ヤンデレゲットだぜ!   作:デンジャラスzombie

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ここは本編とは違う時空の話である事を踏まえて読んでいてください。

カブト君にぴったりの伝説ってなんですかねぇ?まぁもう既に手持ちに入るのオンリーワンは決めているんですけどね


VS異世界転生

『カブト、カブト、私の声が聞こえますか?』

 

(こいつ……直接脳内にッ!)

 

 そんな天の声が聞こえてきたのは、カブトが呑気に散歩をしていた時のことであった。

 

『今、世界に危機が迫っています! 貴方の力が必要なんです。どうか私を助けて下さい!』

 

「世界の危機ってそんな……」

 

 馬鹿な、と言おうとして言い淀む。世界の危機とやらには多少なり心当たりがあったのだ。

 カブトはポケモンリーグ敗退後、自身に引導を渡したトレーナーに今度こそ勝利する為に旅の最中に伝説のポケモンについて何度か調べた事がある。伝説として語り継がれるその力は圧倒的で、どのポケモンも伝承通りの力を持つのであれば間違いなく世界の2、3個くらいは軽く滅ぼせる力を持っていた。

 特にカブトの出身地であるシンオウは伝説の中でも別格の強さを誇るポケモンが伝えられている。もし、その力が悪用されでもしたらそれこそ世界の危機に相応しい現象を引き起こせるはずだ。

 

 であるならば謎の声が伝えてきた危機とやらは、もしや伝説のポケモンが現在進行形で悪用されている事の警告メッセージなのではないだろうか、とカブトは考えて、その声に従ってみることにした。

 

「分かりました。僕はどうすれば良いんですか?」

 

『良い選択です。まずは私の声に従って私の元まで来てください。詳しい話はそこで』

 

 その言葉を聞いたカブトは謎の声に従ってついていこうとする。しかし、そんな彼を止める人物がいた。

 

『駄目だ、お前を行かせることはできない。姿を見せず、我々に声も聞かせない奴の事など信用できない』

 

 ルカリオのルカちゃんだ。彼女はカブトの言う謎の声の持ち主の居場所を波導を使って感知しようと試みた。だが、結果は失敗。声の持ち主の存在をこの世界で見つける事が出来ないというあり得ない現象に直面したのだった。

 

 それに何より、世界の危機だとかその様な危険な目にカブトを合わせたくないのだ。そんな事は別な奴に任せてしまえ、とカブトに言外に伝える。

 トレーナーであるカブトは彼女の本意を明確に理解し、そして、その上でこの問題に取り組む事を決意した。

 

『何故だ?』

 

「僕達は前とは違います。元とはいえ地方のチャンピオンです。例え、此処が僕達が統べる地方じゃなくても危機を放って置く事は出来ません。ノブレスなんとやらってヤツですね」

 

『それはお前がしなくても良い事だ。罠の可能性が高い誘いに乗ってやる必要はない』

 

 その言葉にカブトは目を瞑って静かに答える。

 

「もし、罠なら助けを求める人は居ないってことですよ。なら、それはそれで良い事じゃないですか。それに……」

 

 いざとなったら、みんなが僕を守ってくれるでしょ? 、とカブトは片目を開けて笑ってみせた。

 

 それを見て、ルカちゃんは仕方ないと肩を竦める。この男は優男に見えて妙に頑固な所がある。恐らく意見を変えるつもりは無いのだろう。最悪、敵ならば殺せば良いし、などと物騒な事を考えて彼女も協力する事に決めたのだった。

 

 他の手持ち達も概ね同意見らしい。ただ、ルカちゃんが出しゃばってカブトとの会話時間を増やした事に怒りを覚えているポケモンが相当数いるが逆に見せつけてやるくらいの気概でいるルカちゃんにはノーダメージだ。

 

『話は纏まりましたか? ならば案内します。まずはそこの角を右に曲がって……』

 

 謎の声に従ってカブトが道無き道を歩いて行く。その後ろに護衛する様にルカちゃんが続いて行く。暫く歩いた後、突然カブトがその場で足を止めた。

 

『どうしました? そこを真っ直ぐ進むだけですよ?』

 

 しかし、カブトはその言葉に答えない。

 

「ごめん、ルカちゃん。どうやら君が正しかったみたいだ」

 

『ああ、どうやらその様だな。感じるぞ、殺意の波動を』

 

 カブト、ルカちゃん共々臨戦態勢をとる。何処から敵が来ても良い様に常に波導での感知を怠らない。

 

『あーあ、もう少しだったのに……。けど、此処まで来たら幾らでも辻褄合わせられるんだよね!』

 

 突如、足元の水溜りから飛び出した黒い鉤爪がカブトととルカちゃんをそれぞれ逆方向に弾き飛ばす。波導での感知を怠らなかったにも関わらず不意打ちを受けた事に二人は驚きを隠せない。

 

『カブト!』

 

 すぐに体勢を立て直したルカちゃんは愛する人の名を叫び、襲撃者からカブトを守ろうと走りだす。カブトの手持ち達も同様に、ボールから勝手に飛び出して彼を守るべくカブトを中心とした陣形を固める。

 

 しかし全てが遅かった。

 

「がはっ!」

 

 あれだけ防御を固めていたにも関わらず、何処から現れたのかすら分からない黒い鉤爪にあっさりとカブトは貫かれてしまったのだ。

 

 こうしてカブトの意識は埋没し、すぐさま深い闇に呑まれて行った。

 

 ★★★★★★★★

 

『おお、勇者よ、死んでしまうとは情け無い』

 

「……なにこれ」

 

 カブトは困惑していた。今世紀史上最大級に困惑していた。

 謎の攻撃を受けて死んだと思ったら別世界にいた。しかも目の前の巨大なムカデの様な生物が自分に向けて話しかけてきているのだ。何を言っているのかさっぱりだと思うがカブト君にもさっぱりだ。何かおそ(以下略)

 

『非常に残念ですが貴方は死んでしまいました。こう言う時は神様たるこの私のミスと相場が決まっていますが、神様のやる事は全てが正しいので今回も貴方の自業自得ですね』

 

『ええ(困惑)』

 

 状況が殆ど読めていないカブトはまるで話について行けていなかった。いきなり神様を自称し始めたこの巨大ムカデに似た生物に貴方は死んだ、私は悪くねぇ、と言われても余計に混乱するだけなのだ。

 

『巨大ムカデって呼ばれるのは不愉快です。私の事は9割の敬意と1割の親しみを込めてギラティナ様と呼びなさい。さぁ、早く!』

 

「えーと、ギラティナ様? ちゃんとした状況説明が欲しいのですが……?」

 

 説明を求めてギラティナ様と呼ぶカブトを見て、何処か嬉しそうにギラティナ様は話を続ける。

 

『ならば、この神たる私が人間である貴方に一から丁寧に説明して差し上げましょう。

 

 まず、此処は現実世界とは異なる世界である『やぶれたせかい』と呼ばれる場所です。詳しい説明は割愛しますが、私の事はこの世界を支配する神であると認識してくれればよろしい。

 

 そして次に、カブト、貴方は既に死んでいる。貴方は死後、魂の状態でこの世界に流れてきたのです。ここまでは理解できましたか?後、そこにご飯やお菓子を置いてあるので是非とも食べて下さい』

 

「アッハイ」

 

 自分が既に死んでいると言われてもカブトはそこまで動揺しない。自分でもあそこまでザックリと突き刺されたら流石に助からないだろうな、と考えていたし、雪山育ちにおいて死は割と身近にあった為それ程困惑していないのだろう。そんな事を考えながらカブトはそばに置いてあった『ザロクの実』をかじりつつギラティナ様を眺めていた。

 

 それよりもカブトの気を引いていたのは、この摩訶不思議な『やぶれたせかい』とその支配者たるギラティナ様の存在だ。

 ギラティナ様の存在感というかプレッシャーというべきか、それらは全てギラティナ様が並のポケモンとは一線を画している事を告げていた。かつてシンオウリーグで戦ったポケモン達とも違う、更にその上の段階であるプレッシャー。

 ここからカブトはギラティナ様が伝説のポケモンの中でも最高位クラスのポケモンだと確信した。ただ、文献を漁ったかぎりではその様なポケモンがいたとは伝えられていない。

 だが、カブトには既にある仮説が成り立っていた。現在の自身の状態、この生命の息吹を何一つ感じさせない『やぶれたせかい』、自称『神様』、これらからこのギラティナ様が死者の神の様なものだと推察できる。文献に載らないのも納得だ。出会う様な事があればそれは既に死んでいる状態だからだ。流石に生き返って記録した人間はそう多くは無いはずだ。

 

 此処まで考えてカブトは虚しくなった。折角面白い出来事に出会えたのにこれを伝える事が出来る人が居ないとは何と寂しい事か。

 

 そんなカブトの心情など気にも留めずににギラティナ様は話を続ける。

 

『では、本題に入りましょう。貴方を殺したのは私です』

 

「はい⁉︎」

 

 唐突な殺人犯カミングアウトに絶句するカブト。当然、ギラティナ様はそんな矮小な人間の反応など気にしない。

 

『あー、そうそう。最近は異世界転生とやらが流行っている様ですが、当然他の世界に転生などさせる気も無いので悪しからず。貴方にはこの世界でずっと暮らしてもらいます。

 おめでとうございます。『やぶれたせかい』も異世界には違いないので、実質異世界転生ですよ。わー、ぱちぱち』

 

「あー、一応理由を伺っても?」

 

『神たる私の真意を知りたいなど不敬であるぞ……、と言いたい所ですが許しましょう。神は間違えませんが、人は誤ちを犯す生き物です。それを許してこそ神の器というもの』

 

 困惑するカブトを他所に一人で納得して不敬を許してくれたらしい。優しい。

 

『神が人を召し上げる事など珍しくも何とも無いことです。母様もダ、ダ、ダモナス? なる人物を死後輪廻の輪から引っ張り抜いて自分の側に召し上げていましたし。……べ、別にそれを見て羨ましいとか思ったわけでは無いですからね!』

 

「何で僕を選んだんですか? わざわざ殺す労力までかけて」

 

『表世界に顔出しできるようになって初めて目があったから』

 

 簡潔に答えたギラティナ様を見て、声には出さないがカブトは内心で意味がわからないと呻き声を上げる。だが、神の思考は人間には読み取れないと思考放棄して再び平常心に戻った。

 

「説明ありがとうございます。で、僕はこれから何すれば良いんですか? 出来る事なんてほぼ何も無いですけど」

 

『何、貴方の最初の仕事は既に決まっています。まずはこの『やぶれたせかい』で私と共に過ごして貰います。貴方が望むなら褒美として数千年に一度くらいなら外に出してあげても構いません。……まぁ、この世界には『時間』も『空間』も無いので数千年というのはあくまでものの例えですが』

 

 ギラティナ様の言葉にカブトが驚愕を露わにする。『時間』と『空間』が無いというのも驚きだが、そんな何も無いところで数千年(目安)程過ごせというのは意識を失って発狂してしまうだろう。

 

『精神的な問題なら安心してください。脆弱な人間にも耐えられる様に既に貴方には細工してあります。その他についての詳しい内容は後で話しますが、まぁ、転生特典だとでも思ってください』

 

 嫌な特典があったものだ。

 

「何故そこまでして……」

 

『別に私は誰でも良かった訳じゃありません。貴方を輪廻の輪などに乗せたくなかった。生まれ変わった誰かではなく他ならぬ貴方だからこそ側に置いておきたいと思った。

 ……この世界に招いた人間は貴方が初めてです。この意味が分かりますか?』

 

 静かに首を振るカブト。そんな彼の姿をしっかりとその赤き双眸に捉えてギラティナ様は言葉を紡ぐ。

 

『私は貴方を愛しています。

 私は貴方を愛しているからこそ貴方を殺しました。あのままでは、貴方は穢らわしい醜悪なる者共に汚され穢されてしまっていたでしょう。

 これ以上他の何者にも、貴方に触れさせたくない、貴方の姿を見せたくない、貴方の声を聞かせたくない、そう思うのは下々の者では出過ぎた願いですが、神たる私にとっては至極当然な考えです。大切なものを自分の手でとっておく事は普通のことです。

 まぁ、長々と話しましたが結局のところ貴方に意見は求めていません。全て確定事項です』

 

 そしてギラティナ様はカブトをその口で優しく咥えると、元いた場所から相当離れた場所へと彼を置きその隣にとぐろを巻くように寝そべった。

 

『そうそう、転生特典について説明していませんでしたね。……記憶のリセットです。貴方の記憶は消滅します。専門外ではありますが、ここは私の統治する世界。出来ない事などあんまり無い。

 兎に角、貴方は表の世界で酷く汚されてしまっています。ですので、今この場で貴方の全てをデリートしてその魂を元に新しく存在を作り直します。

 その際に、記憶の大部分は消滅しますが私以外の記憶など無い方が良い。あくまで存在の作り直しであるが故に記憶の欠落はあれどその根幹は何一つ変わらないままでいられます。よかったですね。

 私はいつまでも貴方を愛で続ける事を約束します。ですので安心してください』

 

 ★★★★★★★★★

 

 世間一般的に見てその出会いは他愛のない物であっても、彼女—ギラティナ様にとっては運命的な出会いであった。

 

 永きに渡る封印も半分ほど解け、最近漸く表の世界に顔を出せる様になった事を唐突に理解したギラティナ様はある日ひょっこりと表の世界に文字通りの顔出しをしてみる事にした。

 

 胸の内にまだ見ぬ外の世界へのワクワクを秘め、顔だけ表の世界に出てきた彼女は人類誕生以来初めて見た景色で運命と出会った。出会われた側からすれば不幸な事だが。

 

 顔出しした先に偶然居合わせたカブトに一目惚れしてしまったのだ。カブトは黙っていれば絵画の様に美しい少年だ。世界観が違えば下半神にほぼ確定で連れて行かれかねない程に。そんな彼の魅力? に箱入りならぬ『やぶれたせかい』入り娘のギラティナ様が抗える筈がない。数秒でノックアウトだ。

 

 ギラティナ様は決意した。かの眉目秀麗なる美少年を是非とも手に入れたいと。

 しかし、現世歴数秒のギラティナ様には恋愛など分からない。愛など知らない。

 

 だからこそ導き出した結論が誘拐、幽閉、だったのは致し方ない事なのだ。子は親の背を見て育つという。彼女の母様もダモナス(仮名)さんに似たような事を既にしている。つまりそういう事だ(諦め)

 

 しかし、彼女はそれをすぐさま決行しなかった。理由は人が野に咲く花を摘み取らない事と同じだろう。自分の行動で彼の美しさが損なわれてしまう事を恐れたのだ。

 

 そうしてギラティナ様は毎日毎日飽きずに彼を眺め続けていた。彼が何処かに行く度にくっついて行って観察を続けていた。時折、他のポケモンの監視の薄い時に指先で突っついてみたり寝顔を撫で回したりと悪戯もしたが、これだけである種の満足感すら得られてしまっていたのだ。

 

 しかし、そんな平和な日々も終焉が訪れてしまう。妹を名乗る不審者が現れてカブトに毒を盛り始めたのだ。それどころか動けないカブトの口を使って一人人形劇を始める始末。

 流石にそれは不味いと思い、外界の生物達に対する怒りを抱きながら花を摘み取ったのがつい先程。特性の『テレパシー』を利用して誘導した後、人目のつかない場所で殺害して『やぶれたせかい』送りにする予定だったがポケモンの横槍で失敗。それでも連れてこれただけギラティナ様的にはOKだった。この世界に連れ込んだ時点で彼女にとって勝利確定なのだ。

 

 実はこの『やぶれたせかい』からの脱出方法はある。『もどりのどうくつ』という場所を利用すれば既に死んでいたとしても死体が残っているなら生き返る事も可能だ。

 勿論彼女はカブトにそんな事は教えない。折角現世から切り離したのにまた戻っていかれては堪ったものではない。だが、もし自力で戻り道を見つけられでもしたらカブトは戻ってしまうだろう。だからこその記憶消去。これでカブトはもう何処にも行く事は出来ない。

 ましてこの『やぶれたせかい』においてはギラティナ様は全知全能とでも言えるほどの権能を発揮できる。外からの襲撃を恐れる必要もない。

 

 こうして他の何者も寄せ付けない防御を構築したギラティナ様は『やぶれたせかい』で延々と最愛のカブトと過ごすのであった。

 

 この後、カブトの姿を見た者は誰一人として居なかった。




カブト
下積み時代が終わった事で色々なポケモンを出せるようになった。そのおかげで平行世界設定という事で合法的に抹殺できるようになった。やったぜ!

ギラティナ様
我が心と行動に一片の曇り無し、全てが正義だ。実際問題神の行動は全てが正しい事に間違いはない。好きな子を自分の家に招待しただけですが何か?

アルセウス
レジギガス達との戦いの原因は無給料、無休暇で昼夜問わず大陸を運ばせ続けた結果の反乱だったらしい。マジかよブラック女神様。
ここではギラティナ、ディアルガ、パルキアの母。みんな性別は女。

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