ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

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定期更新出来ない……。色々忙しいぜ……。


ヤンデレのちからってすげー!


主人公が代替わりするたびに新しい町に引っ越してくる男の名言


VSお見通し

 タマゴを守る交代の時間になったので起床したカブトは、トリさんに預けていたタマゴを受け取る。

 そして、何故か満身創痍で倒れているメガちゃんと、平気を装っているがその実はボロボロの体をしているトリさんを見て、カブトはこう思った。

 

(自主的な鍛錬か……! 僕も見習って精進しなくては……!)

 

 この男は未だに自分の手持ちを我が生涯に一片の悔い無し系ユキメノコだと勘違いしている男であり、さらに加えてバトルをしている時以外は知能指数が著しく低下する特性『バトルスイッチ(笑)』を持つ。その為、どう見ても仲間に放つにしては強すぎる攻撃が使われた形跡がある事も軽く見逃してしまったのだ。

 

 カブトは、トリさんとメガちゃんを回復させながら彼女達に言葉をかける。鍛錬するのは良いけどその体を大切にして欲しい、と。

 これに対して返す反応は二人とも違っていて面白い。トリさんは自身の身体を案じて貰った事に対する感謝を伝え、メガちゃんは体を大切にして欲しい、という言葉を拡大解釈して頬を赤く染めた。だが反応こそ違えど、奇しくも二人の内心は一致していた。

 

(カブト様にこの様な虫は不要……。カブト様の為に……)

 

(やっぱりボクが一番であり続ける為にも……‥)

 

((コイツはこの世に生かしておけない……))

 

 カブトは昨夜のトリさんとメガちゃんが鍛錬をしているであろうありもしない光景を勝手に想像して思った。

 

(やっぱり僕の手持ち達は仲が良くて頼もしいなぁ)

 

 真逆である。

 

 

 そうこうしている内に夜が明ける。カブト達は朝食を終えると直ぐにゲンの待つであろう場所へと向かった。今日からゲンに、ルカちゃんとカブトを中心としてルカリオの戦い方や、波導の使い方などを教わるのだ。カブト達が波導を教わっている間、他の手持ち達は野生ポケモンと戦ったりして自主鍛錬を積んでもらう。

 当然、波導を完全に使いこなす波導使いになる為の修行などは年単位で行う様な物なので、今回はルカちゃんが上手く扱える様になる為の訓練がメインとなる。

 

 

 

 そして時間は飛んで一週間後、驚異的な速さで色々と重要そうな事を習得したリオルは、波導を操れる様になった事で一気にルカリオへと進化を果たしたのだった。ついでにカブトも元々素養はあった事で多少なり波導パワーを使える様になった。具体的に言うと『はどうだん』を打てる様になった。使いすぎたら死ぬらしい。

 もう教えることは何も無いムーブをしているゲンから課せられた最後の課題は、この島のヌシであるハガネールと戦うこと。話を聞くや否や、カブトはルカちゃんのみを連れてその場を飛び出していった。当然、ゲンはその後を追いかけた。倒してこいとは言ったが、進化したばかりのルカリオだけでは到底敵う相手では無いからだ。

 ゲンが現場に辿り着いた時に待っていたのは異様な光景だった。この島のヌシであるハガネールに対して、タイプ相性が悪くないとはいえ進化したばかりのルカリオが戦いで圧倒していたのだ。

 

 ルカちゃんは『しんそく』を利用した移動法を使い、壁や天井に張り付いて攻撃する神出鬼没な動きでヒットアンドアウェイを繰り返し、攻守が秀でているも鈍重なハガネールを撹乱しつつ、『はどうだん』で確実に蓄積ダメージを与えていく。ハガネールは『ロックカット』を何度も使用して素早さを上昇させる事でルカちゃんに対抗しようとするも、ルカちゃんの『まねっこ』で『ロックカット』を使用されてしまうので実質イタチごっこ。

 

 ルカちゃんがハガネールを圧倒している事も異常だが、何より異様な光景は、カブトが何かしらの指示を口にした様子も見受けられ無いにも関わらず、ルカちゃんがトレーナーからの指示を受けているかの様に動く事だ。

 これは、ルカちゃんが波導パワーでカブトの心を読む事によって発生する声を出さずとも指示を出しているという現象で、相手に、コイツ……出来るッ! と思わせて威圧する高等テクニックだ。実際やると何か強そうに見える。

 

 業を煮やしたハガネールは範囲攻撃かつ、洞窟で使用するのは危険極まりない『じしん』を使いルカちゃんを仕留めようとするが、ハガネールの動きから攻撃技を使うとカブトが見抜いた事で、『さきどり』で逆にハガネールの『じしん』を打ち返す事に成功した。

 流石にヌシといえど効果抜群の技を喰らい続けて限界だったのだろう。『じしん』を受けたハガネールは大地に静かに倒れ伏した。

 

 こうして最終試練を突破したカブトは、今まで面倒を見てくれたゲンやそこら辺のトレーナーに礼を告げてこうてつ島を去っていった。スキンヘッズの舎弟は置いてきた。今頃こうてつ島で仲良く暮らしているだろう。

 

 再びトリさんに乗ってどんぶらこ、どんぶらこと海を渡りミオシティまで帰還する。以前と比べ桁違いに逞しくなったカブト。今ならタイプ相性的に厳しいミオジムもクリア出来るはずだと、ジムの内部へと侵入する。

 

 今回のジムは鋼タイプのジム。トリさんとルカちゃんを手に入れる前なら苦戦は必死だったが、こうてつ島で鍛え上げられた今なら然程問題は無い。カブトは意気揚々とジムトレーナーを蹴散らし、ジム戦へと向かっていった。

 

 いよいよ始まるジムリーダーとの戦い。ジムリーダーが最初に繰り出したポケモンは青銅器を思い起こさせる様な形状をしたポケモン、ドータクン。対してカブトの先発はトリさんだ。

 ドータクンは、確か『ふゆう』か『たいねつ』の特性を持っていた筈だとカブトはその宙に浮かぶ妙な姿を見て思い出す。エスパーパワーで空中に浮いているあたり地面タイプ最強の技である『じしん』が意味を為さない事は一目でわかる。銅鐸に浮かぶ能力があったなんて初耳だよ……と、カブトは内心呆れていた。

 

 

 宙に浮かぶドータクンに地面技を封じられたトリさんは、先ずは様子見として『みずのはどう』で攻撃を仕掛ける。しかし射出された水流はドータクンに届く直前、形成された半透明のバリアである『ひかりのかべ』と『リフレクター』によってその威力を殆ど奪われてしまう。だが、元より大したダメージを見込んでいなかったカブトに動揺は無い。

 ドータクンは反撃とばかりに『じんつうりき』で攻撃を仕掛ける。『じんつうりき』の余波でフィールドが抉れる中、カブトからの指示を信じて待つトリさんは微動だにしない。不可視の念力がトリさんの目前まで迫り、その柔らかい体を今まさに砕かんとするその一瞬、カブトから指示された『ミラーコート』が発動して迫りくる『じんつうりき』を反転させて、その本来の発動者であるドータクンを壁に叩きつけた。ドータクンはこれ以上の戦闘続行は不能とみなされて、先ずはトリさんの勝利となった。

 

 次に繰り出されたポケモンはハガネール。しかしこうてつ島の個体の方が、より巨大でこのハガネールよりも凄まじい力を感じられたので今回の敵は然程恐れるほどでは無い、とカブトは判断した。『じわれ』は特性『がんじょう』で通用しないが、少なくとも『じしん』は通じるので今回は思い切って攻める事にする。

 カブトの指示通り『じしん』を発動するトリさん。しかし、ハガネールの予想外の行動で『じしん』は不発に終わる。ハガネールは『でんじふゆう』を使い空中へと浮かび上がったのだ。これなら素直に『だくりゅう』か『みずのはどう』を使っておくべきだったと歯噛みする。

 だが後悔してももう遅い。重さ400キロから放たれる『ヘビーボンバー』。さらに落下の速度も加わり、キン肉マン理論式に2倍の2倍で以下省略。

 正直考えたくも無い破壊力の一撃がトリさんを圧殺するべく激突する。ジムのフィールドにクレーターが出来て砂煙が立ち上る。結果は両者相討ち。相討ちの原因はトリさんがギリギリのところで使用した『カウンター』。ダメ元ではあったが何とか間に合った様だ。

 

 ジムリーダー最後のポケモンはトリデプス。見た事の無いポケモンだがカブトは焦らない。ルカちゃんならばきっと何とかしてくれるという、全く根拠の無い期待をかけているからだ。その心を読み取ったのかルカちゃんも同調して闘志を燃やす。

 

 勝負は一瞬でついた。ルカちゃんが『しんそく』を使ってトリデプスの背後へ回り込み『インファイト』でトリデプスが動かなくなるまで殴る蹴るの暴行を与える、ただそれだけの行為でトリデプスはダウンした。元よりトリデプスは前面からの攻撃に対する防御力は秀でているが、後ろを取られると残念ながらその自慢の防御力はまるで発揮されない。だから絶滅したのだろう。

 

 カブト達は割とあっさり三つ目のジムをクリアする事に成功したのだった。

 

 

 夜、カブトは手持ちポケモン達を部屋に置くと一人で夜空を見に出掛けた。ポケモン達と一緒にわちゃわちゃ見るのも良いのだが、誰にだって綺麗な景色を独占したいと考える時がある。カブトは月見酒ならぬ月見サイコソーダを一人で行う為に抜け出してきたのだ。

 しかしそんなカブトだが、ここでまさかの大失態を犯してしまう。サイコソーダを買っておく事を忘れたのだ。持ってくる事では無く、買っておく事だ。いや、ホント、何しに来たんだお前、と言われても仕方の無い失敗だ。サイコソーダの無い月見サイコソーダは、例えるなら筋肉の無いカイリキーの様な物。サイコソーダを忘れたカブトは目に見えて落ち込み、せめて月だけでも見ておこうと一人で防波堤に座り込んでいた。そして気がついた、あっ、今夜新月じゃん。ホント、お前何しに来たんだよ。

 

「ウェイッ! 冷たいっ!」

 

 ぼんやりと月の無い夜空を眺めるカブトの頬に何やら冷たい物が押し当てられる。唐突に与えられた冷たさに驚き振り向くと、そこにはサイコソーダをカブトの頬に押し当てたルカリオのルカちゃんの姿があった。

 

「うわぁっ! 何でここにいるってわかったの⁉︎」

 

 カブトはビビった。誰にも行き先を告げずに出てきた筈なのに場所がバレていて、さらに問題のサイコソーダまで持っていたからだ。

 

『フッ、容易きことよ。私は片時たりとも逃さずお前の事を見ているからな』

 

 二本あるサイコソーダの一本をカブトに渡し、もう一本のサイコソーダをその手に持つルカちゃん。あまり発達していない指で瓶を開けるのは一苦労だろうと思ったカブトがルカちゃんにサイコソーダの蓋を開けた瓶を渡そうとするが、ルカちゃんは瓶の上部を『はどうだん』で粉砕して飲むというタイプ・ワイルドな飲み方を披露してみせる。流石にカブトも苦笑い。

 

 普通の人は決して真似しないでください。

 

 二人でサイコソーダを飲みながら夜空を眺める。カブトは月の無い綺麗な夜空を見ながら、ルカちゃんはカブトの横顔を凝視しながら会話をする。

 

「月が綺麗だねー」

 

『現実逃避をするな。そしてその言葉、私以外には言うなよ?』

 

「え? ああ、良いですけど……?」

 

 カブトは何のことやら分からない様子。ルカちゃんはカブトが一切その様な気持ちを抱いていない事を心を読むまでも無く理解した。

 

「まぁ、それより良くここにいるって分かりましたね。後、サイコソーダ忘れたこと。誰にも行き先を言って無いのに……てか、いつから後ろに立ってました?」

 

『些細な事を気にする物だな。順に答えていこうか。場所と目的が分かったのは私が波導の力を活用したからだ。常に何処にいて何を考えているかを把握しておきたいしな。サイコソーダも然り。いつから後ろにと言われれば、最初から居たぞ』

 

 軽く笑みを浮かべながら回答するルカちゃん。最初からと言葉を濁したが、本当はいつからこの場にいたのだろうか。カブトは呑気にも、短い間で随分仲良くなれたなぁ、と質問とは全く別の事を考えていた。

 

『今、お前が私の話を聞いていない事も分かるぞ?』

 

「何っ! き、聞いてましたよ……?」

 

 話を聞いていなかった事を当てられて動揺した事で咄嗟についてしまった嘘。その一言で空気が変わる。

 スッと、ルカちゃんは目を細めると手に持った瓶を投げ捨て、『ボーンラッシュ』で使用する半透明のエネルギーである棒状の物体をカブトの喉元ギリギリに突き出し威嚇した。

 

『私に嘘が通じると思うなよ。私はお前の事なら何でも知っている。お前が今考えている事だけじゃ無い、お前の過去も、ポケモン達との出会いも全てだ。ルカリオに進化した時に全て読み取らせて貰った。だが、それだけでは満足出来ない。これからの事も全て読み取らせて貰う。故に私には隠し事は無意味だ。次は無いぞ』

 

「うー、ごめんなさい」

 

 悪いと思った事は素直に謝れる子、カブトくん。顔だけは良いから後は頭も良くなれば完璧なのに……

 そんなカブトの姿を見てルカちゃんも『ボーンラッシュ』のエネルギー物体をその手から消し去る。

 

『こちらこそ済まない、少し脅かしすぎたな』

 

 少し雰囲気の軟化したルカちゃんにカブトは新たな質問を投げかける。

 

「僕の事わかるって言ってたけど何処らへんまで読み取れるの?」

 

『そうだな……。お前の事限定ならば、例え世界の何処に居ようとも場所を把握し気持ちを理解する事は容易い』

 

「ほえー、凄いんですね」

 

 褒められて機嫌が良くなったのか上機嫌な顔をしてルカちゃんは言葉を続ける。

 

『ああ、今日一日のお前の行動も全て分かるぞ。今日お前は、午前3時にこうてつ島で起床した。トリトドンに任せていたタマゴの管理を交代する為だな。朝食を取った後はトイレに行ったな。そして、私と共にゲンから与えられた最終試練のハガネールを撃破。その後に昼食を取ったな。お前の昼食の内容は、きのみソテーだった筈だ。昼食を取った後は、こうてつ島の皆と別れを告げて海をトリトドンに乗って渡り、ミオシティまで戻ってきた。そしてそのままジム戦を終え夕食を取った後、お前は観光客の話を小耳に挟み、港から見える月が綺麗だと言う事を知った。皆が寝静まった深夜に月見に来て今に至る、と言うわけだ』

 

 何故か自分の事が知り尽くされているという恐怖。普通の人ならばルカちゃんに恐れという感情を抱くだろう。だがカブトは違う。生憎この男、頭の中にグランデシアの花畑を持つ男。あれだけの長広舌を聞かされても、ルカちゃんすっごーい! くらいの感想しか頭に浮かんでいないのだ。

 調子に乗ったルカちゃんは、カブトの既に欠点だらけである一人で月見しちゃおうぜ大作戦の致命的な欠点を指摘する。

 

『そもそも今の時間帯ポケモンセンターは閉まっているのだがお前はその事を理解していないだろう?』

 

「はっ! しまった! 帰れないじゃ無いですか⁉︎」

 

 ルカちゃんからの指摘に何も考えていない事が暴露されてしまった。杜撰、あまりにも杜撰すぎる……。

 そんなカブトの姿を見て呆れた様に笑みを浮かべたルカちゃんは、カブトの隣に座ってその体を密着させ肩に手を回す。

 

『今夜は私の側で寝ると良い。安心しろ、私がお前をずっと見守っておこう。そう、ずっとな…………』

 

 その言葉に甘えてカブトが横になる体制を取ろうとした時、既にルカちゃんが眠りに落ちている事に気がついた。カブトは苦笑して眠ってしまった彼女をボールに戻し、取り敢えず安全に寝れそうな場所を探す事にした。最悪、木の下にでも寝ようと考える。しかし、運が良い事に今夜の寝床はあっさり見つかった。何と深夜にも関わらずまだ明かりの灯った民泊があったのだ。

 

「ふっふっふっ、ルカちゃんや、僕の運の良さを舐めてもらったら困りますね! まだ事情を話して宿泊出来そうな場所がありましたよ! えーっと、何て名前だろ? は……、はと……、はとばの……やど? 何にせよラッキーですとも! それでは、御免ください!」

 

 カブトは今夜の寝床を見つけて意気揚々と民家に入っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いらっしゃいませ………』

 

『貴方をずっとお待ちしておりました……』




カブト
ストレンジャーハウスの女の子の二の舞。次のカブトはきっと幸福で完璧でもっと上手くやるでしょう。すやぁ…

ユキちゃん
すやぁ…

メガちゃん
すやぁ…

ポリさん
すやぁ…

トリさん
すやぁ…

ルカちゃん
ずっと港でスタンバッてました。普通のルカリオより波導パワーで出来ることが多いよ!すやぁ…

タマゴ
すやぁ…

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