ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

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気に食わなくて何回も書き直してたら遅くなった挙句、文字数がやけに多くなってしまったので再び分割です。ヤンデレ無しになってしまった……。


VS調教2

「これは……どうなってるのですか?」

 

 クレセリアに導かれ、ダークライによって作られた悪夢の世界からの脱出を図るカブト。彼は今困惑していた。館の様な場所から脱出に成功したものの、出口と思わしき扉を潜るとそこは現実世界ではなく新たな悪夢の世界だったのだ。

 目の前にはケッキングを模した先頭部を持つ通常の2倍の長さはあるであろう巨大な電車。先頭部に取り付けられた顔の浮かべる気味の悪い笑顔には全身が拒否するかのような嫌悪感を感じた。

 気がつくと薄暗い光に照らされた電車の座席に座らされていた。突如場面が変更された事に驚くも、カブトは悪夢であるが故に納得する。夢の中では往々にして人智を超えた事が起こる。リアル過ぎてあまりこれが夢であるという実感は無いが、先程と同じく夢の中であるなら何が起こっても可笑しくはないのだ。

 カブトは先ず探索する為に移動しようと試みるが、席を立とうにも不思議な力に縫い付けられた様に一歩も動く事ができない。体は進行方向に固定されているので視線だけで辺りを見渡すと、自分と同じような人が何人も座席に座っていた。窓から見える外の景色は荒廃した街並み。まるで時間が止まった様に世界は灰色に染まって静止していた。

 

「ここ……何処?」

 

 マサラタウンに生まれキッサキシティで育ったが故に電車というものに乗る機会が一切無かったカブト。初めての電車が悪夢の中という世にも奇妙な経験をする。

 

『悪夢の趣向が変わった様ですね。取り敢えずその場からの逃走を推奨します』

 

「動けないんですけどどうすれば……」

 

『気合で脱出してください』

 

 まさかの根性論。意外にもクレセリアさんは脳筋だった⁉︎と、内心驚きながらも、気合を出して脱出をしようとその場でもがいてみる。しかし、必死の抵抗も何の意味を持たない様で、意志に反して体はピクリとも動かない。

 

「ダメです!」

 

『わかりました! 何とかこちらでこの悪夢から別の悪夢へと飛び移れる様にします! それまで何がきても死なないで下さい!』

 

 通信越しにクレセリアの焦った声が聞こえる。その焦りが伝播しここ最近安定していたカブトの精神を再び削り始めた。え、マジ? 今回そんなヤバイの? そんな疑念を抱くと目に映る全てのものが恐ろしく見えてくる。もはや信じられるのはクレセリアさんだけだ、と考えるまでにカブトは追い詰められていた。

 

『次は〜串刺し〜串刺し〜』

 

 気の抜ける様な間抜けな声が車内に響く。電車初体験のカブトには何が何やらさっぱり分からなかったが、恐らくこのアナウンスは次の停車駅を示す物だと推測立てる。しかし、幾ら何でも常識的に考えて『串刺し』という名前の停車駅は無い。『久師崎』の聞き間違えだろうと苦笑いを浮かべる。『串刺し』だなんてそんな物騒な駅があるわけが無い。

 

 そしてアナウンスから暫くして、白と黒の制服を纏った車掌と思わしき二人が車内へとやって来た。その姿形だけを見れば普通の人だ。しかしその顔は、目、鼻、口は無いのっぺらぼうで、どう考えてもその赤黒い体色は人間の物では無い。その色で思い出すのは最初に追いかけ回されたオクタンの親戚の様な怪物、次に頭部を切断した料理人、どちらも同じ体色をしていた。

 素材使い回しかよ……、などとは思っても絶対に口に出さない。分別ある人なら誰だってそうするし、頭のおかしい(直球)カブト君もそうする。

 

 そんな内心を知ってか知らずか、彼らはカブトから二席程前の座席の横に来ると彼らは並んで立ち止まった。そして何処からとも無く徐ろに長い金属の棒状の物を取り出すと、一息にそれを三席前の座席に座っていた人の首に突き刺した。

 

 飛び散った血液が車窓に鮮やかな赤い花を咲かせる。首に棒を突き刺された人は白目を剥き暫く痙攣するとやがて動かなくなってしまった。突き刺した彼らは死体から金属棒を引き抜くと、乗客に一礼して車掌室へと帰っていった。

 電車初体験のカブト、都会の電車って死因の予告をアナウンスで行うのか……と、驚きを隠せない。

 

 いや、都会だろうと田舎だろうと電車で殺害予告は起こらないから。また一つ、カブトに変な認識が植え付けられてしまった……。

 

 カブトが目の前で起こった惨劇を受け止めきれずに茫然自失状態でいると、車内に再び新たなアナウンスが流れ始めた。

 

『次は〜八つ裂き〜八つ裂き〜』

 

 アナウンスと共にまた白黒二色の人型が現れて、今度はカブトの目の前の席に座る人をアナウンス通りに八つ裂きにする。ズタズタに引き裂かれたことで飛び散った血液や臓物がカブトの顔や体にも降りかかった。胸の奥から不快感が込み上げてくるが、血を拭おうにも体が動かせないのでいつまで経っても気持ち悪さを消す事ができない。

 

「クレセリアさんまだですか‼︎」

 

 そんな不快感が段々と迫ってくる自身の死という恐怖に加わり、さらにカブトを追い詰める。その額には冷や汗が浮かび、必死でこの場から逃げ出そうと体を動かそうとする。しかし当然の如く逃げ出すことは叶わない。全てをクレセリアに託すしか無いにも関わらずクレセリアからの返事は無い。こんな状況で冷静で居られるほどカブトは精神が成熟していないのだ。

 

『次は〜活け作り〜活け作り〜』

 

 無情にも流されるアナウンス、そして三度車両内に赤黒い死神が降臨する。死神はカブトを一瞥するとその貌の無い顔で確かに嗤った。

 

「クレセリアさん‼︎」

 

 再三の呼びかけ。しかしクレセリアは答えない。一歩一歩確実に歩みを進める怪物。それは服の内側からいかにも切れ味の良さそうな鈍い光を放つ刃物を取り出すと、動けないカブトの首筋へとそれを添える。そして勢い良くその刃物を—————

 

 

 

 

「はっ! ……無事……なのかな?」

 

 場面が切り替わる。首を切り落とされかけたその瞬間に暗転して世界そのものが変化した。先程の狭い電車内とは違い、今回の夢は電車の車窓から見えた荒廃世界にそっくりな場所。手足は動かし赤黒い車掌は何処にもいない。ただし、胸を締め付ける様な陰鬱な雰囲気はそのままだったが。

 

「クレセリアさん、クレセリアさん、聞こえますか? 何とか逃げ切れました。ありがとうございます!」

 

『何とか間に合って良かったです。悪夢の終わりも近いので油断せずに進んで下さい』

 

 通信が復活した事で、再びクレセリアの指示を受けながら悪夢の探索を開始する。今のところ目立った怪物の姿は無い。世界こそ荒廃しているが、今までの様に明確な敵というものが今回はまるで見つからない。

 

 暫く探索を続けると一人でコソコソと行動する人を見つけた。やっと見つけた人間。人恋しくなっていたカブトは無警戒に近づき話しかけてしまう。そして……

 

「ひっ! ば……化物! くっ……来るなぁ‼︎」

 

 化物呼ばわりされた挙句、石を投げられ逃げられた。理解が出来なかった。先程までの悪夢で出てきた様な怪物達なら兎も角、ただの人間にすぎない自分を化物呼ばわりするのはいくらなんでもおかしい。凄く失礼ってはっきりわかんだね。そして、地面に溜まった汚い水を鏡代わりにして自身の姿を写し漸く気がついた。

 ドス黒い程の赤い体色、ブヨブヨとした腐った肉を連想させる様な体、そして特徴的な貌の無い顔、カブト自身が化物になっていたのだと。

 

 もっと驚くかと思っていたが意外に冷静なカブト。案外化物が見つからない辺りで予想していたのかもしれない。とはいえ、この姿でこれ以上歩き回るのは危険だ。その為にカブトは手頃な建物の中に身を隠すことにした。

 

 倒壊しかけの建物に侵入したは良いものの、運が悪い事にその中には既に先客がいた。勿論、今のカブトの様な怪物的な姿では無いただの一般市民だ。恐らくこの場に避難してきたのだろう。そんな中に化物が侵入してきたらどうなるか、火を見るよりも明らかだ。

 大きな悲鳴を上げながら、カブトから出来るだけ離れようと建物に備え付けられた別の入り口に殺到する市民達。我先にと逃げ出したが故に、何人かの人間が後ろから迫る人達によって押しつぶされる。そしてごく一部の勇気ある人間が、カブトに対してポケモンを繰り出しカブトを倒す為に攻撃の指示を出した。

 

「いけ! カイロス! 『ハサミギロチン』だ!」

 

「任せた! イワーク! 『がんせきふうじ』!」

 

「頼むぞ! ルージュラ! 『ふぶき』!」

 

 珍獣三人衆から繰り出される連携攻撃。これにはカブトも堪らず逃げ出した。特にルージュラが命令を無視して放ってくる『あくまのキッス』は絶対に避けねばならない(確信)。背後から飛んできたキスを紙一重で躱し安心していると、地中に潜り先回りをしていたイワークに逃走経路を塞がれてしまう。ノータイムで頭上から投擲される『がんせきふうじ』をかろうじて捌ききると、後ろから飛んできた『あくまのキッス』が何とイワークに誤爆してしまった。

 通常の『あくまのキッス』は相手を眠らせる効果を持つ。ポケモンやトレーナーの技量によって多少の差異はあるが大体同じ効果を持つ。だがこの『あくまのキッス』は違った。何故か誤爆したイワークが爆散し、その体を構成する岩石一つ残らず腐り落ちたのだ。これにはカブト君も大焦り。目の前で岩が腐食し、その原型をも残さず崩れ落ちるという奇怪な瞬間を目撃してしまったのだ。永眠させるという点では同じ効果かもしれないが……。この事にカブトは怪物に追いかけ回されることよりも恐怖を感じていた。

 

 背を向けて急いで駆け出すカブト。そして彼を追跡するかの様に駆け出す一筋の影。影の名はカイロス、そして今は巨大な顔面による威嚇攻撃に特化したサワムラーフォルムだ。まるで意味が分からんぞ! 

 

 こんな話を聞いたことは無いだろうか? サワムラー、カイロスと同一人物説を! (ありません)

 

 何とかして建物から出て珍獣達の追撃を振り切り、そして自分の安全を確認して一息ついた所で—————全力で横に飛び退いた。

 

 先程まで自分が居た場所を通り過ぎた巨大な緑の影。その見慣れた姿にそれが誰のメガヤンマなのか瞬間的に察知する。

 もしかしたら、と淡い期待がカブトの胸に湧き上がった。メガちゃんなら僕の事をわかってくれるかもしれない、と。しかしその希望は無残にも打ち砕かれることとなる。幾ら声を掛けようと、幾ら身振り手振りを付けようともメガちゃんは自分自身をカブトだと理解してくれる事は決して無かった。

 カブトは必死でメガちゃんの攻撃を躱し続けるが、間違いなく内臓にダメージが蓄積されている事を感じていた。

 倒れるのも時間の問題だと考えたカブトは博打に出る事を決意する。フェイントを入れてその隙にメガちゃんを倒す。仮にも自分の手持ちポケモンにそんな事をしたくは無かったが、このまま続けると自身の体がもたない事をカブトは理解していた。

 

 一世一代の賭け。右に踏み込んだと見せかけてから左に飛び退く。そしてメガちゃんの羽を掴みそのまま戦闘不能へと持っていく。その作戦は成功したかの様に見えた。あるポケモンの介入が無ければ。

 

 左に飛び退いたカブトの軸足に青白色の光線が直撃する。それはカブトの足を氷漬けにして地面に縫いとめた。この技には見覚えがある。これを使うポケモンをカブトは知っている。何故なら一番慣れ親しんだポケモンだから。そのポケモンは……

 

「ユキちゃん……」

 

 カブトにとっての実の家族の様な存在であり一番の相棒。当然その実力も知り尽くしている。生半可なポケモンを一撃で葬り去る程の力を自由自在に操る彼女の前ではただの人間如き数秒も持たないだろう。カブトには知る由もないが、現に彼女は既に何人もの女性にあの世への片道切符を渡している。下手をすれば殺人経験はそこら辺の悪の組織のポケモンより積んでいる程だ。

 

 その培われた実力に弱体化著しいカブトは到底敵うはずもなく、何の抵抗もできぬまま『めざましビンタ』で手と足の骨をへし折られた。痛みに絶叫する口に氷を押し込められてその声が出せない様に細工される。

 

 やけに手慣れた方法でテキパキと処理を進められる。そんな絶望的な状況に、ダメ押しとばかりにルカリオのルカちゃんまでやって来た。ルカちゃんは此方を見るだけで助ける姿勢一つ見せてくれない。恐らく彼女もこの怪物をカブトだと認識できないのだろう。

 

 

 

 本当にどうしようも無い状況。今、カブトにはこの世界に誰一人として味方がいないのだ。信じていたポケモン達にも自分だと認識されず、誰一人としての救援も得られない。

 いや、違う。いる。たった一人だけカブトを助ける事ができる存在が。力と光が失せ、虚になっていたカブトの瞳に光が宿る。そうだ、未だ彼女がいる。彼女なら僕の事を僕だとわかってくれる。そんな希望が彼に宿る——————周到に張られた罠だとも気付かずに。

 

 口は氷で塞がれて声を出せない。だが、彼女とはこの悪夢に囚われたからいつも脳内で会話してきたのだ。ならばきっと念じるだけで彼女に届く。全てを彼女に託して、彼女が来てくれる事を信じて、彼女がカブトを理解し助けてくれる事を信じて、これまで生きてきた人生の中で何よりも強くカブトは叫んだ。

 

「助けてください!! クレセリアさん!!!」

 

 そしてその願いは、

 

『ご指名入りましたクレセリアさんちゃんで〜す!』

 

 アホっぽい言葉と共に当然の如く叶えられた。

 

 ボロボロのカブトを背に、彼を害する三匹のポケモンから庇う様に立ち塞がるクレセリアさん。

 その夜の様な漆黒の体に特徴的な白い頭部。そして夜空に映える星の様な輝きを放つ青い瞳。美しさと同時に禍々しさをも感じるその姿は敵対するものには恐怖を、そして共に戦う者には絶対的なる安心を与える正に優美なる王者の姿。

 彼女は敵対する三匹から視線を外しカブトに対して優しく微笑みかけながら言葉を紡ぐ。

 

『もう大丈夫ですよ、私が来たからね!』

 

 その瞬間、三匹が一斉にクレセリアさんに攻撃を仕掛けた。ユキちゃんが冷気を帯びた光線である『れいとうビーム』を、メガちゃんは広範囲を殲滅する蟲ポケモンの操る波動である『むしのさざめき』を、ルカちゃんは言わずと知れた青い高エネルギー圧縮球『はどうだん』を。それぞれがクレセリアさんに対して爆発的な破壊力を兼ね備えた一撃。加えて使い手も一流であるが故に、それをまともに食らえば普通は間違いなく消滅してしまうだろう。

 

 だが、彼女は普通では無い。元より生まれついた種族がポケモン達の中でも一線を画す存在であった事、さらに彼女自身が異常な強さを誇っている事、そして彼女が自分の居場所となってくれるかもしれない人に助けを求められて今最高の精神状態である事、それらの要因が合わさった今の彼女は何者にも負ける事などありはしないのた。

 

 彼女らがクレセリアさんに向けて放った技、その全てを真っ向から『あくのはどう』で弾き返す。タイプ相性など知らん! といった様なゴリ押しスタイルに三匹があっけにとられた隙をつき彼女は速攻を仕掛ける。

 

 まずはメガちゃんの懐へと潜り込み、その無防備な腹に再び邪悪なる波動を叩き込む。そしてその体を掴むとユキちゃんから再び放たれた『れいとうビーム』の軌道上に投げ捨てて自身の盾とする。しかしその瞬間、背後から『はどうだん』によってその体を撃ち抜かれてしまう。勝ちを確信するルカちゃん。しかし、次の瞬間には自身の影から伸ばされたアッパーカットぎみの『だましうち』に意識を刈り取られてしまった。そして最後に、攻撃のモーションに入ったユキちゃんを、辺りの被害を気にせずに撒き散らした『あやしいかぜ』で仕留めた。当然逃げ惑う市民たちや建物も巻き添えを喰らうが、そんな事クレセリアさんの知ったことでは無い。カブト以外なら誰が犠牲になろうが関係ないのだから。

 

 死屍累々の山を築き上げて満足そうなクレセリアさんは、手足を折られて動けないカブトを抱き抱えるとそのまま彼を何処かへと連れて行ってしまうのであった。

 




カブト君
今日も今日とて夢の中。きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。眠ってるんだぜ。それで。(平和な世界)

クレセリアちゃんさん
早く病みパートに入って(懇願)お前の悪夢なげぇんだよ!(プチギレ)

悪夢ポッケモン
ゲスト出演の皆さん。多分ポケモン人気投票やったら上位3名に入るであろうお方達。

悪夢手持ちポッケモン
私達は何故生み出されたのか?

A.ネガキャンするため

車掌さん
何やってんだよ、サブウェイマスター!猿夢に就職しました。
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