ナタネファンの皆様、再登場で頑張るから許してください
ジム戦を終えたカブトはジムリーダーナタネに誘われてナタネの家で一泊させて貰うことになった。キッサキシティの事や、カブト自身の事、今までの旅について等聞きたいそうだ。
カブトは何も考えずにホイホイ付いていく。その驚異的身体能力で忘れられがちだが、カブトはまだ十代になったばかりの少年だ。何か裏があると考える事は無理なもの。あっさりと家に連れ込まれてしまった。
ここでカブトに手を出そうと考えるナタネを排除すべく、カブトのポケモン達がボールから飛び出してくる。忠誠心、と言うよりはただの独占欲。狂愛によって強化された彼女らは同レベルかつ同じポケモンの中でも飛び抜けた力を持つ。
彼女らの持つ圧倒的な力、その力を十全に振るうことが出来れば全力のナタネにも僅かながら勝機は見出せたかも知れない。
しかし哀しいかな、彼女らは繰り出されたキノガッサ一匹の『きのこのほうし』によって深い眠りにつかされてしまった。どれほど強い力を持とうが、その力を振るう機会が無いのであればそれは無意味な事。
ナタネは熟睡するカブトのポケモン達をカブトから掠め取ったボールに戻した後『つるのむち』の応用でグルグル巻きにして封印してしまった。そしてこれでカブトを守るポケモンは居ない。カブトにはポケモン達は別室で遊んでいるとでも伝えられるのだろう。
何の疑いも無くナタネ家の食事をご馳走になるカブト。この食事の中にはあの伝説の存在、インド像すら昏倒させる程の睡眠薬が混ぜ込まれている。並の人間ならそのまま永眠しかねない代物だが、カブトはまるで気にした様子もなく料理に舌鼓を打つ。
ナタネは思った。え? 何でこの子寝てないの?
A.気にしたら負けです。
近年、若者の人間離れが増えてきているが、流石のカブトも3皿目で漸く睡眠薬の効果が効いてきたようだ。皿を机の上に置くと、そのまま床に倒れ込んでしまった。
ナタネさん大歓喜。まさかカブトが伝説のインド像3匹に相当するとは考えもしなかったが、兎に角眠り状態のカブトを手に入れる事が出来たのだ。後は地下室に『つるのむち』で縛って監禁するなり、既成事実を作るなりなんなりしてゆっくり落としていけば良い、と。
それ寒く無いの? という服を着る事に定評のあるナタネがこの様な強引な方法を取った事には深い訳がある。
そう、あれは昨日の事だ。ナタネは自身の怖がりを克服する為にも『もりのようかん』へ足を運んでいた。もはや日課となった様な行為。しかしナタネは洋館を遠巻きに見るだけで中には入らなかった。怖がりを克服したいのは本心だが、外からでも十分怖いし別に中に入らなくても良いかなー、と。それで良いと思っていたし、別に無理して入る必要も無い。そう思っていた。
そんな彼女だが、洋館からハクタイシティへ帰る途中にメガヤンマから逃走する少年の姿を偶然見つけたのだ。
助けなければ、そう思い少年とメガヤンマの姿を追った。しかしメガヤンマのスピードにただの人間がついていける訳が無い。そして困った事にナタネの今連れているポケモンは育成途中のポケモン達ばかりで、主戦力は全てジムに置いてきてしまっている。その為、メガヤンマのスピードに追いつける様なポケモンに乗って追跡するという事が出来ないのだ。
(お願い、無事でいて!)
切実な願いを抱きながらナタネは走った。ジムリーダーとしてあの少年は守らなくてはならないと。
必死で走ったナタネはメガヤンマと少年に追いつき、木々が薙ぎ倒され平野となった場所へと到着した。そこで彼女が見たものは、震える足を抑えながらメガヤンマと対峙する少年の姿。恐ろしさの余り顔が引きつっているのが遠目でも見て取れる。怖いのだろう、恐ろしいのだろう、それでも少年は前を向いて立ち向かっていた。必死の抵抗が功を奏したのか、彼の手持ちと思われるポケモンが救援へと駆けつけて最悪の事態を回避する事に成功した。
それに比べて自分はどうだ? と、自分自身に問いかけるナタネ。自分は恐ろしい物を前にした時どうしていた? 結局『もりのようかん』には入らず仕舞いだったでは無いか。言ってしまえば、言い訳をして真に自分の弱点に向き合っては居なかったのだ。
その為、今のナタネから見た彼はとても尊敬に値する姿に見えた。恐れながらも恐怖の対象に毅然と向かったその姿勢、それはとても眩しく輝いて見えた。自分には出来なかった事でその輝きは一層輝いて見える。
彼らとメガヤンマとの戦いの結末を見届けた後、ナタネは『もりのようかん』へと向かった。過去の自分を乗り越える為に。今ならなんでもできる気がする。もう何も怖くない!
結論から言うと、彼女は『もりのようかん』の内部に入ってすぐ出てきてしまった。しかしそれは人類にとって小さな一歩でも、彼女にとっては大きな一歩となったのだ。
ナタネはあの少年に感謝していた。彼と出会わなければ一生『もりのようかん』には入らなかったに違いない。ただの一方的かつ異常に美化された物だがこの感謝の気持ちを伝えたい。そう思っていた矢先の事だった。
あの時の少年がジム戦に挑戦に来たのだ。
ナタネは彼に感謝の言葉を伝えた。自分は君のお陰で勇気を持てたのだと。彼は意味が分からないといった様な顔をしていたが。
それはそれとしてジム戦は一切の手加減無しで行った。最初こそジム初挑戦に合わせたが、彼の知識量とポケモンのレベル、それらに押されて初挑戦に対するポケモンでは無いポケモンも使ってしまうことになったのだ。
何よりも彼女を驚かせたのはこの前のメガヤンマを手持ちポケモンとして従えていた事だった。たった少しの時間でもうあのメガヤンマと心を通じ合わせたのか、と驚愕した。
ジムバッジを渡した後、彼に家に来る様に伝えたのは純然に感謝と興味のみだ。そこに邪な気持ちは入っていない。ただ、彼がどの様な人生を送って来たのか、それが知りたかったのだ。
家でもてなすために料理を作っていた時、少しだけ彼女に魔が差した。あの少年を自分だけのものに出来ないかと。危険に立ち向かう彼の姿はナタネに勇気を与えた。しかし同時に独占欲も与えてしまったのだ。彼が欲しい。どうせならずっと自分の側から片時も離れずに励ましていて欲しい。他の場所へと行って欲しくない。
ちょうど良く睡眠薬もある。これを使えば後はどうにでも……
斯くして、一時のテンションに身を任せ暴走した者がここに。
今の彼女の心境、それは……
(ああああ! やっちゃった! うわぁぁ、どうしよう……)
滅茶苦茶混乱していた。その時は勢いで薬を持ったが、よく考えてみれば犯罪行為だし何より町の顔であるジムリーダーがこんな事をして良いはずが無い。彼女の持つ本来の真面目さと、手元に置いておきたい所有欲。この二つが混ざり合い大混乱を引き起こす。
「も、もうここまで来たら引き返せない! こうなったらやるしか無い!」
暫く悩んでいたが、ナタネは悩みを振り切りカブトを地下室へと連れて行こうとその体に手を伸ばす。すると……
「凍っちゃった……⁉︎」
突然カブトの体が凍りついた。ユキちゃん式超高性能氷の腕輪が効力を発揮したのだ。
「え? うそ、私氷タイプだったの……⁉︎」
突然人の体が凍りつくと人は混乱する。誰だってそうなるし俺もそうなる。しかも、直前まであたふたしていたなら尚更だ。
混迷の極みに達したナタネのとった行動は、取り敢えず地下室に連れて行く事だった。地下室で何とか解凍しようと頑張るもあえなく撃沈。そう簡単に突破される氷では無いのだ。
困りに困ったナタネは取り敢えず地下室にカブト(氷漬けの姿)を放置する事に決めた。念の為『つるのむち』で体を縛っておいたが。
そして翌朝、そこには何事も無かったかの様な姿で朝の挨拶をするカブトの姿が!
ナタネは困惑した。もしかして夢を見ていたのは私の方なのか? うん、きっとそうに違いない。人がいきなり凍るとか、翌朝には何事も無く生きているとかあり得ないし。
結局、ナタネはカブトに手を出さずに帰してしまった。今の彼女の心は手を出さなかった事への後悔半分、安堵半分といったところだ。
彼女の今後に期待です。
ナタネ宅を出たカブト。ちなみに手持ちのポケモン達はまだ眠っている。
ジム戦を終えたからハクタイシティを少し観光しようと考えたカブトは、このハクタイシティで最も目立つ前衛的なデザインの高層ビル、通称ギンガハクタイビルへと足を運んだ。
かつて見たTVのCMで、何やら宇宙の新エネルギーがどうとかこうとか中々面白そうな事を宣伝していたので見学に来たのだ。
新エネルギーについて興味がある旨を受け付けで伝えると、特徴的なおかっぱ頭の団員さんが快く中を案内してくれた。
ビルの中では主に新エネルギーの研究がメインで行われており、実際の研究は公開されていなかったもののある程度の説明を受けることができた。パンフレットなどを山ほど貰ったのでカブトの残念な頭でもある程度理解できるだろう。
中には人工的にポケモンを作り出すという新エネルギーと何の関係があるのかイマイチ関連が掴めないものもあったが、特にカブトは気に留めなかった。
一通り見学を終えると服装からいかにも研究者です! と自己主張する白衣の男からポケモンを一体受け取った。聞くところによると、作り出したは良いものの新エネルギーの開発にあまり役立たなかった為育ててくれるトレーナーを探していたという。戦わせてもあまり強く無く、持て余していたので引き取ってもらいたいらしい。
カブトは二つ返事で了承した。
こうしてカブトは新たなポケモン、ポリゴンを手に入れたのだった。
ここでギンガ団研究者が意外な気遣いを発揮。このポリゴンに『アップグレード』を使用していた事で、カブトの手に渡った途端ポリゴンはポリゴン2へと進化した。角張った体は見事な流線形を描く物へと変化し虚な目はそのままで、より親しみやすい姿へと進化を果たしたのだ。
新たに仲間に加わったポリゴン2をポリさんと命名し、お世話になったギンガ団の皆さんに別れを告げてカブトはハクタイシティを旅立って行ったのだった。
新たな仲間を出迎える事が出来て嬉しそうなカブト。しかし彼の唯一の不満、それはポリさんのボールがただのモンスターボールな点だ。オシャボ勢な彼としては赤と青のカラーリングであるポリさんは、ルアーボールが似合うと思う。ルアー全く関係無いけど。
「と、いう訳でこっちに移動してもらえますか?」
『……………………』
ボールを移し替える為だけに態々一度逃したポリさんにルアーボールを近づけて返事を待つ。ここでポリさんがついてくる事を否定したり、ルアーボールが嫌だと言うならば別に強制するつもりは無かったが、別にそんな事もなくポリさんは無言でボールの中へと入っていった。
「……気持ちが分かり難いなぁ……まぁ、そのうち何とかなるでしょ」
こうして新しくポリゴン2のポリさんが手持ちに加入したのだった。
目覚めたメガちゃんとユキちゃんは新しく手持ちを増やした事について文句を言っていたが、ポリさんのあまりの無感情っぷりに次第にその声も聞こえなくなった。多分性別不明な点も関係しているのだろう。
ハクタイシティを出たカブトは206、207番道路を通りクロガネシティへと向かう。その途中で出会った腹を空かせたポケモンにきのみを与えたり、見知らぬトレーナーからポケモンのタマゴを渡されたりしながら道路を自分の足だけで走り抜ける。
自転車? あいつは置いてきた。はっきり言ってこの戦いについて来れそうも無い。
クロガネシティに到着後、観光と休憩もそこそこにすぐさまジム戦へと挑む。幸にも今日は挑戦者がいないらしくすぐさま挑戦できるようになっていた。
クロガネジムリーダー、岩タイプの使い手。硬い防御に定評があるが、ようはそれを超える攻撃を放てば良いだけのこと。新顔のポリさんには申し訳無いが、タイプ相性が悪くとも今回は連携の取りやすいユキちゃんをメインに戦うつもりだ。
バトル開始と共に互いにボールを投げポケモンを繰り出す。
ジムリーダーの先発はイワーク。別名ポッポ。こちらの一番手はユキちゃんであるから相手から見て相性はそう悪い訳では無い。そもそも岩は氷に強いのだから当たり前ではある。
だが、とカブトは脳内で思考を続ける。意外と岩単体は少なく大概の岩タイプは何かしら他のタイプと複合している。このポッポも地面タイプが入っている。その為そこが付け入る隙になる、と。
イワークが吠えると同時に空中から数多の岩石が落下する。『がんせきふうじ』だ。落とされた岩はユキちゃんを封じ込めるかの様に蓄積し小さな山を形成した。しかしユキちゃん、ここで自身の作り出した氷像を『みがわり』とする事で押し潰される事を回避。地面を凍らせて作った道を滑走する事で、機動力を上昇させイワークの足元へと潜り込む。超至近距離から放たれた『ふぶき』はイワークを凍り付かせ、叩き込んだ『シャドーボール』によって凍りついたその体をバラバラに粉砕する。
バラバラにされたイワークと交代で繰り出されたのはゴローン。故郷であるキッサキで散々殺害した種族と同類だと認識すると、ユキちゃんは余裕の表情で冷笑した。ユキちゃんは笑顔のまま、ゴローンが『まるくなる』で丸まり『ころがる』前に『ふぶき』で足を凍らせて地面に縫い付ける。そしてゴローンはイワークの二の舞となった。連続バラバラ殺ポケ事件発生。
最後のポケモンは恐れていた岩タイプ単体であるラムパルド。氷タイプを持つユキちゃんでは些か相性が悪い。しかし、かと言ってメガちゃんも相性が良い訳では無い。内臓への直接攻撃は強力だが種がバレれば簡単に対応されかねない危険性と、耐久力の低さに定評のあるメガちゃんがダメージが累蓄するまでの時間で倒される事のリスク、この二つを恐れてメガちゃんへの交換を躊躇する。そして最後の理由。相手のポケモンを残り一匹にした時点で既に勝利は確定しているからだ。『みちづれ』を使えば安全かつ確実に勝利を得ることができる。しかし、カブトは個人的な理由として『みちづれ』の指示は出来る限り出したく無い。
それらを踏まえてユキちゃんで突貫させる事を決定する。
ユキちゃんはイワーク戦と同じく地面に氷の道を作る事でラムパルドの攻撃を躱し続ける。展開した『あられ』による『ゆきがくれ』の効果も発揮している。ちまちま躱し続けるユキちゃんに業を煮やしたのか、ラムパルドは『いわなだれ』を使い範囲攻撃で殲滅しにかかる。
ユキちゃんは『ふぶき』で氷のドームを作り出し一時的にその中へ避難するが、『とっしん』の勢いを利用して突っ込んできたラムパルドによって叩き込まれた『もろはのずつき』でドーム諸共砕かれ吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて動かなくなる。
敵を粉砕し勝鬨をあげるラムパルド。しかし彼が次のポケモンと戦う事は無かった。勝利を確信したラムパルドの真後ろ、丁度壁にめり込んだユキちゃんの姿を模した氷像の『みがわり』とは真逆の方向から放たれた『ふぶき』がラムパルドを凍らせて戦闘不能へと至らしめたからだ。
ユキちゃんは予めカブトから氷のドームを形成した時は馬鹿正直にその中に隠れず、中に『みがわり』を置いて静かにドームから脱出する事を指示されていた。『ゆきがくれ』の効果も合わさりジムリーダーの意表を突くことが出来たのだ。
何とか2回目のジム戦も攻略しカブトは2つ目のジムバッジを手に入れたのだった。
カブト
伝説のインド像三体分。ギンガ団とも繋がりを持っている危険思想の持ち主。
ユキちゃん
カブトからの無茶振りにも応える出来る女。有能の極み。あの日あげた氷の腕輪が意味を成さない事を彼女はまだ知らない。
メガちゃん
寝てた。
ポリさん
もうちょっとしたら滅亡迅雷net.に接続させると決めている。
タマゴ
今夜の夕食だぁ!
ナタネさん
再登場で頑張るからこれで許して…
次は絶対病ませる。
クロガネジムリーダー
安定の適当ジム戦。ジムリーダーは犠牲となったのだ、そう、犠牲の犠牲にな。
ナタネちゃんちゃんと病ませられなくて悲しい…