ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

15 / 23
久し振り過ぎてヤンデレ力が低下している……。シンオウ編が終われば多分向上すると思われる。


VSやや修羅場2

 メガヤンマのメガちゃんを背中にくっ付けるという斬新極まりない飛行方法で散らばった手持ちポケモンを探す事早数分。カブトはある一つの思いに囚われていた。

 

(もしかして、これ犯罪なんじゃ……!)

 

 そう、カブトは『そらをとぶ』の技マシンを使用できる許可バッジを持っていないのだ! 今までは低空飛行であったから良いものの、今回のようにポケモンを探す為に高い位置まで空を飛ぶことは明確な犯罪である。

 

 余談ではあるが、手持ちのポケモンが殺人や、場合によるが故意による殺ポケを行った場合トレーナーが監督不届きとして罰せられる事になる。もっともポケモンは収縮化現象なるもののおかげでそう簡単には死なないのだが。

 

 カブト本人は気づいていないが、シリアルキラーを約2名ほど手持ちに加えている時点で大罪人確定だ。今更無免許運転が加わった所で些細な事だとしか言いようがない。

 

 そんなこんなで世紀の大悪人カブトは顔を青くしながらも、さっさとポケモンを探すべく先程よりも遥かに集中して辺りを観察する。その甲斐あってか、存外早くにルカリオのルカちゃんを見つけることが出来た。彼女を見つける事が出来たら後は簡単だ。彼女の波導で残りのポケモン達を探してやれば良い。カブトも波導を使う事が出来るが、ルカちゃんと比べると範囲が狭く精度が悪い。いや、この場合はルカちゃんの波導操作能力が格別に高いというべきだろう。そもそもの話、ただの波導使いとルカリオとではそもそも扱える波導が違いすぎる。比べる事がおかしいのだ。

 

「ルカちゃーん! 無事ですかー!」

 

 カブトは叫びながら上空から飛び降りる。気分は紐なしバンジージャンプ。そしてYAMA育ちの上位互換(?)であるYUKI YAMA育ち、かつ半分とはいえ超マサラ人の血を受け継いでいる事による強靭な肉体が遥か上空からの着地の衝撃をほぼゼロへと抑える事に成功した。彼は無傷だ。その代わりに、カブトを中心として円形状に大地に消えない大きなクレーターを刻みつける事になってしまったのだが。

 なお、普通にメガちゃんに地上まで運んで貰えば良いだけの話なので、この驚異的な大ジャンプは全くの無意味である。

 

 そんな無駄に芸術点の高そうな着地を披露して見せたカブトに呆れながらメガちゃんが地上に舞い戻った。

 

『カブト、態々そんな紐なしバンジーみたいな真似しなくても普通に下ろしてあげたのに……。それはそれとして、ボクは雪女に少し用事があってね。悪いけど呼び出してくれないかな?』

 

 珍しくメガちゃんが他のポケモンと交流を持とうとしていることに驚いたカブトは喜んでユキちゃんをその場に残しておく。彼の手持ちポケモン達はトレーナーとポケモンとの信頼関係は厚くとも、ポケモンとポケモン同士の横の繋がりは皆無。むしろそれどころか、いがみ合っているという何とも言えない関係性をしている。カブトは自身の手持ち達の仲が悪いということに気がついていないが、若干関係性が希薄なのではないか? と思っていたのでこういう交流は喜ばしいと思っている。

 

 

 まぁ、現実は仲良く交流じゃなくて殺し合いになるんだけどな! 

 

 

 そんな事をカケラも想像出来ないカブトは、ユキちゃんをその場に残したままルカちゃんのいる場所まで走っていってしまった。

 

 その場に残されたのは巨大な蜻蛉と雪女。なんともミスマッチな組み合わせだが、この二人は一応カブトパーティー最古参勢。さらに、互いが互いを疎ましく思っているという共通点付きだ。

 

 そんな二人が同じ場所に残されればどうなるか? それは火を見るより明らかだ。

 

 

 殺意を固めて作られた不可視の斬撃が、決して溶けない氷を用いた弾丸が、互いの命を奪おうと交差する。

 

 激突。からの撤退。二人がほぼ同時に後方へと飛び退る。互いが互いの視線を外さぬままに。

 

『あら、話があるんじゃ無かったの? 随分と乱暴なお話ね』

 

 口火を切ったのはユキちゃん。目を細め、薄笑いを口端に浮かべてメガちゃんを挑発する。

 

『ふん、話をしたってどうせこうなるんだ。ボクとキミとの間に会話は成立しない。違うかい?』

 

 対して、その声すらも耳に入れたくないという様に首を振ったメガちゃんは、その鋭い眼光でユキちゃんを射殺さんばかりに睨み付ける。

 

『少しばかり早くカブトに出会っただけの癖に、カブトが自分の所有物だと言い張るその姿は非常に滑稽で不愉快だ。カブトはボクと結ばれる、そう決まっているんだ。キミ如きに出しゃばられると、ボクもカブトも迷惑なんだよ。後々にまで悔恨が続かない様に今ここでその命を断つ』

 

『その言葉、そっくり貴方にお返しするわ。カブトの慈悲で生き残っているだけの羽虫風情が、あまり調子に乗らないで頂戴』

 

 そして、彼女らは相手の命を断ちきる為に再び攻勢を掛ける。互いの愛する人の所有権を賭けて……! 

 

 

 

 ★★★★★★★★

 

 一方その頃、何故か勝手に自分自身のいざ知らぬ所で自身の身を賭けた戦いが巻き起こる事に定評のあるカブトは、自分の手持ちポケモンであるルカリオのルカちゃんに追い詰められていた。

 

「えーと、ルカちゃん? これはどういう……?」

 

 必死に絞り出した言葉は虚空へと溶けていく。胸ぐらを掴まれて地面に押し倒されたカブトが出来る事など殆ど無い。やろうと思えばルカリオに押し倒された程度抜け出す事など造作もないが、その過程で万が一ルカちゃんが傷ついてしまうといけないのでカブトはなんの行動にも移せないのだ。

 

『どういう事……、だと? お前……自分が私に何をしたのか分からないのか⁉︎』

 

 犬歯を剥き出しにして彼女は吼える。だが、これ程までに怒りを露わにされてもカブトには心当たりが殆ど無い。

 

「もしかして、発見が遅れたしまった事ですか? それは本当に悪いと思って……」

 

『違う! そんな事じゃない! お前の悪事はただ一つ! お前がダークライの悪夢に囚われた事だ!』

 

「……はい?」

 

 思わずカブトはルカちゃんに聞き返してしまう。もしかして彼女も覇王系なのだろうか? 一抹の不安が頭をよぎる。もしそうならば、ユキちゃんと相性が悪くて不倶戴天の敵になってしまうかもしれない、と。完全に杞憂であるが実際あまり間違っていない。

 

『ダークライにお前が囚われている際、私はお前を監視し続ける事が出来なかった。それは別に良い、奴はそんじゃそこらの凡百どもとは格が違う。監視し続ける事が出来ずとも仕方あるまい。だが、その後に悪夢に囚われている間の記憶すら覗けないとはどう言う事だ!』

 

 カブトの記憶には実はある細工が施されている。どこぞのクレセリアさんが、先日その力を持ってしてカブトの記憶を弄ったのだ。理由は三つ。一つは悪夢の影響で後々の生活に支障をきたさない様にする為。もう一つは治療にかこつけてもう一度カブトに会いにいく為。最後の一つは、自身とカブトの記憶を自分だけで独占する為だ。その為今のカブトは、悪夢に囚われてクレセリアさんに助けてもらった程度の記憶しか持っていない。

 

「そう言われましても……」

 

『そうもこうもない! 私は常にお前の事を知り尽くしていなければならないのだ! 無論、夢とて例外ではない! 今のお前の身長体重座高視力聴力嗅覚は勿論、お前が今日朝食を取っていないことも、足の爪がいつも切り揃えている長さから0.5㎝程伸びていることも、電子機器の暗証番号も、体にある黒子の数も手に刻まれたシワまで全てだ! お前の全てを私は知っているのに! 何故あのような女どもが知っていて、私が知らない事があるのだ! その様なことは断じて許されない! 

 

 

 ………………済まない、取り乱した。私とした事が熱くなりすぎてしまった様だ』

 

 怒りに任せて言葉を吐き出した事で気分が落ち着き冷静になったルカちゃん。本来の彼女は冷静沈着、どんな時でもカブトの事を監視し続けるクールなポケモンだ。

 

『先程までの言葉は忘れてくれ。ただ、最後にこれだけは覚えておいて欲しい』

 

 地面に押しつけたカブトを立ち上がらせると、彼女はカブトの目を見ずに伏し目がちで静かに言葉を溢す。

 

『…………もう、私の目の届かない所に絶対に行くな。常に私の側にいてくれ。私の願いはそれだけだ』

 

 そう告げた彼女の姿はいつもの堂々とした立ち振る舞いや、鋭利な冷たさは鳴りを潜めてどこか物悲しげで儚げだった。

 

 そんな姿を見せられて、はい、そうですか、と終われるカブトではない。

 故に考えた。彼の持つ残念な頭で彼女を励ます方法を考えて、考えて、考えた。そして、一瞬にも満たない僅かな時間で導きだしたその結果の通りに行動する事にした。

 

「手を出してください」

 

『こうか?』

 

 そっと差し出された彼女の手をカブトの掌は優しく包み込む。そしてそのまま彼女の手を握りしめると彼女の手を引いて歩き出そうとする。

 

「それじゃ、他の仲間を探しに行きましょうか」

 

『ちょっ、ちょっと待て。何をしているんだ⁉︎』

 

 珍しく、焦った様に問いかけるルカちゃん。彼女は普段からあまり表情を変えないのでこんな顔をするのは珍しい。

 

「んー、ルカちゃんならもう分かってるんじゃないですか? 僕なりにルカちゃんの願いを叶えようと思いましてね。流石にずっとは無理ですけど今日一日くらいは一緒に手を繋いでいましょう。ほら、こうすれば……」

 

 僕がルカちゃんの目の届かない所に行っちゃう事はないでしょう? 

 

 カブトはまだボンヤリとしているルカちゃんにそう告げると、彼女を引いて足を前に出して今度こそ歩き始める。その後を少し遅れて引っ張られる様にルカちゃんも足を踏み出した。

 

「あの夕日に向かって走りだせ!」

 

『まだ朝だから夕日は出てないぞ。全く……もう離さないからな』

 

 ★★★★★★★★★

 

『何故貴方は軽々しくカブト様の手を握っているですか? ねぇ、何故? 私、気になります……。貴方に何の権利があってカブト様に触れているのですか……? 何故なんですか……?』

 

 どろり、と地面から湧き上がる極彩色の液体。溢れ出したそれは、カブトとカブトに手を引かれたルカちゃんの周りを取り囲む。足下から湧き上がる液体の正体は地面に潜んでいたトリトドンのトリさん。逸れたカブトの手持ちポケモンの一人だ。

 

 トリさんは地面から飛び出して彼女の体に纏わり付くと、ルカちゃんの体を伝って登りあげ彼女を拘束する。その際に一度もカブトの体に触れないのはトリさんのカブトに対する崇拝具合の現れだろう。

 

『くっ! 邪魔だッ‼︎』

 

 ルカちゃんは波導を操る能力が他のルカリオと比べて非常に高い。その為、他のルカリオでは難しい事でも彼女なら容易く行うことが出来る。彼女は『はどうだん』の応用として全身から波導を放射状に解き放ち、纏わり付くように自身の体を拘束するトリさんを細切れになる様に吹き飛ばした。 

 

『カブト様は貴方如きが軽々しく触れて良い方ではありません……。即刻手を離してください……』

 

 粉々になって飛び散った流体の体はカブトの前で集まり元の姿に再生する。彼女の持つ最大の特徴、それは凄まじい再生力。その再生力は細胞一つでも残っていれば復活するほどのものだ。

 

「およ! びっくり。トリさん無事で良かったよ。今、ルカちゃんと一緒に君達を探しに行こうとしていた所なんだ」

 

『カブト様、貴方もご無事で何よりです。差し出がましいとは理解しておりますが、その様な穢らわしい犬に軽々しく触れるのは如何なものかと思います……。貴方様にはその様なものは相応しくありません……』

 

 自身を睨みつけるルカちゃんには目もくれず、カブトの目の前で頭を下げたまま進言するトリさん。本来、自身の主の意向に反する言葉を彼女は言わない。だが、彼女はカブトを守る為なら自身の命にさえ頓着しない性分を持つ。それこそ、ストーカー紛いのルカちゃんをカブトから引き剥がす為には自身が処刑されても構わない、と考え実行する程度には。自身の命すら惜しくない、そんな覚悟を持って彼女は進言したのだ。

 

 いつの時代だよ! 時代錯誤にも程がある。

 

「いやいや、そんな事は無いさ。ルカちゃんは良い子だからね。それよりトリさんも無事で嬉しいよ」

 

『私は貴方様に命を捧げた身。貴方様以外の為には死にません』

 

 彼女はそう言うと、ボールの中に戻りカブトの足下に転がり静止する。カブトが拾い上げたそれをルカちゃんは今にも叩き壊したそうに睨みつけていたが、カブトの目の前で流石に自重したのか睨みつけるだけで留めていた。

 

 トリさんを回収したカブトは、最後の一人であるポリゴン2のポリさんをルカちゃんの手を引いて探しに行くのだった。

 

 ★★★★★★★★★

 

 彼女のポケ生は常に否定と共にあった。

 

 失敗作、そう呼ばれた事も一度や二度ではない。別にそれが理由で酷い扱いを受けたわけでは断じて無い。だが、彼女から見た人々の姿は、疲れ果てた顔をしていて常に溜息をつくような姿ばかりだった。

 聡い彼女は自分の生みの親にそんな表情をさせている事の原因が、自分自身にある事に酷く嫌気がさしていた。

 故に、新しいトレーナーのポケモンになってもあまり期待はしていなかった。どうせ、私はここでも役に立つ事は出来ない、と。

 

 すぐに捨てられると思った。また生みの親たちと同じ様な顔をさせてしまうかも知れないと思った。

 だが、新しいトレーナーはその様な事は一切しなかった。いつも何を考えているのか分からない(実際は何も考えていない)笑みを浮かべてフワフワと生きている今のトレーナー。彼は彼女を見捨てなかった。必要としてくれた。逸れても探し出してくれた。それだけで彼女は救われたのだ。

 

 ならば、と彼女は決意する。かつての親元では役に立たなかった。だから、今度こそはもっと役に立てる様に自身のトレーナーの為に頑張っていこう、ポリさんはカブトに回収されたボールの中でそう誓うのであった。

 




カブト
アホの子化が加速する。この勢いはもう止まらないぜ!クレセリアさんに記憶改変を受けた。

ルカちゃん
カブトが自分の預かり知らぬ所で何かイベントを体験する事が許せない子。病んでばっかもあれなんでデレ期。

トリさん
病みの性質上積極的に来れないせいで中々扱い難かったりする。出番を増やしてあげたい。

ポリさん
何か色々言ってるけど要約すると「これからもお仕事頑張るぞ!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。