日曜日の午後。
俺ら紅魔組は宴会の準備にとりかかっていた。
咲夜さんは持ち寄る料理を作り、美鈴はその手伝い、パチュリーは持っていく本の選抜。
そして俺とレミリアは、フランに宴会での行動について教えていた。
「いい?フラン。絶対、ぜーったい何かを破壊したらダメだからね!?」
「わかってるよ、そんなの……」
「お酒は飲み過ぎないように」
「お酒ってなあに?」
「お酒って言うのは……」
「お嬢様方、私達はもう準備終わりましたが……」
「あー待って、まだフランの勉強が……」
「勉強なんて、道中ですればいいじゃない」
パチュリーが妙案を思いつく。
「そうね!そうしましょ」
そうして俺らは、宴会の会場、博麗神社へと向かった。
「予想より結構早かったわね、宴会の主役」
到着して一番に、霊夢にそう言われた。
今は5時過ぎ、人はまばらで敷物もまだ中途半端だ。
ちなみに正確な会場は博麗神社の外だ。当たり前だろう。今は夏、神社の中に60人もいたら、暑苦しすぎる。
「似合ってるわね、その格好」
あぁ、霊夢に見せたことはなかったか。服を貰ってから今まで、ほとんどの時間を紅魔館で過ごしていたもんな。
「なあ、そっち側引っ張ってくれるか?」
「こう?」
「そうそう」
今は敷物の準備を手伝っている。
赤い敷物を敷いて、飛ばされないように四隅に杭を打っておく。
単純すぎて眠くなる。宴会が終わるまで眠っちゃいけないが……。
「あー、ちょっと杭足りなくなってきたな」
へ、これで足りない……だと!?
数十分後。大分人も増え、雑談で盛り上がっている集団も多く見られる。
赤紫の髪に紫の瞳、そして胸元に特徴的な赤い三つ目の瞳を持つ幼女が、視界に飛び込んできた。
周りには猫耳と尻尾を生やした赤髪の少女と、大きな鴉の翼と胸に赤い目のある服が特徴的な少女がいる。従者か何かか?
「さて、もうそろそろ時間かしらね」
霊夢はそう言い、みんなの前に立った。
「今日は来てくださり、誠にありがとうございます。今回、夜桜円香の歓迎会にあたって、主役である円香さんに挨拶と音頭をとっていただきます!」
うわ、円香さんってなんかむずがゆい。
「はい。……はじめまして、私は夜桜円香です。いきなりですが、私は転生者です。前世は『男』でした」
俺の言葉に、参加者はみんなざわつく。フランは失神しかけていた。
「今までずっと、性別を取り繕って生きていましたが、もう変わらないとダメだな、と思いました」
「そこで、この場で皆様に発表することにいたしました」
「ちなみに、前世での名前は『夜桜 真』です。ですが、『真』とは呼ばないでください」
「私はもう、変わります」
そして、一旦言葉を切った。周りは騒然としている。
「今から私は『夜桜 円香』として生まれ変わります!』
そう、宣言した。一瞬みんなは呆気にとられていたが、それはすぐに拍手喝采に変わった。
「それじゃ、みんな盃……グラスの人もいますね。を持って……乾杯!!」
言った後、グラスをコツンと合わせる音や、「カンパーイ!」と言って盃を掲げる人で、会場は一気に沸いた。
「さ、私らも呑みましょ」
霊夢の声に従って、盃を持つ。そしてそれを……口に傾けた。
「……美味しい……?」
美味しいのかよくわからない味がした。
「なーなー、こっち来いよー。この料理旨いぞー!」
マリサに引っ張られる。酒が零れそうだ。
引っ張られた先にあったのは甘辛い味付けの唐揚げ。前世でも食べたことのあるものだったが、
「なんだよ、ちょっとずつしか飲まないなー。もっとこう、がぶ飲みというかさー」
マリサはそう言って、盃を強引に俺の口に押し付ける。
「ひょっ、ばりふぁ、ふぃふふぃふ!」
「何言ってるのか分からないぜー?」
「ちょっと魔理沙、もう酔ってるわけ?」
「私は酔ってないぜー?」
「顔ちょっと赤くなってるわよ?」
「それはただ暑いだけだー」
はぁ、はぁ……。一気飲みはきつい。
てか、遠くの方に、角を生やした少女に引きずり回されてる少女がいるな……。大きな鴉の翼に、妙な形の帽子。
紫様の言ってた、『鴉天狗』で間違いないだろう。引きずり回してる方は、『鬼』か?
「ねー、霊夢ぅ、あれなぁに?」
「あー?あー、勇儀と文、またやってるのね……」
「ユウギ?」
「地底にいる鬼よ。なんでも、鬼と天狗には上下関係があるとか……」
「ほえー。じゃぁ、あれは?」
「ん?あー、幽々子ね。冥界の亡霊よ。大食いで知られているわ」
「ふぅーん……」
幻想郷にはいろんな人……人外がたくさんいるな……。
「あんたが転生者で、しかも前世では男だって知った時は、卒倒しかけたわよ……」
「えへへ、ごめーん……」
「まぁ、悪くないでしょ?幻想郷」
「うん!ずぅっと、永遠にここにいたい!」
「転生した時点で、もう前世には戻れないもの。永遠に
「分かった!じゃ、ほかの集まりも見てくるね!」
幻想郷は全てを受け入れる、か……。
それって、物凄く素敵なことなんじゃないかって、私は思う。
靴を履いて、立ち上がる。私は霊夢の方に振り返って、とびっきりの笑顔を見せた。
─完─
これにて、『幻想郷に転移しました。』は完結です!
これから何ヶ月、何年経ったとしても、読みに来てくれる人がいるといいな……。