孤島の風は荒野に靡く    作:αの名酒

1 / 3
不快に感じた方がいればご報告ください。果てます
シャンフロクロスとか初っぽいんで勝手が分からないのですよ……


絶対に私を許すな




ver.Alice

「ガンゲイル・オンライン?」

 

 陽務 楽郎こと俺がそのページを開いたのは、ホンの些細なクリックのミスだった。お隣の香ばしい(クソゲー)に用があったんですけどねぇ……。「君だけのオリジナルモンスターを作ってバトル!」って見出しなのに、特定のタイミングならプレイヤーも合成できる上、それが環境トップなせいで実質肉弾戦になるとか阿呆じゃないかと。

 

 まぁ後でそれは買うとして、だ。

 

「名前見る限りは銃撃つシューティングタイプか?」

 

 (Gun)(Gale)だろ、大体想像付くわ。ガンに銃で思い出したけど、嗚呼懐かしきかなサバイバル・ガンマン。通称:鯖癌。数多積んだクソゲーあれど、俺の人生を変えたのは間違いなくあのゲームと断言できる。痛覚をリアルにし過ぎたせいで健康被害を出すという、あまりにも不名誉な脚光を浴びてしまいオンラインが閉鎖された孤島。今でもオフラインは残っているらしいが、あの時の連中は何してるんだろうな。正直二人くらいは投獄されてそうで恐い。いやだって人の手足折ることに迷いが無かったり、人肉食って悦んでる変態どもの巣窟だぞ。リアルが微塵も気にならないと言えば嘘になる。

 

「……駄目だな、久しぶりに()りたくなってきた」

 

 もちろんゲームで。モチベーションは大事だ、こうなっているときに他のクソゲーをやっても……結局クソじゃねぇか! まぁ単純に調子が乗らないからスコアも出ない。おっと目の前におあつらえ向きにPvPもできそうなシューティングゲームが。

 とりあえずレビュ一覧を見ようとして、ふと止まる。

 

 これ、クソゲーか?

 

 レビューが罵詈雑言で溢れてればいい。オールオッケー、購入確定だ。だが良コメばかりだったら俺はどうすればいい? 一介のクソゲーマニアとしてのプライドが購入を許すだろうか。しかしこの熱い衝動を燻らせたまま他のクソゲーに吶喊するのも生殺し。

 

 ……よし、考え方を変えよう。シュレディンガーの猫だ。レビューを見るまで、これにはクソゲーの可能性と神ゲーの可能性が混在している。どちらかになるかは乱数(クソ)、結果的に選択要素も絡めれば、つまりはクソゲーに分類されるのでは?(錯乱)

 

「ええい、ままよ!」

 

 近年よく見る衝動的なダブルクリックゥ! お前の血は何色だぁ!!

 

 

 

 ~~しばらく後~~

 

 

 

「…………クソかよ」

 

 これはクソゲーマニアとしての所感。俗に言う良ゲーだったわ。一時間探してみたけど特にバグも見つからない。いやログインしたときから薄々察してましたよ? クソゲーの人口密度じゃないな、って。銃の種類だけで百越してくるとか、発砲キチのγ鯖は歓喜で発狂しそうなクオリティだし。

 

「にしても、なんでまたこんな姿に」

 

 名前は(サン)(ラク)でサンラクといういつも通りの簡易ネーミング。だがアバターは……乱数(ランダム)生成ってあらかじめ聞いてたから文句はないけどさぁ……何故ショタ? しかも性別上男ってだけで外見ほぼ幼女じゃねぇか。この手のアバターとか今まで鯖癌くらいでしか使ったことないんだが、これはあれか? 乱数の女神様は(サーバー)1つをサバゲーからホラゲーに塗り替えたサンラクちゃんの子守唄をご所望なのか?

 

「とりあえず気分転換には使」

「そこの君!」

「おぉう」

 

 手始めにチュートリアルでも片付けようかとした矢先、聞き慣れない声に呼び止められる。宗教・テロ・天誅の勧誘ならお断りだぞ。なお前2つはモラル的理由だが、最後は8割方自分もやられるので却下。

 念のため逃走に身構えながら振り向くと、そこにはリアルなら爆ぜてほしいくらいの爽やかイケメンフェイスが。

 

「金に糸目はつけないから、そのアバターを譲ってくれないか?!」

 

 聞けば俺のアバターは滅多に出回らないレアな型番で、希少価値がレッドダイヤクラスだそう。マジかよ本日の女神様超ご機嫌じゃん、お神酒に暴徒の血(ライオットブラッド)でも捧げとく?

 

「だが……転売は絶対悪ッ……!」

「あっ、金銭がダメならぱっと見初心者装備だし、そこの店で好きな武器を奢るというのはどうだろうか?」

 

 …………。

 

 ガララッ(天秤の均衡が崩れる音)

 

 ガシッ(天使と悪魔が結託した音)

 

「「あざっーす!!!」」

 

 まずは片手で携行できる大口径をお一つ。え、グレネードあんの? ロマンとオチの代名詞だけどデカすぎると動き阻害するからミディアムサイズでいいや。ねぇこの棒なに? 当たれば確殺のビームサーベル? だけどレンジが短すぎて遠距離からハメ殺されるからオススメしない? かーっ、その程度の欠点なら問題ないじゃーん! さっきシステム確認したら予測弾道見えんだろ、なら切れるわ。幕末浪士舐めんな。というわけでこれで会計お願いしまーす!

 

 

「ふふふ、他人の金で買った装備は最高だ」

 

 一時間後、チュートリアルを速攻で済ませた俺は近場のフィールドに仁王立ちしていた。初ログイン地点の最寄りということは、それすなわち初心者用の狩場ということであり、マネーパワーによってそれなりの装備を手にした俺の敵ではないということだ。

 だってモンスターとか正直チョロいしぃ……。鼻面にぶっ放せば怯む、逆にそれ以外は無視して襲ってくる野犬(群れ)を見ろ。夜間限定で無音襲撃してくるフクロウ(四メートル)を見ろ。ただし見るだけで参考にはしなくていい。良ゲーをクソゲーにするのは悪魔の所業だからな。あいつらは絶海の孤島に封印されたんだよ……。

 

「新人さんかー、レベリング乙でーす」

「この辺って初心者狩りも偶に出るらしいんで気ぃつけてねー」

「あ、どうもー」

 

 奥の方からの帰りらしきパーティと会釈してすれ違う。あの背中に背負ってるゴツいガトリングかっこいいなー。戦艦に取り付けてそう。人が扱えば腕を持っていかれそうだが、STR偏重なら大丈夫なのだろうか。

 

 それにしても初心者狩りかー、さぞ経験値効率良いに違いない。だってかれこれ三十分前から岩場の影に何人か待ってるもんなぁ……。しかし高々物陰に潜んだ程度で、跳躍も肉盾も使わないノーリスク天誅など片腹痛いわァ! 草食獣をただの獲物だと思うなよ、荒ぶるトムソンガゼルの魂を見せてやろう!

 

「ここを捻って……」

 

 元イケメン(現ショタ)に買ってもらった棒を捻ると、先端から光の刃が飛び出る。振った感触は軽いが切れ味は実証済みだ。

 それを。

 

「ふん!!!」

「ぐぅえ?!」

 

 槍投げの要領でぶん投げる! 障害物? 知らんわ貫通しろ! ビームサーベルさんは最強なんだよ不遇武器とは呼ばせねぇ!

 投げるのは未検証だったから少し不安だったが、やはりクソゲーとは一味も二味も違うなガンゲイル・オンライン。

 知ってるか、世の中には「体から離れた瞬間即インベントリ送り」なクソ仕様のゲームだってあるんだぞ。あの時の弓使いたち(射てない)の絶望は凄まじかった。でもあれは、矢がフィールドの端から端まで貫通するバグに対する斬新な運営のナーフなんだよな……。バグに輪廻転生システムを導入するとか釈迦でも激怒案件だろ。

 

 ともあれ岩陰という安全地帯を潰されたPKは混乱の最中らしい。これを逃すのは愚の骨頂。

 

「わはは、カチコミじゃあ!」

「うわ死ねェ!?」

 

 鋼鉄の鼻先(マズル)火を灯(フラッシュ)してヘッショ、外してもう一度ヘッショ。あ、なんか落ちた……結構品質いいなオイ! さてはこいつら初心者狩りだけじゃないな? さっきのパーティーみたいな狩り帰り組もタゲってるだろ。じゃなきゃこんな大所帯は効率が悪い。

 だがこのゲームは素晴らしい。何がって? 本人の根本的な強さが武器と直接関係しない所だよ。銃を撃つ、当たれば死ぬ。実にシンプルで素晴らしい。お陰様で圧倒的格下の俺でも食らいつける。王道のファンタジー物だと、防御力が高いと刃物で肌を斬れないなんてザラだしな。

 

「なんだよ気持ち悪い動きしやがって……!」

 

 ん? 今チラッと視線ずらしたな? 若干上向き、俺の頭上50°ってとこか。

 

「よっと」

 

 近距離でお互いに銃口を向け合う中、相手の唇の端が薄く歪んだの視認するやいなや上半身を思い切り横へ反らして倒れ込む。次の瞬間、俺が埋めていた空間を亜音速の鉛玉が食い荒らした。

 

「おいおい大丈夫かぁ? 事前に察知されたくらいでスナイプ外すとか、海岸で壊れかけのマスケット銃修理するとこからやり直した方がいいんじゃないかぁ?」

 

 普段は慣れない真面目を取り繕おうとするから、いざという時にボロが出る。ほら、サイコパスに笑えよ。孤島じゃそれが常識(マナー)だったぞ?

 

「はいこれなーんだ」

「おまっ、それグレネードッ!?」

 

 懐からそっと取り出した球体の正体を知り、すわ自爆かと絶句しているが残念。これは君へのプレゼントじゃないんだ。まだ遠くで隙を覗っているであろう腰抜けスナイパーにあげる用さ!

 

刮目せよ(アテンションプリーズ)!」

 

 スイッチを入れ、数秒後には爆ぜる状態にしてふわりと上に放り投げる。生憎と俺は()()()で遠距離狙撃を捌けるほど器用じゃないんでなぁ! 

 

「オーバーヘッド式尺八玉天ちゅ……あ」

 

 

 突然ですがここでクイズです。

 

 見るからに繊細そうなグレネードに、数十メートルは蹴り飛ばそうと急な衝撃を与えた場合どうなるでしょうか?

 

「検証忘れてた……」

 

 実際には爆発しなかったのかもしれない。したのかもしれない。だが、真実がどちらにせよ一瞬だけ躊躇いが脚を振り上げるのを鈍らせる。そして物理エンジンは忖度なく忠実な仕事を行い──

 

「馬鹿野郎!?」

「へ」

 

 直後、爆轟。

 

 

   μーsky(サイレント・キル・幼女):『サンラク』




・超獣─GIGA─
オリジナルモンスターを合成・育成してバトルするファンタジー物。手持ち一体オンリーのポケ○ン。自由度も高く、そこそこ人気だったのだが中盤モンスター「飢餓のキマイラ」を倒した後、モンスターを合成しようとすると選択肢に「人間」が登場。これがクソ強く、コンセプトをブレイクしてしまった。なお視界も「モンスターに混ぜられた人間」、つまりは傍観視点よりもモンスター視点が優先される。傍から見れば完全に肉弾戦。

・インサイド・トリムルティ
アクションゲー。プレイヤーは最初に強さの異なる六つのアバターを制作。一定期間経過し、死ぬ度にランダムでアバターがチェンジする。だが最上位の【天道】アバターになると装備できる「インドラの弓」がフィールドの端から端まで貫通する調整ミスが発覚。それがナーフされた結果、作中のような弓使い(射てない)が大量発生した。

ガクブル
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。