なんやかんやで過去を想起しつつも、テンガン山を突っ切ろうとするカブト一行。
しかし流石に1日での突破は不可能だった模様。彼らはテントを張り、野宿する事にした。ここをキャンプ地とする!
テントを張り終えると、彼らはすぐに夕食の準備に取り掛かる。主に料理を作るのはカブトだ。ユキメノコは料理を作りたがっていたが、いかんせん彼女はこおりタイプ、火を使った料理をしようものなら少なからず体が溶けてしまう。彼女は自分の体が溶けようが気にしないだろうがカブトはかなり心配する。その為、料理はカブトの担当になったのだ。
しかしこのユキメノコ、何がなんでも自分の料理をカブトに食わせたいという思いを抱いている。そこで彼女が取った方法はアイスを作る事だ。
彼女は自分で氷を作り出し削り、さらにそれだけでは飽き足らず自分の体を構成する氷まで削って作ったアイスを毎日カブトに食わせている。自分の一部がカブトの中に取り込まれているのを見て、毎日毎日快感に身を震わせる。カブトの体の半分くらいが、自分の体で構成されていると思うと本当の意味で一つに慣れたような気がして喜び悶える。
カブトは特に気にせず黙々と食い続ける。そもそも気づいていない。これが鈍感系主人公か……
夕食と片付けが終わりカブトがテントの中で寝てから暫く経つと、ボールの中からユキメノコが現れる。彼女は爆睡しピクリとも動かないカブトに馬乗りになり、舌を彼の口に入れその口内を蹂躙する。
暫くすると彼女はカブトの口から舌を出し、彼の口から彼女の口へと伸びる銀の糸を一滴残らず飲み干す様に丁寧に舐めとると、カブトの手を取りその手を起点に彼の体を凍らせ始める。氷は数分も立たない間にカブトの体を覆い尽くした。
『いつ見ても貴方は綺麗だけど、この時が一番綺麗だわ。普段から凍ったままでいてくれたら貴方は私だけを見てくれるし、害虫は寄り付かない、何より守ってあげやすいし、格段に美しくなれるのに……』
そう言いながら、ユキメノコは凍りついたカブトの体を幸せそうに抱きしめ就寝する。
この行為は彼女なりの愛情表現である。ユキメノコは本来気に入った相手を氷漬けにして持ち帰る性質を持つ。つまり彼女が最愛のカブトを氷漬けにしない訳が無いのだ。
翌朝、カブトは起床と共に体を覆い尽くした氷を溶かし尽くす。彼は半分とは言え超マサラ人の血を引いている。故に−50度程度の氷ではその行動を阻害する事などできる訳が無い。さらに、その体はキッサキシティ伝統のゴローン投げつけ祭りにより若いながらも鍛え上げられている。生半可な攻撃ではかすり傷一つ負う事はない。
やっぱマサラ人ってすげー。
ちなみに彼女がカブトを氷漬けにするのは彼女がユキメノコに進化してからほぼ毎日である。彼女としては、カブトが氷像になろうが普通に生活しようがどちらの姿でも愛する事ができる自信がある。最初の頃は平然と氷を溶かすカブトの姿に驚愕したものの、今では慣れたものだ。
いや、慣れちゃダメでしょ。
何はともあれ朝食を食べ終え、準備を整えた後にキャンプ地を出発するカブト一行。勿論ゴミは残さない。
前日同様山の中を突っ切る作戦に出るもここで問題発生。野生のゴローンの群れに囲まれてしまったのだ。その数は優に20は超える。
たまたまゴローンの巣を突っ切ったしまったか、それとも昨年のキッサキシティで開催されたゴローン投げ祭り優勝者であるカブトの存在に生命の危機を抱いたのか、ユキちゃんが殺しすぎたか、理由がなんなのか全くわからないがそれを考える時間をゴローンの群れは与えてくれない。
彼らはカブトとユキちゃんに向けて各々技を放つ構えをとる。それは『じしん』でもあり、『ロックブラスト』でもあり、『ころがる』でもあった。もし、技の発動を許してしまえばカブトもユキちゃんも無事では済まない。最悪、死に至る可能性すらある事は明白だ。
もし、発動させてしまえばの話だが。
「ユキちゃん、迎え撃ってください。『ふぶき』」
薄暗い通路を塗りつぶすかの如く『白』が吹き荒ぶ。目も開けていることすら出来ない大自然の生み出した圧倒的暴力の突風がユキちゃんを中心に荒れ狂う。勿論カブトは『ふぶき』に巻き込まれない様にユキちゃんに抱き抱えられている。カブトに接触できてユキちゃんの顔が上気している事は言うまでも無いだろう。
ここは逃げ場の無いテンガン山の内部、しかも密集して襲いかかってしまったゴローンには『ふぶき』を躱す手段はない。技の発動中故に防御をとる事も出来ない。
かくして、無謀にもカブトとユキちゃんに挑戦したゴローン達はほぼ全員氷漬けにされてしまったのだ。
しかしその中で一匹のみ、『ふぶき』に耐え切り、解除不能氷状態にならなかったゴローンがいた。
唯一生き残ってしまったゴローンは、破れ去っていった仲間の思いを受け継ぎ、その身の全身全霊を込めて『ロックブラスト』を放つ。
放たれた五つの弾丸の内、4つは明後日の方向へと飛んでいった。しかし最後の一撃のみ、幸が不幸かカブトの髪をかすり、その髪の一部を切り落とすまでに至った。
カブトはビビったが、自分の体が無事な事に安堵する。しかし、ユキちゃんは違う。彼女にとって、最愛ともいえる人物の髪が一部とはいえ切り落とされたのだ。怒らない訳が無い。
『私とカブトのデートを邪魔した事は決して許されない。そしてその中でもお前、そう、カブトの髪を傷つけたお前だ。カブトを守る事も、傷つける事も、この私以外許さない! カブトに傷を与えていいのは私だけなんだ! よってお前にはこの世で最も残酷な死を贈ろうッ!!』
激おこブラストバーンである。
怒りのあまり溶けてしまわないか心配であるが、威力は高いが命中率と射程距離に難のある『ふぶき』とは違い、指向性を高めた『冷凍ビーム』で確実に全身凍結させるあたりまだ比較的冷静でいられるのだろう。
『許さない、許さない、ユルサナイ!! その罪、死をもって支払ってもらうッ!!』
凍り付き動けないゴローンに『シャドーボール』をゼロ距離で当て、その体を木っ端微塵にすり潰そうとするユキちゃん。しかしその致死性を持った攻撃はすんでのところである人物に止められる事になる。
『カブト⁉︎どうして⁉︎どうしてそんなゴローニャに進化させ無いメリットが無い様な奴を庇うの⁉︎私よりそんな団子体系の方がいいの⁉︎私のこと嫌いになったの⁉︎貴方は私よりそんな男だか女だかわからない奴を選ぶの⁉︎ねぇ! 答えてよ! ねぇ!』
鬼気迫る形相でカブトに掴みかかるユキちゃん。精神に大きな動揺を受けたせいか周りの温度が急低下し、周囲の氷漬けゴローンが浮かび上がるゴーストタイプ特有のポルターガイスト現象が発生する。
ここで答えを間違えれば、この場でかき氷トリカブト味が製作されるという惨劇が起こってしまうだろう。
「ユキちゃん、僕のために怒ってくれるのは嬉しい。けど君はいつもみたいなクールビューティーな感じの方がもっとずっと可愛いんだ。君に怒りの表情は似合わない。だからいつも通りの笑顔でいて?」
気障ったらしい歯の浮くようなセリフをポンと告げるカブト。これが若さ故の過ち。きっと数年後気障ったらしい自分の言葉に悶絶する日が来るだろう。それまで生きていれば。
だがこの言葉思った以上にユキちゃんにクリーンヒット。先程とは違う感情で顔を赤らめて下を向いてしまう。
先程殺されかかったゴローンは思った。俺たちは何を見せられているんだ、と。だが事態は彼らゴローンの生存ルートに向かっている様だ。彼はひとまずの命の安全に安心し、テンガン山に鳴り響いたポケギアの音に注意を向けた次の瞬間、
その頭蓋を渾身の力で振り下ろされた『シャドーボール』で打ち砕かれた。
ユキちゃんはカブトがポケギアの着信に気を取られ視線をゴローンとユキちゃんから離した一瞬の隙を突き、出来る限り音がならない様にして笑顔でゴローンを殺害した。
カブトから笑っていてほしいと言われたのだ。だからこそ笑顔でゴローンを排除した。元々カブトに傷つけたゴローンを許すつもりなど毛頭無い。例えそれがカブトのお願いに逆らったとしても、カブトを攻撃するものを見逃すほど彼女は我慢強くない。そしてどさくさに紛れてカブトの切られた髪を回収する。何に使うかは言うまでもない。
カブトを直接攻撃したゴローン以外の排除は簡単だ。氷漬け状態を解除しなければいい。それだけで勝手に邪魔者は死んでいく。自業自得だとユキちゃんは薄く笑った。
「はい、おはようございます。連絡早すぎる様な気がしますけど……ええ……まだテンガン山にいます。え!? なんでゴローンに襲われた事を知ってるんですか? …………愛と気合? 気合ってすごいんですね。それでは、また明日に」
ポケギアでの会話を終了させるカブト。そこにユキちゃんが近づいていく。
『ねぇ、貴方? 今誰と離していたの? 答えなさい』
その細腕には見合わない強烈な力でカブトの腕を掴み質問を投げ掛けるユキちゃん。一つの嘘も見逃さないようにハイライトの消えた目でカブトをじっと見つめ続ける。もし、女との恋愛を匂わせる様な話をするようならば今の彼女はこの場で心中する事も厭わないだろう。
「ん、ユキちゃんも知ってる人だよ。スズナさんが心配して連絡をしてくれたんです。ちょっと過保護過ぎる気がしますけどね」
照れくさそうにユキちゃんに話の内容を告げるカブト。その姿に彼がスズナに対して何かしらの恋愛感情を抱いていない事に安堵する。本来ならこの世のあらゆる女との接触を断って欲しかったが、少なくとも今のユキちゃんの実力では全ての敵を排除出来る訳ではないので現状妥協している。
だが、この旅を終え強くなった暁には、カブトに近づくあらゆる女を抹殺しようと彼女は心に決めている。今は力及ばないがスズナであろうとも例外ではない。
『別の女に靡いた訳じゃないなら構わないわ。少なくともこの旅を続けている限り貴方には私しかいないのだから、今はそれで満足するしかないわね』
出来る事なら氷で作った部屋の中に氷像状態で監禁して、外界からの接触を一切経った状態で愛し合いたい。しかし、今のユキちゃんの実力では、閉じ込めたところでカブトには脱出されるだろうし他の泥棒猫どもも救助に来るだろう。
『全ては楽しい生活の為。今は我慢よ、私』
カブトの為に顔には微笑みを浮かべたまま、しかしその手は凄まじい握力で握られる。
「ユキちゃん、ちょっと痛いです」
無意識のうちにカブトの手を締めつけすぎた様だ。しかしどれほど力を込めても骨が折れるどころか、青痣一つ彼にはつかない。
『あら、ごめんなさい貴方。今冷やすわね』
そう言うと、ユキちゃんは氷を作り出し彼の手を冷却する。氷漬けに出来ないにも関わらず、自分がカブトの肉体に何かしらの傷痕を残してマーキングする事が出来ないのは辛いとユキちゃんは考える。できればパッと見でわかる様なそんな目立つ印を刻み付けたいものだ。
『ウフフ、待っててね貴方。もう少し私が強くなったら私の物だってすぐわかる様にしっかりと刻み込んであげるから』
トリカブト
鈍感系主人公。伝説の超マサラ人の血を引く者。マイナス50度くらいならセーフ。
ユキちゃん
カブトの体の一部を体内に取り込み、自分の体の一部はカブトに与える無限ループを作り出した。レベルが上がれば害虫を全て駆除し、好きな子を氷漬けにして監禁したい系ガール。
楽しい生活→氷漬け監禁
ゴローン
約束された敗北の死。
スズナ
ストーカー。盗聴してるくせに毎日の連絡は欠かさない。連絡に出ないと追いかけてくる。
次回、やったねカブト君!修羅場系ハーレム要因が増えるよ!
みんなもヤンデレゲットじゃぞー