ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

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病みラミとか、病ん病んマとか早く出したい


VS束縛系

 ポケモンと共に旅をする駆け出しのポケモントレーナーカブト。彼は今薄暗いテンガン山を相棒のポケモンと共に突っ切ろうとしていた。

 

 本来なら、わざわざ山を通らなくても船を使えば他の町へ行くことができる。しかしあえて船を使わず、テンガン山を突っ切るという苦難の道を選択したカブト。この選択にはそれ相応の訳があったのだ。

 

 彼は次のジムまでの間にポケモンのレベルアップを行おうと考えていたのだ。テンガン山は最深部に進むと相当レベルの高いポケモンが現れる。それこそ主レベルの大きさのポケモンも居るという。最深部にさえ入らなければ比較的高レベルのポケモンは出ないが、山の麓であろうとそこら辺のポケモンとは比べ物にならない強さのポケモンは数多く現れる。

 一説によれば、テンガン山の中にあると言われる遺跡による謎パワーでポケモンが強化されているとも言われている。

 

 この山には深度が浅くとも強いポケモンと遭遇できる。それ故に、出会ったポケモンと戦っていけば、ある程度のレベルアップは見込める訳だ。

 

 そして最大の理由が、カブトが旅立つ前に見た映画に起因する。

 彼が見た映画は、ポケウッドで撮られた海上パニックホラー映画。ストーリーは、人間に家族を殺されたサメハダーが同志であるホエルオーやオクタンと共に海の底で修行し、たまたま旅行中だったサンタマリアンヌ号を襲撃、そして乗客を皆殺しにするという恐ろしい映画だ。

 最後はポケモンの力に頼らず、自力でポケモン達を倒した主人公とヒロインが沈みゆく船の船首部分で荒ぶる鷹のポーズを取って締めるという中々の怪作だったが、少年であるカブトは見事にビビリ倒した。そしてスズナは監視カメラでそのビビる姿を見て永久保存版にする事を即決定した。

 

 斯くして、カブトは船に乗る事を恐れてテンガン山を突っ切る事にしたのである。しょうもないとか言うなよ、本人にとっては必死なんだから。

 

 とはいえ、山を通り抜ける事にもそれ相応のリスクがある。

 それは常に野生のポケモンに狙われ続ける事だ。野生ならば仕方がない。トレーナー側が取れる策としては常にポケモンを出して行動する他ない。そして常に奇襲に備えておく必要がある。

 

 カブトの祖母が言っていた。

「ポケモンが出てくる場所は元々ポケモンの住処で、そこを荒らしまわっているのが我々トレーナーだという事を忘れるな」と。

 

 カブトはその言葉を胸に留め、相棒であり現在の唯一の手持ちユキメノコのユキちゃんを側に侍らせる。

 

「ユキちゃんお願いします。この山を出るまで僕を守ってください」

 

 自分のポケモンに深々と頭を下げるカブト。親しき仲にも礼儀あり。例え手持ちであれど、いや、自分の手持ちであるからこそ常に感謝の念を忘れてはならない。

 

『大丈夫よ、カブト。貴方は何時も通りに私を信じて、私を見て、私だけを頼ってくれれば良いわ。貴方を傷つける者、貴方を侮辱した者、貴方に嫌らしい視線を向ける者、何時もの通りに私が全て排除するわ。だから貴方は私だけを頼って、私の言う事をちゃんと聞いてね……?』

 

「おー! やる気満々ですね! 何時もありがとうございます! ユキちゃん!」

 

 一見成立しているかの様な会話。しかし、カブトにはポケモンの声が分かるとかそんな特殊能力は無い。とは言え彼らの付き合いは相当長い。それ故に、カブトはユキちゃんが何を言っているのか何となく分かるのである。

 

 何となく←重要

 

 ちなみに、先程の会話をカブトは、

 

『我、最強のポケモンを目指す者なり! 有象無象に遅れを取る事など断じてあり得ん。我が主カブトよ、我は何時も汝の剣となりあらゆる障害を貫こう!」

 

 と、理解した。大体合ってるが全然違う。そんなトレーナーで大丈夫か? 大丈夫だ、問題無い。そもそも異種間同士で言葉が通じるはずが無い。これは常識な。

 

 とは言え、長年連れ添っているとある種の慣れの様な物で大体何を欲しているのか分かる場面もある。ポケモンの言っている事がわかるトレーナーの9割はこれだろう。残りは本物。

 

 彼とユキメノコのユキちゃんが初めて出会ったのはまだカブトがキッサキシティに来て1年程の頃だった。

 

 何も無いマサラタウンから雪国であるシンオウ地方、しかもその最北端に位置するキッサキシティに連れてこられたカブトはその雪の量に戸惑った。雪というものは見た事あるが、まさか自分自身がすっぽり埋められる程降り積もった雪など見たことが無かったからである。

 

 子供とは未知と冒険を楽しむ生き物だ。大雪を見てテンションの上がった彼は雪をかき分け、スキー場を越え野生のポケモン達の住う山の方へ行ってしまったのだ。

 これは大変危険な行為で、ポケモンも持たない低年齢の子供が山奥に入ってしまうと生存確率は限りなくゼロになる。さらに雪まで降っているなら尚更だ。

 幸いにもカブトは山奥へ入る事は無かった。何故ならスキー場を出てすぐに彼は倒れているポケモンを見つけたからだ。

 そのポケモンはユキワラシ。今の彼の手持ちであるユキちゃんがユキメノコになる前の姿である。

 ユキワラシは外傷が酷く文字通りボロボロの状態であった。そんなユキワラシをカブトは子供の力で必死でポケモンセンターまで運び、一命を取り留めさせたのだ。

 

 ジョーイさん曰く、かなり深い傷であと少し遅ければ助からなかったかも知れないと。

 カブトは毎日ユキワラシの様子を見に来た。珍しいポケモンだったと言うのもあるが何よりも何かほっとけないものを感じたのだ。

 

 傷が治っても、一向に外にも出向かずただひたすらベットの上でぼんやりし続けるユキワラシを見て、幼いながらもカブトは確信した。

 

 彼女もまた、親を失ったのだと。

 

 野生のポケモン世界は限りなく過激だ。食っては食われ、食われては食い。それが生きると言う事。恐らくだがあのユキワラシはポケモンに襲われ、その時に親を失ったのではないだろうか? あのボロボロの体も必死で逃げてきた物だと考えれば辻褄が合う。

 

 厳密に言えばカブトは親を失ったのではない。だ 実の親から不要と言われ家族としての関係を解消させられただけだ。だが、かつて感じていた暖かい物はもう二度と戻ってこない。今ユキワラシの抱えている孤独感、寂しさは、心中察して有り余る。

 

 カブトは考えた。どうすれば彼女の辛さを軽減させてあげられるだろうかと。

 そこで思い出した。自分が辛かった時、一体どうやって乗り越える事が出来たのかを。まだ彼とて完全に乗り越えた訳ではない。だが、祖母やキッサキシティの人々が自分の側に居てくれたことで、自分は寂しさを紛らわす事ができたのだ。

 だからカブトはひたすらユキワラシのそばに居た。少しでも彼女の抱える悲しみが和らぐ様にと子供ながらに色々な策を講じた。一緒に遊んだり、一緒に寝たりと考えられる全てを試した。

 

 

 結果として、ユキワラシは立ち直る事が出来た。

 そして病んだ。

 

 

 ユキワラシは、辛い時、寂しい時、側にいてくれたカブトに対して依存した。

 片時も彼の側から離れず、彼が自分から離れる事に異常な程の拒否感を示す様になったのだ。

 

 しかし、彼女のユキワラシとしての病みはある日突然解消される事になる。

 きっかけは些細な事だった。彼らが遊んでいた時、野生のポケモンが襲いかかってきた。ユキワラシは必死で抵抗したが、なす術なく野生のポケモンに倒されてしまう。

 自分の死を覚悟した、その時だった。カブトはユキワラシを攻撃しようとする野生のポケモンを自力で殴り倒し、そばに居たゴローンを投げつけ退散させたのだ。ちなみにゴローンは大爆発して散って行った。

 またして彼女はカブトに助けられてしまった。

 

 彼女はカブトがポケモンを攻撃した際に受けた傷から流れる血を一滴残らず舐め取りながら考えた。もし、ここに来た野生のポケモンがもっと強ければどうなっていただろうか。またしても大切な人を目の前で失う事になったのではないか。

 

 それだけは、それだけは絶対に避けなければならない。彼女はこれ以上親しい人を失いたくはなかった。

 そこで彼女が思いついたのは自分自身が強くなる事だ。その日から彼女は変わった。最愛のカブトと遊ぶのも程々に、鬼気迫る表情でキッサキ周辺の野生ポケモンを狩り始めた。目のついたポケモンから片っ端に。

 彼女が叩きのめしたポケモンの中には、一段進化したポケモンや、彼女よりもレベルの高いポケモン、挙句の果てにはヌシの様な存在のポケモンも居た。

 

 Q,何故勝てたのか? 

 

 A,愛だよ、愛! 

 

 ちなみに、この光景をカブトが目撃してしまったが故に、カブトはユキメノコの事をラオウ系女子だと思い込む様になってしまったのだ。

 

 カブトに近寄る害虫の駆除も当然忘れては居ない。ジムリーダーであるスズナは、まだ倒す為のレベルが足りていない為一旦様子見。トレーナーズスクールでカブトに告白しようとした女の子は氷漬けにされて今もエイチ湖に沈んでいるだろう。

 そして彼女は湖に沈めた害虫から得ためざめいしを使い、見事ユキワラシからユキメノコへと進化を果たしたのであった。

 

 ユキメノコへと進化し彼女の狂気とも言える執着は薄れたのか。いや、むしろ逆である。

 ユキメノコは気に入った者を氷漬けにし住処に持ち帰って飾ると言われているポケモンだ。

 

 カブト君、ここまで言えばわかるわね? (震え声)

 

 ユキワラシ

 

 タイプ こおり 依存

 

 ユキメノコ

 

 タイプ ゴースト こおり 依存 束縛←New‼︎

 

 

 

 何という事をしてくれたのでしょう!! ゴーストタイプだけでは無く束縛タイプまで追加されてしまったではありませんか!! 束縛タイプってなんだよ……

 

 進化して束縛タイプを手に入れた彼女は、カブトに自分以外の女と話す事、目を合わせる事、触れる事を禁止した。

 しかし悲しいかな、カブトは人間、ユキメノコはポケモン。どこぞの自然数でも無い限り互いの言葉などわかるはずが無いのだ。所詮異種間同士決して本当の意味で互いの言葉を理解し合う事は出来ない。

 

 

 つまり何が起こったか。

 

 勘違いが始まった。

 

 カブトはユキワラシ時代のバーサーカー度を目撃している。その際で彼女のあらゆる言動に世紀末フィルターが掛かってしまうのだ。

 

 カブトは彼女の言葉をこう理解した。

 

『我、最強のポケモンを目指す者なり! 我が主として見定めし者、カブトよ。我々は真なる強者としてこの世に君臨する。それ故凡百との会話は最小限に留め、作り出した時間を全て鍛錬に与えねばならない。女と戯れるなど持っての他だ。さぁ、我と共に来い!』

 

 誤訳の極み。だが、カブトはその言葉に感銘を受けた。常に頂点であろうとする姿勢、決して妥協しない強靭なる精神、その全てが素晴らしいと。

 とは言え、全く話さないという事はこの社会において生きていく事が出来ない。

 ユキメノコは、

 

『私がちゃんと守ってあげるから私以外必要ないわよね?』

 

 といっていたが、カブトの抱擁と頬擦りの必死な懇願の前に折れ、決してユキメノコの側から離れないという条件の元、最低限のコミュニケーションは許可するという妥協を取ってくれた。ただし、女性とコミュニケーションを取る時ボールの中からゴーストタイプ特有の怪しげな攻撃を仕掛けようとしていたが。

 

 こうして、カブトとユキメノコの歪な関係は始まったのだった。

 

 彼と彼女の戦いはこれからだ! 

 




トリカブト
ポケモンと意思疎通をまともにおこなえないトレーナーの底辺。
強くないと死ぬ。

ユキちゃん
ルージュラじゃなくてすまない。自然数が人をポケモンから解放させる事を本気で考え始める程の言動。愛の力でジャイアントキリングできるラオウ系ユキメノコ。

ゴローン
作中通しての不憫枠。




もっと病みが欲しいところ。まだ導入だからと言っても病みが薄過ぎる。勘違いを利用して後々病みをさらに深めたい。



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