ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

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どうせシンオウ編最後のバトルだし書いてみようと思ったら5000字に収まらなくなって前後編。これでもバトルの展開削ったんすよ……。


ジラーチ『私は願いを叶えるポケモン。なんでも願いを聞いてあげよう』

アオギリ太『海だ!世界を海で満たすのです!』

ジラーチ『成る程、よく分かった』






ジラーチ『アンケートへのご協力、感謝する』


VSストーカー2

 ポリゴンZに進化した事で制御不能のバーサーカーと化したポリさんに協調性というものを教え込もうとしたカブト。しかし彼女は一筋縄ではいかず、何度教え込んでも手持ちを滅亡させて自分こそが最も頼れる事をカブトに証明する事に拘っていた。

 

 だが長きに渡る戦いの結果、何とかカブトの目の届く範囲で人やポケモンを絶滅させようとしない、という事を了承させる事に成功したのだった。

 

 そして新しく仲間を迎え入れたカブトは、彼の故郷キッサキシティへと再び舞い戻ってきたのであった。

 

「ただいまー」

 

 久しぶりの我が家の扉を開ける。この中でこの家を知っているのはユキちゃんだけだ。他のポケモン達は皆もの珍しそうに内装を眺めている。

 

「おかえり! カブトくん! 久しぶり!」

 

「ほぼ毎日話はしてたじゃないですか……。はい、ただいま戻りました。スズナさん」

 

 突然現れてカブトを抱きしめる女に警戒心と嫉妬心を露わにする手持ちポケモン達。ボールに入った状態でもガタガタと震えて抗議の意を示す。彼女はキッサキジムリーダーのスズナ。カブトが旅に出た後、何故か我がもの顔でカブトの家に住み着いていたダイヤモンドダストガールである。

 

「てか、合鍵渡してましたっけ?」

 

 至極真っ当なカブトの疑問にスズナは懐から取り出した鍵を見せつける。

 

「うん、鍵はちゃんとここにあるよ」

 

 それを見てカブトの疑問は解消された。どうやら覚えていないだけで合鍵を渡していたらしい、と。

 実際の所は、彼女がカブトの隙をついて勝手に作った合鍵なのだがそれは知らぬが仏というやつであろう。ちなみに、スズナはカブトと同居している祖母にはカブトから合鍵を貰ったと伝えて誤魔化してある。外堀から埋めていくスタイルだ。彼女はカブトのいない間に家にカメラを仕掛けたりやりたい放題だったがそれを知るものは誰一人としていない。

 

 そうやって二人で感動の再会? を楽しんでいると、そこにのそりのそりと新たな人物がやって来た。

 

『あら、カブトくん。久しぶりね、旅はどうだった?』

 

 玄関近くの部屋からひょこりと顔を覗かせたのは、僅かな風でなびく金髪と厚い唇が特徴的な女性。煌びやかな赤いドレスをその身に纏いパッチリと開かれた目は非常に人の目を惹くであろうこと間違い無しだ。しかも性格は温厚で仕草も気品が漂っている。何て素晴らしい女性なんだ! 

 

 ここまで言えばもうお分かりですね? 

 

 そう、彼女はカブトの祖母の手持ちポケモン、ルージュラの『まさこ』さんだ。

 

 余談ではあるが、まさこさんはキッサキ神殿に封じられている某ポケモンがかつて封印を破って暴れ始めた時に、いくら某ワロスにスロースタートというハンデがあったとは言え伝説のポケモン相手にタイマンで勝利して再封印したというトチ狂った実績を持っている。

 

「あっ、まさこさん! お久しぶりです。お元気でしたか? ユキちゃんもボールの中で喜んでますよ!」

 

 旅を経て強くなった事で力の差をよりヒシヒシと感じて、ガタガタと震えているユキちゃん入りのボールを手に取ったカブトは満面の笑みでまさこさんに挨拶を返す。このトレーナーはポケモンの気持ちが分からない……。

 

『あらあら、そんな怯えなくても良いのに。それよりカブトくん、男子三日あわざれば何とやらね。本当に立派になって……』

 

 このポケモン、すっかりおかん気取りである。若干涙ぐんでいるまさこさんの隣にやって来たのはカブトの祖母、まさこさんのトレーナーだ。

 

「おお、おかえり。随分と時間がかかっとるが寄り道でもして来たのかい? もっと早く戻って来ると思っていたよ」

 

 なお、このお婆ちゃんジム戦全てを三日以内でこなして来ると思っていた模様。そんなバケモノムーブできる奴はこの世に居ないから。え? 昔やった事がある? …………は? (困惑)

 

「お婆ちゃんただいまー。ここが最後のジム戦。スズナさんがラストのジムリーダーだよ」

 

 自身の祖母の言葉に何一つツッコミを入れずにジム戦に向かう意思表示をするカブト。もはやこの程度では動じない。そう、この男は旅を経て精神的に一歩も二歩も成長したのだ。頭脳面は考えないものとする。

 

「へえ、そうなのかい。ならスズナ、相手してやりな」

 

「はい! 分かりました! じゃあ、カブトくん。ジムで待っているからね! ちゃんと気合入れてこないとスズナには勝てないよ!」

 

 顔つきがジムリーダーのそれとなったスズナは家から出てキッサキジムへと向かっていった。おそらく今からジム戦の準備をするのだろう。

 

 これが最後のバッジ、そう考えると緊張して来たカブトは自分の頬を叩いて気合を入れ直そうとする。しかし未だに若干体は強張ったままだ。

 

『大丈夫よカブト、これまで培ってきた貴方と私の力を信じなさい。普段通りに戦えば万が一も億が一も起こることはないわ』

 

 そんなカブトの姿を見て真っ先に声を掛けたのはやはりユキちゃん。勝手にボールから出てきた彼女はカブトの頬をその手で撫でながら、先程までの震えていた姿とは大違いに毅然とした言葉でカブトを励ました。

 さらっと他のポケモンを戦力外扱いしてる辺り、今日も今日とて平常運転らしい。

 

「ありがとうございます、ユキちゃん。スズナさんは強敵ですが必ずや勝利を奪い取りましょう」

 

 ユキちゃんの言葉で闘志に火が付いたカブトは、無意味に服を翻して颯爽とキッサキジムへと向かうのであった。

 

 

 ★★★★★★★★

 

「ルールは3対3の道具無し。これで構わないかな?」

 

「ええ、問題ありません」

 

 キッサキジムのギミックを攻略してジムリーダー、スズナの前に立つカブト。ここに至るまでに幾人もの顔見知りジムトレーナーを粉砕してきた。普段浮かべているのほほんとした表情とは大きく異なり、敗北など微塵も考えていないといった表情でスズナを睨み付ける。彼女はそんな珍しい表情も良い! と喜んでいたが。集中しろよ。

 

「気合十分! って感じだね! でもスズナは負けないよ!」

 

「僕もここまで来て負けるわけにはいかないのです。気合で蹴散らしますので恨みない様に」

 

「それでは、バトル開始!」

 

 バトル開始の宣言とともに互いの先発ポケモンを繰り出した。

 

「ポリさん、バトルスタンバイ!」

 

『任せて! どんな奴が来ても絶対に絶滅させるから! 私が一番役に立てるって証明してあげる!』

 

 カブトが繰り出したのは挙動のおかしさに定評のあるポリさん。彼女の意気込みは十分。狂気に染まったその力を遺憾無く発揮しようと張り切っている。彼女の狂気に触れた性格ではトレーナーを狙いかねないが今回は大丈夫な様だ。

 

「行け! ユキノオー!」

 

 対してスズナが繰り出したのはその体に大雪を纏わせた草木の巨人。そいつがフィールドに足をつけると地響きが起こる。何とこのユキノオー、通常の個体より一回りも二回りも大きい姿をしている。まさしく『雪の王』に相応しい体軀を持つポケモンだ。

 

 ユキノオーの登場とともにアリーナの気温が大幅に下がって『あられ』が降り始める。ユキノオーの特性、『ゆきふらし』の効果で天候を操作したのだ。

 

「ポリさん!」

 

「ユキノオー!」

 

「『わるだくみ』!」

 

「『オーロラベール』を展開して!」

 

 指示はほぼ同時。ポリさんは『わるだくみ』の指示を受けて、その怪しげな挙動を更に危険極まりない動きへと変貌させる。

 ユキノオーは自身を覆う様なオーロラを展開。これによってユキノオーは並大抵では倒れ無い防御能力を得た。

 

 序盤の展開は互いに上々。故に戦いはここからが本番だ。

 

「ポリさん! 『こうそくいどう』で撹乱しつつ『テクスチャー』虫タイプ! タイミングは僕に合わせて!」

 

『わかったー!』

 

 本当に分かってるのかと問いただしたくなる様な気の抜けたセリフと共にポリさんはユキノオーを中心に滅茶苦茶に駆け回る。ユキノオーは最初こそ目でポリさんの姿を捉えていたものの、次第にその姿を目視する事が出来なくなってしまった。

 

「今だ! 『シグナルビーム』!」

 

 ユキノオーが完全にポリさんを見失ったその一瞬の隙を突き『シグナルビーム』がその巨体に突き刺さる。苦悶の声をあげるユキノオーから察するに『わるだくみ』で高められた威力は『オーロラベール』による防御も貫いてかなりのダメージを与えた様だ。

 

「ユキノオー! 『ふぶき』で一掃して!」

 

 しかし、その勝利も一瞬。すぐさま体勢を立て直したユキノオーが天候の『あられ』を利用して広範囲に『ふぶき』を放つ。これでは幾ら『こうそくいどう』で素早さを上げても躱しきれ無い。ならば、

 

「『まもる』だ! ポリさん!」

 

 その全身全霊を防御に特化させる。これならば幾ら全方位『ふぶき』であろうと身を守れる。しかしその程度で防ぎ切れるほどジムリーダーは甘くない。

 

『ふぶき』による視界妨害を利用したユキノオーは、その巨体に見合わない素早い動きでポリさんに接近する。気がついた所でもう遅い。先程『まもる』に力を割いたポリさんでは次の攻撃を防ぐ事も躱すこともできはし無い。

 

「『ウッドハンマー』!」

 

 ユキノオーの持つその巨腕が回避もままならないポリさんを打ち砕く。無残にも錐揉み回転をしながら吹き飛ばされ壁に打ち付けられるポリさん。その性能をほぼ攻撃に回してしまったが故の彼女の紙の如き耐久ではあの高威力『ウッドハンマー』を耐え切ることは難しい。

 

 だが、彼女はそれ程のダメージを負いながらも立ち上がって見せた。これにはスズナもユキノオーも驚きを隠せ無い。何故紙耐久のポリさんが耐え切れたのか。それは彼女が『ふぶき』を受ける前にあらかじめカブトに指示されていた『テクスチャー2』で炎タイプへと変化していたから……ではない。確かにタイプ変化でワンチャンにかける事を指示したのはカブトだ。しかし、それだけではポリさんは耐え切れなかった。彼女がこうして立ち上がる事が出来た訳、それはポリさんがカブトにかける想いの強さにある。異形の姿になってでもカブトの役に立ちたいという願い、即ち……

 

 

 

 愛情補正である(自棄っぱち)

 

 

「ポリさん、まだ行けますか?」

 

 再び立ち上がったポリさんに体力の確認を取る。当然彼女がそれを否定する筈も無く戦闘続行の意思を見せた。

 

『まだまだだよ! まだ私が一番役に立つって証明出来ていないからね!』

 

 気丈に振る舞って見せるがその体力はもはや僅か。次の攻撃どころか『あられ』にすら対応できるか分からない。だからこそ、カブト達は次の一撃に全てをかける事にした。

 

「ポリさん! 『テクスチャー』ノーマル! 『はかいこうせん』!」

 

 取った作戦は最大火力による一撃必殺。タイプをノーマルに戻した事でより強力になった『はかいこうせん』がユキノオーを襲う。

 

「ユキノオー! 『リーフストーム』で迎え撃って!」

 

 スズナが選んだのは最大火力の攻撃技による相殺。『まもる』による防御も考えたが、それを選んではいけないと告げる直感に従って攻撃技で押し切る事を選んだのだ。

 

 大量の草木を巻き上げる嵐と、眩い極光を放つ極太の光線が正面から激突する。最初こそ拮抗していたものの、時間経過とともに徐々に『リーフストーム』が押され始める。そして遂には『はかいこうせん』が『リーフストーム』を呑み込みユキノオーへと突き進んだ。

 

 だが、『リーフストーム』で火力の大半を削られた『はかいこうせん』を耐える事など訳もない。その攻撃の直撃を受けてもユキノオーはピンピンしている。

 

 勝利を確信したスズナがユキノオーに指示を出そうとしたその瞬間、ポリさんから新たに4本の『はかいこうせん』がユキノオーの身体を穿ち貫いた。

 

 静かに倒れ伏すユキノオーを見て呆然としたスズナが一言。

 

「え? 『はかいこうせん』って連射できたの?」

 

 誰だってそーなる俺もそーなる。破壊光線ゴレンダァなどと誰が予想できたものか。

 

「ユキノオー戦闘不能。ポリゴンZの勝ち!」

 

 審判が判決を下す。幾ら訳の分からない事が起きようとそれが事実なのだ。すぐに回復したスズナも気合を入れ直して新たなポケモンを繰り出すべくボールを構える。

 

 そしてカブトはポリさんを労っていた。

 

『カブトさん、私はちゃんと貴方の役に立てた?』

 

「お疲れ様、ポリさん。頼りになりましたよ。後は休んでてください」

 

『ああ、安心した』

 

 そう言い残すと彼女はボールの中へと戻っていった。彼女の今の状態ではこれ以上この試合で戦わせるのは無理があるだろう。実質的に戦闘不能である。

 

 互いに次のポケモンの入ったボールを握りしめて睨み合う。

 

 俺たちの戦いはこれからだ!




カブト
いよいよ最後のジム戦。え?四つくらいジムを飛ばされた?何のことかなー?

ポリさん
これは証明だ。僕にもこおりタイプくらい倒せるってね……!出来ればもっと滅茶苦茶な発狂具合を書きたかったが、色々な都合でカット。

スズナ
言わずと知れたストーカー兼ジムリーダー。今回はジムリーダー側面強め。

こおりタイプ弱点組
冬眠した。

祖母
強さアピールに余念が無いが出番は無い。そして今回が最後の出番となるのだ。これから多分出てこない。

まさこ
[削除済み]

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