくっついた。

 両肩に胸に手に足に。そして、それぞれの立方体が部位に合わせて組み替えられやがて身体にフィットしたアーマーに変わっていく。最後にパンドラを模した顔がくっつき、『パンドラ』の文字が刻まれる。

 ここにジオウ・パンドラアーマーが誕生した。

 離れた路地裏で一人、ウォズが気配に気づくと静かに呟いた。

「祝え。全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ、パンドラアーマー。まさに生誕の瞬間である」

 そう言い終えると満足したようにその場を離れる。

 ジオウはパンドラの力でエラーを瞬時に消滅させ、アナザーパンドラにもダメージを与えていく。先程と打って変わって明らかに押されているアナザーパンドラは焦りを覚え始めた。

「くっ、こんな…こんな筈じゃ…」

 抵抗しようと再び立方体をジオウに当てようとするも、パンドラアーマーの前に無効化されノイズを伴って消える。

「これ以上、あんたの好きにはさせない!」

 ジオウのパンチにアナザーパンドラは吹き飛ばされ地面を転がる。

 その間にジオウはベルト上で再びウォッチを起動させる。

『フィニッシュタイム!』『パンドラ!』

 必殺技の態勢を取り構えるジオウに、よろよろと立ち上がるアナザーパンドラは怒りを露わに突っ込んでいく。

「ア…アハ…、僕の遊びを…邪魔するな"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!」

 向かってくる殺気を前にしても動揺する事なくジオウがドライバーを回す。

『パンドラ!タイムブレーク!』

 すれ違いざまにキックをお見舞いしその腹に一撃を加え吹っ飛ばす。すると、アナザーパンドラの身体が無数の立方体に押し潰され3×3のキューブ状に固定される。

 そのキューブ目掛けてジオウが飛び上がり、両膝蹴りをお見舞いする。

食らったキューブは弾け飛び、爆炎から解良が転がり出る。ボロボロになって意識を失った彼の横でアナザーウォッチが砕け散った。

 一件落着。ソウゴは変身を解くと遠くからパトカーの大群が駆け付けてくる。

 恐らく騒ぎを聞きつけ誰かが通報したのだろうと考えられた。

 しかし警察は、下りてくるや否や真っ先にソウゴを捕まえるとパトカーに引き込もうとする。

「え!?何!?何!?何!?何で俺なの!?」

「うるせえ!国家権力様に逆らうんじゃねぇ!」

 抵抗するソウゴを一人の頑固そうな警官が押さえつける。

 同じように解良もまた複数の警官に連れられながら、力無くパトカーに放り込まれる。

 すると、遠くでゲイツのタイムマジーンが地上に降り立つ。

「ソウゴ!?」

 ゲイツとツクヨミはすぐにソウゴを見つけるも、多くの人間が集まっている中下手に動いて救出に向かうのは困難であった。

 二人は現在の状況が理解出来ぬまま、警察に捕まえられるソウゴを見る事しか出来なかった。

「あいつがジオウ…常盤ソウゴか…」

 パトカーに押し込まれるソウゴを一枚写真に収めると男が言った。

「中々面白そうな奴だ」

 門矢士が不敵な笑みを浮かべた。




今回は1話完結形式で2つのライダーの客演が描かれます。次回は引き続きホワイト・ラムさんの作品で『仮面ライダージェイル』との客演回となります。
ソウゴの運命は!?ウォズのたくらみとは!?
そして、現れた謎の男の正体とは!?(みんな知ってる)
乞うご期待です!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。