メガヤンマのヤンデレって需要無いですよね……(特殊性癖の持ち主)
ルカリオ人気すぎて結晶化した。
メガヤンマに襲われるカブトを間一髪で助けたユキちゃん。その瞳には隠しようも無い憎しみが燃え上がっていた。彼女の視点から見れば当然だろう。何せ彼女は最愛のカブトから無理やり引き剥がされただけではなく、その誘拐犯に今まさに襲われようとしているカブトの姿まで見てしまったのだ。
殺意がぐぐぐぐーんと上がった!
『殺す』
一言呟くと彼女はメガヤンマの元へと飛び込んでいく。その手に握られた『こおりのつぶて』を逆手に構え、メガヤンマの頭部と胴体を二つに引き裂くべく振り下ろした。殺意が高過ぎる。
メガヤンマはその攻撃を『みきり』を使い回避し、返す刀で目眩しも兼ねた『ぎんいろのかぜ』を放ち距離を取る。
『そうか! そうなのか! キミはカブトっていう名前なんだね! 良かったよ、もしずっとキミの名前を知らないままだったら一体どうしようって思ってたところなんだ! へぇーカブト……か、流石ボクのカブトだよ。いい名前だ……うん、凄く良い……!』
逃げ延びた空中で顔を赤らめクネクネするメガヤンマ。それを見たユキちゃんが苛立ちを隠さずに吐き捨てる。
『何が『ボクのカブト……』よ、笑わせないで。カブトはお前みたいな害虫のものじゃ無い! 私の物よ!』
『『私の物……』だって⁉︎こんな女に捕まってカブトも可哀想に……。待っててね、今すぐボクがこの女を排除してキミを助けてあげるからね……⁉︎』
どちらが勝とうがカブトに待っている結末はそう変わらない。
ヤンデレ×ヤンデレ=血の雨が降る、古事記にもそう書かれている。
ユキちゃんは空を飛ぶ力を持たない。よって空にさえ浮かんでしまえばその攻撃は届かないだろう、そう考えたメガヤンマは『れいとうビーム』も届かない程の上空に移動しそこから一方的に攻撃を仕掛けようと技を構えた。
メガヤンマが咄嗟にその場から回避を出来たのは幸運だったのだろう。上でも下でもなく、横に飛びすさるという選択で無ければ彼女は確実に死んでいた。もしかするとこれまでのカブトとの鬼ごっこで特性『かそく』が発動し、素早さが強化されていた事での恩恵かもしれない。
どちらにせよメガヤンマの命が奇跡的に助かった事だけには変わりない。
つい先程まで彼女がいた場所には巨大な氷塊が位置し、さらに晴れていたはずの天気は『あられ』が降り始めていた。
『『あられ』と『ふぶき』を同時展開して射程距離を無理矢理伸ばしたのか……けど残念♪ ボクの方が少し早かった様だね』
まさしく間一髪。『ふぶき』の射程はメガヤンマの逃げ延びた先のほんの数センチ先だった。あとほんの少しだけ遅れていたら……と考えるとゾッとする。
「ユキちゃん! メガヤンマは氷タイプが弱点です! この際どんな技でも一発当たることが出来れば大ダメージを見込めます! 範囲攻撃の『ふぶき』を連打すれば幾ら素早くても避けきれません!」
氷の壁越しにカブトがユキちゃんに声援を贈る。ヤンデレVSヤンデレにおいて片方を応援するのはNG。カブトよ、何故そうまでして死にたがるんだ……
カブトの言葉に案の定メガヤンマが反応する。
『ねぇ、そんな奴じゃなくてボクを応援してよ。ボクの愛はそいつみたいに自分の事しか考えて無い独り善がりな愛じゃない。何よりもカブトが幸せになる為の行動なんだ。だからさ、そんな奴早く捨ててボクを愛してよ!!』
『醜い僻みね。お前は決定的な勘違いをしている。私の愛は独り善がりじゃない。私はお前なんかの数千光年倍以上カブトの事を考えているわ。カブトにとっても私にとっても氷漬けが最も安心安全で幸せな方法なのよ。だからね、ポッと出が私達の間に入ってくるな!!』
『…………今はっきり分かったよ。お前を完全に排除しなくてはカブトとの幸せは望めない! 待っててね、カブト。今そいつを殺して正気に戻してあげるから!!』
戦いはさらに激化して行く。
『必中ふぶき』の要であり、ユキちゃんの『ゆきがくれ』を利用した防御にも転用できる万能フィールド『あられ』をメガヤンマが『ふきとばし』で掻き消し、飛行能力というアドバンテージを利用したヒットアンドアウェイ戦法で確実にユキちゃんにダメージを与え続ける。
ユキちゃんは『こおりのつぶて』の攻撃において飛ばす礫の最大数を減らす事で、『かそく』したメガヤンマをも超える速度のを手に入れたホーミング氷礫をひたすら投げ続ける事でジワジワとメガヤンマにダメージを与える。
このまま拮抗状態かと思われたが突然事態は急変する。
「ユキちゃん⁉︎」
突如としてユキちゃんが口から血を吐き地面に倒れ伏した。
毒を受けていた訳ではない。メガヤンマの能力だ。メガヤンマは羽ばたいた時の衝撃波で、相手の体の内側に致命的なダメージを与えるという性質を持つ。その為一見外傷は無くとも体の内側はズタズタに引き裂かれているという恐ろしい現象を引き起こすのだ。
『随分梃摺らせてくれたね。けどもうお終いだ。キミの内臓はズッタズタのボッロボロ、もう立ち上がる事すらままならないでしょ』
メガヤンマは倒れ伏して動かないユキちゃんに近づきその首元に鋭利な牙の生えた顎を突きつける。
『さようなら。じゃあ死ね………………ッ⁉︎って、これは……ッ⁉︎』
何かに気づき、その喉笛を噛み砕こうとする動作を止めるメガヤンマ。その足元に転がるユキちゃんから怪しげな紫のオーラが漏れ出しカブトへと続いていた。
『『みちづれ』……だって⁉︎まさかキミはカブトと心中する気で……! そんな事させないぞ! ボクのカブトをキミなんかに取られてたまるか!』
そうは言ったもののメガヤンマに出来る事は無い。地面に這いつくばるユキちゃんを睨む事しか出来ない。
『(どうする? 距離を取るか? くそっ! ボクは『みちづれ』の射程範囲も効果時間も知らないぞ!)』
再び膠着状態。しかし今度の膠着はそう長くは続かなかった。
「フレンドボール!」
つい先程自分のポケモンに『みちづれ』を受けたがまるで気づいていない鈍感系主人公、カブトがメガヤンマに向けてフレンドボールを投げつける。意外にもオシャボ勢という事が発覚。ちなみにユキちゃんはプレミアボールだ。
『ッ! カブト! キミはそこまで熱烈にボクを求めてくれるの! やったー! メガヤンマさん大勝利ー!』
投げつけられたボールを回避するそぶりすら見せず、むしろ積極的に捕獲されるかの様に自らボールに飛び込むメガヤンマ。ボールも3カウント鳴らすことも面倒だと言わんばかりに1カウントだけで捕獲完了の合図を鳴らす。
あれ、これ初手ボールが安定だったのでは? (名推理)
本人からすれば自分のポケモンであるユキちゃんが今にもトドメを刺されそうにみえたから、なんとか回避しようと自棄で投げたボールで幸運にも捕まえられたぐらいにしか思っていないだろうが、何はともあれメガヤンマの捕獲完了。カブトは重症のユキちゃんをボールに戻し、急いでポケモンセンターを探すのであった。
ちなみにハクタイシティのポケモンセンターはあっさりと見つかった。メガヤンマとユキちゃんの戦いでハクタイの森の一部が消滅した事によって見渡しが良くなったのだ。環境破壊ダメ絶対。
ユキちゃんをポケモンセンターに預けて1日たった。大事をとってまだユキちゃんはポケモンセンターに預けてあるがカブトにはその前にやらねばならない事がある。
新しく捕獲したメガヤンマとのコミュニケーションだ。
何故か捕獲時のなつき度が限界突破しているという恐ろしさ。そうとは気付かないカブトは恐る恐るメガヤンマに声をかける。
「えー、こんにちはメガヤンマさん」
『こんにちは、カブト。ボクらはもうパートナーなんだからそんな堅苦しいのは無しにしようよ』
カブトは想定していた反応より好意的で戸惑ってしまう。カブト視点ではジェノサイダーなお陰で、もっとこう、「目と目があったらジェノサイド!」みたいなヤバい奴を想定していたのだ。例えば出会い頭に『エアスラッシュ』を打たれるとか。もしそうなったらカブトは肉体言語で会話する予定だった様だが。
何故ナチュラルにメガヤンマと戦おうとするのか……
「メガヤンマさんは野生に帰りたい?」
『まさか! 折角キミと共に居られるというのにわざわざ野生に帰る訳ないじゃ無いか!』
メガヤンマはそう言うとその体をカブトにすり寄せる。背中にぴったりと張り付かれてカブトは微妙な表情をする。羽音がうるさい。
「んー、じゃあ仲間になってくれるなら名前は『メガヤンマ』から『ヤンマ』を取って……メガちゃんだね!」
『それなんか違う気がする……』
メガヤンマことメガちゃんにすら呆れられるカブトの知能。何はともあれメガヤンマが仲間として新規加入。これからよろしく、と差し伸べられたカブトの手にそっとメガちゃんは着地する。
『じゃあ早速ジム戦だね。ボクとカブトのコンビネーションならどんな相手にも負けやしないよ!』
「え? 今日はジム戦に行かないよ? ちゃんとユキちゃんが回復するのを待ってあげたいし、それにジム戦するならみんな一緒が良いよ」
先程まで上機嫌だったメガちゃんはその場で固まり一気に不機嫌になる。
『……なんで? なんでボクより弱い女の事なんか気にするの? キミを他の女から守れるのはボクだけなんだよ。だからあの弱いユキメノコなんて要らないでしょ?』
『ボクならキミを閉じ込めたりなんかしないし、束縛しようとも思わない。ただキミがボクを愛してくれればそれで良いんだ。その為ならボクは何でもするよ? キミに近づこうとする奴はアルセウスだって噛み殺してやる』
意識してか無意識か、メガちゃんの羽の起こす振動が周りの木々を切り裂き薙ぎ倒す。体を揺らしながらゆったりとカブトに顔と顔がくっつく程に近づいたメガちゃんはさらに言葉を続ける。
『キミに付き纏う女はボクが全て始末する。あのユキメノコも他の有象無象もね。あのユキメノコは消えるけどキミにはボクがいる。いや、言い換えよう、キミにはボクさえいれば良い。違うかい?』
「違うよ。僕にとってユキちゃんは家族みたいなものなんだよ。家族が居なくなるのはもう沢山だからね。それに折角仲間……いや、家族になってくれたメガちゃんが居なくなるのも嫌だ。すぐ仲良くなってとは言いません。けど互いに傷つけ合うのはやめて欲しいです」
メガちゃんの目から視線を逸らさずに見つめ続ける。かつての様に死に怯えた行動では無く、今度は自分の要求を呑ませるまで引かないという意思を込めた行動だ。
『ふぇ! ボクとカブトが家族だって! これはもう実質結婚したのでは⁉︎(ヤンデレ特有の意味不明思考)』
もっとも当の本人であるメガちゃんは途中から自分の世界に入り込んで居たのだが。
『取り敢えずあのユキメノコは保留。監視を続けてこれからの行動で判断を決めるとしよう。まぁ、カブトの言う事に従うならなら『家族じゃない』奴なら排除して良いって事だね。なら何の問題も無い。これからもカブトを狙うゴミは容赦無く消させてもらうとしよう』
一見すればカブトの言葉に納得し引き下がった様に見える。しかしメガちゃんの本心は全く別の事を考えていた。
『(やりようなら幾らでもある。ただしあんまり表沙汰になる直接的手段に出るとカブトに嫌われかねない。だったらあのユキメノコには自発的に失踪してもらうとしようじゃないか)』
そんな事を考えているとは知らないカブト君。メガちゃんが納得してくれた事に安堵する。本人としてはメガちゃんがカブトに好意を持っているとか過去一目惚れしたとかそんな事情はまるで理解出来ていない。ただ、先程まで敵だった二人が仲良くやっていけるかが心配だったのだ。
やったねカブト君! 仲間が増えたよ!
カブト
メガちゃんが納得してくれて嬉しみ
本当の地獄はこれからだ!
ユキちゃん
ポケモンセンター送り。目覚めた時が修羅場
メガちゃん
フレンドボール確定一発。カブトの周囲で女が消えたら大体コイツのせい。ユキちゃんには密かに消えてもらおうと考えている。
ナタネさん
まだなの…?
次回、修羅場確定ガチャSSR!果たしてカブトは生き残れるのか!
みんなもヤンデレゲットじゃぞ〜!