ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

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慣れないバトル描写をしたせいで微妙な感じに……。バトル描写で文字数食われて残念。

ジラーチえもん『私はなんでも願いを叶えるポケモン。さぁ、願いを言ってみろ』

マツブサ太「うわぁーん、ジラーチえもん、アオギリアンが僕を虐めるんだ!』

ジラーチえもん『仕方ないなぁ……。てっててーん!出刃包丁!こいつでアオギリアンを刺してきな』

マツブサ太「このジラーチ、この世すべての悪に汚染されてやがる……」


VSストーカー3

「マンムー頼んだよ!」

 

「ルカちゃん、チャームアップ!」

 

 スズナの二匹目はマンムー。先程のユキノオーを遥かに上回る巨体と鋭く太い氷の牙が特徴的なポケモンだ。

 

 対するカブトのポケモンはルカリオのルカちゃん。口上統一しろよ。相性なら悪くない。むしろ良い部類だ。だが、マンムーに下手な攻撃を許してしまえばルカちゃんはあえなく倒されてしまうだろう。

 

 だが、このルカちゃんとカブトの相性は非常に良い。このペアは無言指示を実現して、更には共振効果で互いの波導が上がっているので相手の行動の先読みもできる。つまり滅茶苦茶強キャラアピールができるという事だ。

 

 マンムー対ルカちゃん。開幕と同時にルカちゃんがカブトの考えを読み取り『つるぎのまい』と『はどうだん』を同時に併用してマンムーの巨体を狙い撃つ。

 

 本来ならばジムリーダーが育てた事も加味してマンムーの耐久がかなり高いと推察し、より威力の高い格闘技を撃ち込む事が正しいのかもしれ無い。マンムーは見ての通りの図体故に回避能力は著しく低い。

 だが、ルカちゃんとカブトの二人はこのマンムーの特性は『ゆきがくれ』と読み取っている。

 それだけならば、幾ら姿を隠そうとも通常の波導で索敵出来るが、スズナは格闘タイプジムリーダーのスモモとの親交を持っている。格闘タイプのルカリオを対策して何か仕込んでいてもおかしくない。

 下手に近づくのは危険かもしれない。だからこその最も信頼をおく必中の『はどうだん』だ。

 

「マンムー! 『じしん』!」

 

『はどうだん』を打ち込まれてもまるで堪えた様子の無いマンムーがその前足を大地に叩きつけて地震を巻き起こす。地面に叩き込まれたその力はフィールドを抉り、砕き、大きな振動と共にルカちゃんの細身の身体を打ち砕かんと唸りを上げる。

 

 だがそんな事は、カブトとルカちゃんの二人ともが読み取っていた。波導による『読み』は推測などの不確定な『読み』では無く、ある種エスパーの『読心』に近いものがある。相手の心理を読み解きその行動を正確に把握する。全ての作戦は筒抜けといっても過言では無い。

 

 だからこそ、スズナ達が『じしん』を躱される事を前提に『じだんだ』の発動準備に入っている事も読み取れている。それはカブトの実力を信じた結果の行動なのだろう。

 

「ルカちゃん。避けるな『こらえる』」

 

 故にカブトとルカちゃんの取った行動はその場で『じしん』を受けて立つ事。「よけろ」という指示は多くとも「避けるな」という指示は珍しい。そして、カブトの考えを読み取ったルカちゃんは独自に『つるぎのまい』も加えて流れる様に攻撃を捌いていく。

 

 迫りくる岩石の弾丸や衝撃を真正面から受けて立ち、ボロボロになった姿でフィールドで立ち続けるルカちゃん。丁度『あられ』も解除されて天井からさす光が彼女を照らしだす。

 もしマンムーが『こおりのつぶて』を発動させる事ができれば彼女を倒す事が出来ただろう。だが、マンムーは既に『じだんだ』の発動体勢に入っている。

 

 故にルカちゃんの攻撃の方が早い。

 

「『あられ』も止みましたし反撃開始ですかね。ルカちゃん、『きしかいせい』!」

 

『しんそく』を併用してマンムーの懐に潜り込んだルカちゃんは、今にも大地に振り下ろされそうなマンムーの右足を蹴り上げ、掴み取り、ジャイアントスイングの要領でその巨大な体を投げ飛ばす。

 

『きしかいせい』は体力が低い時に威力を上げる一発逆転の技。今のルカちゃんが放つ『きしかいせい』はかなりの威力のものだろう。

 

 砂煙を巻き上げながら倒れ込むマンムー。『きしかいせい』で倒れなかったのは流石だが、受けたダメージ量とその巨大な図体を持つが故に立ち上がる事ができ無い。

 

「『はどうだん』でトドメです」

 

 あの体勢では『こおりのつぶて』は打てないだろうと確信して、目の前に倒れ伏す古代生物を片手だけで生成した『はどうだん』で撃ち抜くルカちゃん。

 

「マンムー戦闘不能。ルカリオの勝ち!」

 

 予想通り『はどうだん』を受けたマンムーはそのまま動かなくなる。これで2勝。次が最後の戦いだとカブトは気合を入れ直す。

 

「予想はしてたけどこんなに強くなってるなんてね。よーし、スズナのとっておき、見せてあげるんだから! 行け! ユキメノコ!」

 

 とっておきとして最後に繰り出されたのはユキメノコ。予め前準備でもしていたのか、ボールから出ると同時に『あられ』を降らして『オーロラベール』を展開する。

 

 ルカちゃんの相性自体は良い。だが、マンムーとの戦いで体力を削られすぎた事で『あられ』のフィールド下でこれ以上戦う事はほぼ不可能だ。

 

「ユキメノコ! 『こおりのつぶて』!」

 

「ルカちゃん! 『バレットパンチ』!」

 

 弾丸の如きスピードで打ち出される鋼の拳。それは投げつけられた氷柱の短剣をも軽々と打ち砕きユキメノコの華奢な身体に打ち付けられる。

 だが、彼女を守る様に展開されたオーロラや同時展開された『リフレクター』と『ひかりのかべ』がその攻撃によるダメージを限りなく0へと抑え込む。

 

 最後の足掻きも無駄に終わってしまったルカちゃんは力尽きて地面に膝をつける。

 

「ルカちゃん、お疲れ様でした。後は休んでいてください」

 

『私はずっとお前を見守っているぞ』

 

 何この子怖い。謎の言葉を言い残してボールへと戻るルカちゃん。これで残るは互いに一対一。

 

 カブトはプレミアボールを手に取ると静かに笑った。奇しくもユキメノコ同士の戦いになったのは面白いと。

 

「ユキちゃん、君に決めた! ……逆に此処でユキちゃんじゃなきゃ誰だよって聞きたいレベルさ!」

 

 相変わらず統一し無い口上で最後の一匹、カブトの最も信頼するポケモンであるユキちゃんを召喚する。

 

『ええ、任せなさい。あの程度の相手に私とカブトが負けるはず無いもの』

 

 そして彼女はフワリと空へと浮かび上がる。スズナのユキメノコもそれに呼応する様に同じく戦いの場を空中へと移した。

 

「ユキメノコ!」

 

「ユキちゃん!」

 

「「『シャドーボール』!」」

 

 対峙したユキメノコがそれぞれ放つ『シャドーボール』。しかし、同じ技であろうとも互いに撃ち方は別々で差があった。スズナのユキメノコは身体の中心部で霊力を凝縮させた黒い球体を投げつけるスタイル。

 対してユキちゃんは仰々しく開かれた両手にそれぞれ『シャドーボール』を展開するスタイル。

 一見すれば二つ持ちのユキちゃんが有利に見えるが、『シャドーボール』本体の大きさはスズナのユキメノコの方が上である。

 

 この二刀流スタイルはユキちゃんがカブトの元で修練を積み重ねて作り上げたものだ。

 習得理由が多方面からやってくる邪魔な女を同時に抹殺する為とかいう理由じゃなければ、ポケモンとトレーナーの絆の結晶と主張できたのに……。

 

 兎も角、互いに発動した『シャドーボール』をぶつけ合う。ユキメノコは身体から押し出す様に投げ飛ばし、ユキちゃんは素晴らしいアンダースローのモーションで怨念の塊を解き放つ。

 それらは空中でぶつかり合うと拮抗するが、やがてユキちゃんの『シャドーボール』が押し切られてそのまま消滅してしまう。大して勢いを殺されてい無いユキメノコの『シャドーボール』はユキちゃんの華奢な身体に突き刺さると爆裂しその身体を大きく跳躍させた。

 

「ユキちゃん!」

 

 浮遊していた空中から叩き落とされて地面にバウンドするユキちゃんの身を案じて声を上げるカブト。その心配は無用だと、ユキちゃんは立ち上がってユキメノコを睨み付ける。そして冷たく笑って一言。

 

『問題無いわ。計画通りよ』

 

 その姿を見てカブトも

 

「良かった。計画通りですね」

 

 同じ様に笑って見せた。

 

 

 

 

『シャドーボール』を当ててご満悦なユキメノコとスズナは完全に見落としていた。ユキちゃんは『シャドーボール』を二つ生成していた事に。先の爆発で消滅したのは一つだけ。ならば残る一つは放たれ無いまま消滅したのか? いいや、そんな筈が無い。既にそれは爆発に乗じて打ち出されていたのだ。

 

「『サイコキネシス』」

 

 静かに告げられるエスパータイプの技。その指示を聞いてスズナ達は警戒するがもう遅い。丁度ユキメノコの真下から直角に飛び上がる様に打ち上げられた黒いエネルギー体は、完全に死角からユキメノコを撃ち抜いて見せた。

 

「そんな! ユキメノコ!」

 

「ユキちゃん! 『ふぶき』!」

 

 空中で無防備な姿を晒したユキメノコに対して、ユキちゃんはこおりタイプの中で最も範囲が大きく破壊力のある技でトドメを刺しに向かう。白銀の嵐によって吹き飛ばされたユキメノコは盛大に地面へと打ち据えられてしまった。

 

「カブトくん、最初からこれを狙って……?」

 

「ええ、ユキちゃんが宙に浮かんで戦っていた事も視線を上に固定しておく為です」

 

 カブトとユキちゃんはこの戦いに向かうに当たって一つ作戦を立てておいた。それは『シャドーボール』を二つ生成できるユキちゃんの性質を利用して、片方を囮にしてもう片方を確実に当てる作戦だ。空中戦へと持ち込んで視線を下に向けさせず、もう片方の『シャドーボール』を『サイコキネシス』で操作して地面に這わせておく事で意表をつく事が目的だったのだ。もっとも、これが上手く行かなくても第二第三の作戦を決行するだけだったが。

 

 地面に這いつくばったユキメノコに静かに近づくユキちゃん。その手には二つの『シャドーボール』。大きさは先程までとは違って二つとも通常サイズ、もう欺く必要は無いのだ。

 対照的にユキメノコは身体を殆ど動かせなかった。何故ならばそこでおかしな現象が起こっていたからだ。ユキメノコの下半身は凍り付き地面に縫い止められていたのだ。

 

 本来、こおりタイプは凍らない。だが、ユキちゃんなら話は別だ。彼女は常日頃から他者を凍り付かせる訓練を一日足りとも惜しまなかったのだ。ユキちゃんは難攻不落のカブトを氷漬けにする為に、必死で毎日毎日氷技の強化に余念が無かった。そして遂にその技はこおりタイプすら凍らせる程へと進化を果たしていたのだった! 

 

 本当に理由と習得過程さえ伏せていれば感動的なのに。

 

「っ! ユキメノコ! 『シャドーボール』!」

 

 スズナもその不可解な現象に気がつくも、動きを行わない技の発動をユキメノコに指示する。

 彼女を最後まで守り続けたオーロラが彼女の盾になったのか、まだユキメノコは技の発動ならばできる様だ。その手に霊力を凝縮させて『シャドーボール』を生成しようとするが……失敗。

 ユキメノコの手には怪しげな黒いエネルギー体の鎖が巻きついており、それが『シャドーボール』の発動を妨害したのだ。

 

「これは……?」

 

「『のろわれボディ』やっぱ反撃の目は潰しおくに限りますね」

 

 ユキちゃんが態と『シャドーボール』を受ける事で特性『のろわれボディ』を発動させてユキメノコの『シャドーボール』を封印するという捨て身作戦。誰が考えたんだこんな本末転倒作戦! 全部カブトって奴が悪いんだ。

 

 ユキメノコの前に立ったユキちゃんは、『シャドーボール』を解除してその手に集めた霊力を霧散させる。これには流石のカブトも困惑。だが、ユキちゃんの事だから何か考えがあるのだろうと彼女を信じて見守る事に決めた様だ。

 

 ユキちゃんはその場でしゃがみ込み、大地に磔にされたユキメノコの顔に手を伸ばす。

 

『『ぜったいれいど』カブトと私の愛の結晶よ』

 

 手を離してカブトの元へと戻るユキちゃんの背後には、天井にすら届きうる大きな氷塊が作り上げられていた。それは中にスズナのユキメノコが氷漬けにされていて、氷で出来た愉快なオブジェとしか言いようがない。これは酷い。

 

「ユキちゃん……。新技を見せたい気持ちはわかりますが、これは少々やり過ぎですよ。兎も角、皆さんお疲れ様でした」

 

 その言葉に応える様にカタカタとボールが揺れ動く。

 

「あー、負けちゃった。でも良い勝負だったしスズナは満足してるよ。はい! これ!」

 

 ボール越しにコミュニケーションを取るカブトの元へと近づいたスズナはジム戦の勝者にジムバッジを差し出した。

 

「ありがとうございます。これで後はポケモンリーグて優勝するだけですね」

 

「うん! カブトくんならきっと優勝出来るよ! スズナも応援するから頑張ってね!」

 

 はーい、と気の抜ける様な返事を残してカブトは自分の家へと戻る為の帰路へとついた。

 そんな彼の後ろ姿を見送った後、スズナはジム内に仕掛けられた監視カメラを回収してそれを彼女の部屋へと持ち帰る。当然の如く、その部屋には所狭しとカブトを隠し撮りした写真が貼り付けられていて360度どこを向いても写真の無い場所がない程だ。それどころか、以前より段違いにカブトの持ち物が回収されている。勝手に家に侵入していただけの事はあると言う事か……。

 

 そんな彼女が新しく手に入れたカブトの写真を録音した最新のカブトの声をBGMに観賞しようと監視カメラに手を伸ばしたその瞬間、

 

「失礼しますスズナさん! 夕食一緒に食べませんか!」

 

 バン! とドアを開けられて一人の男が中に入ってきた。この様な所業を平然と行うのは言うまでもなくカブトのみ。人の部屋に入る時はちゃんとノックしてから入るという常識を彼は何処かに投げ捨ててきたらしい。しかもそれ以前の問題として、幾ら気心の知れた仲とはいえ普通に他人、しかも女性の家に侵入している辺り擁護できない。普通ならジュンサーさんに捕まるところだ。というより早くこの男を突き出せ。それが世の為人の為だ。

 

「ええっ! ちょっとカブトくん! なんで入ってきてるの⁉︎」

 

「すみません、ドアが空いてたもので」

 

 駄目だコイツ……、早く何とかしないと……。しかし、スズナはスズナで隠し撮りや盗品だらけでどっちもどっちと言えなくも無い。

 

 そんな犯罪者予備軍なスズナの部屋に、『はかいのいでんし』を使用して常時混乱状態のカブトが入り込んでしまった。そう、あの隠し撮りだらけの部屋にだ。流石の鈍感(嘲笑)系のカブトもこれには何かしらの異常を感じるだろう。頼むから感じてくれ、お願いします! 

 

「これは……」

 

 ぐるり、と首を回転させて部屋の全貌を確認するカブト。そこには所狭しと写真が貼り付けられていて、その全てにカブトが写っていた。

 

「あはは、バレちゃった。そうだよ。これは私がカブトくんを……」

 

「ああ、写真が欲しければいつでも頼んでくれたら良かったのに。あっ、今カメラあるので撮りますか?」

 

 まさかの平常心。流石ヤンデレポケモンを束ねる(無自覚)男は格が違った。

 

「アッハイ。じゃあ、お願いします……」

 

 嫌われなかった事に喜んで良いのか、無反応な事に悲しんで良いのか困惑するスズナは謎の勢いに押し切られて遂にツーショット写真を撮ってしまう。それで良いのかダイヤモンドダストガール……。

 

「じゃあ、夕食待ってますので是非来て下さいねー」

 

 そんな呑気な声を出しながらカブトは帰っていった。誰かこの男の混乱を回復して差し上げろ。

 

「結局、何も出来なかったなぁ……」

 

 雪の中へと消えていくカブトの姿を見ながらボンヤリと呟くスズナ。その手には、しっかりと謎の科学力で現像された写真が握られていた。

 

「あっ、鍵閉めとかなきゃ……」

 

 もうなんか色々と振り切れたスズナは考える事を辞めた。取り敢えず今日の夕飯から夜までカブト成分を補給しよう、そう考えて彼女は出発の準備を整えるのであった。

 

 なお、カブトは明日の朝にすぐにチャンピオンロードへと出発したので折角の再会も短く終わってしまった。

 

 哀れスズナさん。君には輝かしい明日が待ってるぜ(適当)!




カブト
擁護不能の不法侵入者。即刻逮捕を願う。

スズナ
コイツも勝手に合鍵作る様な奴だったわ。同類でお似合いだな。

ルカちゃん
こおりタイプを抹殺するウーマン。特殊型だったはずなのに物理技ばっか使ってる事に疑問を覚える今日この頃。

ユキちゃん
本来覚えない技を覚えている特別なユキメノコ。これが愛の力……、色々と目を瞑れば良い話なのに……。

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